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第21章 新マップの場所

第118話 ついに乗船

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 ゲーム内メッセージで時候の挨拶というのは変かもしれない。
 かと行って前略~草々も何かおかしい気がする。
 なので結局はもっと砕けた文章にしたメッセージを作成してメアリーさんに送信。

 その後私特製ジャーキーを人間用、ラッキー君用を20個ずつ調理。
 念のためカリーナちゃんにも試食してもらった。

「これ、美味しいです。ちょっとお腹がすいた時に食べるのにちょうどいいと思います。私はお酒を飲めないですけれど、つまみにもいいかもしれません」

 よし、自信を持って調理できるメニュー、やっと一品確保。
 この調子で少しずつレパートリーを増やしていこうと思う。
 調理系統を全部カリーナちゃん任せにしているのは申し訳ないし。

 ◇◇◇

 さて、夜になり朝になって3月9日。
 そして今はまもなく11時。

「そろそろ出ましょうか」

「そうだね」

 カリーナちゃんの言葉で私は立ち上がる。
 ここから新港までは歩いて10分かからない。
 それでも何かあると大変だ。
 ある程度早めに出るのは正しいだろう。 

 ラッキー君が真っ先に玄関へと行って、そしてこっちを振り返る。
 行くんですよね? 早く行きませんか? そんな感じで。

 家の中は片付いているし戸締まりも玄関以外は終わっている。
 だからあとは出た後、玄関と門の鍵を閉めるだけ。
 なお家賃はいない間、運営が支払ってくれる事になっている。
 だから此処を出てそのまま新マップへ行って問題無い状態だ。

 門を出て、鍵を閉め、今日は2人と1匹でそのまま港方向へ。

「ここの船って蒸気船だっけ?」

「魔法動力船です。帆も外輪もついているから、外見的には明治時代くらいの蒸気船と似ています」

「絵的に映えるからかな」

「多分そうだと思います。完全に魔法動力なら帆はいらない筈ですし、外輪よりスクリューの方が効率がいい筈ですから」

 そんな話をしながら歩いて行く。
 特に妨害だの面倒な人に絡まれるだのという事無く新港へと到着。

 港は人が大勢働いていて活気がある。
 荷物を積み卸ししたり、荷車で移動させていたり。
 そんな人が多い中を縫って歩いて行く。

 停泊位置の3番埠頭の場所については今朝、Webで検索済み。
 だから割とあっさりと到着。
 船もすぐにわかった。
 外輪や帆柱とか船形とかがいかにもペリー来航時の黒船という雰囲気だ。

 渡り板が出ていて、その前に船員らしい鍛えられた感じの男が帳簿を持って立っている。
 おそらくあの人が受付をしているのだろう。
 ただ男性が受付だとカリーナちゃん、大丈夫だろうか。
 お店などのフレンドリーな感じの男性は割と大丈夫なのだけれど少し心配。

 ここは念の為、私が先頭に立つ事としよう。
 そう判断して、そしてカリーナちゃんに告げる。

「それじゃ行こうか。契約書を借りていい」

「わかりました」

 カリーナちゃんから記入済みの契約書を受け取り歩き出す。
 行くの? 行った場所で遊べる?
 私の方を見上げてそんな顔をしながら、ラッキー君が私の横をついてきた。
 カリーナちゃんはその後ろ、やっぱりああいう感じの男性は苦手な模様。

 渡り板前の船員さんらしき男にまずは声をかける。

「すみません。リーフデ号に乗船するのはこちらでよろしいでしょうか?」

「ああそうだ。乗るなら乗船券かそれに代わる物はあるか?」
 
 ここで契約書を出せばいいのだろう。
 そう判断して私はアイテムボックスから取り出し、提示する。

「確認した。2人と魔犬1匹だな。ここからまっすぐ行って、甲板上へ行ってくれ。すぐ前に船室入口があるからそこを入って階段を降りたところが船室だ。
 これが案内になる。2人なら船室は1室だ。先着順で扉が開きっぱなしのところがまだ未使用の部屋になるから、そのどれかに入ってくれ」

 先着順だったか、ならもう少し早く来た方が良かったかな。
 そう思いつつ案内の紙片を受け取る。
 
「わかりました。ありがとうございます。それじゃ行こうか」

 渡り板といっても1m位の幅があり、両側に布製の落下防止柵がついている。
 だから渡るのはそれほど怖くない。
 渡り板は地上と違って揺れ動いているけれど、バランスを崩す程ではないし。

 言われた通り渡ったすぐ先に船室入口があった。

「船室に直行でいい?」

「ええ、それがいいと思います」

 なのでそのまま入口へ。
 入ってすぐ下り階段を15段ほど降りると廊下っぽい場所に出た。
 魔法照明で照らされていて、右側に開いている扉や仕舞っている扉が並んでいるのがわかる。

「どの部屋がいいかな」

「2~3部屋見てから考えた方がいいと思います。どれも同じなら階段に近い場所がいいです」

 確かに何か起こった際を考えればすぐ逃げられる場所がいい。
 実際は出港の後すぐに入港となるにしても。

「わかった。それじゃ見てみようか」

「ええ」

 早速近くの扉が開いている部屋から見ていく。
 取り敢えず3部屋見たところ、何処も同じ作りの模様。
 小窓一つ、二段ベッドひとつ、片面が壁に張り付いている机っぽいテーブルとそのテーブルに向いた長椅子。
 そんな細長く狭い部屋だ。

「何処も同じみたいだし、階段の向かいのひとつこっち側でいい?」

「ええ、それでいいと思います」

 階段の向かいは扉が閉まっていたのでその隣の部屋に決定。
 室内は狭いがそれなりに綺麗で清掃が行き届いている。
 壁や床、天井のウッディな感じもいい。

 長椅子に2人と1匹で腰掛けてのんびりする。

「これはこれで悪くないね」

「ええ。ただ実際にここで数ヶ月の間、航海すると思うと閉所恐怖症になりそうですけれど」

「確かにそうだけれど。ラッキーも運動不足になるだろうし」

 私よりラッキー君が辛いだろう。
 その辺は仮想世界様々だ。

 カンカンカンカン、上方で鐘の音が聞こえた。

「出港の合図ですね」

 なるほど、蒸気船ではないから蒸気圧を利用した汽笛ではないと。
 それはそれで合理的だな、そう思ったところで船の揺れが変わった。
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