91 / 139
第15章 ケルキラ旧要塞攻略⑴
第90話 私はそう感じた
しおりを挟む
そういえば今のメアリーさん、会話内容からすると職業なり学校なりがある一般人のプレイヤーという感じだ。
なら今はそういったプレイヤーが普通に来ることが出来る時間帯なのだろう。
時計を確認。
平日だけれど21時55分、一般の会社員や学生は家に帰ってのんびりしている時間だ。
このまま帰ってもかなり時間が余る。
そして現実の時間でもうすぐ夜10時。
それならこんな時間つぶし? はどうだろう。
「現実の時間で夜10時だし、カレンさんがログインしているか聞いてみようか?」
カリーナちゃんに提案してみた。
「そうですね。この時間ならカレンもログインしている可能性が高いですから。メッセンジャーで応答があるか確かめてみます」
2~3秒ほどしてカリーナちゃんが頷く。
「今日と明日はギルドにいるそうです」
「行ってみようか」
「そうですね。ただあのギルドもお店側は結構冒険者がいます。一応用心して裏側から別れて行きましょう」
その後時計塔を経由して何事もなく旧要塞入口まで戻り、そこからカリーナちゃんと別れ、街の南側経由で錬金術ギルドを目指す。
◇◇◇
今回は裏側から来たので、店側の怪しいポスターは見ていない。
ただ事務所側の方は相変わらずだ。
『錬金術ですわ』
『アーニ●、錬金術師なりたい』
『いいですか、落ち着いて聞いてください』
『それってさぁ! 錬金術…ってコト!?』
ポスターの内容が前回と変わっていたり錬金術と関係なかったりするけれど、きっと深い意味はない。
いつも通り無視して中へ。
「あらいらっしゃーい。待っていたわよぉ♡」
うん、カレンさんだ。
なんとなく言い方と気配でAIではなく本物だとわかる。
「失礼します。お久しぶりです」
私の感覚では本当に久しぶり。
もっとも現実にいたカレンさんの体感では1日経っていない筈だけれど。
「レベル上げの方も順調みたいね。ささ、座って座って」
いつものようにカウンターにお邪魔する。
私用とラッキー君用の水を貰って一息。
「ところでカリーナちゃんは? 一緒に来ると思ったんだけどぉ」
「用心のため別行動をしています。もうすぐ来ると思います」
「ああ、あのオブクラリス攻略と主神武器の関係ね」
あっさり何の件で用心しているか、言い当てられてしまった。
「ご存じでした?」
「もちろんよぉ~♪ これでも攻略関係の新情報は毎回チェックしているしねっ♡」
そこまで広がっているのか。
そう思うと微妙に絶望的な気分になる。
さっきまでは配信で少し状況が変わるかもしれないと思っていたのだけれども。
「検証組の皆さんも動き出したようね。この調子だとちょっと夜更かしすれば今回のログイン中にオブクラリスの新攻略法が確定するのを見られるかしらぁ。攻略を引退した私でもぞくぞくするわぁ♡」
あれっ、新攻略法が確定?
話題が思っていた方向性と違う。
「どういう事ですか?」
「オブクラリス、あの段階の中ボスにしては固すぎる。だから本当はきっともっと楽な攻略法があるはず。そういう疑問が前々から考察班の中ではあったのよぉ。
運営もそれを匂わしたり攻略者が増えそうな餌を用意したりなんて事をしていたしねっ♡」
そうなのか、そしてそこまで考えるものなのか。
その辺ゲームの常識が欠けている私には今ひとつわからない。
カレンさんの言葉は続いている。
「跳上でひっくり返せば早く倒せる。蹴上は満点賞で取れる本で覚えられる。ここまで手がかりがもらえたら確かめるべき事は山ほどあるわ。
例えば、
〇 ミヤちゃんと全く同じ方法で攻略を再現できるか
〇 槍術だけではなく剣術、格闘技、さらには魔法でも似たようなことが出来ないか
〇 本は満点賞以外でも手に入らないか
なんて感じでねっ。
実際冒険者ギルドでINT向上講習受ける人、爆増らしいじゃない。メアリーちゃんはあの本をゲットしたと動画で報告していたしぃ。
本の方も国立図書館でそういった本を読むことが出来そうなクエストが発見されたらしいしねっ。
だから此処の時間であと4~5日したらオブクラリス高速討伐なんてのもメジャーになるわよお、きっと。そうなるともう高速討伐ではなくってそれが普通の攻略になるんだけれどねっ♡」
なるほど。
「なら私達もそれほど長い事心配する必要は無いんですね」
「もちろんよぉ~♪」
カレンさんはいつもの調子でそう言って、そして続ける。
「そもそも掲示板で下らない事言ってくだ巻いているような馬鹿は、目立つけれど多数派ってわけじゃないわ。だからこそああやってくだ巻いているんだろうけれど。
馬鹿ほど目立つし声と主語が大きいから誤解されやすいけれどね。目立つから多数派という事はないし声が大きいから正しいとか多数派だいう事もない。自分達は一般代表ですなんて顔と態度をしているけれど。
まあ最近はその辺が一般の皆さんにもわかって貰えるようになって少しは楽になったわ。それでもああいう馬鹿、本当日本語が通じなくて腹立つわあ、なんてつい現実の愚痴がでちゃってごめんね」
いや、今のはきっとただの愚痴では無い。
私に対して言ってくれたんだ、多分。
確証は無いけれどそう感じた。
なら今はそういったプレイヤーが普通に来ることが出来る時間帯なのだろう。
時計を確認。
平日だけれど21時55分、一般の会社員や学生は家に帰ってのんびりしている時間だ。
このまま帰ってもかなり時間が余る。
そして現実の時間でもうすぐ夜10時。
それならこんな時間つぶし? はどうだろう。
「現実の時間で夜10時だし、カレンさんがログインしているか聞いてみようか?」
カリーナちゃんに提案してみた。
「そうですね。この時間ならカレンもログインしている可能性が高いですから。メッセンジャーで応答があるか確かめてみます」
2~3秒ほどしてカリーナちゃんが頷く。
「今日と明日はギルドにいるそうです」
「行ってみようか」
「そうですね。ただあのギルドもお店側は結構冒険者がいます。一応用心して裏側から別れて行きましょう」
その後時計塔を経由して何事もなく旧要塞入口まで戻り、そこからカリーナちゃんと別れ、街の南側経由で錬金術ギルドを目指す。
◇◇◇
今回は裏側から来たので、店側の怪しいポスターは見ていない。
ただ事務所側の方は相変わらずだ。
『錬金術ですわ』
『アーニ●、錬金術師なりたい』
『いいですか、落ち着いて聞いてください』
『それってさぁ! 錬金術…ってコト!?』
ポスターの内容が前回と変わっていたり錬金術と関係なかったりするけれど、きっと深い意味はない。
いつも通り無視して中へ。
「あらいらっしゃーい。待っていたわよぉ♡」
うん、カレンさんだ。
なんとなく言い方と気配でAIではなく本物だとわかる。
「失礼します。お久しぶりです」
私の感覚では本当に久しぶり。
もっとも現実にいたカレンさんの体感では1日経っていない筈だけれど。
「レベル上げの方も順調みたいね。ささ、座って座って」
いつものようにカウンターにお邪魔する。
私用とラッキー君用の水を貰って一息。
「ところでカリーナちゃんは? 一緒に来ると思ったんだけどぉ」
「用心のため別行動をしています。もうすぐ来ると思います」
「ああ、あのオブクラリス攻略と主神武器の関係ね」
あっさり何の件で用心しているか、言い当てられてしまった。
「ご存じでした?」
「もちろんよぉ~♪ これでも攻略関係の新情報は毎回チェックしているしねっ♡」
そこまで広がっているのか。
そう思うと微妙に絶望的な気分になる。
さっきまでは配信で少し状況が変わるかもしれないと思っていたのだけれども。
「検証組の皆さんも動き出したようね。この調子だとちょっと夜更かしすれば今回のログイン中にオブクラリスの新攻略法が確定するのを見られるかしらぁ。攻略を引退した私でもぞくぞくするわぁ♡」
あれっ、新攻略法が確定?
話題が思っていた方向性と違う。
「どういう事ですか?」
「オブクラリス、あの段階の中ボスにしては固すぎる。だから本当はきっともっと楽な攻略法があるはず。そういう疑問が前々から考察班の中ではあったのよぉ。
運営もそれを匂わしたり攻略者が増えそうな餌を用意したりなんて事をしていたしねっ♡」
そうなのか、そしてそこまで考えるものなのか。
その辺ゲームの常識が欠けている私には今ひとつわからない。
カレンさんの言葉は続いている。
「跳上でひっくり返せば早く倒せる。蹴上は満点賞で取れる本で覚えられる。ここまで手がかりがもらえたら確かめるべき事は山ほどあるわ。
例えば、
〇 ミヤちゃんと全く同じ方法で攻略を再現できるか
〇 槍術だけではなく剣術、格闘技、さらには魔法でも似たようなことが出来ないか
〇 本は満点賞以外でも手に入らないか
なんて感じでねっ。
実際冒険者ギルドでINT向上講習受ける人、爆増らしいじゃない。メアリーちゃんはあの本をゲットしたと動画で報告していたしぃ。
本の方も国立図書館でそういった本を読むことが出来そうなクエストが発見されたらしいしねっ。
だから此処の時間であと4~5日したらオブクラリス高速討伐なんてのもメジャーになるわよお、きっと。そうなるともう高速討伐ではなくってそれが普通の攻略になるんだけれどねっ♡」
なるほど。
「なら私達もそれほど長い事心配する必要は無いんですね」
「もちろんよぉ~♪」
カレンさんはいつもの調子でそう言って、そして続ける。
「そもそも掲示板で下らない事言ってくだ巻いているような馬鹿は、目立つけれど多数派ってわけじゃないわ。だからこそああやってくだ巻いているんだろうけれど。
馬鹿ほど目立つし声と主語が大きいから誤解されやすいけれどね。目立つから多数派という事はないし声が大きいから正しいとか多数派だいう事もない。自分達は一般代表ですなんて顔と態度をしているけれど。
まあ最近はその辺が一般の皆さんにもわかって貰えるようになって少しは楽になったわ。それでもああいう馬鹿、本当日本語が通じなくて腹立つわあ、なんてつい現実の愚痴がでちゃってごめんね」
いや、今のはきっとただの愚痴では無い。
私に対して言ってくれたんだ、多分。
確証は無いけれどそう感じた。
11
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~
山須ぶじん
SF
異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。
彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。
そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。
ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。
だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。
それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。
※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。
※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる