フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~

於田縫紀

文字の大きさ
上 下
16 / 139
第3章 はじめての依頼と新しい仲間?

第16話 依頼の説明

しおりを挟む
 スケルトン19体を倒し、魔魂草を8kg採取。
 役所から貰える褒賞金だけで3,800Cカルコス
 カレンさんに魔魂草を渡せば追加で800Cカルコス
 時給として考えれば相当に割がいい。
 
 もう一生これで暮らしてもいいんじゃないだろうか。
 エルフだから見かけや身体能力はずっと若いままだし。
 相当にとんでもない年齢にならない限りは。

 でもそうするとギルドや宿屋じゃなくて自分の家が欲しくなる。
 借家はどれくらいのお値段なのだろう。
 家を借りるには商業ギルドだっただろうか。

 そんな事を考えながら錬金術ギルドへ。
 中はカウンターの向こうにカレンさんがいるだけ。
 ビスタさんは帰ったようだ。

「ただいま」

「おかえりなさい。ちょうど良かったわぁ。ビスタちゃんは帰ったし船の予約もしたから、早速だけれど詳細説明、いい?」

 むしろ有り難い。
 今この話が出来れば夕食をゆっくり食べに行ける。

「大丈夫です。御願いします」

「ありがと。それじゃ座ってぇ~」

 いつも通りカウンターへ。
 カレンさんは私の前にA2サイズくらいの紙を広げた。
 見た感じでは島の地図だ。

「ヴィード島の地図よ。こんな感じでぐるっと一周しても4km無い位の小さな島よぉ」

 形は横長の長方形の、上辺と左下角を引っ張って伸ばしたような感じだ。
 所々に赤文字と青文字で書き込みがしてある。
 
「青文字が主な薬草が生えている場所で、赤文字が付近で出現する魔物。
 薬草については今回特に必要なもの以外も書いておいたから、余裕があればひととおり採取してきてくれると助かるわぁ。
 ただし今のミヤちゃんだと危ない場所もちょっとだけあるから注意してね。具体的にはこの辺、南東の林にある納骨堂付近」

 見ると直径100m位の範囲が赤線で囲ってある。

「何かあるんですか?」

「納骨堂にはグールやレイスが出るのよ。
 レイスはまあ、昼間の光が入る場所には出てこないわ。だから塔の中に入らなければ問題は無いけれどね。

 でもグールはたまに納骨堂から出てくるわ。光で急速に劣化するけれど、林の中なら50m位は動ける可能性があるのよ。だからこの範囲内には入らないことをお勧めするわぁ」

 グールやレイスか。
 名前は見た覚えはあるけれど、出会うのは当分先だと思って調べていなかった魔物だ。
 どれくらいの強さだろう。

「強いんですか?」

「グールは1体でもミヤちゃんとほぼ互角よ。力が強いしとにかく打たれ強いの。
 ただ速さはミヤちゃんよりずっと遅いから逃げるだけなら簡単よ。昼間なら林の中くらいの光でも3分くらいで朽ちちゃうから、逃げ切れないって事はないしねっ♡」

 グールに出遭ったら逃げれば大丈夫か。

「レイスはどうなんですか?」

「レイスの強さや個性はは個体によって大分違うわ。だから一概には言えないの。ただ弱いレイスでも普通に攻撃魔法を使ってくるから近寄らない方が無難よぉ」

 攻撃魔法を使ってくるのか。
 確かにそんな相手と戦うのはまだ早い気がする。

「近づかなければいいんですね。わかりました」

「そう、近づかなければ問題は無いと思うけれどね。日帰り予定だし。
 それでも万が一、天候急変で戻れないなんて事になると面倒だから、避難所も一応作ってあるわよ。

 港から少し上がった場所にある、この建物よ。ここはいざという時の為に頑丈に作ってあるし、年に一度は錬金術うちのギルドで整備しているからそれほどボロくは無い筈よぉ」

 なるほど、そういう場所も整備しているのか。
 至れり尽くせりだなと思う。

「ギルドでそういう事もしているんですね」

「勿論よぉ。薬草が採れる場所は貴重だから、船着場も含めて整備をしているの。
 でもわざわざ船で島にわたって薬草採取なんて、あまり冒険者はやってくれないのよ。だから薬草が足りなくなって特別依頼を出した時くらいかしらぁ、使うのって。
 
 ついでだから島でのモデルコースを説明するわよ。まずは此処の船着場から上陸してぇ……」

 カレンさんが説明してくれたお勧め採取コースはこんな感じ。

  ① 船着場についたら、そのまま西へ歩いて海沿いの岩場と平地の境の草地で治害草を採取する。
  ② 治害草を採取したら近くの道から北のやや高い部分へと上り、避難所を確認する。
  ③ 避難所を確認したら道を北上して、集落跡の北側にあるチャペルへ。
    集落跡一帯はゾンビが出るので注意。ただし動きはかなり遅いので、一度大声を出してこちらに向かって来させてから全部倒すと楽。
    集落跡の各所で魔魂草を採取出来るが、これは最優先では無いので採取出来る時でいい。
  ④ チャペル直近の日向で癒療草と聖療草、チャペル裏の日陰で魔療草を採取出来る。
    癒療草は急ぎではないけれど元々の採取量が少ない薬草なので出来る限り採取しておく。
  ⑤ チャペルから北へ向かい、林に入る。この付近から道沿い右側、日当たりがいい場所に治覚草が生えているので採取する。
  ⑥ 林を突き抜けると砂浜に出る。ここにも治害草が生えているので採取する。
  ⑦ 道を戻って林を抜け、チャペル手前で西側へ入る小道へ。
    そのまま歩くと小さな谷間に入る。スライムが多いので注意。谷間の中心の流れを辿って行くと小さな池に出る。ここの周囲で育療草を採取する。
  ⑧ ここまで採取してリストの量に足りない薬草があれば、集落内を西に向えば小規模な要塞跡がある。スケルトンが出るが、周囲で癒療草と聖療草、魔療草を採取出来る。

 注意点は、集落から林を通って北の砂浜へ行く途中、道より東側へ行かない事。
 これは納骨堂のグール対策だ。

「……こんなところかしら。ミヤちゃんなら朝9時に上陸して、お昼過ぎくらいまでには採取が終わっていると思うわよぉ。船は15時に着くようにするから、それまで港なり避難所なり好きなところでゆっくりしていて」

「わかりました」

 それほど難しい事は無さそうに感じる。

「それじゃ明日、持って行く装備をひととおり渡すわよぉ。これは報酬を兼ねているから、返す必要はないわ」

 カレンさんはテント、シート、寝袋、マット、食器といったキャンプ用品みたいなものをカウンター上に並べはじめた。
 この辺の物も買うと結構するだろう。
 そういう意味でも今回の依頼、なかなか有り難い。

 この辺はきっと依頼の報酬というよりカレンさんの好意なのだろう。
 依頼の褒賞金よりもあの斧やこれらの品物の方がよっぽど高価そうだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~

山須ぶじん
SF
 異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。  彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。  そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。  ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。  だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。  それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。 ※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。 ※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...