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第15章 ケルキラ旧要塞攻略⑴
第85話 見えないものは何だろう
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本館の地下1階は2階以上よりずっと広い。
階段、ロビーといった感じの広間、そして小部屋6室。
まず最初、階段を降りた直後。
コーッ、コーッ。
聴音検査の低い方に似た感じの音が近づいてきた。
ラッキー君がダッシュ。
白いもやのように見える人型、ゴースト2体に連続して体当たり。
大丈夫だろうか、とっさにパスポートを見て確認。HPは減っていない。
更に2体のゴーストを倒したところでラッキー君が戻ってきた。
「ラッキーちゃん、ゴーストは得意ですけれどスケルトンの上位種は嫌いなようですね」
カリーナちゃんが言うとおりだ。
奥に鎧を着装したスケルトン上位種が3体、こちらへ近づいてくる。
2体は上で倒したのと同じスケルトンナイト、そして1体は見慣れない真っ黒な鎧を着装していて、かつ首から上部分が無い。
「あの黒いのがデュラハン?」
「そうです。スケルトンナイトより強めです」
「わかった」
敵がスケルトン上位種なら攻撃方法は同じだ。
ただ数が多い&ちょい強めの敵という事で、念のため少し強めの技で相手をする。
『槍奥義:流星進撃3段!』
要は流星突の3連続版だ。
奥義として5段、つまり5連続まで出せるけれど、このくらいで充分だろう。
案の定あっさりと倒したメッセージが出る。
そして今回はもう一つおまけのメッセージも出た。
『ミヤ・アカワはレベルが上がった! HPが6、MP6……』
よし、レベル36だ。
レベル40まであと4つ。
「経験値が多いのかレベルが上がりやすく感じる」
「スケルトン系は本来は面倒な敵です。ですから経験値も結構高めになっています。ナイトやデュラハンあたりならレベル45位までは充分レベル上げに使えますから」
なるほど、効率がいいのは歓迎だ。
「さて、そろそろ16時です。今日はこの辺で切り上げませんか?」
「そうだね」
ラッキー君も賛成という感じなので階段を1階へ。
あとは来た道を戻るだけだ。
「帰りも道を変えて別れて帰った方がいい?」
「その方がいいと思います。掲示板にどうやって倒したかは書きましたし、攻略まとめサイトにも転載されました。
ただ反応はあまり良くないです。『こんなの無理だ』という見方が多くて、中には『こんな絶対出来ない事を書いているのは、この情報が嘘だからに違いない』なんて言っている人もいるくらいです」
「そんな絶対出来ない事ってあったっけ?」
「満点賞を取って本を手に入れるところです」
ああ、あれか。
確かに冷静に考えるとそうなのかもしれない。
高校時代真面目に勉強して、ついでに大学受験勉強なんてのをしていればそう難しくないだろう。
私はそう思うのだけれど、それなら共通テストの平均点はもっと上でないとおかしい筈だし。
「でもまあ、実際そうやって手に入れたんだから仕方ないよね。もしそれが出来ないなら諦めるか、あの本を手に入れるほかの方法を探すか」
「そうなんです。ほとんどの人はそう判断すると思います。ただ……見てみてもらった方が早いです。そちらに掲示板のアドレスを送ります」
その言葉とほぼ同時にメッセンジャーでhttpsではじまるアドレスが送られてきた。
どれどれ、ブラウザ窓を開いて見てみる。
うーむ、これは……酷い……
『満点賞なんて無理だろ! 運営は不公平だ!』
そんな文句を書いている奴はまだましな方。
『もしこれが本当なら、この本を誰もが読めるよう冒険者ギルドに寄付するべきだ』
何故私がそうしなければならないのかは不明だが、本人はそれが正義であると信じている模様。
『本なら読んだ後も残っているだろう。探し出して借りようぜ。皆で探せばすぐ見つかるだろう』
私が借さなければならない理由はどこにあるのだろう。
しかも探すなんて迷惑な事をされた上で。
「他の事を知らずにパイアキアン・オンラインにのめり込むだけ。だから常識を知らないんです」
「ううん、現実でも同じ。何処にだって思考が人間やめた方がいい奴っているから」
もちろんパイアキアン・オンラインの人間全員がこういった自己中という訳では無いだろう。
現実の人間が全て馬鹿で自己中で無いのと同じで。
それでも暗澹たる気分になるのは確かだ。
それに正直疑問がある。
「私達と同じ事をしても、出来るのは大亀を短時間で倒す事と、その結果神の武器が貰える事、これだけだよね。
何でそれだけの為に此処まで自己中な事を主張できるんだろ」
「それだけの為にじゃないんです。それしかないからなんです、きっと。
この世界しかなくて、この世界も攻略しか無い。本当は見えていないだけで、他にも色々ある筈なのに。
私も見えていない時期がありました。だからわかります」
見えていない、その言葉に何かが引っかかった。
カリーナちゃんが言ったのはいわゆる攻略組時代の事だろう。
しかしそれではない、私自身に何か思い当たる事があるような気がしたのだ。
ただ何にひっかかったのかはわからない。
何が見えていないのか、今は思いつかない。
でもまあいいか、後で考えれば。
今すぐどうこうという問題ではないし。
「わかった。それじゃ行きと同じように別れようか」
「そうですね。今度は私は新要塞の北側、港の方を通って帰ろうと思います」
「わかった。私は行きと同じで南側の住宅街経由で行くから」
階段、ロビーといった感じの広間、そして小部屋6室。
まず最初、階段を降りた直後。
コーッ、コーッ。
聴音検査の低い方に似た感じの音が近づいてきた。
ラッキー君がダッシュ。
白いもやのように見える人型、ゴースト2体に連続して体当たり。
大丈夫だろうか、とっさにパスポートを見て確認。HPは減っていない。
更に2体のゴーストを倒したところでラッキー君が戻ってきた。
「ラッキーちゃん、ゴーストは得意ですけれどスケルトンの上位種は嫌いなようですね」
カリーナちゃんが言うとおりだ。
奥に鎧を着装したスケルトン上位種が3体、こちらへ近づいてくる。
2体は上で倒したのと同じスケルトンナイト、そして1体は見慣れない真っ黒な鎧を着装していて、かつ首から上部分が無い。
「あの黒いのがデュラハン?」
「そうです。スケルトンナイトより強めです」
「わかった」
敵がスケルトン上位種なら攻撃方法は同じだ。
ただ数が多い&ちょい強めの敵という事で、念のため少し強めの技で相手をする。
『槍奥義:流星進撃3段!』
要は流星突の3連続版だ。
奥義として5段、つまり5連続まで出せるけれど、このくらいで充分だろう。
案の定あっさりと倒したメッセージが出る。
そして今回はもう一つおまけのメッセージも出た。
『ミヤ・アカワはレベルが上がった! HPが6、MP6……』
よし、レベル36だ。
レベル40まであと4つ。
「経験値が多いのかレベルが上がりやすく感じる」
「スケルトン系は本来は面倒な敵です。ですから経験値も結構高めになっています。ナイトやデュラハンあたりならレベル45位までは充分レベル上げに使えますから」
なるほど、効率がいいのは歓迎だ。
「さて、そろそろ16時です。今日はこの辺で切り上げませんか?」
「そうだね」
ラッキー君も賛成という感じなので階段を1階へ。
あとは来た道を戻るだけだ。
「帰りも道を変えて別れて帰った方がいい?」
「その方がいいと思います。掲示板にどうやって倒したかは書きましたし、攻略まとめサイトにも転載されました。
ただ反応はあまり良くないです。『こんなの無理だ』という見方が多くて、中には『こんな絶対出来ない事を書いているのは、この情報が嘘だからに違いない』なんて言っている人もいるくらいです」
「そんな絶対出来ない事ってあったっけ?」
「満点賞を取って本を手に入れるところです」
ああ、あれか。
確かに冷静に考えるとそうなのかもしれない。
高校時代真面目に勉強して、ついでに大学受験勉強なんてのをしていればそう難しくないだろう。
私はそう思うのだけれど、それなら共通テストの平均点はもっと上でないとおかしい筈だし。
「でもまあ、実際そうやって手に入れたんだから仕方ないよね。もしそれが出来ないなら諦めるか、あの本を手に入れるほかの方法を探すか」
「そうなんです。ほとんどの人はそう判断すると思います。ただ……見てみてもらった方が早いです。そちらに掲示板のアドレスを送ります」
その言葉とほぼ同時にメッセンジャーでhttpsではじまるアドレスが送られてきた。
どれどれ、ブラウザ窓を開いて見てみる。
うーむ、これは……酷い……
『満点賞なんて無理だろ! 運営は不公平だ!』
そんな文句を書いている奴はまだましな方。
『もしこれが本当なら、この本を誰もが読めるよう冒険者ギルドに寄付するべきだ』
何故私がそうしなければならないのかは不明だが、本人はそれが正義であると信じている模様。
『本なら読んだ後も残っているだろう。探し出して借りようぜ。皆で探せばすぐ見つかるだろう』
私が借さなければならない理由はどこにあるのだろう。
しかも探すなんて迷惑な事をされた上で。
「他の事を知らずにパイアキアン・オンラインにのめり込むだけ。だから常識を知らないんです」
「ううん、現実でも同じ。何処にだって思考が人間やめた方がいい奴っているから」
もちろんパイアキアン・オンラインの人間全員がこういった自己中という訳では無いだろう。
現実の人間が全て馬鹿で自己中で無いのと同じで。
それでも暗澹たる気分になるのは確かだ。
それに正直疑問がある。
「私達と同じ事をしても、出来るのは大亀を短時間で倒す事と、その結果神の武器が貰える事、これだけだよね。
何でそれだけの為に此処まで自己中な事を主張できるんだろ」
「それだけの為にじゃないんです。それしかないからなんです、きっと。
この世界しかなくて、この世界も攻略しか無い。本当は見えていないだけで、他にも色々ある筈なのに。
私も見えていない時期がありました。だからわかります」
見えていない、その言葉に何かが引っかかった。
カリーナちゃんが言ったのはいわゆる攻略組時代の事だろう。
しかしそれではない、私自身に何か思い当たる事があるような気がしたのだ。
ただ何にひっかかったのかはわからない。
何が見えていないのか、今は思いつかない。
でもまあいいか、後で考えれば。
今すぐどうこうという問題ではないし。
「わかった。それじゃ行きと同じように別れようか」
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