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エピローグ

78 明日へ!

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 7月の金曜日、午後7時頃。
 現在地は飯農市、東吾野駅と吾野駅の間にある、霧島駅の上空50m。

 俺は斜め下を見下ろす。
 学校が見えた。あの頃はまだ新しかった校舎も所々くすんでいる。
 無理もない。もう10年以上経っているのだ。

 神の力を持った敵と戦った後の2年間も、決して退屈な日々ではなかった。
 遊んで食べて戦って、でも2年後半からは結構勉強もした。
 勉強プラス知識の分け与え、プラス知識の分け与えられなんて効率化してだけれども。

 結果、何とか近場の国立の大学に合格。無事4年で卒業して、とある財団に入って今年で4年目。
 今の俺は、あの頃程ではないけれど、それなりに騒がしい日々を送っている。

 ふと見ると、学校内の前にエアストリームを停めていた場所に何かがあった。
 よく見ると同じくらいの大きさの、バス型キャンピングカーだ。
 どうやら後輩たちも、よろしくやっているらしい。

「佐貫君、こんな所で何をやっているですか」

 懐かしい声がした。

「お久しぶりです、三郷先輩」

「久しぶりだね、お兄ちゃん」

 彼女はそう言って笑う。

 三郷先輩は現在、この学校の高等部の教師をしている。
 専門は理科で、防衛時は指揮所の担当。
 神聖騎士団が弱体化した後も、他の勢力等による侵攻や潜入があるらしい。
 被害を受けたという話は聞かないから、きっとうまくやっているんだろう。

「何、黄昏れているですか」

 そう言った三郷先輩の左手薬指には、光る指輪。
 昨年めでたくというか、やっと後台先輩と結婚したのだ。
 ちなみに後台先輩は、一般の企業でサイバネ関係の研究をしているとの事。

「何となくここに来てみたくなった。ちょっと昔を思い出して」

「明日の結婚式を前に、逃げ出したくなったですか」

 そう、俺は明日で結婚式を迎える。
 この学校で、正確にはこの学校の移転前の校舎で出会った彼女と。

「逃げるというかもう一度思い返しにかな。ここが今の俺の原点だから」

「センチメンタルという奴ですね」

 そうかもしれない。

 間もなくあたりも暗くなり、あちこちの照明が点く時間になる。
 そうなるともうすぐ学校の始業時刻。後輩達の一日が始まる。
 きっとあの頃と同じような騒がしくて輝かしい一日が、此処でも繰り返されているのだろう。
 俺はもう、その中にはいないけれど。

 俺はふと思いついたことを、三郷先輩に聞いてみた。

「三郷先輩、今の後輩達、というか俺達の前も後の世代も、同じように世界を賭けて戦ったりしているのかな。戦う対象は違うとしても」

「当然じゃないですか」

 三郷先輩はそう返答して続ける。

「世界を賭けた戦いは、大なり小なりいっぱいあるのです。それぞれ私達の知らない英雄がいて、皆で戦い続けて勝ち続けているのです。だから世界は今日も何とかなっているです。私達はもう、サポートする側になりつつあるですけれどね」

 俺もそう思う。あの古いバス型キャンパーを見ると確信できる。
 かつてあそこに停まっていた俺達のエアストリームは、卒業時に松戸邸へ返した。今はどうなっているだろうか。

「さて、私はそろそろ学校へ戻るです。佐貫君はどうするですか」

「俺もそろそろ戻るよ。今日はあの面子、全員うちに来る予定だし」

「ゴールインできなかった3人が、花嫁をいじり倒さなければいいですけどね」

「この場合、いじられるのは俺だろきっと」

「それもそうなのです、昔からそうでしたね」

 三郷先輩はそう言って、笑って。

「学校に戻るです。それでは明日!」

 空間移動で姿を消した。

 俺はもう一度、学校の方を見る。
 停められているバス型キャンパーが夕日に輝き、かつての銀色のエアストリームの姿と重なる。

 思い出す。
 いつもバタバタしていて、時には世界を賭けて戦って、しょっちゅう逃げたくなった甘酸っぱく輝ける日々を。

 そして。
 その頃程派手でも初々しくもがむしゃらでもないけれど、きっと同じ位価値のある望んだこれからに向けて。
 俺はこの場を後に、一歩踏み出した。
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感想 4

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みんなの感想(4件)

いぬたぬ
2024.11.23 いぬたぬ

記憶に無い作品だ。楽しませていただきます。やはりたまには巡回しないといけませんな。

於田縫紀
2024.11.23 於田縫紀

 元の話は群馬の魔王城の話の後、機械オタクの前に書いたものです。今から概ね8年位、カクヨムに引っ越す前ですね。
 なので最近の私の話と、書き方を含め結構違うお話になっていると思います。

解除
三等兵
2024.11.05 三等兵

ハーレム主人公は爆誕しませんてしたw

解除
まりっか
2024.07.25 まりっか

白い恋人じゃなくて良かったね

解除

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