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第17章 間奏曲
第104話 カレンさんの弱音?
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「あらミヤちゃん、きょうは1人?」
うん、AIではない方のカレンさんだ。
何処が違うと言葉では説明出来ないが、それでも何となくわかる。
「ええ。ちょっと冒険者ギルドへ行ってきた帰りです。申し訳ないですけれど少し此処で時間を潰していいですか? 少し安全というか安心の為に」
「あらあら、何があったのかしらぁ」
そう言いつつカレンさん、いつものように冷たい水を出してくれる。
「ちょっと教養講習を受けて来たんです。満点賞狙いで」
「なるほどねえ。それで欲しいものは手に入ったのかしらぁ?」
「ええ。ですがそれで、ちょっと他の人の目が気になって」
私は格闘術奥義皆伝をカウンターの上に出す。
カレンさんは本のタイトルを見て頷いた。
「なるほどねぇ。確かに今、これを欲しがっている人は大勢いると思うわぁ。格闘家の方はまだ報告が無いようだしね。
ちょっと待ってねっ♡」
カレンさんはそう言ってカウンターの中から出てくる。
出入口まで行って扉を開け、外をのぞき込んだ後、扉を閉めて戻ってきた。
「ここへ来て正解よぉ。1人、後をつけてきているわぁ」
うわっ、本当にいたのか。
「ありがとうございます。結構気をつけたつもりなんですけれど、どうやればわかるんですか?」
「気配察知のスキルよぉ。戦闘系の職業をやっていれば大体レベル50位で手に入るわ。INTとかで若干前後はするけれどね。
このスキル、ある程度使い慣れると見通しが効く範囲なら何処に何がいて、どっち方向に注意しているかわかるのよぉ♡」
なるほど、それが出来れば戦闘だけでなく探索にも便利だろう。
しかし今はそう落ち着いて考える余裕は無い。
「此処でしばらく時間を潰していたら諦めますかね?」
「なんとも言えないわ。お馬鹿さんは一つの考えに固執すると他が見えなくなるから。
ただこのギルド、店と事務所の他にも出入口があるのよぉ。何ならそこを使って逃げれば問題はないと思うわぁ♡」
おっと、そんなものがあるのか。
それはありがたい。
しかしこのギルドには一応住んでいた事があるけれど、そんな出入口があるなんて事は知らなかった。
建物もそういう場所があるようには外見上は見えないし。
「どの辺にあるんですか?」
「このブロックの北側、北西角から3軒目の家よ。3年前に倉庫が足りなくなったから購入して、裏側で工事してつなげてあるのぉ。そこの扉から行けば通り抜けられるわ。
そっちから出て東へ行って、次の角を北へ曲がれば追跡しているお馬鹿さんには見つからないと思うわよぉ」
そんな抜け道があったのか。
此処へ来て良かったと思う。
「すみません。そこを通らして貰っていいですか?」
「勿論よぉ。その代わり交換条件ひとつあるけれど、いいかしら♡」
何だろう。
「出来る事でしたら」
「ちょっとした相談よ。ミヤちゃんの意見を聞きたい事があるのぉ」
私に相談?
「いいですけれど、相手が私でいいんですか?」
「勿論よ。ミヤちゃんに聞きたいの。いいかしら?」
「勿論ですけれど」
何だろう、私に何か関係がある事なのだろうか。
「抽象的な話になるけれどね。私には今しなければならない、そう思う事があるの。これは片付けなければいけない状態だ、今は歪んだ状態なんだ、そうわかっている事が。
でもそうすると今の状態は壊れてしまう。そして私は今の歪んだ状態がたまらなく愛おしい。出来ればもう少しこのままでいたい。それが本音だったりする。
そういう場合、ミヤちゃんだったらどう判断してどう動くかしら? 抽象的すぎる話でわかりにくいかもしれないけれど、ミヤちゃんなりに考えて私に答えを教えて頂戴」
しなければならない事がある。
現状は歪んだ状態だとわかっている。
でもそんな現状が愛おしくて、もう少しこのままでいたい。
重い相談だ。
具体的な事は一切言っていないけれど、それでもそう感じる。
それと同時にもう一つ別の事を思う。
今の私の状態に似ていると。
私が此処にいるのは逃げだし、その事は私自身わかっている。
でも現実に戻る気にはなれないし戻りたくない。
それが今の私だ。
カレンさんの話と違うのは……
「私の話では無いですよね」
それでも一応口に出して確認してしまう。
この辺はきっと私の弱さだ。
「ノンノン、あくまでこれは私の判断の話よぉ」
気になる。
けれどカレンさんがそういうならきっとカレンさん自身の話なのだろう。
それならば……
私は私の頭の中を整理する。
答は案外簡単に出た。
悲しみと未練が残るすっきりとしない答だけれど。
思考を言葉の枠に当てはめて言語化して、更に結論へと組み立てて……
「自分の今の状態を棚に上げた意見ですけれど」
そう前置きをして、そして私は続ける。
「カレンさんの中ではもう答は出ているんだと思うんです。しなければならない、そういう最終的な答が。そうでなければカレンさん、迷ったりする事はないでしょうから。
だから今を精一杯愛おしみつつ、それでもしなければならない事を進める。きっとそれしか答は無い気がします」
言いながら自分の言葉が間違っていないか、確認する。
思った通りに言えているか、言葉が足りなく無いかどうか。
「多分きっとその事はカレンさん自身がわかっているんだろうと思います。私の意見なんて聞かなくても、ずっと。だから私に出来るのは意見を言うというより、後押しをする事だけです」
そう、カレンさんはもう答を出しているんだと思う。
だから私が言葉で出来るのは、後押しをする事だけ。
「私はカレンさんが何についてそう思っているかは知りません。カレンさん自身の事も此処のギルドでの事くらいしか知りません。あとはカリーナちゃんから聞いた、昔パーティを組んでいた時代の事くらいです」
話しながら自分の話の筋を確認する。
大丈夫な筈だ、少なくとも私が思った事の半分は言えている筈だ。
そして結論までの筋もこれでいい筈。
「ただそれだけですけれど、それでも私はカレンさんを信じていい人だと思っています。私だけじゃありません。カリーナちゃんもです。『一時期NPC以外ではカレンとコルサくらいしか信用できなかった』とまで言っていたくらいに。
そんなカレンさんが悩んで出した答ならきっと正しい。私はそう思います。誰がなんと言おうと、カレンさん自身がどう感じようと私はカレンさんの出した答、判断を信じます」
「ありがとね。ちょっとだけ自信を持てたわ」
カレンさんはそう言って、そして軽くため息をつく。
「我ながらなっていないと思うわね。ミヤちゃんにこんな弱音を吐いているところを見せてしまって。何というか格好悪いわ」
それを言ったら私なんてもっと格好悪い。
なにせ現実から逃げ出してここにいるのだ。
そのことをカレンさんも知っている筈だし。
「さて、それじゃ交換条件の前にあの馬鹿がまだ見張っているか確認するわよ」
カレンさんはそう言って再び出入口扉を開けて外を確認。
「うんうん、これは出てくるまで動かない気みたいね。ならちょうどいいわ。あのお馬鹿さんの気が変わらないうちに、ミヤちゃん逃げて」
確かに逃げるなら奴が動かないうちの方がいい。
出来るだけ早いうちに移動するのは正しいだろう。
ただ今の状態でそのままここから立ち去るのは何というか……
言葉にはしにくいけれど何か足りない気がする。
何かすべき事があるような気がする。
「はいはい、カリーナちゃんがお昼作って待っているんでしょ。あとラッキーちゃんも」
それはその通りだ。
割り切れない何かを感じつつも私は立ち上がる。
カレンさんはカウンター側にある扉を開けた。
「ここをまっすぐ行った先、正面の扉よ。内側から開く分には鍵はいらないわ。外からはここのギルド職員以外は入れないよう魔法をかけてあるから大丈夫よぉ」
いや、気になっているのはそういう事ではない。
なのだが私は半ばカレンさんに追い立てられるようにカウンター奥の扉へ。
「それじゃカリーナちゃんをよろしくね」
扉が閉められた。
勿論鍵はかかっていないだろうから、あの部屋に戻る事は出来る。
ただ戻って何を話せばいいのか、わからない。
だから私は奥へと向かって歩く。
窓があるから歩くのには不自由しない程度には明るい。
途中左側にある扉は店に通じるものだろう。
保存用の特殊魔法がかかった棚の間を歩いて、そして正面の扉を開ける。
カレンさんが言った通り、ギルド入口の裏側にあたる通りだった。
扉を閉めて振り返ってみる。
ギルドの倉庫というよりごく普通の家だ。
さて、何か気になるけれどとりあえず今はお家に帰ろう。
時間は11時30分過ぎ、まっすぐ帰ればほど良い時間だ。
カリーナちゃんがご飯を作って待っているし、イヤし犬もご飯はまだかと待っている。
それに折角手に入れた格闘術奥義皆伝も渡さないと。
私は気をとりなおして、歩き始めた。
うん、AIではない方のカレンさんだ。
何処が違うと言葉では説明出来ないが、それでも何となくわかる。
「ええ。ちょっと冒険者ギルドへ行ってきた帰りです。申し訳ないですけれど少し此処で時間を潰していいですか? 少し安全というか安心の為に」
「あらあら、何があったのかしらぁ」
そう言いつつカレンさん、いつものように冷たい水を出してくれる。
「ちょっと教養講習を受けて来たんです。満点賞狙いで」
「なるほどねえ。それで欲しいものは手に入ったのかしらぁ?」
「ええ。ですがそれで、ちょっと他の人の目が気になって」
私は格闘術奥義皆伝をカウンターの上に出す。
カレンさんは本のタイトルを見て頷いた。
「なるほどねぇ。確かに今、これを欲しがっている人は大勢いると思うわぁ。格闘家の方はまだ報告が無いようだしね。
ちょっと待ってねっ♡」
カレンさんはそう言ってカウンターの中から出てくる。
出入口まで行って扉を開け、外をのぞき込んだ後、扉を閉めて戻ってきた。
「ここへ来て正解よぉ。1人、後をつけてきているわぁ」
うわっ、本当にいたのか。
「ありがとうございます。結構気をつけたつもりなんですけれど、どうやればわかるんですか?」
「気配察知のスキルよぉ。戦闘系の職業をやっていれば大体レベル50位で手に入るわ。INTとかで若干前後はするけれどね。
このスキル、ある程度使い慣れると見通しが効く範囲なら何処に何がいて、どっち方向に注意しているかわかるのよぉ♡」
なるほど、それが出来れば戦闘だけでなく探索にも便利だろう。
しかし今はそう落ち着いて考える余裕は無い。
「此処でしばらく時間を潰していたら諦めますかね?」
「なんとも言えないわ。お馬鹿さんは一つの考えに固執すると他が見えなくなるから。
ただこのギルド、店と事務所の他にも出入口があるのよぉ。何ならそこを使って逃げれば問題はないと思うわぁ♡」
おっと、そんなものがあるのか。
それはありがたい。
しかしこのギルドには一応住んでいた事があるけれど、そんな出入口があるなんて事は知らなかった。
建物もそういう場所があるようには外見上は見えないし。
「どの辺にあるんですか?」
「このブロックの北側、北西角から3軒目の家よ。3年前に倉庫が足りなくなったから購入して、裏側で工事してつなげてあるのぉ。そこの扉から行けば通り抜けられるわ。
そっちから出て東へ行って、次の角を北へ曲がれば追跡しているお馬鹿さんには見つからないと思うわよぉ」
そんな抜け道があったのか。
此処へ来て良かったと思う。
「すみません。そこを通らして貰っていいですか?」
「勿論よぉ。その代わり交換条件ひとつあるけれど、いいかしら♡」
何だろう。
「出来る事でしたら」
「ちょっとした相談よ。ミヤちゃんの意見を聞きたい事があるのぉ」
私に相談?
「いいですけれど、相手が私でいいんですか?」
「勿論よ。ミヤちゃんに聞きたいの。いいかしら?」
「勿論ですけれど」
何だろう、私に何か関係がある事なのだろうか。
「抽象的な話になるけれどね。私には今しなければならない、そう思う事があるの。これは片付けなければいけない状態だ、今は歪んだ状態なんだ、そうわかっている事が。
でもそうすると今の状態は壊れてしまう。そして私は今の歪んだ状態がたまらなく愛おしい。出来ればもう少しこのままでいたい。それが本音だったりする。
そういう場合、ミヤちゃんだったらどう判断してどう動くかしら? 抽象的すぎる話でわかりにくいかもしれないけれど、ミヤちゃんなりに考えて私に答えを教えて頂戴」
しなければならない事がある。
現状は歪んだ状態だとわかっている。
でもそんな現状が愛おしくて、もう少しこのままでいたい。
重い相談だ。
具体的な事は一切言っていないけれど、それでもそう感じる。
それと同時にもう一つ別の事を思う。
今の私の状態に似ていると。
私が此処にいるのは逃げだし、その事は私自身わかっている。
でも現実に戻る気にはなれないし戻りたくない。
それが今の私だ。
カレンさんの話と違うのは……
「私の話では無いですよね」
それでも一応口に出して確認してしまう。
この辺はきっと私の弱さだ。
「ノンノン、あくまでこれは私の判断の話よぉ」
気になる。
けれどカレンさんがそういうならきっとカレンさん自身の話なのだろう。
それならば……
私は私の頭の中を整理する。
答は案外簡単に出た。
悲しみと未練が残るすっきりとしない答だけれど。
思考を言葉の枠に当てはめて言語化して、更に結論へと組み立てて……
「自分の今の状態を棚に上げた意見ですけれど」
そう前置きをして、そして私は続ける。
「カレンさんの中ではもう答は出ているんだと思うんです。しなければならない、そういう最終的な答が。そうでなければカレンさん、迷ったりする事はないでしょうから。
だから今を精一杯愛おしみつつ、それでもしなければならない事を進める。きっとそれしか答は無い気がします」
言いながら自分の言葉が間違っていないか、確認する。
思った通りに言えているか、言葉が足りなく無いかどうか。
「多分きっとその事はカレンさん自身がわかっているんだろうと思います。私の意見なんて聞かなくても、ずっと。だから私に出来るのは意見を言うというより、後押しをする事だけです」
そう、カレンさんはもう答を出しているんだと思う。
だから私が言葉で出来るのは、後押しをする事だけ。
「私はカレンさんが何についてそう思っているかは知りません。カレンさん自身の事も此処のギルドでの事くらいしか知りません。あとはカリーナちゃんから聞いた、昔パーティを組んでいた時代の事くらいです」
話しながら自分の話の筋を確認する。
大丈夫な筈だ、少なくとも私が思った事の半分は言えている筈だ。
そして結論までの筋もこれでいい筈。
「ただそれだけですけれど、それでも私はカレンさんを信じていい人だと思っています。私だけじゃありません。カリーナちゃんもです。『一時期NPC以外ではカレンとコルサくらいしか信用できなかった』とまで言っていたくらいに。
そんなカレンさんが悩んで出した答ならきっと正しい。私はそう思います。誰がなんと言おうと、カレンさん自身がどう感じようと私はカレンさんの出した答、判断を信じます」
「ありがとね。ちょっとだけ自信を持てたわ」
カレンさんはそう言って、そして軽くため息をつく。
「我ながらなっていないと思うわね。ミヤちゃんにこんな弱音を吐いているところを見せてしまって。何というか格好悪いわ」
それを言ったら私なんてもっと格好悪い。
なにせ現実から逃げ出してここにいるのだ。
そのことをカレンさんも知っている筈だし。
「さて、それじゃ交換条件の前にあの馬鹿がまだ見張っているか確認するわよ」
カレンさんはそう言って再び出入口扉を開けて外を確認。
「うんうん、これは出てくるまで動かない気みたいね。ならちょうどいいわ。あのお馬鹿さんの気が変わらないうちに、ミヤちゃん逃げて」
確かに逃げるなら奴が動かないうちの方がいい。
出来るだけ早いうちに移動するのは正しいだろう。
ただ今の状態でそのままここから立ち去るのは何というか……
言葉にはしにくいけれど何か足りない気がする。
何かすべき事があるような気がする。
「はいはい、カリーナちゃんがお昼作って待っているんでしょ。あとラッキーちゃんも」
それはその通りだ。
割り切れない何かを感じつつも私は立ち上がる。
カレンさんはカウンター側にある扉を開けた。
「ここをまっすぐ行った先、正面の扉よ。内側から開く分には鍵はいらないわ。外からはここのギルド職員以外は入れないよう魔法をかけてあるから大丈夫よぉ」
いや、気になっているのはそういう事ではない。
なのだが私は半ばカレンさんに追い立てられるようにカウンター奥の扉へ。
「それじゃカリーナちゃんをよろしくね」
扉が閉められた。
勿論鍵はかかっていないだろうから、あの部屋に戻る事は出来る。
ただ戻って何を話せばいいのか、わからない。
だから私は奥へと向かって歩く。
窓があるから歩くのには不自由しない程度には明るい。
途中左側にある扉は店に通じるものだろう。
保存用の特殊魔法がかかった棚の間を歩いて、そして正面の扉を開ける。
カレンさんが言った通り、ギルド入口の裏側にあたる通りだった。
扉を閉めて振り返ってみる。
ギルドの倉庫というよりごく普通の家だ。
さて、何か気になるけれどとりあえず今はお家に帰ろう。
時間は11時30分過ぎ、まっすぐ帰ればほど良い時間だ。
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