86 / 139
第15章 ケルキラ旧要塞攻略⑴
第85話 見えないものは何だろう
しおりを挟む
本館の地下1階は2階以上よりずっと広い。
階段、ロビーといった感じの広間、そして小部屋6室。
まず最初、階段を降りた直後。
コーッ、コーッ。
聴音検査の低い方に似た感じの音が近づいてきた。
ラッキー君がダッシュ。
白いもやのように見える人型、ゴースト2体に連続して体当たり。
大丈夫だろうか、とっさにパスポートを見て確認。HPは減っていない。
更に2体のゴーストを倒したところでラッキー君が戻ってきた。
「ラッキーちゃん、ゴーストは得意ですけれどスケルトンの上位種は嫌いなようですね」
カリーナちゃんが言うとおりだ。
奥に鎧を着装したスケルトン上位種が3体、こちらへ近づいてくる。
2体は上で倒したのと同じスケルトンナイト、そして1体は見慣れない真っ黒な鎧を着装していて、かつ首から上部分が無い。
「あの黒いのがデュラハン?」
「そうです。スケルトンナイトより強めです」
「わかった」
敵がスケルトン上位種なら攻撃方法は同じだ。
ただ数が多い&ちょい強めの敵という事で、念のため少し強めの技で相手をする。
『槍奥義:流星進撃3段!』
要は流星突の3連続版だ。
奥義として5段、つまり5連続まで出せるけれど、このくらいで充分だろう。
案の定あっさりと倒したメッセージが出る。
そして今回はもう一つおまけのメッセージも出た。
『ミヤ・アカワはレベルが上がった! HPが6、MP6……』
よし、レベル36だ。
レベル40まであと4つ。
「経験値が多いのかレベルが上がりやすく感じる」
「スケルトン系は本来は面倒な敵です。ですから経験値も結構高めになっています。ナイトやデュラハンあたりならレベル45位までは充分レベル上げに使えますから」
なるほど、効率がいいのは歓迎だ。
「さて、そろそろ16時です。今日はこの辺で切り上げませんか?」
「そうだね」
ラッキー君も賛成という感じなので階段を1階へ。
あとは来た道を戻るだけだ。
「帰りも道を変えて別れて帰った方がいい?」
「その方がいいと思います。掲示板にどうやって倒したかは書きましたし、攻略まとめサイトにも転載されました。
ただ反応はあまり良くないです。『こんなの無理だ』という見方が多くて、中には『こんな絶対出来ない事を書いているのは、この情報が嘘だからに違いない』なんて言っている人もいるくらいです」
「そんな絶対出来ない事ってあったっけ?」
「満点賞を取って本を手に入れるところです」
ああ、あれか。
確かに冷静に考えるとそうなのかもしれない。
高校時代真面目に勉強して、ついでに大学受験勉強なんてのをしていればそう難しくないだろう。
私はそう思うのだけれど、それなら共通テストの平均点はもっと上でないとおかしい筈だし。
「でもまあ、実際そうやって手に入れたんだから仕方ないよね。もしそれが出来ないなら諦めるか、あの本を手に入れるほかの方法を探すか」
「そうなんです。ほとんどの人はそう判断すると思います。ただ……見てみてもらった方が早いです。そちらに掲示板のアドレスを送ります」
その言葉とほぼ同時にメッセンジャーでhttpsではじまるアドレスが送られてきた。
どれどれ、ブラウザ窓を開いて見てみる。
うーむ、これは……酷い……
『満点賞なんて無理だろ! 運営は不公平だ!』
そんな文句を書いている奴はまだましな方。
『もしこれが本当なら、この本を誰もが読めるよう冒険者ギルドに寄付するべきだ』
何故私がそうしなければならないのかは不明だが、本人はそれが正義であると信じている模様。
『本なら読んだ後も残っているだろう。探し出して借りようぜ。皆で探せばすぐ見つかるだろう』
私が借さなければならない理由はどこにあるのだろう。
しかも探すなんて迷惑な事をされた上で。
「他の事を知らずにパイアキアン・オンラインにのめり込むだけ。だから常識を知らないんです」
「ううん、現実でも同じ。何処にだって思考が人間やめた方がいい奴っているから」
もちろんパイアキアン・オンラインの人間全員がこういった自己中という訳では無いだろう。
現実の人間が全て馬鹿で自己中で無いのと同じで。
それでも暗澹たる気分になるのは確かだ。
それに正直疑問がある。
「私達と同じ事をしても、出来るのは大亀を短時間で倒す事と、その結果神の武器が貰える事、これだけだよね。
何でそれだけの為に此処まで自己中な事を主張できるんだろ」
「それだけの為にじゃないんです。それしかないからなんです、きっと。
この世界しかなくて、この世界も攻略しか無い。本当は見えていないだけで、他にも色々ある筈なのに。
私も見えていない時期がありました。だからわかります」
見えていない、その言葉に何かが引っかかった。
カリーナちゃんが言ったのはいわゆる攻略組時代の事だろう。
しかしそれではない、私自身に何か思い当たる事があるような気がしたのだ。
ただ何にひっかかったのかはわからない。
何が見えていないのか、今は思いつかない。
でもまあいいか、後で考えれば。
今すぐどうこうという問題ではないし。
「わかった。それじゃ行きと同じように別れようか」
「そうですね。今度は私は新要塞の北側、港の方を通って帰ろうと思います」
「わかった。私は行きと同じで南側の住宅街経由で行くから」
階段、ロビーといった感じの広間、そして小部屋6室。
まず最初、階段を降りた直後。
コーッ、コーッ。
聴音検査の低い方に似た感じの音が近づいてきた。
ラッキー君がダッシュ。
白いもやのように見える人型、ゴースト2体に連続して体当たり。
大丈夫だろうか、とっさにパスポートを見て確認。HPは減っていない。
更に2体のゴーストを倒したところでラッキー君が戻ってきた。
「ラッキーちゃん、ゴーストは得意ですけれどスケルトンの上位種は嫌いなようですね」
カリーナちゃんが言うとおりだ。
奥に鎧を着装したスケルトン上位種が3体、こちらへ近づいてくる。
2体は上で倒したのと同じスケルトンナイト、そして1体は見慣れない真っ黒な鎧を着装していて、かつ首から上部分が無い。
「あの黒いのがデュラハン?」
「そうです。スケルトンナイトより強めです」
「わかった」
敵がスケルトン上位種なら攻撃方法は同じだ。
ただ数が多い&ちょい強めの敵という事で、念のため少し強めの技で相手をする。
『槍奥義:流星進撃3段!』
要は流星突の3連続版だ。
奥義として5段、つまり5連続まで出せるけれど、このくらいで充分だろう。
案の定あっさりと倒したメッセージが出る。
そして今回はもう一つおまけのメッセージも出た。
『ミヤ・アカワはレベルが上がった! HPが6、MP6……』
よし、レベル36だ。
レベル40まであと4つ。
「経験値が多いのかレベルが上がりやすく感じる」
「スケルトン系は本来は面倒な敵です。ですから経験値も結構高めになっています。ナイトやデュラハンあたりならレベル45位までは充分レベル上げに使えますから」
なるほど、効率がいいのは歓迎だ。
「さて、そろそろ16時です。今日はこの辺で切り上げませんか?」
「そうだね」
ラッキー君も賛成という感じなので階段を1階へ。
あとは来た道を戻るだけだ。
「帰りも道を変えて別れて帰った方がいい?」
「その方がいいと思います。掲示板にどうやって倒したかは書きましたし、攻略まとめサイトにも転載されました。
ただ反応はあまり良くないです。『こんなの無理だ』という見方が多くて、中には『こんな絶対出来ない事を書いているのは、この情報が嘘だからに違いない』なんて言っている人もいるくらいです」
「そんな絶対出来ない事ってあったっけ?」
「満点賞を取って本を手に入れるところです」
ああ、あれか。
確かに冷静に考えるとそうなのかもしれない。
高校時代真面目に勉強して、ついでに大学受験勉強なんてのをしていればそう難しくないだろう。
私はそう思うのだけれど、それなら共通テストの平均点はもっと上でないとおかしい筈だし。
「でもまあ、実際そうやって手に入れたんだから仕方ないよね。もしそれが出来ないなら諦めるか、あの本を手に入れるほかの方法を探すか」
「そうなんです。ほとんどの人はそう判断すると思います。ただ……見てみてもらった方が早いです。そちらに掲示板のアドレスを送ります」
その言葉とほぼ同時にメッセンジャーでhttpsではじまるアドレスが送られてきた。
どれどれ、ブラウザ窓を開いて見てみる。
うーむ、これは……酷い……
『満点賞なんて無理だろ! 運営は不公平だ!』
そんな文句を書いている奴はまだましな方。
『もしこれが本当なら、この本を誰もが読めるよう冒険者ギルドに寄付するべきだ』
何故私がそうしなければならないのかは不明だが、本人はそれが正義であると信じている模様。
『本なら読んだ後も残っているだろう。探し出して借りようぜ。皆で探せばすぐ見つかるだろう』
私が借さなければならない理由はどこにあるのだろう。
しかも探すなんて迷惑な事をされた上で。
「他の事を知らずにパイアキアン・オンラインにのめり込むだけ。だから常識を知らないんです」
「ううん、現実でも同じ。何処にだって思考が人間やめた方がいい奴っているから」
もちろんパイアキアン・オンラインの人間全員がこういった自己中という訳では無いだろう。
現実の人間が全て馬鹿で自己中で無いのと同じで。
それでも暗澹たる気分になるのは確かだ。
それに正直疑問がある。
「私達と同じ事をしても、出来るのは大亀を短時間で倒す事と、その結果神の武器が貰える事、これだけだよね。
何でそれだけの為に此処まで自己中な事を主張できるんだろ」
「それだけの為にじゃないんです。それしかないからなんです、きっと。
この世界しかなくて、この世界も攻略しか無い。本当は見えていないだけで、他にも色々ある筈なのに。
私も見えていない時期がありました。だからわかります」
見えていない、その言葉に何かが引っかかった。
カリーナちゃんが言ったのはいわゆる攻略組時代の事だろう。
しかしそれではない、私自身に何か思い当たる事があるような気がしたのだ。
ただ何にひっかかったのかはわからない。
何が見えていないのか、今は思いつかない。
でもまあいいか、後で考えれば。
今すぐどうこうという問題ではないし。
「わかった。それじゃ行きと同じように別れようか」
「そうですね。今度は私は新要塞の北側、港の方を通って帰ろうと思います」
「わかった。私は行きと同じで南側の住宅街経由で行くから」
15
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~
山須ぶじん
SF
異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。
彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。
そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。
ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。
だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。
それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。
※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。
※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる