フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~

於田縫紀

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第3章 はじめての依頼と新しい仲間?

第19話 君はラッキー・ジュニア君

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 わんこの方を見る。
 うん、やっぱり可愛い。
 それになかなか賢そうな顔をしている。
 一緒に行きたいというのなら連れて行ってやりたい。

 ただ連れて行って大丈夫だろうか、生活出来るのだろうか。
 その辺りが気になる。
 錬金術ギルドの部屋に入れるのはまずいかもしれないし。

「ちょっと待っていてね。連れて行って2人とも路頭に迷うと困るから、少し調べるから」

 きゅう。
 わんこはわかったというように小さく鳴いて頷く。
 やはり賢い、この子。

 さて、それではネットで調べるとするか。
 ゲーム外、ブラウザを視界に出す。
 さしあたってこのわんこと一緒に暮らせるかだな。

『パイアキアン・オンライン テイム』

 まずはこれで検索。
 CMやアフィリエイト系ブログらしいのは無視して関係ありそうな部分だけを開いて斜め読み。

 ふむふむ、ペットをテイムするのはそこそこある事のようだ。
 少し高いけれどペットと泊まれる宿もある。
 さらに貸家を借りるのもそう難しくないようだ。
 2週間から借りられる貸家もあるらしい。

『魔犬』についても検索した。
 普通の犬が魔物や魔獣の多いところで生活した結果、魔力を体内に取り入れ魔獣になったもの、だそうだ。
 なおカテゴリー的には魔獣だけれど、性格はその個体次第。
 特に人を襲う等といった性質は無いらしい。

 そしてティムしたペットのステータスや健康状態は飼い主、つまり私のパスポートで確認可能。
 病気や怪我については人間用の薬品で対処可能なようだ。
 
 なら多分問題無い。
 いや、多少問題があっても何とかなるし何とかする。
 という事で。

「どうやら大丈夫みたいだけれど、一緒に来る?」

 きゅう、きゅう。

連れて行くテイムする場合は名前をつけて下さい』

 わんこが私の方へやってくる。
 頭を私にこすりつけるようにして甘えてくる。
 うむ、かわいい。
 でもちょい汚れ気味だから清浄魔法一発。

 うん、きれいになった。
 全身が白で、両耳から下、胸毛部分までに焦げ茶色の毛が混じるという色合い。
 毛は全身結構もさもさ。
 鼻はピンク、目は茶色でわりと大きめで可愛い顔をしている。

 さて、名前をつけるにもオスかメスかわからないとな。
 ちょっと抱えて持ち上げて確認、オスだった。
 ならどんな名前がいいだろう。

 少し考えたけれど、どうしても先代、私が子供の頃から家にいたわんこの名前が出てきてしまう。
 何となく似ているのだ。
 顔の周りの毛の色とか、顔がちょっと横に大きめのところとか、耳が大きいところとか。
 あの子、ラッキーはコーギーだったけれど。

 よし、それでいいか。

「それじゃ君の名前はラッキージュニアでいい?」

 きゅう、きゅう。
 頭を擦り付けて甘えてくる。

『魔犬、ラッキージュニアを仲間に《テイム》した!』

 これで良し!
 甘えてくるのをよしよしと思い切り撫でてやる。
 これくらいの大きさがあると思い切りよくわしわし撫でられて楽しい。
 ひとしきりなでなでしてからラッキージュニアに聞いてみる。

「これから薬草採りに行くけれどどうする? 魔物と戦うかもしれないけれど」

 ラッキージュニア、もうラッキーでいいか、はすっと立って私の方を見る。
 ついてくる、そういう意思表示だろう。

「わかった。一緒に行こう。ただ魔物や魔獣が出てきた時は私の後ろに下がってね」

 後半部分は聞いているのかどうかわからない。
 わんこはえてしてそんなもの。
 自分が聞きたい部分だけを聞いて理解するのだ。
 本当は全部わかっているくせに。

 やはりラッキー、先代のコーギーの方を思い出してしまう。
 何か仕草も似ている気がするし。
 現ラッキーの方が大きいし、色も大分違うし、耳も現ラッキーは普段は寝せているというかたらしているのだけれど。

 さて、それでは薬草採りを再開しよう。
 なんて言ってもそれらしい処を歩くだけでいい。

『癒療草を発見しました。採取しますか?』

『聖療草を発見しました。採取しますか?』

 肯定するだけで自動採取してくれるから。

 癒療草は白いタンポポといった感じの草で、日向になっている部分そこら中に生えている。
 足りなくなっている5種類には含まれないけれど、採取量が少ないので3kg位採取出来れば助かるとの事だ。

 1株あたりの収量は多くないけれど、何せ生えている数が多い。
 根さえ残しておけばまたすぐ生えてくるらしいので、遠慮無く自動採取。

 聖療草はヨモギっぽい草で、チャペルに近い森林と草地の際にもさっと生えているようだ。
 草餅が出来そうな程度に柔らかい葉や茎が採取部位。
 ノルマは5kg。

 そしてチャペルの日陰部分には魔療草が生えているというか、蔓延っているくらいの勢いだ。
 こちらは見た目がドクダミ。
 これもノルマは5kg。

 ラッキーと一緒にチャペルの周りを絨毯爆撃という感じで歩きまくる。
 ラッキーは尻尾をゆっくりふりふりしながら、私の近くをついて回る感じだ。
 時々こっちを振り返ったりするのが可愛い。

 チャペルの周りをぐるっと1周した結果、癒療草、聖療草、魔療草3つともあっさりノルマの収量をクリアした。
 癒療草は4.1kg、聖療草は5.9kg、魔療草に至っては9.8kgも採取している。

 あとは治覚草、治害草、育療草か。
 でも治害草はあと2~3株採ればノルマ達成。
 そして時間はまだ10時40分。

 それでは此処から北へ進む道を海岸まで歩きつつ、治覚草を採取することにしよう。
 
「それじゃ北の海岸に向かうよ」

 通じるかどうかはわからないけれど、ラッキーに次の行動を伝える。
 ラッキーが立ち止まり、こっちを振り返る。
 何となく頷いてくれたような気がした。
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