フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~

於田縫紀

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第3章 はじめての依頼と新しい仲間?

第20話 ラッキー君との生活方法

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 海岸までで治覚草を7.1kg採取。
 海岸をじっくり歩いて治害草を追加で5.9kg採取。
 そして池というか泉っぽい場所で育療草を5.2kg採取。

 育療草を採りに行く途中でスライムが出る、そう聞いていたから少し心配だった。
 ラッキー君がスライム等の魔物と戦って怪我したりしないかと。

 しかし全くの杞憂だった。
 ラッキー君、スライムやスケルトン程度なら余裕で勝てる位に強い。
 狂戦士バーサーカー戦斧バトルアックス無しの私よりずっと強いだろう。

 ただラッキー君、倒した魔物の魔石を食べてしまう。
 そんな固い物食べても大丈夫なのだろうか。
 消化するのかと心配になる。

 不安になる事があったら検索だ。
 スライムを一掃した後、小休憩して検索。
 ヒットした攻略ページの説明を読んでみる。

『テイムした動物や魔獣には、魔物や魔獣の魔石を食べるものが存在します。これは魔石に含まれる魔力や魔物の能力を取り入れる為です。これらを取り入れる事によりより強靱に進化します』

 なるほど、魔石を食べても問題は無く、むしろ強くなると。
 なら私も魔石を食べれば強くなるのだろうか。
 そう思ったら続きにこんな事が書いてあった。

『ただしプレイヤーキャラクター等の人間は魔石を食べても進化する事はありません。むしろ魔毒に犯されて病気になる可能性が高いので、やめた方がいいでしょう』

 どうやら人間にはそういった進化は不可能なようだ。
 他の検索結果にテイムする魔獣や獣についての項目があったので見てみる。

 案の定魔犬についての説明が載っていた。
 ラッキー君と暮らすにはどうすればいいだろう。
 立ち止まって読んでみる。

『魔犬は比較的人に馴れやすく一緒に生活をしやすい、お勧めのテイム対象です。自分が倒した魔物や魔獣の魔石を食べてしまうので褒賞金は貯まりにくいですが、戦闘力が高く、戦闘時には頼りになります』

 ここまでは先程読んだ内容とほぼ同じだ。

『食べ物は現実の犬と異なり、人間が食べるものなら何でも与えて大丈夫です。ただし好物はやはり肉系統のようです』

 どうらやドッグフードとか専用肉を購入するなんて事はしなくていいようだ。
 今日のお昼も私が持ってきた予備の御飯で大丈夫だろう。
 少しだけ安心。

『魔犬は一般的に中型犬以上の大きさです。ですから通常の宿や貸部屋を利用する事は出来ません。
 ペット同伴可能な宿かペット居住可能物件、もしくは自分の家を購入する事になるでしょう』

 今住んでいる錬金術ギルドの部屋は駄目だろうか。
 もしそうなら他に住む場所を探す必要がある。

 流石に購入は資金的に無理だろう。
 まずは宿か貸部屋だな。
 この辺の事情もあまり私は詳しくない。
 カレンさんに聞けばわかるだろうか。

 さて、調べたい事はひととおりわかったし、薬草もノルマ量は採取し終わった。
 時間ももうすぐ11時半。
 船着場へ戻って食事にしよう。
 ラッキー君もお腹がすいているだろうし。

「船着場に戻って昼食にしよう。それでいい?」

 ラッキー君は頷いて、とことこ先に歩き出す。
 言葉は結構通じているようだ。

 わんこは自分の好きな言葉は大体覚えるし理解出来る。
 例えば『散歩』とか『ごはん』とか。
 きっとラッキー君もそうなんだろう。
 そう思いつつ、跳ねるように歩いて行くラッキー君の後ろを追っていく。

 ◇◇◇

 西の要塞跡には行かない事にした。
 何せ薬草、もう充分以上に採っている。
 合計するともう50kg近い。
 
 ゾンビ等との戦闘で更にレベルアップした今の私、アイテムボックスには63kg位の容量がある。
 でも装備その他で12kg程使っている。
 つまり残り容量はあまり無い。

 だから食後2時間はラッキー君と遊ぶ事にした。
 誘惑に負けたのだ。
 私の目の前にお座りして『遊ぼう』とおねだりするラッキー君に。

 初級の錬金術講習で私は加工魔法初級も手に入れた。
 木材等、そこまで固くないものを思い通りの形に切ったり彫ったり曲げたりする魔法だ。

 そして岩場の隅にある小さな砂浜に、そこそこ大きい丸太が流れ着いていた。
 加工魔法のひとつ、切断魔法で丸太を切断。
 更に切削魔法で周囲を削ってフリスビーもどきが完成。

 直径20cm程度と小さいけれど、うまく飛んでくれるだろうか。
 あとラッキー君、フリスビーで遊んでくれるだろうか。
 わからないけれど挑戦だ。

 島に来てすぐ治害草を採取した、岩場の上にある砂地と草地のところでフリスビーを構える。
 ラッキー君が期待の目で私の方を見ている。
 これなら大丈夫だな。

 問題は私の腕でフリスビーがちゃんと飛んでくれるか。
 岩の隙間や海に落としたら悲しいので、狙うのは海と反対側。
 距離を狙うより真っ直ぐ飛ばす事を意識して、手首のスナップで前方へ。

 思ったより勢い良くフリスビーが前へと飛んだ。
 ラッキー君がダッシュで追いかけていく。
 なかなか足が速い。
 流石魔犬だ。

 100mくらい向こうでラッキー君は空中のフリスビーに追いついた。
 そこでジャンプ! 空中キャッチに成功!
 フリスビーをくわえてダッシュの勢いで戻ってくる。

 ラッキー君は私の前にフリスビーを置いた後、上目遣いでお座りした。
 これは間違いなく『もっと投げろ』だ。

 私はフリスビーを拾い上げる。
 ラッキー君は期待に満ちた目で私を見た。
 仕方ない、もう一投してやるか。
 今度はもう少しスナップを強めに投げてみる……

 ◇◇◇

 楽しい時のわんこは加減を知らない。
 それは魔犬であっても同じようだ。
 普通の犬より体力がある分始末に負えない。

 大変に勿体ないけれど初級治療薬ポーション(錬成失敗品・効果5割)を使ってしまった。
 理由は簡単、フリスビーの投げすぎで右手首が痛くなったから。

 期待に満ちたラッキー君の目が可愛すぎて無視出来なかったのだ。 
 だからまあ、仕方ない。
 でも次からはもう少し限度を考えよう。
 そう私は誓った。

 なお手首疲労の元凶、ラッキー君も疲れたようだ。
 今は陽が当たる草地でのんびりお昼寝中。

 でもそろそろ、船着場へ行くとしよう。
 あと20分くらいで予定時間だから。

「ラッキー、そろそろ行くよ」

 ラッキー君は起き上がり、ん? という感じの表情をする。
 どうせこっちの言っている事はわかっているだろう。
 そう思って歩き出すとついてきた。

 ところで帰りの船、ラッキー君を乗せて大丈夫だよな。
 調べたところ大概の交通機関はペットOKとあったので大丈夫だろうけれど。

 船着場にはあっさりと到着。
 よく見るともう船が見えている。

 帰ったらまず錬金術ギルドへ行って、カレンさんにペットOKの宿や貸家の事を聞くことにしよう。
 そう思いつつ私は船が到着するのを待つ。
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