上 下
67 / 78
第9章 激闘冬合宿!~新型猛獣女子、襲来~

67 昼食バトル

しおりを挟む
 とりあえずこの前のような、自力移動不可能な状態までは至らなかった。
 被害は左肩と右腿の2箇所。なお痛覚は遮断済みだ。

 犯人は肩が委員長、腿が松戸。
 内出血に筋肉損傷で骨にひびが入っているが、この程度なら急速治療が可能だ。
 少なくとも今の俺なら。

 という訳で1時間治療に専念して無事復活。昼食の時間になった。

 今日の昼食は、海鮮丼勝手盛りだそうだ。
 以前からの5合炊き炊飯器の他に、俺の3合炊き炊飯器も持って来て準備は万端。
 丼の在庫が無いので、四角い大きい平皿に分厚く御飯を盛り付け、各自テーブルへ。

 刺身は自分で取って盛り付ける方式。
 大トロを始めとするまぐろ各部、漬けにしたまぐろ赤身、みらいが試食しながらスプーンでかき取ってネギと混ぜたというネギトロ。
 更にアジの刺身とタイの刺身も並んでいる。
 量的にはネットで見た10人前舟盛りの軽く倍以上。

「刺身は在庫が大量にある。足りなければ切って出す」

 料理長の綾瀬がそう説明。
 これに御飯が8合。

 今度こそ、のんびり食べても俺が食い負けて、腹6分目位で我慢する必要は無いだろう。そう信じたい。
 何せ大トロすらドーン!という感じで大胆に並んでいる。

 いただきますの唱和の後、大トロ上空で箸と箸による空中戦が始まった。
 俺はそれには参加せず、まずは大量にあるまぐろ赤身から頂く。
 途中で漬けになっている赤身も試食する。

 うん、まだ新鮮だからか身が硬いが悪くない。
 多分もうちょっと熟成した方が、旨みは出るんだろうけれど。

 最後に残った大トロを何とか1枚キープ。
 というかトロだけでも十数枚あった身が既に全滅している。
 早すぎるぞお前ら。食事はもっとゆっくり楽しむものだろう!

「それにしても凄い量だな、この刺身の量」

 何となく感想を言ったら、即座に反撃された。

「こんなものじゃない」

「大変だったのです!」

 そして委員長が間を置いて言う。

「ん、佐貫。頭と尻尾が無くてヒレも切って血抜きも済んだ状態のマグロ60kg以上から、どれくらい身が取れるか想像して。その60kgのマグロを捌く苦労も」

「ユーノの家の広い台所とダイニングを占拠して、全員でやった。あれくらい広い部屋とキッチンが無いと無理」

「骨まで刃が通る長い包丁すらないからね。仕方ないから某所から脇差借りてきて熱湯消毒して、秀美と二人がかりで何とか5枚に下したんだよ」

「ん、テーブルの上に持ち上げるだけでも大変だったな、重すぎて」

「内臓や血合いなんかの加工を主にやっていた。それだけで精いっぱいだった」

「私はひたすら骨や皮からスプーンで身を取っていたです。あの後しばらく右腕のプルプルが止まらなかったです」

「それで結果的に40kg以上の刺身に出来るサクと、ネギトロ含めて鍋4つ分位の加工品になったの。まあ半分以上はおすそ分けしたし、冷凍した分もあるけれど」

 昨日の苦労を晴らすかのように、一斉に説明が飛ぶ。
 思った以上に大事だったようだ。

「うーんちょっと調子に乗り過ぎたです。これでも群れの中では、小さめのを狙ったつもりだったですが」

 流石の三郷先輩も少しは反省している模様。

「ん、先輩は悪くないですよ。私でも見つけたら調子に乗って釣っちゃうな」

「でももう合宿中は、あの糸とたも網で釣りあげられる以上の大きさの魚を捕るのは禁止ね。もう配れるところは美久の実家や牛久、取手両先生、柿岡先輩や神立先輩まで配っちゃったし。それに正直魚の解体だけであそこまで苦労するのも避けたいかな」

 委員長が軽く流そうとするけれど、松戸はもう勘弁してくれという感じでそう宣言。
 そんなに強烈な量なのか……
 俺は自分の想像力の無さをちょっと恥じた。

 さて、あれだけ話しながら食べても、刺身の皿が既に空になりつつある。
 綾瀬が諦めて、キッチンに追加の刺身を切りに行った。

 委員長が、ネギトロと米飯の割合が間違っているネギトロ飯を作って食べている。
 負けじと守谷が漬けと赤身とタイの身を混ぜ込み、色々配分が間違った混ぜご飯を作ってかっ込む。
 三郷先輩が箸を刺身の皿の上で滑らせ、一気に十数枚を箸でつまみプルプルさせながら自分の皿に持っていった。

 ふと俺は昔のドラマの主人公の決め台詞を思い出す。
『俺の胃袋は宇宙だ!』
 こいつらの胃袋も宇宙なんだろう。餓鬼とか邪神とかが満ち溢れた。

 綾瀬が刺身を追加した皿を持ってくる。
 ちゃっかり自分の分を盛った別皿も持ってくる。
 松戸が空になりつつある皿を整理しつつ、残った刺身と今きた刺身を分捕る。

 俺はもうこの風景だけでおなかいっぱいだ。
 一応ラーメン丼にてんこ盛り分は食べているから、当然ではあるのだけれど。

「それにしても松戸家、いい家だったです」

「ん、台所も広いしLDKで20畳以上はあるんじゃないかな」

「普通の皿が全てノリタケ、ここの皿もそう」

 松戸が肩をすくめる。

「皿は厚木のノリタケアウトレット閉店時にまとめ買いしたから安かった、って母が言っていたけれどね」

「ノリタケの皿って高いのか?」

 綾瀬に聞いてみる。
 綾瀬は、俺が丼代わりに使っている四角くて大きい平皿を目で指して言った。

「例えばそれはシェールブランの27cmスクエアプレート、1枚5千円位」

 え、このただ白い四角い皿が!?
 確かによく見ると繊細な模様があったりするけれど。

「安い方。例えば松戸家で出されたティーセット」

「ん、あの各皿色違いの桜の絵が入ったかわいい奴かな。神立先輩が好きそうだなと思って憶えているけど」

「あれは大倉陶園の手書きのシリーズ。一客で数万超える」

 うーん、我が家のダイソーやセリアのものとは値段も格も違う。

「車用は収納考えて四角い食器メインにしたって、母が言っていたわ。あのティーセットは家を新築した時の頂き物だし」

 松戸はそう言うが、きっと間違いなく金持ちなんだろう。
 そうでなければこんな豪華なキャンピングカーを、あっさり貸してくれる訳がない。

 それにしても皆、食べまくっている。
 流石に刺身大盛り皿5皿完了で、料理長からストップ指令が出た。

「これでも一皿に1kg以上盛り付けている。これ以上は健康を保証できない」

「ん、確かに食べ過ぎかもね」

 間違いなく食べ過ぎだ。

 8合炊いたご飯は既に空。
 ご飯一合で330g、8合だから約2.6kg。
 それに刺身が最低5kg以上。
 合計7.6kgを5で割ると一人平均1.5kgちょっと。

 俺はその半分も食べていないと思う。
 ついでに味噌汁各1杯もそれに加わる。

 お前らどんだけ食べているんだ。
 守谷に至っては見た目にも腹が出ている。
 大丈夫かお前ら。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

処理中です...