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第9章 レベルアップの為の準備(1)
第55話 カリーナちゃんの若さ?
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冒険者ギルドは何と言うかゲームっぽいと感じた。
と言ってもこの世界らしい服装だし、造りも魔物や魔獣討伐の褒賞金を貰う役場と似た感じ。
ゲームっぽいと感じさせるのはここを訪れている冒険者のせいだ。
こういう職業にありそうなむさいおっさんはほとんどいない。
毎日鏡の前で1時間くらい化粧とヘアスタイルを頑張っていそうな若い男女が過半数。
まあ私達も中学生エルフと小学生獣人。
服装だけはファンタジーっぽい格好をしているけれど、冒険者らしいとはお世辞にも言えない外見だ。
だから文句は言えないし言えた義理もないけれど。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」
入ってすぐ、横の窓口カウンターにいるお姉さんからそう声をかけられた。
「新規冒険者登録と従魔登録。あと技習得の相談を御願いします」
カリーナちゃんは慣れた感じでさっと告げた。
「わかりました。総合相談窓口3番でご案内します。この札を持ってお待ち下さい」
この辺りは役場と同じだ。
さて、此処冒険者ギルドは結構広いし人も多い。
また変な連中が勧誘と称して絡んでこないか。
警戒しつつカリーナちゃんについて歩く。
ラッキー君、いつもは私とカリーナちゃんの間にいるのに、今はカリーナちゃんを私と挟む形で歩いている。
ラッキー君も私が警戒している事がわかるのだろうか。
カウンターと待合用の椅子が並んだ細長い場所を一番奥まで。
総合相談窓口と書かれた辺りは入口付近と比べやや人が少ない。
それでも10人程がそこここの椅子で待っている。
空いていた3人掛けの背もたれ無し椅子にカリーナちゃんは腰掛けた。
「この様子ですと10分くらい待ちますね」
確かにカリーナちゃんの言う通りだろうと感じる。
「冒険者ギルドっていつもこれくらい混んでいるの?」
「朝一番はずっと凄いです。依頼掲示部分に人が殺到しますから」
そんなものなのだろうか。
「依頼を受ける方が魔物討伐より効率がいいの?」
「人によります。STRやATK等の戦闘系能力が高くない場合は戦闘以外の依頼を受けてレベルを上げるのが普通です。
あとはクエストの発生条件になっている依頼も結構あります。Webに書いてあるような攻略をする人は毎朝そういう依頼が出ていないか探したりするんです」
なるほど、私がお世話にならなかったのは脳筋的能力があって、かつ攻略に興味が無かったからなのか。
自分が出した結論に思わず納得してしまったところで、ラッキー君がふっと動いた。
カリーナちゃんの横でお座りしていたのだが、立ち上がっていつでも動ける警戒姿勢になる。
いかにもゲーム的冒険者っぽい若者が近づいてきた。
「ねえそこの2人、簡単に強くなる方法に興味はない?」
何かマルチとか詐欺商法的な呼びかけだなと感じる。
でも前に会った2人よりはましかもしれない。
「すみません。興味ありませんから」
「そんな事を言わないでさ。これでも現在最先端のラコニアまで到達したパーティなんだぜ、うちは」
「攻略に特に興味はないので」
「そんな事言わないでさ、話だけでもどう。あとそっちのお姉さんはどう? こんな所で依頼をこなすよりよっぽど稼げるし……」
こういう勧誘はしつこいのが標準なのだろうか。
しつこい奴だからこういう場所でも勧誘をするのだろうか。
いずれにせよ面倒だ。
ぶった切らせて貰おう。
「興味はありませんし関わらないで下さい。これをもって第一回通告とします。32条はわかりますよね」
勧誘の途中でばっさり切らせて貰う。
さて、この前の連中と同じくらい馬鹿だろうか、こいつは。
「ちぇっ」
それだけほざいて彼は離れていった。
うむ、この前の連中より少しはましなようだ。
「今回はまだましだったね。それでラコニアって何処?」
「現代の地理的に言うとギリシャ本土の南端、世界史で言うとスパルタがあったあたりです。ついでに言うと最先端という程では無いです。ラコニアのイベントはレベル55あればクリア出来ますから」
ラコニア、カリーナちゃんにとってはその程度の存在だった模様。
「その辺りも把握しているんだ」
「毎晩状況を掲示板で確認しています。特に攻略するつもりはないのですけれど。癖みたいなものです。
今の最先端はクレーテー島の古代遺跡か、デロス島のキントス山ヒュパトス域ですね。攻略レベルは70超らしいです」
カリーナちゃん、まだ最先端の攻略に未練があるのだろうか。
今でも毎晩確認しているという事なら。
そんな事を思った時。
「あ、別に最先端の攻略に興味とか未練がある訳じゃないんです」
カリーナちゃんからそんな返答がきた。
私はまだ何も言っていないのに。
それだけ私の表情は読みやすいのだろうか。
私本人では無く中学生エルフの分身なのだけれど、それでも表情に出るのだろうか。
「むしろ最先端攻略や石碑に名を残す行為に意味を感じられなくなって、だからこそ攻略を一度やめたんです。
今でもその気持ちは変わっていません。攻略に意味があるとは感じられないままです」
そこでカリーナちゃんは一度間を置き、そして続ける。
「ただそれなら他に何をするべきか、何をしたいかがわからない。何が面白いか何なら興味を持てるかもわからない。
だから結局、惰性で毎晩攻略情報を確認したりなんて事をしている訳です。何かしたいし何かするべき気がする。でも結局他に何も思いつかないですから」
ふと思った。
カリーナちゃん、やっぱり私より若いんだと。
「私の場合、遠くへ置いてきちゃったかな、そんな希望」
「どういう意味ですか?」
「何をするべきか、何をしたいかなんて真っ正直に考えたりする。何かになるとか何者かになる、なれるという理想というか希望というかそんな思いを持つ。
この辺の思考、私自身は大分昔に忘れてきちゃったなと思ったから」
そこで順番を知らせる金属版が振動を始めた。
3番の窓口を見ると既に冒険者はいない。
「順番が来ました」
私とカリーナちゃんは立ち上がる。
と言ってもこの世界らしい服装だし、造りも魔物や魔獣討伐の褒賞金を貰う役場と似た感じ。
ゲームっぽいと感じさせるのはここを訪れている冒険者のせいだ。
こういう職業にありそうなむさいおっさんはほとんどいない。
毎日鏡の前で1時間くらい化粧とヘアスタイルを頑張っていそうな若い男女が過半数。
まあ私達も中学生エルフと小学生獣人。
服装だけはファンタジーっぽい格好をしているけれど、冒険者らしいとはお世辞にも言えない外見だ。
だから文句は言えないし言えた義理もないけれど。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」
入ってすぐ、横の窓口カウンターにいるお姉さんからそう声をかけられた。
「新規冒険者登録と従魔登録。あと技習得の相談を御願いします」
カリーナちゃんは慣れた感じでさっと告げた。
「わかりました。総合相談窓口3番でご案内します。この札を持ってお待ち下さい」
この辺りは役場と同じだ。
さて、此処冒険者ギルドは結構広いし人も多い。
また変な連中が勧誘と称して絡んでこないか。
警戒しつつカリーナちゃんについて歩く。
ラッキー君、いつもは私とカリーナちゃんの間にいるのに、今はカリーナちゃんを私と挟む形で歩いている。
ラッキー君も私が警戒している事がわかるのだろうか。
カウンターと待合用の椅子が並んだ細長い場所を一番奥まで。
総合相談窓口と書かれた辺りは入口付近と比べやや人が少ない。
それでも10人程がそこここの椅子で待っている。
空いていた3人掛けの背もたれ無し椅子にカリーナちゃんは腰掛けた。
「この様子ですと10分くらい待ちますね」
確かにカリーナちゃんの言う通りだろうと感じる。
「冒険者ギルドっていつもこれくらい混んでいるの?」
「朝一番はずっと凄いです。依頼掲示部分に人が殺到しますから」
そんなものなのだろうか。
「依頼を受ける方が魔物討伐より効率がいいの?」
「人によります。STRやATK等の戦闘系能力が高くない場合は戦闘以外の依頼を受けてレベルを上げるのが普通です。
あとはクエストの発生条件になっている依頼も結構あります。Webに書いてあるような攻略をする人は毎朝そういう依頼が出ていないか探したりするんです」
なるほど、私がお世話にならなかったのは脳筋的能力があって、かつ攻略に興味が無かったからなのか。
自分が出した結論に思わず納得してしまったところで、ラッキー君がふっと動いた。
カリーナちゃんの横でお座りしていたのだが、立ち上がっていつでも動ける警戒姿勢になる。
いかにもゲーム的冒険者っぽい若者が近づいてきた。
「ねえそこの2人、簡単に強くなる方法に興味はない?」
何かマルチとか詐欺商法的な呼びかけだなと感じる。
でも前に会った2人よりはましかもしれない。
「すみません。興味ありませんから」
「そんな事を言わないでさ。これでも現在最先端のラコニアまで到達したパーティなんだぜ、うちは」
「攻略に特に興味はないので」
「そんな事言わないでさ、話だけでもどう。あとそっちのお姉さんはどう? こんな所で依頼をこなすよりよっぽど稼げるし……」
こういう勧誘はしつこいのが標準なのだろうか。
しつこい奴だからこういう場所でも勧誘をするのだろうか。
いずれにせよ面倒だ。
ぶった切らせて貰おう。
「興味はありませんし関わらないで下さい。これをもって第一回通告とします。32条はわかりますよね」
勧誘の途中でばっさり切らせて貰う。
さて、この前の連中と同じくらい馬鹿だろうか、こいつは。
「ちぇっ」
それだけほざいて彼は離れていった。
うむ、この前の連中より少しはましなようだ。
「今回はまだましだったね。それでラコニアって何処?」
「現代の地理的に言うとギリシャ本土の南端、世界史で言うとスパルタがあったあたりです。ついでに言うと最先端という程では無いです。ラコニアのイベントはレベル55あればクリア出来ますから」
ラコニア、カリーナちゃんにとってはその程度の存在だった模様。
「その辺りも把握しているんだ」
「毎晩状況を掲示板で確認しています。特に攻略するつもりはないのですけれど。癖みたいなものです。
今の最先端はクレーテー島の古代遺跡か、デロス島のキントス山ヒュパトス域ですね。攻略レベルは70超らしいです」
カリーナちゃん、まだ最先端の攻略に未練があるのだろうか。
今でも毎晩確認しているという事なら。
そんな事を思った時。
「あ、別に最先端の攻略に興味とか未練がある訳じゃないんです」
カリーナちゃんからそんな返答がきた。
私はまだ何も言っていないのに。
それだけ私の表情は読みやすいのだろうか。
私本人では無く中学生エルフの分身なのだけれど、それでも表情に出るのだろうか。
「むしろ最先端攻略や石碑に名を残す行為に意味を感じられなくなって、だからこそ攻略を一度やめたんです。
今でもその気持ちは変わっていません。攻略に意味があるとは感じられないままです」
そこでカリーナちゃんは一度間を置き、そして続ける。
「ただそれなら他に何をするべきか、何をしたいかがわからない。何が面白いか何なら興味を持てるかもわからない。
だから結局、惰性で毎晩攻略情報を確認したりなんて事をしている訳です。何かしたいし何かするべき気がする。でも結局他に何も思いつかないですから」
ふと思った。
カリーナちゃん、やっぱり私より若いんだと。
「私の場合、遠くへ置いてきちゃったかな、そんな希望」
「どういう意味ですか?」
「何をするべきか、何をしたいかなんて真っ正直に考えたりする。何かになるとか何者かになる、なれるという理想というか希望というかそんな思いを持つ。
この辺の思考、私自身は大分昔に忘れてきちゃったなと思ったから」
そこで順番を知らせる金属版が振動を始めた。
3番の窓口を見ると既に冒険者はいない。
「順番が来ました」
私とカリーナちゃんは立ち上がる。
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