69 / 139
第12章 コリション干潟攻略中⑴
第68話 チーズケーキの時間
しおりを挟む
干潟と違い木道は歩きやすい。
ただ所々に腰くらいの高さの草がもわっと生えていて、そこに何かいそうな感じだ。
何か飛び出てきても対処できるよう、周囲に神経を張り巡らせてゆっくり歩く。
右側、少し大きな草の横を通過しようとした時だ。
ガサッ、一瞬音がした。
とっさにグレイブの刃をそちらへと向ける。
茶色く細長い何かが飛んできた。
グレイブの刃で払うように切断。
五線蛇が頭と胴が切られた状態で私の靴にぶつかった。
私の身長近い長さがある胴部分が少しうねうねした後動きを止める。
『五線ヘビを倒した。経験値65を獲得。五線ヘビの死体を入手可能です。収納しますか?』
はいを選択。
姿が消えたことにほっとする。
ヘビは苦手だ、見た目だけで何か恐怖を覚える。
「今のって倒さないと噛みつかれるの?」
「その靴とズボンなら噛みつこうとしても牙が通りません。ですので飛びついてきてから倒しても大丈夫です。
ただ近くだと巻き付いてくることがあるので、それまでには倒した方がいいです。巻き付かれると顔や手に噛みつかれることがありますから」
うわっ、そんなのされたら精神衛生上最悪だ。
やっぱり出た瞬間に倒すことにしよう。
そう私は決意した。
「あと怪しそうな草には、事前に軽く遠距離攻撃を当てておくのもありです。潜んでいた敵がいる場合出てきます」
それを早く言って欲しかった。
なら遠慮なく。
この先10mくらいの場所にある草むらめがけてグレイブを軽く早く突く動作をする。
『槍技!散弾突き・弱!』
ガサガサガサ、草むらが揺れ、ちぎれた葉が舞う。
そして茶色い長いのがにょろにょろ、いっぱい出てきた。
うあああっ!
『槍技!流星突!』
『五線ヘビ5匹を倒した。経験値325を獲得。五線ヘビの死体を入手可能です。収納しますか?』
何というかこの場所、心臓に悪い。
あと疑問がちょっとある。
「ヘビの死骸ってアイテムになっているけれど、何かに使えるの?」
「食べるようです。干したり佃煮のようにしたりして。コリシアの名物料理だそうです。
あと皮も細工に使えるらしいです」
食べる!?
何というか、ちょっとご遠慮したいというか……
でも一応、カリーナちゃんに聞いておこう。
「カリーナちゃんも料理する?」
「私はいいです」
「良かった」
私もちょっと、というか思い切り遠慮したい。
さて、次の草むらに近づいた。
大丈夫、この距離ならさっさと倒せば大丈夫。
そう自分に言い聞かせ、そしてグレイブで突きまくる。
『槍技!流星突!』
◇◇◇
やっと木道が終わった。
時間的には1時間ちょい。でも正直かなり精神的に削られた。
「ちょっと小屋で休んでいっていい? 何か精神的に疲れた」
「そうですね。少し早いですけれどお昼にしましょうか」
疲れていない奴もいる。湿原で木道を通らず、泥だの草地だのを踏破してきた癖に元気いっぱいの奴が。
泥だらけなので清浄魔法をかけ、ついでに私たちもきれいにしてから小屋へ。
中を見て、はあっとため息が出た。
とりあえず清浄魔法をかけて、中に入らず、魔法で空きっぱなしの窓から完全に空気を入れ換え、それからやっと中へ。
「ここに泊まらないで正解だったようですね」
「だね。ご一緒したくないようなのがいた感じ」
そう、明らかにここに誰か泊まった痕跡があった。
それもあまり行儀が良くない連中が。
入口付近は泥だらけ。
中にも紙だの木屑だの燃えかすだのが散らばっている。
流しも食材のカスっぽいのが散らばってこびりついていた。
「今日もカリーナの家を借りていい?」
「もちろんです」
清浄魔法1発で片付くのに、そう思うと本当になんだかなと思う。
でもまあ、会わなかった幸運を今は喜ぶとしよう。
なおそういったことを一切考えない奴がカリーナちゃんの前できちっとお座りしている。
おやつの時間です、下さい!
そう主張しているようだ。
「ラッキーちゃんもこんな感じですし、お昼にしましょう」
「ありがとう」
とりあえず一休みだ。
精神的にダメージ受けていた後、ダメ押しされたのだ。
少しカリーナちゃん作のおいしいもので精神を休ませてやらないと。
「ところでミヤさん、前に言っていましたよね。お昼は甘いものだけでも大丈夫だって」
「うん、お菓子だけでも量さえあれば大丈夫」
何だろう。てっきり泥魚フライのサンドイッチあたりが出てくると思っていたのだけれど。
「実はこのゲーム風ではなく、現実で作られているレシピを元に作ってみたものがあるんです。おやつには重いので今までださなかったんですけれど。
魔法を使うとオーブンの時間をかなり短縮できて楽です」
出てきたのはチーズケーキ、それもホールだ。
さらに言うと上がちょい焦げ気味のバスク風とかいうタイプ。
作り方が普通のチーズケーキとどう違うのか、私にはわからないけれど。
「美味しそう」
横でラッキー君が同意見だ早くよこせと訴えている。
3分の1に切ってそれぞれの皿へ。
ドリンクの牛乳も3人分セット。
「どうぞ」
ラッキー君が凄い勢いで食いつくのを見ながらいただく。
うん、何か久しぶりに日本と同じようなスイーツを食べた気がする。
「美味しい。こういうのもこっちで作れるんだね」
「ええ。元は魔法を使わないレシピなので少し考えましたけれど。任意の温度に一気にあげたり冷やしたりできる分、こっちの方が簡単にできるみたいです」
早くも食べ終わった奴が私やカリーナちゃんにわけてくれと訴えている。
もちろんやらない。
そんなもったいない事、私には無理だ。
ただ所々に腰くらいの高さの草がもわっと生えていて、そこに何かいそうな感じだ。
何か飛び出てきても対処できるよう、周囲に神経を張り巡らせてゆっくり歩く。
右側、少し大きな草の横を通過しようとした時だ。
ガサッ、一瞬音がした。
とっさにグレイブの刃をそちらへと向ける。
茶色く細長い何かが飛んできた。
グレイブの刃で払うように切断。
五線蛇が頭と胴が切られた状態で私の靴にぶつかった。
私の身長近い長さがある胴部分が少しうねうねした後動きを止める。
『五線ヘビを倒した。経験値65を獲得。五線ヘビの死体を入手可能です。収納しますか?』
はいを選択。
姿が消えたことにほっとする。
ヘビは苦手だ、見た目だけで何か恐怖を覚える。
「今のって倒さないと噛みつかれるの?」
「その靴とズボンなら噛みつこうとしても牙が通りません。ですので飛びついてきてから倒しても大丈夫です。
ただ近くだと巻き付いてくることがあるので、それまでには倒した方がいいです。巻き付かれると顔や手に噛みつかれることがありますから」
うわっ、そんなのされたら精神衛生上最悪だ。
やっぱり出た瞬間に倒すことにしよう。
そう私は決意した。
「あと怪しそうな草には、事前に軽く遠距離攻撃を当てておくのもありです。潜んでいた敵がいる場合出てきます」
それを早く言って欲しかった。
なら遠慮なく。
この先10mくらいの場所にある草むらめがけてグレイブを軽く早く突く動作をする。
『槍技!散弾突き・弱!』
ガサガサガサ、草むらが揺れ、ちぎれた葉が舞う。
そして茶色い長いのがにょろにょろ、いっぱい出てきた。
うあああっ!
『槍技!流星突!』
『五線ヘビ5匹を倒した。経験値325を獲得。五線ヘビの死体を入手可能です。収納しますか?』
何というかこの場所、心臓に悪い。
あと疑問がちょっとある。
「ヘビの死骸ってアイテムになっているけれど、何かに使えるの?」
「食べるようです。干したり佃煮のようにしたりして。コリシアの名物料理だそうです。
あと皮も細工に使えるらしいです」
食べる!?
何というか、ちょっとご遠慮したいというか……
でも一応、カリーナちゃんに聞いておこう。
「カリーナちゃんも料理する?」
「私はいいです」
「良かった」
私もちょっと、というか思い切り遠慮したい。
さて、次の草むらに近づいた。
大丈夫、この距離ならさっさと倒せば大丈夫。
そう自分に言い聞かせ、そしてグレイブで突きまくる。
『槍技!流星突!』
◇◇◇
やっと木道が終わった。
時間的には1時間ちょい。でも正直かなり精神的に削られた。
「ちょっと小屋で休んでいっていい? 何か精神的に疲れた」
「そうですね。少し早いですけれどお昼にしましょうか」
疲れていない奴もいる。湿原で木道を通らず、泥だの草地だのを踏破してきた癖に元気いっぱいの奴が。
泥だらけなので清浄魔法をかけ、ついでに私たちもきれいにしてから小屋へ。
中を見て、はあっとため息が出た。
とりあえず清浄魔法をかけて、中に入らず、魔法で空きっぱなしの窓から完全に空気を入れ換え、それからやっと中へ。
「ここに泊まらないで正解だったようですね」
「だね。ご一緒したくないようなのがいた感じ」
そう、明らかにここに誰か泊まった痕跡があった。
それもあまり行儀が良くない連中が。
入口付近は泥だらけ。
中にも紙だの木屑だの燃えかすだのが散らばっている。
流しも食材のカスっぽいのが散らばってこびりついていた。
「今日もカリーナの家を借りていい?」
「もちろんです」
清浄魔法1発で片付くのに、そう思うと本当になんだかなと思う。
でもまあ、会わなかった幸運を今は喜ぶとしよう。
なおそういったことを一切考えない奴がカリーナちゃんの前できちっとお座りしている。
おやつの時間です、下さい!
そう主張しているようだ。
「ラッキーちゃんもこんな感じですし、お昼にしましょう」
「ありがとう」
とりあえず一休みだ。
精神的にダメージ受けていた後、ダメ押しされたのだ。
少しカリーナちゃん作のおいしいもので精神を休ませてやらないと。
「ところでミヤさん、前に言っていましたよね。お昼は甘いものだけでも大丈夫だって」
「うん、お菓子だけでも量さえあれば大丈夫」
何だろう。てっきり泥魚フライのサンドイッチあたりが出てくると思っていたのだけれど。
「実はこのゲーム風ではなく、現実で作られているレシピを元に作ってみたものがあるんです。おやつには重いので今までださなかったんですけれど。
魔法を使うとオーブンの時間をかなり短縮できて楽です」
出てきたのはチーズケーキ、それもホールだ。
さらに言うと上がちょい焦げ気味のバスク風とかいうタイプ。
作り方が普通のチーズケーキとどう違うのか、私にはわからないけれど。
「美味しそう」
横でラッキー君が同意見だ早くよこせと訴えている。
3分の1に切ってそれぞれの皿へ。
ドリンクの牛乳も3人分セット。
「どうぞ」
ラッキー君が凄い勢いで食いつくのを見ながらいただく。
うん、何か久しぶりに日本と同じようなスイーツを食べた気がする。
「美味しい。こういうのもこっちで作れるんだね」
「ええ。元は魔法を使わないレシピなので少し考えましたけれど。任意の温度に一気にあげたり冷やしたりできる分、こっちの方が簡単にできるみたいです」
早くも食べ終わった奴が私やカリーナちゃんにわけてくれと訴えている。
もちろんやらない。
そんなもったいない事、私には無理だ。
15
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~
山須ぶじん
SF
異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。
彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。
そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。
ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。
だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。
それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。
※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。
※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる