22 / 139
第4章 わんこと暮らせる家を借りよう
第22話 家、借りに行こう
しおりを挟む
別の街に行く、か。
言われてみれば確かにそういう選択肢もある訳だ。
その場合、此処で家を購入なんてしたら面倒な事になる。
「カレンさんはどうしてこの街にいるか、聞いてみていいですか?」
「この街のギルドが一番やりがいがあると感じたから、かしらぁ」
少し考えるように間を置いて、そして続ける。
「ここケルキラの街はパイアキアン・オンラインのスタート地点で、なおかつこの島の出入口なの。だからゲームをはじめたばかりの初心者から、もうすぐこの島から旅立つ事になる中級者まで数多くの人がいるわ。武器や防具、道具等のレベルも下からそこそこ上のものまで揃っている。
だから錬金術ギルドとしても初心者から中級者まで、幅の広い層を相手に出来る。お薬や道具だって誰でも買える安いものから完全復活可能なあたりまで用意しなければならない。
つまりやる事の幅が広いワケ。その分工夫する余地があるし、ワタシの裁量で変えられる事が多いのよ。
とまあ、そんな感じかな」
なるほど。
そう思ったら、まだカレンさんの話は続くようだ。
「もちろんケルキラの街にも欠点はあるわよ。周囲の街に比べると家賃を含めて物価が少しお高めだし、ある程度以上珍しい薬草が採取できる場所が近くにないしぃ。
ただこのパイアキアン・オンラインの世界に慣れていなくて、なおかつそこそこ稼げる人だったら、最初の拠点としては悪くないと思うわよ。
さっき言った通り、中級のものまで一通り揃っているし、珍しいというレベル以外のものは大抵手に入るしね」
なるほど、カレンさん的にはこの街、結構おすすめという事か。
なら取り敢えず最初の家はこの街でいいのかなと思う。
どうせ時間はたっぷりあるのだし。
「家を借りるには商業ギルドへ行けばいいんですか?」
「そうよぉ。何なら今からでも行ってみる? 商業ギルドは遅くまでやっているからまだまだ間に合うわ。もし行くなら私も付き合うわよぉ」
それは助かる。
何せゲーム的常識もこの世界の常識もまだまだ足りない状態だから、私は。
商業ギルドの場所すら知らなかったりするし。
でもちょっと疑問と言うか不安はある。
「カレンさん、このギルドの方はいいんですか、留守にして」
「一般の受付はお店の方だし、心配はいらないわよぉ。それにこっちも私がいない間はデミオ君が対応してくれるしぃ」
「すみません。それではお願いしていいでしょうか」
「もちろんよぉ」
カレンさん、ガッツポーズ。
右腕の筋肉の盛り上がりが冗談みたいなレベルだ。
◇◇◇
商業ギルドへ向かって歩きながら、どんな家がいいかを話し合う。
「ラッキーちゃんならある程度走り回れる広さの庭があった方がいいわよねぇ。錬金術師なら家やギルドで錬金する時間なんてのもあるしぃ」
確かにそうだなと思う。
ボーダーコリーは運動量が必要な犬種だ。
ボーダーコリー系雑種に見えるラッキー君もきっとそうだろう。
「でもそれだと家賃、高くなりませんか?」
「街の中心部だと高いどころか物件そのものが無いと思うわよぉ。でも西側、森に近い方ならそうお高くないわ。街の中心から1kmくらい離れるけれど、自分で薬草採取するならそっち側の方が便利だしねっ♡」
なるほど。
「そちら側だと薬草を採取できるんですか?」
「西北西にあるエブロプーリの森、南西のコソンキョーリの森どちらでも採れるわよぉ。コソンキョーリの森の方がいい薬草が多いけれど、その分魔物や魔獣が強いって感じ。
でもまあ、あまり奥まで行かなければ今のミヤちゃんなら大丈夫だと思うわよぉ。具体的には森の中へ入って1時間以内の場所なら、出てもせいぜいスケルトンやスライム位だからぁ」
確かにそのくらいなら大丈夫だ。
何ならラッキー君だけでも問題ない。
「予算はどれくらいが相場ですか?」
「月あたり7,000Cくらいで充分じゃないかしら。それくらいなら今のミヤちゃんなら余裕よね」
「余裕という程でもないですけれど、大丈夫です」
旧要塞でスケルトンいじめを2回やればそれくらいは稼げる。
だから問題は全く無い。
なんて思ったところでカレンさんは立ち止まった。
「到着よん。この紋章が商業ギルドだから、他の街に行った時には思いだしてねっ」
お金が入った革袋、という感じの紋章だ。
わかりやすくていい。
なお建物はやっぱり明るいテラコッタ風の色。
ただ錬金術ギルドより大きく、人の出入りも多そうだ。
中へ入る。
間取りは役場と同じような感じ。
入ってすぐの場所に受付カウンターがあり、奥にずらっと番号がかかれた窓口がある形。
「いらっしゃいませ。どんなご用件でしょうか?」
受付カウンターのお姉さんから声をかけられる。
「貸家を見たいの。ケルキラの街壁内の一軒家でO・NE・GA・I♡」
「わかりました。3番の窓口になります。こちらをお持ちになってお待ち下さい」
カレンさんのウィンクに全く反応せず、受付のお姉さんは3と書かれた金属板を渡してくれる。
きっとこのお姉さん、NPCなのだろう。
カレンさんの判断方法では。
待合スペースにはそこそこ人が多い。
これは結構時間がかかるかな。
そう思いつつ自分の番がくるのを待つ。
3番の窓口は3箇所の応対スペースがあって、それぞれ係員が応対している。
「錬金術ギルドもこれくらいお客さんが来る日を目指しているんだけれどねぇ」
「お店の方は結構繁盛しているじゃないですか」
「それでも店員2人と製作2人で間に合う程度だからねぇ」
なんて話しているとカレンさんが持っていた金属板が振動を始めた。
「思ったより早かったわねぇ」
立ち上がって、空いた窓口へ向かう。
言われてみれば確かにそういう選択肢もある訳だ。
その場合、此処で家を購入なんてしたら面倒な事になる。
「カレンさんはどうしてこの街にいるか、聞いてみていいですか?」
「この街のギルドが一番やりがいがあると感じたから、かしらぁ」
少し考えるように間を置いて、そして続ける。
「ここケルキラの街はパイアキアン・オンラインのスタート地点で、なおかつこの島の出入口なの。だからゲームをはじめたばかりの初心者から、もうすぐこの島から旅立つ事になる中級者まで数多くの人がいるわ。武器や防具、道具等のレベルも下からそこそこ上のものまで揃っている。
だから錬金術ギルドとしても初心者から中級者まで、幅の広い層を相手に出来る。お薬や道具だって誰でも買える安いものから完全復活可能なあたりまで用意しなければならない。
つまりやる事の幅が広いワケ。その分工夫する余地があるし、ワタシの裁量で変えられる事が多いのよ。
とまあ、そんな感じかな」
なるほど。
そう思ったら、まだカレンさんの話は続くようだ。
「もちろんケルキラの街にも欠点はあるわよ。周囲の街に比べると家賃を含めて物価が少しお高めだし、ある程度以上珍しい薬草が採取できる場所が近くにないしぃ。
ただこのパイアキアン・オンラインの世界に慣れていなくて、なおかつそこそこ稼げる人だったら、最初の拠点としては悪くないと思うわよ。
さっき言った通り、中級のものまで一通り揃っているし、珍しいというレベル以外のものは大抵手に入るしね」
なるほど、カレンさん的にはこの街、結構おすすめという事か。
なら取り敢えず最初の家はこの街でいいのかなと思う。
どうせ時間はたっぷりあるのだし。
「家を借りるには商業ギルドへ行けばいいんですか?」
「そうよぉ。何なら今からでも行ってみる? 商業ギルドは遅くまでやっているからまだまだ間に合うわ。もし行くなら私も付き合うわよぉ」
それは助かる。
何せゲーム的常識もこの世界の常識もまだまだ足りない状態だから、私は。
商業ギルドの場所すら知らなかったりするし。
でもちょっと疑問と言うか不安はある。
「カレンさん、このギルドの方はいいんですか、留守にして」
「一般の受付はお店の方だし、心配はいらないわよぉ。それにこっちも私がいない間はデミオ君が対応してくれるしぃ」
「すみません。それではお願いしていいでしょうか」
「もちろんよぉ」
カレンさん、ガッツポーズ。
右腕の筋肉の盛り上がりが冗談みたいなレベルだ。
◇◇◇
商業ギルドへ向かって歩きながら、どんな家がいいかを話し合う。
「ラッキーちゃんならある程度走り回れる広さの庭があった方がいいわよねぇ。錬金術師なら家やギルドで錬金する時間なんてのもあるしぃ」
確かにそうだなと思う。
ボーダーコリーは運動量が必要な犬種だ。
ボーダーコリー系雑種に見えるラッキー君もきっとそうだろう。
「でもそれだと家賃、高くなりませんか?」
「街の中心部だと高いどころか物件そのものが無いと思うわよぉ。でも西側、森に近い方ならそうお高くないわ。街の中心から1kmくらい離れるけれど、自分で薬草採取するならそっち側の方が便利だしねっ♡」
なるほど。
「そちら側だと薬草を採取できるんですか?」
「西北西にあるエブロプーリの森、南西のコソンキョーリの森どちらでも採れるわよぉ。コソンキョーリの森の方がいい薬草が多いけれど、その分魔物や魔獣が強いって感じ。
でもまあ、あまり奥まで行かなければ今のミヤちゃんなら大丈夫だと思うわよぉ。具体的には森の中へ入って1時間以内の場所なら、出てもせいぜいスケルトンやスライム位だからぁ」
確かにそのくらいなら大丈夫だ。
何ならラッキー君だけでも問題ない。
「予算はどれくらいが相場ですか?」
「月あたり7,000Cくらいで充分じゃないかしら。それくらいなら今のミヤちゃんなら余裕よね」
「余裕という程でもないですけれど、大丈夫です」
旧要塞でスケルトンいじめを2回やればそれくらいは稼げる。
だから問題は全く無い。
なんて思ったところでカレンさんは立ち止まった。
「到着よん。この紋章が商業ギルドだから、他の街に行った時には思いだしてねっ」
お金が入った革袋、という感じの紋章だ。
わかりやすくていい。
なお建物はやっぱり明るいテラコッタ風の色。
ただ錬金術ギルドより大きく、人の出入りも多そうだ。
中へ入る。
間取りは役場と同じような感じ。
入ってすぐの場所に受付カウンターがあり、奥にずらっと番号がかかれた窓口がある形。
「いらっしゃいませ。どんなご用件でしょうか?」
受付カウンターのお姉さんから声をかけられる。
「貸家を見たいの。ケルキラの街壁内の一軒家でO・NE・GA・I♡」
「わかりました。3番の窓口になります。こちらをお持ちになってお待ち下さい」
カレンさんのウィンクに全く反応せず、受付のお姉さんは3と書かれた金属板を渡してくれる。
きっとこのお姉さん、NPCなのだろう。
カレンさんの判断方法では。
待合スペースにはそこそこ人が多い。
これは結構時間がかかるかな。
そう思いつつ自分の番がくるのを待つ。
3番の窓口は3箇所の応対スペースがあって、それぞれ係員が応対している。
「錬金術ギルドもこれくらいお客さんが来る日を目指しているんだけれどねぇ」
「お店の方は結構繁盛しているじゃないですか」
「それでも店員2人と製作2人で間に合う程度だからねぇ」
なんて話しているとカレンさんが持っていた金属板が振動を始めた。
「思ったより早かったわねぇ」
立ち上がって、空いた窓口へ向かう。
8
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。


Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる