30 / 139
第5章 もう1人追加
第30話 そしてもう1人
しおりを挟む
「いえ、ごく健康体で、家からアクセスしていますけれど」
「没入型の筐体を使っていますよね。動作の分解能の違いでわかります。そんな筐体を使っているのって、重症で没入治療槽に浸かっている患者くらいしか……
あ、でも本当みたいですね。すみません、妙な事を言って」
カリーナさん、何故か納得してしまったようだ。
分解能とか言っているのはきっと私が使っているDGJ-2411B12の関係だろう。
でもその後、本当みたいだと判断した理由がわからない。
「確かにDGJ-2411B12という没入型の接続装置を使っていますけれど」
「そうですね。病院で治療用に使っている装置とは分解能のクロックが違うようです。どうもすみませんでした」
「いえ、それはいいですけれど」
何で病院の患者か聞いたのだろう。
単に興味で聞いたのとは少し違う感じがした。
ただそこを聞いていいのかはわからない。
だから話の接ぎ穂として聞くのは、もう少し当たり障りのない事についてだ。
「そういった分解能の違いってわかるものなんですか?」
「測定用の魔法があるんです。この世界で対人イベントをする時など、筐体のせいで反応速度が違いすぎたら勝負になりませんよね。
だから簡単な魔法で測定できるようになっているんです。ただ相手にある程度会話をして貰ったり、動いて貰ったりしないと正確な値がでないから、さっきは間違えてしまったんですけれど。
あと私相手に敬語は使わなくていいです。見た目はこの通り私の方が年下ですし、きっと中身も私の方が下だと思いますから」
なるほど、そういう魔法があるのか。
でもそれならばだ。
「筐体の違いでそんなに変わるんですか?」
「敬語は使わなくていいです。あと全然違います」
そうなのか。
私が理解していないと気付いたのか、カリーナちゃんは説明を追加する。
「確かに分解能が10倍でも動ける速度そのものは変わらないです。でも判断して行動する機会の数が全然違います。
一番わかりやすいのが入国審査でやるダーツです。ミヤさんはきっと狙いたい所を狙えただろうと思います。
でも普通はそんな事出来ないんです。このゲームが想定している分解能は60分の1程度。
ゲーマー用の高性能HUDならその2倍細かく狙えます。そしてミヤさんの分解能は1,200分の1。ですから、更に10倍細かく狙える訳です」
言われてみれば心当たりが山ほどある。
ステータスが脳筋になったり、ノロイグアナを見つけやすかったり。
きっとその辺全てはこの分解能のおかげだろう。
「確かにそうですね。気付いていませんでした」
「だから敬語は使わなくていいです。私の場合は単なる習慣ですから。
さて、それでは本題です。カレンからの手紙だと、錬金術を少し教えてやってくれとありますけれど、どうしますか?
この家は見たとおり1部屋しかありません。ですからミヤさんが此処へ通うか、私がそっちに行くしかないです」
確かにこの小屋はワンルーム的な感じだ。
ここへもう1人住むとなると、プライバシー的な問題が出てくるだろう。
人見知りと言っていたから、それは避けたいだろうと思う。
そしてうちには1部屋、空いている寝室がある。
当然カレンさんはその事を知っている。
何せ一緒に家を見に行ったのだから。
うん、明らかにカレンさんの意図というか思惑を感じる。
何故そうしたのか、今の段階で推測するには情報が足りないけれど。
ただカレンさんは信用していい気がする。
根拠は無い、ただの勘だけれど。
ならその思惑にのってやるのも悪くは無い。
どうせこの世界はゲームだし、やらなければならない事もない。
ラッキー君と2人だけの生活は快適だけれど、少し変化があってもいいだろう。
だから私はこう口に出す。
「ケルキラの私の家で良ければ、1部屋寝室が余っているけれど、そこに来て貰うというのは駄目?」
カリーナちゃんは私の目を覗き込むようにして見る。
「いいですけれど、そこまで私を信用して大丈夫ですか?」
今回はちょうどいい言い訳がある。
「カリーナと私はこれが初対面。だからすぐに信じるなんていってもただの盲信かもしれない。
でもこの手紙を書いたカレンさんは信用していいと思っているし、カレンさんがこうなる事を予期していないとは思えない。
だから大丈夫だろうと判断出来る。そういう返事じゃ駄目?」
カリーナちゃんは頷いた。
「カレンを信用できる人なら、信用していいかなと思います」
なかなか上手い返答だなと感じる。
私の予想ではカリーナちゃん、見た目とほぼ同じくらいの年齢だろうと思っている。
具体的に言うと小学校6年生程度。
ただし知識や思考力が下手な大人より上の大人びた子供。
言葉使いとか態度からそう感じる。
ただ普通の子供では無いだろう。
そもそも普通の子供なら学校がある筈だ。
24時間ゲーム内にいるなんて無理。
となると『病院の患者さん』というのはおそらく彼女自身。
ただ今は聞いたりしない方がいい。
もう少し関係を詰めてからの方が安全だと感じる。
何か地雷がありそうな雰囲気もするし。
「それでは出かける用意をしますけれど、ベッドや錬金釜は持って行った方がいいですか?」
とりあえずは現実でどうこうという話はしないようにしよう。
そう思いつつ、私はカリーナちゃんに返答する。
「御願い。部屋はあるけれど家具類は自分用の最低限しかないから。錬金釜もまだ買っていないし」
「没入型の筐体を使っていますよね。動作の分解能の違いでわかります。そんな筐体を使っているのって、重症で没入治療槽に浸かっている患者くらいしか……
あ、でも本当みたいですね。すみません、妙な事を言って」
カリーナさん、何故か納得してしまったようだ。
分解能とか言っているのはきっと私が使っているDGJ-2411B12の関係だろう。
でもその後、本当みたいだと判断した理由がわからない。
「確かにDGJ-2411B12という没入型の接続装置を使っていますけれど」
「そうですね。病院で治療用に使っている装置とは分解能のクロックが違うようです。どうもすみませんでした」
「いえ、それはいいですけれど」
何で病院の患者か聞いたのだろう。
単に興味で聞いたのとは少し違う感じがした。
ただそこを聞いていいのかはわからない。
だから話の接ぎ穂として聞くのは、もう少し当たり障りのない事についてだ。
「そういった分解能の違いってわかるものなんですか?」
「測定用の魔法があるんです。この世界で対人イベントをする時など、筐体のせいで反応速度が違いすぎたら勝負になりませんよね。
だから簡単な魔法で測定できるようになっているんです。ただ相手にある程度会話をして貰ったり、動いて貰ったりしないと正確な値がでないから、さっきは間違えてしまったんですけれど。
あと私相手に敬語は使わなくていいです。見た目はこの通り私の方が年下ですし、きっと中身も私の方が下だと思いますから」
なるほど、そういう魔法があるのか。
でもそれならばだ。
「筐体の違いでそんなに変わるんですか?」
「敬語は使わなくていいです。あと全然違います」
そうなのか。
私が理解していないと気付いたのか、カリーナちゃんは説明を追加する。
「確かに分解能が10倍でも動ける速度そのものは変わらないです。でも判断して行動する機会の数が全然違います。
一番わかりやすいのが入国審査でやるダーツです。ミヤさんはきっと狙いたい所を狙えただろうと思います。
でも普通はそんな事出来ないんです。このゲームが想定している分解能は60分の1程度。
ゲーマー用の高性能HUDならその2倍細かく狙えます。そしてミヤさんの分解能は1,200分の1。ですから、更に10倍細かく狙える訳です」
言われてみれば心当たりが山ほどある。
ステータスが脳筋になったり、ノロイグアナを見つけやすかったり。
きっとその辺全てはこの分解能のおかげだろう。
「確かにそうですね。気付いていませんでした」
「だから敬語は使わなくていいです。私の場合は単なる習慣ですから。
さて、それでは本題です。カレンからの手紙だと、錬金術を少し教えてやってくれとありますけれど、どうしますか?
この家は見たとおり1部屋しかありません。ですからミヤさんが此処へ通うか、私がそっちに行くしかないです」
確かにこの小屋はワンルーム的な感じだ。
ここへもう1人住むとなると、プライバシー的な問題が出てくるだろう。
人見知りと言っていたから、それは避けたいだろうと思う。
そしてうちには1部屋、空いている寝室がある。
当然カレンさんはその事を知っている。
何せ一緒に家を見に行ったのだから。
うん、明らかにカレンさんの意図というか思惑を感じる。
何故そうしたのか、今の段階で推測するには情報が足りないけれど。
ただカレンさんは信用していい気がする。
根拠は無い、ただの勘だけれど。
ならその思惑にのってやるのも悪くは無い。
どうせこの世界はゲームだし、やらなければならない事もない。
ラッキー君と2人だけの生活は快適だけれど、少し変化があってもいいだろう。
だから私はこう口に出す。
「ケルキラの私の家で良ければ、1部屋寝室が余っているけれど、そこに来て貰うというのは駄目?」
カリーナちゃんは私の目を覗き込むようにして見る。
「いいですけれど、そこまで私を信用して大丈夫ですか?」
今回はちょうどいい言い訳がある。
「カリーナと私はこれが初対面。だからすぐに信じるなんていってもただの盲信かもしれない。
でもこの手紙を書いたカレンさんは信用していいと思っているし、カレンさんがこうなる事を予期していないとは思えない。
だから大丈夫だろうと判断出来る。そういう返事じゃ駄目?」
カリーナちゃんは頷いた。
「カレンを信用できる人なら、信用していいかなと思います」
なかなか上手い返答だなと感じる。
私の予想ではカリーナちゃん、見た目とほぼ同じくらいの年齢だろうと思っている。
具体的に言うと小学校6年生程度。
ただし知識や思考力が下手な大人より上の大人びた子供。
言葉使いとか態度からそう感じる。
ただ普通の子供では無いだろう。
そもそも普通の子供なら学校がある筈だ。
24時間ゲーム内にいるなんて無理。
となると『病院の患者さん』というのはおそらく彼女自身。
ただ今は聞いたりしない方がいい。
もう少し関係を詰めてからの方が安全だと感じる。
何か地雷がありそうな雰囲気もするし。
「それでは出かける用意をしますけれど、ベッドや錬金釜は持って行った方がいいですか?」
とりあえずは現実でどうこうという話はしないようにしよう。
そう思いつつ、私はカリーナちゃんに返答する。
「御願い。部屋はあるけれど家具類は自分用の最低限しかないから。錬金釜もまだ買っていないし」
11
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~
山須ぶじん
SF
異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。
彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。
そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。
ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。
だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。
それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。
※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。
※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる