フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~

於田縫紀

文字の大きさ
上 下
52 / 139
第9章 レベルアップの為の準備(1)

第52話 レベルを上げるための場所

しおりを挟む
「それでもクエストの可能性が高いのは事実です。それにそうでなかったとしてもカレンが言った事ならやった方がいいだろうと思えます。
 それに後々の為にもレベルを上げておいた方がいいのは確かです」

 つまり結論はこういう感じだろうか。

「とりあえずレベル40以上を目指して私とラッキーのレベル上げをする。そういう事でいい?」

「ええ」

 カリーナちゃんは頷く。

「ミヤさんとラッキーちゃんのレベルは今、幾つですか?」

 パスポートを見て確認する。

「私がレベル25で、ラッキーがレベル24」

「それ位なら、この辺りの魔物や魔獣ではレベルが上がりにくいですね」

 カリーナちゃんに言われてそういえばと気付く。

「確かにそうかもしれない。カリーナと出会った後、レベルアップの表示を2回くらいしか見ていない気がする」

「あとラッキーちゃんのレベルが上がりやすいところがいいと思います。ラッキーちゃん向きでレベル25前後で上げやすくて、そこまで危険では無い場所。なら……
 コリション干潟浄化クエストあたりでまず、ラッキーちゃんのレベル上げをするのがいいかもしれません」

 コリション干潟の浄化クエスト?
 何処でどんな事をやるのだろう。
 それにクエストはどうすれば出来るようになるのだろう。
 カレンさんからのヴィドー島のクエストしかやった事がない私にはわからない事だらけだ。
 
「コリション干潟って、どの辺?」

 まずは場所から聞いてみる。

「私が住んでいたメリティイースから南へ7km位行ったところにです。干潟、砂丘や湿原、小灌木の林、旧要塞よりもずっと昔の遺跡という地形になっています。

 遺跡があって、また東南にコリシアの集落がある事からそこそこ魔物や魔獣が発生しやすい場所です。ですのでレベル20以上の冒険者がコリシアの冒険者ギルドへ行くと、コリション干潟一帯の魔物・魔獣討伐の依頼を受ける事が出来ます」

 なるほど。

「その依頼は単に魔物や魔獣を数多く倒す事?」

「本来はオブクラリスを倒すのが目的です。でも一定以上の数の魔物を倒せばそこで依頼達成になります。
 出る敵はスライム、潮スライム、泥スライム、泥魚、砂イグアナ、五線ヘビ、黄色魔カメ、黒色魔カメ。そして陸上ではスケルトンイエーガーやスケルトンソルジャー。あとは遺跡内でゴーストだったと思います。

 毒があったり魔法を使ってくる敵はいません。なので装備を調えた上で中級までのポーションを準備しておけば問題はないと思います。その上普通のスライム以外はこの辺で出る魔物よりも経験値が高くまた数多く出てくるので、レベルが上がりやすいです。

 ただたまに中ボスのオブクラリスが出ます。怖いという程の敵ではないのですけれど、面倒くさいです」
 
 でも本来は中ボスを倒すのが目的なのだろう。
 それが怖いではなく面倒くさいというのはどいう意味だろう。

「なんで面倒くさいの?」

「中ボスのオブクラリスは大ガメの魔物です。全長6m、甲羅の高さが2mくらいあります。
 攻撃は手足の爪でひっかくか噛みつくか。当たれば痛い攻撃ですけれど手足が届く範囲しか攻撃できませんし移動速度も遅いです。ですから注意して戦えばそこまで怖くはありません。
 ただ、倒すのが大変なんです」

 カリーナちゃんは一呼吸置いた後、続ける。

「オブクラリスの頭や手足の攻撃は強力でそれなりに速いです。だから攻撃範囲に近寄らないようにして戦うのが基本です。

 ただカメなので甲羅は頑丈で、投槍や強弓、バリスタでもまず通りません。魔法も全属性に耐性がありします。
 ですから攻撃魔法か投槍や矢、あるいは遠隔攻撃可能な剣技や拳技で甲羅から出た頭や手足を狙うのが基本です」

 剣技で狙い撃つ練習なんてのもしないといけないのか。
 ならエア・スラッシュや大地裂断より閃空突がいいだろうか。
 あとは連射出来る技も覚えた方がいいんだよな。
 なんて思いながら私はカリーナちゃんの説明の続きを聞く。

「ただオブクラリス、耐久力が高くてなかなか倒せないんです。頭部へ切り落とす位のダメージを与えるか、手足のうち3本を完全に使用不能にするかしないと、『倒した』というメッセージが出ません。

 しかも攻撃を受けそうになると頭や手足を引っ込めて蓋をしてしまいます。ですから最低2時間、下手すれば半日がかりになってしまうんです」

 なるほど、でもそれならば。

「出会ったらすぐ逃げれば何とかならない? 動きが遅いのなら」

「オブクラリスは逃げられないタイプの中ボスです。一度出会ってしまうと、中ボスから一定以上遠くには行けないようになってしまいます。そういった魔法を持っています」

 なるほど、つまりは。

「出会ったら延々と時間かけて倒さなければならない訳」

「その通りです。だから面倒なんです。経験値も低くはないですけれど1時間くらいかけて干潟の他の魔物を退治するのと変わらない程度です。
 1回倒せば同じパーティの前には出てこないのが救いです」

「倒さなくても依頼はクリアできると言っていたけれど、それでいいの?」

「ええ。1人あたりおよそ300匹程度の魔物を倒せば魔物が出なくなります。そうなれば依頼達成と認められます」

「300って、相当多くない?」

「3日かければ1日100匹です。カメ以外はだいたい1発当てれば倒せますし、出てくるときは10匹以上出てきますから」

 なるほど、概ね状況は理解した。
 最後に確認だ。

「あとオブなんとかという中ボスが出たとしても、此処で今の生活を続けるよりは簡単にレベルが上がるんだよね」

 カリーナちゃんは頷く。

「ええ。此処で今のペースだとレベル30を超えるのに2週間はかかると思います。
 コリション干潟ならレベル32くらいまで3日あれば上げられます。オブクラリスにあったとしても4日です」

 レベル32か。
 目標のレベル40までまだ8ほど残っている。

「そこからレベル40まではどうするの?」

「コリション干潟ではそれ以上は効率が悪いので場所を変えます。旧要塞か新要塞のボス部屋手前部分がいいです。ボス手前までに出るレイスやデュラハン、スケルトンナイト辺りを相手にすればそこそこ効率がいいですから」

 なるほど。

「カリーナ、よく知ってるね」

「攻略系ギルドで効率良くレベルを上げる方法なんですけれどね。前線で無理な攻略をやっていると時々死者が出ますから。

 そうした場合、新しいチームメンバーを探すより死んだ分身アバターを使っていたプレイヤーが戻ってくるのを待つ方が早いし楽なんです。今までの知識やパーティのやり方を知っていますから。

 勿論死んだ分身アバターは生き返りません。ですから新しい分身アバターを作ってレベルを上げる必要があります。
 そういった際に使う効率的にレベルを上げるのに適した場所が幾つかあって、私もそれを知っているだけです」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...