フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~

於田縫紀

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第12章 コリション干潟攻略中⑴

第67話 今夜もこっちへ戻ってこよう

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「ありがとう。泥魚尽くし、どれも美味しかった」 

「良かったです。でもまだ半分も使っていないので今後もちょくちょく出そうと思います。あと今出した他に、肉の代わりに泥魚のフライを入れたギロスとか熱を加えてそのままでも食べられる状態のつみれっぽいのとかもありますから」

「それも美味しそう」

 話を聞いてちょうだいの姿勢をする犬がいるのはいつも通り。
 肉とか泥魚ほぐし身とか食べたばかりの筈なのに。

 さて、日中さんざん動き回って、その上夕食が美味しすぎて食べ過ぎくらいまで食べてしまった。
 すると当然、その結果として……

「何か眠くなってきた。食べた後すぐに寝ると太りそうだけれど」

「食生活による体型変化は実装されていないと思います。だからきっと大丈夫です。
 ベッドがないので床にマットを敷いて、その上に寝袋を置く形ですけれどいいですか?」

「充分。それでもあの小屋や微妙な宿屋よりずっと安心出来るし」

 カリーナちゃんが言うようにマットを敷いて、その上に寝袋を置く形で就寝準備。
 なおラッキー君用の場所は私とカリーナちゃんの間。
 床ではかわいそうなのでカリーナちゃんがどこからか小さい敷物を持ってきて置いた。
 2人と1匹で横になる。

「明日はコリシアの冒険者ギルドや役場分室で薬草や魔石を換金してから干潟へ行きませんか? 今のままではアイテムボックスの残りが少なめですから」

 カリーナちゃんの提案、確かにその通りだと思う。
 ただ不安というか疑問があるので聞いてみた。

治療薬ポーション、業販用の3ℓ大瓶に入れているけれど錬金術師ギルドじゃなくて大丈夫?」

「冒険者ギルドで買い取ってくれます。ただコリシアの冒険者ギルド、開くのが朝8時半なんです。ですから干潟にい行くのが少し遅くなってしまいますけれど」

「それくらいなら問題無いよね。なら朝8時起床でいい?」

「それでいいと思います」

 そのあたりでかなり眠くなってきた。
 もともと眠いから就寝準備をしたのだけれど。

「それじゃ眠いから寝るね。おやすみなさい」

「おやすみなさい。今日は楽しかったです。今も自分の家なのにいつもと違う感じで」

 私もそう感じる。

「私も楽しかった。それにこの家に泊まれたのも良かったし。お風呂には入れるし、明日の狩り場まで1時間かからないし。
 カリーナちゃんに作って貰った泥魚料理もいつもと違う感じで美味しかったし」

「確かに泥魚、おいしかったですね」

 そう私も楽しかった。
 昼の不愉快な通知が気にならなくなった位に。
 あ、かなり眠くなってきた。
 そろそろ限界…… 

◇◇◇

 翌朝は予定通りゆっくりだらだら起床。
 カリーナちゃんがアイテムボックスから出してくれた朝食を食べ、ギルドと役所経由で干潟へ。

 数回戦闘をして、10時少し前には昨日出た小屋に到着。
 小休止して一旦お茶タイムにする。

「私達の後この小屋を使った形跡はないけれど、それでもカリーナちゃんの家にお世話になった方が安心だし落ち着ける。ここから先がどれくらいかかるかにもよるけれど」

「湿原はクリアした後ならせいぜい5分程度です。
 雑木林と古代遺跡は毎日新しい魔物が出てきます。ですから一度攻略した後も手間は変わりません。
 ただ雑木林を抜ける最短ルートは1km程度なので、ある程度敵に慣れたら半時間かからずに通過できると思います」

 という事なら。

「その気になれば遺跡だってカリーナの家から通える訳か」

「ええ。それに雑木林を抜けた場所、休憩小屋の近くに帰り方向への短絡路があります。帰り方向への一方通行ですけれど、これを使えば10分程度でコリシアの集落近くに戻ることが出来ます」

「ならそこまで行けば、帰りは簡単なんだ」

「そうです。勿論コリション干潟クエストをクリアするまでは、ですけれど。オブクラリスを倒すか、『魔物や魔獣はほぼ討伐された』メッセージが出るとクエストクリアになります。その後干潟から出ると、また依頼を受けるまではコリション干潟に入れなくなります」

 なるほど。

「でもまあクリアしてしまえば、此処でレベル稼ぎをする必要もない訳だよね」

「ええ。ラッキーちゃんは順調にレベルアップしていますし、ミヤさんはこの後の雑木林や遺跡でレベルを上げられると思いますから。
 料理用に泥魚をもっと獲っておきたかったかなというのはありますけれど」

「今朝のピタパンサンドも昨日の夕食も美味しかったし。いつもありがとう」

 一休みした後小屋を後にして次のステージの湿原へ。
 沼というか泥というか、最初のステージである干潟と似たような感じだ。
 違うのは草が所々に生えている事と、湿原の中央に木道が通っている事。

「あの木道を歩いて出てきた敵を攻撃すればいいんだよね」

「そうです。出てくるのはスライム、黒色魔カメ、五線ヘビだけです。ただ五線ヘビは毒がありますし、5匹以上出て飛びかかってくる場合があるのでそれだけ注意して下さい。今は防護服を着ていますからいきなり噛まれる事はないと思いますけれど」

 毒ヘビが5匹以上か。
 何と言うか精神衛生的によろしくない。
 それは別として心配な事がある。

「ならラッキーは前に出さない方がいい?」

「ラッキーちゃんの速度なら問題無いです。それにラッキーちゃん、毒耐性を持っていますから万が一噛まれても大丈夫な筈です」

 毒耐性なんて持っていたっけ、そう思いつつ私はパスポートで確認。
 カリーナちゃんの言う通り毒耐性と書いてあった。
 飼い主も知らなかったのに何故知っているのだろう。

「元々魔犬って毒耐性を持っているものなの?」

「野生である程度の大きさがある魔獣は大抵毒耐性を持っているんです。餌にしている小生物や小さい魔獣、魔物は毒持ちがそこそこ多いですから」

 なら野生の魔犬だったラッキー君も毒耐性をもっていて当然という訳か。

「ならラッキー、先に行っていいよ」

 ラッキー君はいつも通り私の顔を見て確認した後、だーっと走って行った。
 さて、と言うことでこっちもグレイブを出して両手で持って、ゆっくり歩き始める。
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