122 / 139
第22章 昔いた街
第121話 お高いお宿
しおりを挟む
中へ入るとケルキラの冒険者ギルドと同じような作りだった。
この辺は商業ギルドと同じだ。
中で勤務している受付嬢の服装がいわゆる着物なのも商業ギルドと同じ。
「依頼掲示板を見てみましょうか」
「だね」
見たところ依頼の内容はケルキラとそう変わらない。
薬草採取、魔獣討伐、移動時の護衛なんて感じ。
ただ薬草や魔獣の種類がケルキラと少し異なる。
魔獣はヒグマっぽかったりエゾジカだったり、現実の日本では絶滅したオオカミだったり。
つまり北海道ナイズされている感じだ。
薬草はケルキラのものと名前は同じ。
なのだけれど、微妙に葉の付き方や大きさが違うように見える。
依頼掲示板の隣はギルドからのお知らせの掲示板。
ここには講習のお知らせも貼ってあった。
基礎教養や討伐実習や戦闘訓練等、ケルキラの冒険者ギルドでもあった講習の他に独自の講習がいくつかある。
その中にどう見ても私達向けに見えるものがあった。
「この『来訪冒険者用特別講習』や『来訪冒険者用一日講習』は私達向けだよね、きっと」
「そうですね。講習費用も10銭、200Cと安いですし。
おそらく冒険者が此処へ早く馴染んで居着いてくれるよう、安く設定しているのだと思います」
きっとカリーナちゃんの言う通りだ。
「なら申し込んでいい?」
「ええ、ただラッキーちゃんがいるので2人同時に受けるのはやめた方がいいと思います。1日講習の方を交互に受けて、それで更に必要があると思えば3日間の特別講習を交互に受ける形で」
確かにその方がいいだろう。
講習中、ラッキー君を宿などで待たせたままにするのはかわいそうだし。
内部が同じなら受付方法も同じ。
申込用紙をオートコンプリートで記載した後、『講習受付』と書かれた窓口へ。
着物姿の受付嬢さんは私とカリーナちゃんの申込用紙を確認して頷いた。
「来訪冒険者用特別講習、2名ですね。ミヤさんが明日4月2日の9時から15時まで、カリーナさんが明後日4月3日の9時から15時までの講習で宜しいでしょうか」
「ええ、それでお願いします」
「わかりました。それでは講習受講料金は20銭となります」
10銭銀貨2枚で支払う。
「ありがとうございました。こちらが受講証兼領収書となります。講習の際にお持ち下さい。
それと失礼ですが、こちらハコダテははじめてでしょうか?」
ギルドの人だから正直に言っても大丈夫だよな。
「ええ、今朝の船でついたところです」
「でしたらこちらをどうぞ」
受け取ったのは紙3枚。
ハコダテの街の案内図、近隣の魔物の狩り場や薬草等の採取場所の地図、それぞれの案内図に書かれたお勧めの店、宿、狩り場、採取場等の説明やコメントを書いた説明。
運営からの資料とは違い、所々手描き風。
旅行先で手に入ると嬉しくて便利なタイプのパンフレットだ。
「そちらに載っている宿はこのギルドのお勧めです。ほとんどの宿は従魔も一緒に宿泊可能となっています。料金にかなり幅がありますので予算に応じて選んで頂ければ」
「ありがとうございます」
ありがたく受け取らせて貰う。
「こちらこそご利用ありがとうございました。そちらの掲示板にあります依頼等についても宜しくお願いします」
窓口から離れ、待合室的な場所の椅子に座ってカリーナちゃんと作戦会議。
「市場をざっと見た後、お昼を兼ねて何処かのお店で一休みして、その後近くの狩り場をさらっと回り、午後3時頃になったら宿を取りに行くという感じでいいでしょうか?」
「そうだね。感覚的には家を出てまだ1時間くらいだからお腹空いていないし。市場や宿はどの辺がいいと思う?」
どうやらこの街の中心は更に東の方にあるようだ。
大きな市場は結構東、もっと東、その少し東の3カ所。
そして宿は結構東の市場付近と、これら市場よりずーっと東に固まっている。
「取り敢えず近い方の市場から見ていきましょう。宿はこれで見ると近い方が安く、遠い方が高級な宿が多いようです」
確かに宿の値段、ずーっと東側の辺りはややお高め。
でもそこで私はある文字を発見した。
「この遠い場所、温泉があるんだ」
「ええ。現実の函館では湯の川温泉に当たる場所だと思います」
本物の函館にも温泉があるのか。
無知と言われそうだけれど知らなかった。
まあ実際に行った事が無いし、札幌近郊2泊3日が私の北海道経験の全てなので勘弁して欲しい。
「ラッキーが入れる温泉も……あるね」
ギルドで聞いた通り宿のほとんどは従魔OK。
そしてお高いと思った宿賃も温泉があると思うと判断が甘くなる……
「この宿、1泊だけ泊まってみたいんだけれど、どう? ペットと一緒に入れる貸切露天風呂付で、部屋にもお風呂があって」
宿賃はかなりお高めだ。
1部屋2人で1泊1円、換算すると2千C。
ケルキラの標準的な2人部屋が600Cだからお値段3倍以上。
現実ならともかくパイアキアン・オンラインの宿として今までに見た事がないレベル。
市場近くの宿は同じ条件で30銭程度。
つまりこの街の物価が高い訳ではない。
この宿の宿賃が高いだけだ。
しかし温泉があるし部屋も露天風呂付きでかつ広い。
料理も美味しい海鮮が出てくるようだ。
冒険者ギルドのコメントも『文句なくお勧め。ただ高いからたまのご褒美宿としてでも』なんて書いてある。
「そうですね。最初の2~3泊くらいは泊まってもいいと思います。以降はこの街に留まるか、陸続きの別の場所に行くか考えて宿なり貸家なり探しましょう」
この辺は商業ギルドと同じだ。
中で勤務している受付嬢の服装がいわゆる着物なのも商業ギルドと同じ。
「依頼掲示板を見てみましょうか」
「だね」
見たところ依頼の内容はケルキラとそう変わらない。
薬草採取、魔獣討伐、移動時の護衛なんて感じ。
ただ薬草や魔獣の種類がケルキラと少し異なる。
魔獣はヒグマっぽかったりエゾジカだったり、現実の日本では絶滅したオオカミだったり。
つまり北海道ナイズされている感じだ。
薬草はケルキラのものと名前は同じ。
なのだけれど、微妙に葉の付き方や大きさが違うように見える。
依頼掲示板の隣はギルドからのお知らせの掲示板。
ここには講習のお知らせも貼ってあった。
基礎教養や討伐実習や戦闘訓練等、ケルキラの冒険者ギルドでもあった講習の他に独自の講習がいくつかある。
その中にどう見ても私達向けに見えるものがあった。
「この『来訪冒険者用特別講習』や『来訪冒険者用一日講習』は私達向けだよね、きっと」
「そうですね。講習費用も10銭、200Cと安いですし。
おそらく冒険者が此処へ早く馴染んで居着いてくれるよう、安く設定しているのだと思います」
きっとカリーナちゃんの言う通りだ。
「なら申し込んでいい?」
「ええ、ただラッキーちゃんがいるので2人同時に受けるのはやめた方がいいと思います。1日講習の方を交互に受けて、それで更に必要があると思えば3日間の特別講習を交互に受ける形で」
確かにその方がいいだろう。
講習中、ラッキー君を宿などで待たせたままにするのはかわいそうだし。
内部が同じなら受付方法も同じ。
申込用紙をオートコンプリートで記載した後、『講習受付』と書かれた窓口へ。
着物姿の受付嬢さんは私とカリーナちゃんの申込用紙を確認して頷いた。
「来訪冒険者用特別講習、2名ですね。ミヤさんが明日4月2日の9時から15時まで、カリーナさんが明後日4月3日の9時から15時までの講習で宜しいでしょうか」
「ええ、それでお願いします」
「わかりました。それでは講習受講料金は20銭となります」
10銭銀貨2枚で支払う。
「ありがとうございました。こちらが受講証兼領収書となります。講習の際にお持ち下さい。
それと失礼ですが、こちらハコダテははじめてでしょうか?」
ギルドの人だから正直に言っても大丈夫だよな。
「ええ、今朝の船でついたところです」
「でしたらこちらをどうぞ」
受け取ったのは紙3枚。
ハコダテの街の案内図、近隣の魔物の狩り場や薬草等の採取場所の地図、それぞれの案内図に書かれたお勧めの店、宿、狩り場、採取場等の説明やコメントを書いた説明。
運営からの資料とは違い、所々手描き風。
旅行先で手に入ると嬉しくて便利なタイプのパンフレットだ。
「そちらに載っている宿はこのギルドのお勧めです。ほとんどの宿は従魔も一緒に宿泊可能となっています。料金にかなり幅がありますので予算に応じて選んで頂ければ」
「ありがとうございます」
ありがたく受け取らせて貰う。
「こちらこそご利用ありがとうございました。そちらの掲示板にあります依頼等についても宜しくお願いします」
窓口から離れ、待合室的な場所の椅子に座ってカリーナちゃんと作戦会議。
「市場をざっと見た後、お昼を兼ねて何処かのお店で一休みして、その後近くの狩り場をさらっと回り、午後3時頃になったら宿を取りに行くという感じでいいでしょうか?」
「そうだね。感覚的には家を出てまだ1時間くらいだからお腹空いていないし。市場や宿はどの辺がいいと思う?」
どうやらこの街の中心は更に東の方にあるようだ。
大きな市場は結構東、もっと東、その少し東の3カ所。
そして宿は結構東の市場付近と、これら市場よりずーっと東に固まっている。
「取り敢えず近い方の市場から見ていきましょう。宿はこれで見ると近い方が安く、遠い方が高級な宿が多いようです」
確かに宿の値段、ずーっと東側の辺りはややお高め。
でもそこで私はある文字を発見した。
「この遠い場所、温泉があるんだ」
「ええ。現実の函館では湯の川温泉に当たる場所だと思います」
本物の函館にも温泉があるのか。
無知と言われそうだけれど知らなかった。
まあ実際に行った事が無いし、札幌近郊2泊3日が私の北海道経験の全てなので勘弁して欲しい。
「ラッキーが入れる温泉も……あるね」
ギルドで聞いた通り宿のほとんどは従魔OK。
そしてお高いと思った宿賃も温泉があると思うと判断が甘くなる……
「この宿、1泊だけ泊まってみたいんだけれど、どう? ペットと一緒に入れる貸切露天風呂付で、部屋にもお風呂があって」
宿賃はかなりお高めだ。
1部屋2人で1泊1円、換算すると2千C。
ケルキラの標準的な2人部屋が600Cだからお値段3倍以上。
現実ならともかくパイアキアン・オンラインの宿として今までに見た事がないレベル。
市場近くの宿は同じ条件で30銭程度。
つまりこの街の物価が高い訳ではない。
この宿の宿賃が高いだけだ。
しかし温泉があるし部屋も露天風呂付きでかつ広い。
料理も美味しい海鮮が出てくるようだ。
冒険者ギルドのコメントも『文句なくお勧め。ただ高いからたまのご褒美宿としてでも』なんて書いてある。
「そうですね。最初の2~3泊くらいは泊まってもいいと思います。以降はこの街に留まるか、陸続きの別の場所に行くか考えて宿なり貸家なり探しましょう」
18
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる