フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~

於田縫紀

文字の大きさ
上 下
79 / 139
第13章 コリション干潟攻略中⑵

第78話 思わぬ賞品

しおりを挟む
 建物内へ入ると同時にラッキー君がダッシュした。
 前方の薄もやを引っ掻いたり、何かに体当たりをしている。
 あれはゴーストだ、そう気がついた時には既に戦いは終わっていた。

アンデット・死霊系魔物忌避剤エラービのおかげかな」

「それだけではない気がします。ラッキーちゃんのステータスを確認してみて貰えますか」

 どれどれ、パスポートを出して見てみる。
 なるほど、私はカリーナちゃんが何を言いたいのか理解した。

「対魔スキルがついている。いつの間についたんだろう」

 オブクラリス戦の後にステータスを確認した時には、まだこの記載は無かった気がする。

アンデット・死霊系魔物忌避剤エラービを何度も使った結果かもしれません。後で検索してみます」

 念のためにラッキー君のHPたいりょくを確認。
 最高値のまま減っていない。
 つまりラッキー君にとってゴーストは五線蛇やスライムと同じように雑魚なのだろう。

 このままラッキー君、私より強くなってしまうのだろうか。
 それでもいいかという気がする。
 ラッキー君が強いと便利だし安心だから。

 次の部屋へ。
 こちらは窓がある為そこそこ明るい。
 ゴーストもいないようだ。
 什器類も朽ちてしまったのか残っていない。

「この先の階段で下へ降りてみます。下に無ければ上へ、それでもなければ隣の建物という感じで回っていきます」

「しらみつぶし方式なんだ」

「ええ。何処になるかはわかりませんから」

 まあ問題はないだろう。
 オブクラリスは倒したし、ゴーストはラッキー君が倒してくれるようだし、スケルトン類は倒し方がわかっているし。

 ◇◇◇

 スケルトンソルジャーやスケルトンイエーガーは私が倒して、それ以外は私が戦う前にラッキー君が倒して。
 一通り敵を倒したら部屋を見て回る。
 什器類はやはり残っていない。
 部屋と、壁や天井等から落ちた石の破片があるだけだ。

 左側の建物を探し終え、右側の建物も同じように探して。
 何もなかったので建物の間の石段を上へ。

 階段を上がっていくと上の神殿は細長い長方形で、3つの高さの床があるというのがわかった。

 階段の見えていた部分を登り切る。
 登り切った場所が神殿の部屋の一番手前、3段のうち一晩低い床部分。
 ここは奥行き20m、幅10mくらいの広さで、床と天井、天井を支えている柱の他には何もない。

 その奥は床が50cmくらい高くなっている。
 この高さ、仮に中段部分と呼ぶ部分は幅10m、奥行き10mくらいで、やはり屋根と柱しか見えない。

 一番奥は更に50m位床が高くなっている。
 ここだけ左右に壁がある。
 この上段部分の奥行きは二番目の床の半分くらいだから5m程度か。

 その上段中央に台らしきものがあるのが見えた。
 私の目線より上に台の上面があるので何が上にあるか、はたまた何も無いかはわからない。
 台の大きさはベッドくらいに見える。
 思わず生け贄用なんて連想をしてしまった。
  
「えっ!?」

 カリーナちゃんが何か驚いたような声をあげる。

「どうしたの?」

「あの台、前に来た時は無かったと思います」

「あの生け贄用の台みたいな奴?」

「そうです。ここはそういったものは一切無かった筈です。

 そうなのか。
 ただ見た目にはこの神殿の床や柱と同じような石製で、同じ時代のものというように見える。

「新しく追加されたのか、それとも何かの条件で出現するものなのかはわかりません。何か今までとは違う事が起きるかもしれません。何もないとは思いますけれど、念のため注意して行こうと思います」

 確かに注意して行った方がいいだろうと思う。
 私だって生け贄用なんて不吉な想像をした位だし。

「わかった」

 ラッキー君も何かを感じるのだろうか。
 こちらが指示するまでもなく真横について一緒に歩く。

 風景の揺らぎも魔物による音も感じない。
 魔物にあわないまま中くらいの床の手前へ。

「念のため、上に行く前に確認してみます」

 カリーナちゃんはアイテムボックスから投槍を取り出し、槍の先で中くらいの床部分を軽くたたいてみる。
 反応はないようだ。

「それでは行きましょう」

 私とカリーナちゃん、少し遅れてラッキー君が中段の床に上る。

「何もないみたいだね」

「ええ、此処では何も起こらないようです。でもあの台の上、何か置いてあります」

 50cm程度視点が上がったので、上段にある台の上面が見えるようになった。
 置いてあるのは剣や籠手、槍、弓、杖のようだ。

「何だろう、あの武器」

「少し待って下さい……あ、ありました。大丈夫なようです」

 カリーナちゃん、きっとネットを検索したのだろう。

「この遺跡エリアに入った後、一定時間内にオブクラリスを倒すと、神々の武器がアイテムとして出現する様です」

 なんと。

「罠とかそういうんじゃない訳か。良かった」

 どうも生け贄用の台なんて連想をしてしまった結果、不吉な想像ばかりしていたのだ。

「ええ。武器は1人1つ限定で、2つ取ろうとすると消えるとあります。従魔は武器を使えないので私とミヤさん、あわせて2つだけ取れるようです」

 武器か。

「剣と槍どちらがいいだろう。性能的におすすめってある?」

「出てきた情報は運営会社のSNSで出ていたようです。内容はSNSに書かれていた文章2つだけ。
『遺跡に入って出来る限り早くオブクラリスを倒そう! 神々の武器が手に入るかもしれないぞ!』
『取れる武器は1人1つまで。欲張ると無くなってしまうから注意!』
 以上です。そして実際の取得報告はまだ無いようです。だから性能はわかりません」

「なら私は槍がいいか。使い慣れているし、技も結構覚えたし」

「そうですね」

 中段部分から奥の上段部分へ。
 ここも一応カリーナちゃんが槍の先端で大丈夫か確かめていた。
 怪しい場所へ入る時はこうやって調べるのがお約束のようだ。

 台は遠くから見たとおり石造りで、形はただの直方体。
 各面は磨かれていてつやつや状態だ。
 上に剣、槍、弓、籠手、杖が1つずつ置いてあり、更に文字が彫ってある。

『宵闇神の使役せし魔物オブクラリスを下した者に対する主神の恩寵』

「カリーナちゃんの情報の通りだ」

「そのようです。それでは取りましょう」

「だね」

 私は槍を、カリーナちゃんは籠手を手に取る。
 いつもの文字情報が流れてきた。
 
『主神の神槍:天空神が恩寵として下された槍。現時点でパイアキアン・オンライン世界に18本ほど存在。
 光・風属性。装備でRESていこう、抵抗力VITせいめいAGIすばやさ上昇。対魔、対闇効果付』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~

山須ぶじん
SF
 異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。  彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。  そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。  ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。  だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。  それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。 ※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。 ※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...