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第17章 間奏曲
第101話 夜の薬草採取
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「外は暗くなりはじめています。もう少ししたら聖臭花を採取するのにちょうどいい時間です」
そう言えば新要塞に行くために臭い消しを作るのだった。
でもその前に一つ質問。
「暗くなってからの魔物は気にしなくていいレベル?」
「基本的にはレイスまでですから。今のミヤさんとラッキーちゃんなら問題ありません」
なるほど。
そんな訳で階段を上って外へと出る。
外はまもなく夕暮れの時間。
海は東側なので日が沈むのは街の方向。
ここ海の塔は周囲から見て高い場所に建っていて、西側は何処も此処より低い。
だからここから街を見ると俯瞰する形になる。
夕日色に染まった街はどことなく暖かく見えていい感じだ。
「こうやって見るとケルキラの街、結構綺麗だね」
カリーナちゃんも足を止めて街の方を見る。
「確かにここから見ると綺麗かもしれないです。遠くから見るとごちゃごちゃした物が見えないからでしょうか」
「確かにそれはあるかもね。街なんて何処も俯瞰で、そして夜景で見た方が綺麗なんてのはあるし。
ところで聖臭花ってどの辺にある?」
「教会跡です。本館を通り抜けて左へ行きます。あと完全に日が暮れるとゴーストやレイス、夜行性のゲンエイグアナが出るから一応注意はしておいて下さい。ほとんどはラッキーちゃんが倒してくれると思いますけれど」
ラッキー君、役に立つし聞き分けもいいし何より可愛い。
多少食にいやしいけれど、それもまあ可愛いのうちだし。
本館を抜けた先を左、街へ帰るのとは反対方向へ。
階段を降りるとギリシャの遺跡っぽい形の建物の前だ。
例によって敵が出てきた。
ただ出てきたのは普通のスケルトン、カサドールですらない奴が4体。
私が斧を構えるまでもなく、ラッキー君が突進。
『スケルトン4体を倒した』
私は全くタッチしていないから経験値はない。
「この辺は出る敵、スケルトンなんだね」
「魔物が強いのは本館、海の塔、病院跡くらいです。あとは例外的に地下牢にレイスが出るだけで。
ただ日が沈むとゴーストが主体になります。レイスも外で出るようになりますから、少しは注意が必要です」
なるほど。
「夜は強いボスが出るとか、そういうのは無い?」
「ボスは同じです。昼間と比べると若干強くなりますけれど、経験値は同じです」
戦闘狂でもない限りわざわざ夜に挑戦する意味はないと。
さて、此処が目的地の筈だ。
目的の薬草はどれだろう。
「聖臭花ってどんな花か、出来れば特徴とか教えて貰えると助かる。まだ覚えていない薬草だから」
カリーナちゃんに借りた本に採取部位や使い方は書いてあった。
しかしイラストでは今ひとつサイズ感とか雰囲気とかがつかめない。
なのでまだ自動採取出来るようにはなっていないのだ。
「花は完全に日が落ちた後に咲きます。ただ木そのものはわかりやすいです。この木です」
カリーナちゃんが手に取って教えてくれる。
細長いやや厚みがあってつやつやの葉がついた背の低い木だ。
「完全に日が落ちると小さな花がたくさん集まった、全体として正銅貨くらいの円形の花が枝の先に開きます。
ただ聖臭花は開いた花の花弁でないと薬効がありません。ですから完全に開ききるまで待ってから採取します。大体日没後30分くらいで完全に開きますから、そこを採取する形です」
なるほど。
よく見ると蕾らしいものが枝の先、葉が生えている中央に見える。
「ならそれまでは此処で警戒しながら待機かな」
「ええ」
教会跡の土台っぽい石に腰掛ける。
ラッキー君がいい子でお座りポーズになって主張するのは、休憩モードのお約束。
「さっき海の塔に向かう前に食べましたよね」
ラッキー君、ふっと視線をカリーナちゃんから外す。
聞こえていません、そう言っているかのように。
「ラッキーちゃん、それじゃおやつと引き換えにお願いです」
何でしょうか! 何でもします!
そんな感じでラッキー君、カリーナちゃんの直前まで接近。
なおお座り姿勢のままで、である。
なかなか怪しい動き方で笑えるのだけれど本犬は真剣だ、多分。
「太陽が完全に沈むとこの辺はゴーストが出やすくなります。勿論見つけたら私達も倒します。けれどラッキーちゃんの方が耳がいいし、きっと見つけるのも早いんじゃないかと思うんです」
わかっている、その通りだ、だから早くおやつちょうだい!
そんなラッキー君の前で更にカリーナちゃんは説明を続ける。
「だからラッキーちゃんもゴーストを見つけたら倒して貰えますか?」
わかった、わかった、ラッキー君、思い切り頷く。
やっぱり言葉が通じているようにしか思えない。
「ならおやつ、さっきはジャーキーだったから今回はチーズです」
大きいチーズを細長く切って生乾きくらいに乾燥したものだ。
ラッキー君は凄い勢いでバリバリと食べ、そしてカリーナちゃんの方を見る。
「今回はここまでですよ。それじゃお願いしますね」
仕方ないなあ、そんな表情でラッキー君は立ち上がった。
「今スケルトンを倒したけれど、日が暮れたらまた出る?」
「日がある間と沈んでいる間は別勘定らしいです」
なるほど。
なら私も一応警戒はしておこう。
ここからだと太陽は旧要塞の入口付近にある二階建ての建物に沈む形になる。
太陽の赤みがほぼ完全に建物の影に隠れた瞬間、風の音の他に聞き覚えのある音がした。
聴音検査の低い方に似た感じの音、ゴーストだ。
ラッキー君がダッシュする。
音がする方へ視線をやるのとほぼ同時にラッキー君が体当たりした。
白いもやのような影がかき消える。
他に音はしないか耳をすます。
ラッキー君がいるのと反対側で音がする気がした。
咄嗟に戦斧で突き攻撃を連射する。
『槍技:流星突』
まだいる気がする、そう思ったらカリーナちゃんが拳技を出していた。
『ゴースト3体を倒した。経験値25を獲得……』
それぞれ1体のゴーストを倒した。
だから経験値は25ずつという事だろう。
それにしても今回は……
「ゴーストは四方八方から出てくる形なんだ」
今まで他の魔物は大体同じ方向から出てきた。
だから対処は楽だったのだけれど。
「ええ、夜はこれが面倒なんです。だからあまり出歩きません。
あと聖臭花が咲き始めました。まだ採取には早いですけれど」
そう言えば先程は感じなかった香りがしていると気づいた。
カリーナちゃんに言われて先程の蕾を見てみる。
確かに白い、あじさいをぐっと小さくしたような花が咲き始めていた。
ただよく見ると花びらはあじさいより立体的だ。
そして独特の甘い香りがする。
「どれくらい採取して大丈夫?」
「咲いているものを全部採取しても大丈夫です。翌日朝には新たな蕾をつけ、夜にまた咲きますから」
こういった処は現実と比べるとご都合主義で便利だ。
さて、もう少し花を観察してみるか。
近づいて葉や茎とともに観察すると最近ご無沙汰だったメッセージが出る。
『聖臭花を覚えました。以降この花を判別する事が可能です。またこの草が3m以内に生えていて、かつ視野に入っている場合、採取をする事が出来ます』
そう言えば新要塞に行くために臭い消しを作るのだった。
でもその前に一つ質問。
「暗くなってからの魔物は気にしなくていいレベル?」
「基本的にはレイスまでですから。今のミヤさんとラッキーちゃんなら問題ありません」
なるほど。
そんな訳で階段を上って外へと出る。
外はまもなく夕暮れの時間。
海は東側なので日が沈むのは街の方向。
ここ海の塔は周囲から見て高い場所に建っていて、西側は何処も此処より低い。
だからここから街を見ると俯瞰する形になる。
夕日色に染まった街はどことなく暖かく見えていい感じだ。
「こうやって見るとケルキラの街、結構綺麗だね」
カリーナちゃんも足を止めて街の方を見る。
「確かにここから見ると綺麗かもしれないです。遠くから見るとごちゃごちゃした物が見えないからでしょうか」
「確かにそれはあるかもね。街なんて何処も俯瞰で、そして夜景で見た方が綺麗なんてのはあるし。
ところで聖臭花ってどの辺にある?」
「教会跡です。本館を通り抜けて左へ行きます。あと完全に日が暮れるとゴーストやレイス、夜行性のゲンエイグアナが出るから一応注意はしておいて下さい。ほとんどはラッキーちゃんが倒してくれると思いますけれど」
ラッキー君、役に立つし聞き分けもいいし何より可愛い。
多少食にいやしいけれど、それもまあ可愛いのうちだし。
本館を抜けた先を左、街へ帰るのとは反対方向へ。
階段を降りるとギリシャの遺跡っぽい形の建物の前だ。
例によって敵が出てきた。
ただ出てきたのは普通のスケルトン、カサドールですらない奴が4体。
私が斧を構えるまでもなく、ラッキー君が突進。
『スケルトン4体を倒した』
私は全くタッチしていないから経験値はない。
「この辺は出る敵、スケルトンなんだね」
「魔物が強いのは本館、海の塔、病院跡くらいです。あとは例外的に地下牢にレイスが出るだけで。
ただ日が沈むとゴーストが主体になります。レイスも外で出るようになりますから、少しは注意が必要です」
なるほど。
「夜は強いボスが出るとか、そういうのは無い?」
「ボスは同じです。昼間と比べると若干強くなりますけれど、経験値は同じです」
戦闘狂でもない限りわざわざ夜に挑戦する意味はないと。
さて、此処が目的地の筈だ。
目的の薬草はどれだろう。
「聖臭花ってどんな花か、出来れば特徴とか教えて貰えると助かる。まだ覚えていない薬草だから」
カリーナちゃんに借りた本に採取部位や使い方は書いてあった。
しかしイラストでは今ひとつサイズ感とか雰囲気とかがつかめない。
なのでまだ自動採取出来るようにはなっていないのだ。
「花は完全に日が落ちた後に咲きます。ただ木そのものはわかりやすいです。この木です」
カリーナちゃんが手に取って教えてくれる。
細長いやや厚みがあってつやつやの葉がついた背の低い木だ。
「完全に日が落ちると小さな花がたくさん集まった、全体として正銅貨くらいの円形の花が枝の先に開きます。
ただ聖臭花は開いた花の花弁でないと薬効がありません。ですから完全に開ききるまで待ってから採取します。大体日没後30分くらいで完全に開きますから、そこを採取する形です」
なるほど。
よく見ると蕾らしいものが枝の先、葉が生えている中央に見える。
「ならそれまでは此処で警戒しながら待機かな」
「ええ」
教会跡の土台っぽい石に腰掛ける。
ラッキー君がいい子でお座りポーズになって主張するのは、休憩モードのお約束。
「さっき海の塔に向かう前に食べましたよね」
ラッキー君、ふっと視線をカリーナちゃんから外す。
聞こえていません、そう言っているかのように。
「ラッキーちゃん、それじゃおやつと引き換えにお願いです」
何でしょうか! 何でもします!
そんな感じでラッキー君、カリーナちゃんの直前まで接近。
なおお座り姿勢のままで、である。
なかなか怪しい動き方で笑えるのだけれど本犬は真剣だ、多分。
「太陽が完全に沈むとこの辺はゴーストが出やすくなります。勿論見つけたら私達も倒します。けれどラッキーちゃんの方が耳がいいし、きっと見つけるのも早いんじゃないかと思うんです」
わかっている、その通りだ、だから早くおやつちょうだい!
そんなラッキー君の前で更にカリーナちゃんは説明を続ける。
「だからラッキーちゃんもゴーストを見つけたら倒して貰えますか?」
わかった、わかった、ラッキー君、思い切り頷く。
やっぱり言葉が通じているようにしか思えない。
「ならおやつ、さっきはジャーキーだったから今回はチーズです」
大きいチーズを細長く切って生乾きくらいに乾燥したものだ。
ラッキー君は凄い勢いでバリバリと食べ、そしてカリーナちゃんの方を見る。
「今回はここまでですよ。それじゃお願いしますね」
仕方ないなあ、そんな表情でラッキー君は立ち上がった。
「今スケルトンを倒したけれど、日が暮れたらまた出る?」
「日がある間と沈んでいる間は別勘定らしいです」
なるほど。
なら私も一応警戒はしておこう。
ここからだと太陽は旧要塞の入口付近にある二階建ての建物に沈む形になる。
太陽の赤みがほぼ完全に建物の影に隠れた瞬間、風の音の他に聞き覚えのある音がした。
聴音検査の低い方に似た感じの音、ゴーストだ。
ラッキー君がダッシュする。
音がする方へ視線をやるのとほぼ同時にラッキー君が体当たりした。
白いもやのような影がかき消える。
他に音はしないか耳をすます。
ラッキー君がいるのと反対側で音がする気がした。
咄嗟に戦斧で突き攻撃を連射する。
『槍技:流星突』
まだいる気がする、そう思ったらカリーナちゃんが拳技を出していた。
『ゴースト3体を倒した。経験値25を獲得……』
それぞれ1体のゴーストを倒した。
だから経験値は25ずつという事だろう。
それにしても今回は……
「ゴーストは四方八方から出てくる形なんだ」
今まで他の魔物は大体同じ方向から出てきた。
だから対処は楽だったのだけれど。
「ええ、夜はこれが面倒なんです。だからあまり出歩きません。
あと聖臭花が咲き始めました。まだ採取には早いですけれど」
そう言えば先程は感じなかった香りがしていると気づいた。
カリーナちゃんに言われて先程の蕾を見てみる。
確かに白い、あじさいをぐっと小さくしたような花が咲き始めていた。
ただよく見ると花びらはあじさいより立体的だ。
そして独特の甘い香りがする。
「どれくらい採取して大丈夫?」
「咲いているものを全部採取しても大丈夫です。翌日朝には新たな蕾をつけ、夜にまた咲きますから」
こういった処は現実と比べるとご都合主義で便利だ。
さて、もう少し花を観察してみるか。
近づいて葉や茎とともに観察すると最近ご無沙汰だったメッセージが出る。
『聖臭花を覚えました。以降この花を判別する事が可能です。またこの草が3m以内に生えていて、かつ視野に入っている場合、採取をする事が出来ます』
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