フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~

於田縫紀

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第9章 レベルアップの為の準備(1)

第52話 レベルを上げるための場所

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「それでもクエストの可能性が高いのは事実です。それにそうでなかったとしてもカレンが言った事ならやった方がいいだろうと思えます。
 それに後々の為にもレベルを上げておいた方がいいのは確かです」

 つまり結論はこういう感じだろうか。

「とりあえずレベル40以上を目指して私とラッキーのレベル上げをする。そういう事でいい?」

「ええ」

 カリーナちゃんは頷く。

「ミヤさんとラッキーちゃんのレベルは今、幾つですか?」

 パスポートを見て確認する。

「私がレベル25で、ラッキーがレベル24」

「それ位なら、この辺りの魔物や魔獣ではレベルが上がりにくいですね」

 カリーナちゃんに言われてそういえばと気付く。

「確かにそうかもしれない。カリーナと出会った後、レベルアップの表示を2回くらいしか見ていない気がする」

「あとラッキーちゃんのレベルが上がりやすいところがいいと思います。ラッキーちゃん向きでレベル25前後で上げやすくて、そこまで危険では無い場所。なら……
 コリション干潟浄化クエストあたりでまず、ラッキーちゃんのレベル上げをするのがいいかもしれません」

 コリション干潟の浄化クエスト?
 何処でどんな事をやるのだろう。
 それにクエストはどうすれば出来るようになるのだろう。
 カレンさんからのヴィドー島のクエストしかやった事がない私にはわからない事だらけだ。
 
「コリション干潟って、どの辺?」

 まずは場所から聞いてみる。

「私が住んでいたメリティイースから南へ7km位行ったところにです。干潟、砂丘や湿原、小灌木の林、旧要塞よりもずっと昔の遺跡という地形になっています。

 遺跡があって、また東南にコリシアの集落がある事からそこそこ魔物や魔獣が発生しやすい場所です。ですのでレベル20以上の冒険者がコリシアの冒険者ギルドへ行くと、コリション干潟一帯の魔物・魔獣討伐の依頼を受ける事が出来ます」

 なるほど。

「その依頼は単に魔物や魔獣を数多く倒す事?」

「本来はオブクラリスを倒すのが目的です。でも一定以上の数の魔物を倒せばそこで依頼達成になります。
 出る敵はスライム、潮スライム、泥スライム、泥魚、砂イグアナ、五線ヘビ、黄色魔カメ、黒色魔カメ。そして陸上ではスケルトンイエーガーやスケルトンソルジャー。あとは遺跡内でゴーストだったと思います。

 毒があったり魔法を使ってくる敵はいません。なので装備を調えた上で中級までのポーションを準備しておけば問題はないと思います。その上普通のスライム以外はこの辺で出る魔物よりも経験値が高くまた数多く出てくるので、レベルが上がりやすいです。

 ただたまに中ボスのオブクラリスが出ます。怖いという程の敵ではないのですけれど、面倒くさいです」
 
 でも本来は中ボスを倒すのが目的なのだろう。
 それが怖いではなく面倒くさいというのはどいう意味だろう。

「なんで面倒くさいの?」

「中ボスのオブクラリスは大ガメの魔物です。全長6m、甲羅の高さが2mくらいあります。
 攻撃は手足の爪でひっかくか噛みつくか。当たれば痛い攻撃ですけれど手足が届く範囲しか攻撃できませんし移動速度も遅いです。ですから注意して戦えばそこまで怖くはありません。
 ただ、倒すのが大変なんです」

 カリーナちゃんは一呼吸置いた後、続ける。

「オブクラリスの頭や手足の攻撃は強力でそれなりに速いです。だから攻撃範囲に近寄らないようにして戦うのが基本です。

 ただカメなので甲羅は頑丈で、投槍や強弓、バリスタでもまず通りません。魔法も全属性に耐性がありします。
 ですから攻撃魔法か投槍や矢、あるいは遠隔攻撃可能な剣技や拳技で甲羅から出た頭や手足を狙うのが基本です」

 剣技で狙い撃つ練習なんてのもしないといけないのか。
 ならエア・スラッシュや大地裂断より閃空突がいいだろうか。
 あとは連射出来る技も覚えた方がいいんだよな。
 なんて思いながら私はカリーナちゃんの説明の続きを聞く。

「ただオブクラリス、耐久力が高くてなかなか倒せないんです。頭部へ切り落とす位のダメージを与えるか、手足のうち3本を完全に使用不能にするかしないと、『倒した』というメッセージが出ません。

 しかも攻撃を受けそうになると頭や手足を引っ込めて蓋をしてしまいます。ですから最低2時間、下手すれば半日がかりになってしまうんです」

 なるほど、でもそれならば。

「出会ったらすぐ逃げれば何とかならない? 動きが遅いのなら」

「オブクラリスは逃げられないタイプの中ボスです。一度出会ってしまうと、中ボスから一定以上遠くには行けないようになってしまいます。そういった魔法を持っています」

 なるほど、つまりは。

「出会ったら延々と時間かけて倒さなければならない訳」

「その通りです。だから面倒なんです。経験値も低くはないですけれど1時間くらいかけて干潟の他の魔物を退治するのと変わらない程度です。
 1回倒せば同じパーティの前には出てこないのが救いです」

「倒さなくても依頼はクリアできると言っていたけれど、それでいいの?」

「ええ。1人あたりおよそ300匹程度の魔物を倒せば魔物が出なくなります。そうなれば依頼達成と認められます」

「300って、相当多くない?」

「3日かければ1日100匹です。カメ以外はだいたい1発当てれば倒せますし、出てくるときは10匹以上出てきますから」

 なるほど、概ね状況は理解した。
 最後に確認だ。

「あとオブなんとかという中ボスが出たとしても、此処で今の生活を続けるよりは簡単にレベルが上がるんだよね」

 カリーナちゃんは頷く。

「ええ。此処で今のペースだとレベル30を超えるのに2週間はかかると思います。
 コリション干潟ならレベル32くらいまで3日あれば上げられます。オブクラリスにあったとしても4日です」

 レベル32か。
 目標のレベル40までまだ8ほど残っている。

「そこからレベル40まではどうするの?」

「コリション干潟ではそれ以上は効率が悪いので場所を変えます。旧要塞か新要塞のボス部屋手前部分がいいです。ボス手前までに出るレイスやデュラハン、スケルトンナイト辺りを相手にすればそこそこ効率がいいですから」

 なるほど。

「カリーナ、よく知ってるね」

「攻略系ギルドで効率良くレベルを上げる方法なんですけれどね。前線で無理な攻略をやっていると時々死者が出ますから。

 そうした場合、新しいチームメンバーを探すより死んだ分身アバターを使っていたプレイヤーが戻ってくるのを待つ方が早いし楽なんです。今までの知識やパーティのやり方を知っていますから。

 勿論死んだ分身アバターは生き返りません。ですから新しい分身アバターを作ってレベルを上げる必要があります。
 そういった際に使う効率的にレベルを上げるのに適した場所が幾つかあって、私もそれを知っているだけです」
 
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