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第9章 レベルアップの為の準備(1)
第51話 カレンさんの伝言
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そうか、つまりカレンさんはわかっていた訳だ。
私が病院組ではなく、かつ没入型筐体を使ってフルタイムでこの世界に入っている事を。
考えてみれば当然かもしれない。
カリーナちゃんだって私と会ってすぐ没入型筐体を使っている事に気付いたのだから。
「さて、それはそれ、これはこれとしてね。AIじゃない方のカレンから伝言よぉ。
『もしカリーナちゃんと一緒にいるなら、
① ミヤちゃんとラッキーちゃんのレベルを40以上にして、
② 装備をカリーナちゃん基準でレベル相応以上に整えた上で、
③ ミヤちゃん、カリーナちゃん、ラッキーちゃんの3人で、
④ ここ錬金術師ギルドのケルキラ支部に来て頂戴』
以上よぉ」
レベル40以上にして此処へ来る、か。
そういった条件が出るという事は、ひょっとして。
「イベントの発生条件ですか?」
「その辺りは言えないのよ。ごめんねぇ~」
この返答、イベントだと言っているような気がする。
「わかりました。私とラッキーをレベル40以上にして、装備を整えてから来るんですね」
「そーゆーこと。よろしくねっ♡」
カレンさんが何を企図しているのかはわからない。
ただカレンさんは信用していいと思っている。
だから何かきっとそうした方がいい理由があるのだろう。
ふと思いつく。
ひょっとしたらカリーナちゃんが何か知っているかもしれないと。
家に帰ったら聞いてみよう。
「わかりました。それではまた」
「カリーナちゃんによろしくねっ♡」
錬金術ギルドを出る。
本当は街に出たついでに買い物をしたいところだ。
でももうお昼だしカリーナちゃんがご飯を作って待っているだろう。
ラッキー君も待っているだろうし、ここは真っ直ぐ帰る事にする。
◇◇◇
うちの家は晴れていれば玄関扉やリビングの掃き出し窓は開けっぱなし。
だから門扉を開けてすぐラッキー君の猛烈なお出迎えを受ける事になる。
この時一番気をつけなければいけないのはラッキー君の突進ジャンプ。
気を抜いているとラッキー君の石頭が下から私の顎へと直撃する。
これを食らうと無茶苦茶痛い。
ゲーム的ポイントで言うとHPが5はマイナスされる。
今回は何とか激突を回避、飛びついたラッキー君をさっと避けて、そして家の中へ向かって。
「ただいま」
「お帰りなさい。お昼が出来ていますけれどどうしますか?」
うんうん、まるで新婚夫婦みたいで良い。
カリーナちゃんが奥さんならバリバリ外で働ける気がする。
社会人デビューに失敗した私でも。
家の中から焼いたチーズのいい香りがしている。
「ありがとう。それじゃ御飯にして貰っていい?」
「もちろんです」
手を洗ったり着替えたりする代わりに清浄魔法を全身にかけて、そしてリビングのテーブルへ。
もちろんラッキー君もついてくる。
今日のお昼のメインはパスティチョ、ヨーグルトサラダ、オレンジジュース。
パスティチョとは茹でたマカロニの上にチーズとミートソースとホワイトソースを重ねて焼いたものだ。
カリーナちゃんにラザニアと何処が違うのかと聞いたところ、
『使っているパスタが平麺ならラザニアで、穴あき麺ならパスティチョだと思います。実際はどっちのつもりで作ったか、くらいの差なんでしょうけれど』
とのこと。
なおラッキー君のお昼もパスティチョとヨーグルトで、私達と同じだ。
「ラッキーちゃんも同じものを食べたそうですから」
カリーナちゃんがそう言うからなのだけれど、食卓の上のものを欲しがるようにならないだろうか。
まあ魔犬だし仮想世界だから、人間が食べられる物なら食べて大丈夫。
だから問題は無いかもしれないけれど。
「いただきます」
ここは日本風にそう挨拶して昼食開始。
さて、まずは報告から。
「ありがとう。おかげで中級試験、無事合格した」
「良かったです。次は上級ですけれど、素材を集めるのが結構面倒ですね」
パスティチョ、チーズとホワイトソース、そして下のミートソースと味が違うのが非常に良い。
パスタ部分はカリーナちゃんのこだわりで『ふにゃふにゃにならない程度に固くゆでています』との事。
これがまたいい感じだ。
もうこのままカリーナちゃん、嫁に欲しい。
いや違う。
違わないけれどカリーナちゃんに言う事があったのだった。
「AIのカレンさん経由でカレンさんから伝言があったよ。私とラッキーのレベルを40以上にした上で装備を調えて、カリーナと一緒に錬金術師ギルドケルキラ支部に来て頂戴って。
クエストか何かかな、これって」
カリーナちゃんは少し考えるそぶりをした後、口を開く。
「おそらくそうだと思います。中級以上の認定錬金術師2名と、従魔を含めレベル40以上3名がケルキラの錬金術ギルドを訪れる事ではじまる何かのクエストがあるのでしょう。
ただ検索した結果、該当するクエストはありません。ですからもしクエストだとした場合、最近出来たばかりでまだ誰にも知られていないものの筈です」
誰にも知られていないクエストか。
「そういう未知のクエストって結構あるの?」
「クエストそのものは現実の時間で月に2回程度リリースされます。ただ現実では月に2回でも此処では1年1回くらいの感覚です。
そして日本サーバだけでも500万人近いプレイヤーがいます。ですからリリースされて現実の時間で1日、此処の時間で24日もあれば情報が上がってくる筈です。たとえ攻略に成功しなくても、こういうクエストがあるぞという情報くらいは」
なるほど、でも待てよ。
「私が最初にやった『ヴィード島薬草採取クエスト』は調べても出てこなかったけれど。錬金術師のプレイヤーは少ないからそういった情報も出にくいんじゃない?」
「それは調べる方法の問題です。大手の検索エンジンで調べてもあまり情報は出てきません。攻略情報は掲示板やSNSで流れるのが普通ですから。
掲示板やSNSからリアルタイムで情報を収集して蓄積するサイトがあるんです。そこの新着情報を追うとか、データベース検索をするとかすれば、錬金術師用の初級クエストでも普通に出てきます。
最初の職業選択で錬金術師を選ぶ人はめったにいません。ですから錬金術師用のシナリオをプレイする人はほとんどいないと思います。
それでもカレンのように立場からクエストについて知っている人はいます。それにあまりにプレイされないクエストがあった場合、運営側が情報を流したりもしますから」
なるほど、理解した。
私が病院組ではなく、かつ没入型筐体を使ってフルタイムでこの世界に入っている事を。
考えてみれば当然かもしれない。
カリーナちゃんだって私と会ってすぐ没入型筐体を使っている事に気付いたのだから。
「さて、それはそれ、これはこれとしてね。AIじゃない方のカレンから伝言よぉ。
『もしカリーナちゃんと一緒にいるなら、
① ミヤちゃんとラッキーちゃんのレベルを40以上にして、
② 装備をカリーナちゃん基準でレベル相応以上に整えた上で、
③ ミヤちゃん、カリーナちゃん、ラッキーちゃんの3人で、
④ ここ錬金術師ギルドのケルキラ支部に来て頂戴』
以上よぉ」
レベル40以上にして此処へ来る、か。
そういった条件が出るという事は、ひょっとして。
「イベントの発生条件ですか?」
「その辺りは言えないのよ。ごめんねぇ~」
この返答、イベントだと言っているような気がする。
「わかりました。私とラッキーをレベル40以上にして、装備を整えてから来るんですね」
「そーゆーこと。よろしくねっ♡」
カレンさんが何を企図しているのかはわからない。
ただカレンさんは信用していいと思っている。
だから何かきっとそうした方がいい理由があるのだろう。
ふと思いつく。
ひょっとしたらカリーナちゃんが何か知っているかもしれないと。
家に帰ったら聞いてみよう。
「わかりました。それではまた」
「カリーナちゃんによろしくねっ♡」
錬金術ギルドを出る。
本当は街に出たついでに買い物をしたいところだ。
でももうお昼だしカリーナちゃんがご飯を作って待っているだろう。
ラッキー君も待っているだろうし、ここは真っ直ぐ帰る事にする。
◇◇◇
うちの家は晴れていれば玄関扉やリビングの掃き出し窓は開けっぱなし。
だから門扉を開けてすぐラッキー君の猛烈なお出迎えを受ける事になる。
この時一番気をつけなければいけないのはラッキー君の突進ジャンプ。
気を抜いているとラッキー君の石頭が下から私の顎へと直撃する。
これを食らうと無茶苦茶痛い。
ゲーム的ポイントで言うとHPが5はマイナスされる。
今回は何とか激突を回避、飛びついたラッキー君をさっと避けて、そして家の中へ向かって。
「ただいま」
「お帰りなさい。お昼が出来ていますけれどどうしますか?」
うんうん、まるで新婚夫婦みたいで良い。
カリーナちゃんが奥さんならバリバリ外で働ける気がする。
社会人デビューに失敗した私でも。
家の中から焼いたチーズのいい香りがしている。
「ありがとう。それじゃ御飯にして貰っていい?」
「もちろんです」
手を洗ったり着替えたりする代わりに清浄魔法を全身にかけて、そしてリビングのテーブルへ。
もちろんラッキー君もついてくる。
今日のお昼のメインはパスティチョ、ヨーグルトサラダ、オレンジジュース。
パスティチョとは茹でたマカロニの上にチーズとミートソースとホワイトソースを重ねて焼いたものだ。
カリーナちゃんにラザニアと何処が違うのかと聞いたところ、
『使っているパスタが平麺ならラザニアで、穴あき麺ならパスティチョだと思います。実際はどっちのつもりで作ったか、くらいの差なんでしょうけれど』
とのこと。
なおラッキー君のお昼もパスティチョとヨーグルトで、私達と同じだ。
「ラッキーちゃんも同じものを食べたそうですから」
カリーナちゃんがそう言うからなのだけれど、食卓の上のものを欲しがるようにならないだろうか。
まあ魔犬だし仮想世界だから、人間が食べられる物なら食べて大丈夫。
だから問題は無いかもしれないけれど。
「いただきます」
ここは日本風にそう挨拶して昼食開始。
さて、まずは報告から。
「ありがとう。おかげで中級試験、無事合格した」
「良かったです。次は上級ですけれど、素材を集めるのが結構面倒ですね」
パスティチョ、チーズとホワイトソース、そして下のミートソースと味が違うのが非常に良い。
パスタ部分はカリーナちゃんのこだわりで『ふにゃふにゃにならない程度に固くゆでています』との事。
これがまたいい感じだ。
もうこのままカリーナちゃん、嫁に欲しい。
いや違う。
違わないけれどカリーナちゃんに言う事があったのだった。
「AIのカレンさん経由でカレンさんから伝言があったよ。私とラッキーのレベルを40以上にした上で装備を調えて、カリーナと一緒に錬金術師ギルドケルキラ支部に来て頂戴って。
クエストか何かかな、これって」
カリーナちゃんは少し考えるそぶりをした後、口を開く。
「おそらくそうだと思います。中級以上の認定錬金術師2名と、従魔を含めレベル40以上3名がケルキラの錬金術ギルドを訪れる事ではじまる何かのクエストがあるのでしょう。
ただ検索した結果、該当するクエストはありません。ですからもしクエストだとした場合、最近出来たばかりでまだ誰にも知られていないものの筈です」
誰にも知られていないクエストか。
「そういう未知のクエストって結構あるの?」
「クエストそのものは現実の時間で月に2回程度リリースされます。ただ現実では月に2回でも此処では1年1回くらいの感覚です。
そして日本サーバだけでも500万人近いプレイヤーがいます。ですからリリースされて現実の時間で1日、此処の時間で24日もあれば情報が上がってくる筈です。たとえ攻略に成功しなくても、こういうクエストがあるぞという情報くらいは」
なるほど、でも待てよ。
「私が最初にやった『ヴィード島薬草採取クエスト』は調べても出てこなかったけれど。錬金術師のプレイヤーは少ないからそういった情報も出にくいんじゃない?」
「それは調べる方法の問題です。大手の検索エンジンで調べてもあまり情報は出てきません。攻略情報は掲示板やSNSで流れるのが普通ですから。
掲示板やSNSからリアルタイムで情報を収集して蓄積するサイトがあるんです。そこの新着情報を追うとか、データベース検索をするとかすれば、錬金術師用の初級クエストでも普通に出てきます。
最初の職業選択で錬金術師を選ぶ人はめったにいません。ですから錬金術師用のシナリオをプレイする人はほとんどいないと思います。
それでもカレンのように立場からクエストについて知っている人はいます。それにあまりにプレイされないクエストがあった場合、運営側が情報を流したりもしますから」
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