ハイブリッド・ニート ~二度目の高校生活は吸血鬼ハーフで~

於田縫紀

文字の大きさ
上 下
65 / 78
第9章 激闘冬合宿!~新型猛獣女子、襲来~

65 夜の惚気と御伽話(2)

しおりを挟む
「それで私は、介助無しで生活できるようになったのです。それでも結局、小学部の時はヒサシゲにべったりだったし、中学部に入ってからも、何やかんやで色々世話になってたです。
 義足も年に1度は新型を作っているですし、休日で寮の御飯がない時はヒサシゲの部屋に押しかけて飯を食わせてもらうですし。腕力無くて買い物でもそれ程持てないし、フライパンも重すぎて料理大変なのです。だからヒサシゲに食べさせてもらっているです。結局付き合いが長くて一番安心できるです」

 完全に後台先輩に寄生しているようだ。

「今つけている義足の装着確認していた時も、面白かったのです。あの日は私も少しはヒサシゲの事を考えて、ビキニの下を穿いて行ったです。で、下半身はそれ以外脱いで、肌に当たる部分の微調整をお願いしたです。
 それでヒサシゲが目を背けているもんだから『下の毛は処理しておいたから見ても大丈夫ですよ』と言ったら『もっと見えてはいけないものが丸見え!』と怒られたです。確かに足無いとビキニ外れ易いです。全部ずれて穿いている意味無い状態だったです。盲点です。
 でもあの時のヒサシゲの顔は傑作でしたのでしっかり憶えているです」

 それはいくら何でもあんまりだと、俺は思う。
 そんな事をされたら、思春期男子は壊れるぞ。
 よく後台先輩も我慢しているな、本当に。

 今度後台先輩と、猛獣女子被害者の会でも結成しようか。
 きっと先輩、フラストレーションを色々ためている事だろう。

「でもまだヒサシゲは一線越えてくれないのです。下半身も見られたり測られたり拭いたりしてもらっただけですし、上半身はキスもおっぱいもまだなのです。屈強な魔族男子を押し倒せる補助腕もヒサシゲに注文中なのですが、未だに作ってくれないです」

 何かすごくえぐい事を言っているような気がするが、おそらく気にしてはいけない。
 というか、仮にもほぼ全寮制の学校で、一線を越えてはまずいだろう。

 それにそんな補助腕、後台先輩が作らない方に一か月分の小遣い賭けてもいい。
 どう使われるか簡単に想像できるだろうし。

 というかそんな環境で、よく後台先輩が日常生活を送れているなと感心する。
 絶対色々溜まりまくっているのは、間違いない。

「私にはヒサシゲがいるです。だから私は大丈夫なのです。でもみらいはそんな相手もいないし、心配だったのです。やっと同級生の友達が増えて一安心なのです」

「でもみらいを引き入れたのは松戸ですよ。お礼なら松戸に言う方が良くないですか」

 三郷先輩は頷く。

「それは知っているです。勿論ユーノちゃんには感謝しているです。でも」

 先輩は俺の方を見る。

「この集団の中心は佐貫君なのです。例え発言権がなくても佐貫君なのです。その事は意識して欲しいです。何かあったら自分だけ犠牲になればいいとか、そんな事は絶対しないで欲しいです。みらい含めてあの4人の運命を背負っているという自覚を忘れないで欲しいです」

 まるで何かが見えているかのように、三郷先輩は言う。
 例えば俺がこの合宿前から悩んでいる事とか。
 だから聞いてみる。

「もし、勝ち目がなさそうな相手と戦わなければならないとしたら」

「そんな時こそ、自分が一人でない事を意識するです。間違えても被害を抑えるために自分一人で、なんて考えてはいけないのです。考えるべきなのは仲間を使って勝率を上げる事です。使えるモノは使って勝率を少しでも上げるよう頑張るのです」

 俺の状況がわかっているかのような台詞。
 だから更にちょっと聞いてみる。

「ひょっとして委員長か松戸に何か聞いている」

「私が聞いたのは訓練を手伝って欲しいという事だけです。後は私の経験と直感がそう言っているだけです」

 神眼は三郷先輩が嘘を言っていない事を告げている。
 なら本当に経験と勘でそう言っているのだろう。
 だとすれば凄い洞察力だ。

「焦ることは無いです。このチームは今の時点で既に強いです。今朝の訓練はそれをわかった上で、あえて意地悪したです。まだまだ強くなれるです。期待してもらっていいです」

「先輩、ありがとうございます」

 たった1学年差、しかも実際の年齢は俺の方が遥かに上の筈。
 でもそれでも三郷先輩の視点が俺より遥かに上にあるのを感じる。

「礼はいらないですよ。本人には絶対内緒にして欲しいですけれど、私はみらいの5人の姉に頼まれているです。絶対断れない状況で頼まれているので契約破棄できないです」

 その話は初耳だ。
 みらいにそんなに姉がいたとは聞いていない。
 そもそも姉妹がいるという話すら知らない。

「それって」

「絶対内緒です。みらいに聞くのも禁止です」

 三郷先輩はそう言って、今言った事がどういう意味なのか、それ以上は教えてくれなかった。

「そろそろ寝るです。おやすみなさいです」

 三郷先輩はそう言い、トレーラーに戻っていく。
 俺もしばらく海を見た後、眠くなったのでトレーラー内のいつもの長椅子に戻る。

 ◇◇◇
 
 次の朝は、何か内臓が求めているようないい匂いで目が覚めた。
 俺の真横のキッチンで、綾瀬が何やら作っている。

「おはよ。何作っているの」

「昨日出たあらで出汁を取っている。これをやっておけば後で色々使える」

 こういった手間暇であの美味しい料理が出来るわけか。

 そう感心していると固定ベッドの方からふらふらと、みらいがやってくる。

「いい匂いです胃を刺激するです」

 その顔が一瞬、昨晩の誰かと重なって見えた。
 昨日の委員長の言葉をふと思い出す。

 でも俺は、今はその謎は追及しない事にした。
 多分今、答えを急ぐ必要は無い。
 神眼の能力のせいじゃないけど感じるのだ。
 答え合わせの機会は今じゃないと。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

鋼殻牙龍ドラグリヲ

南蛮蜥蜴
ファンタジー
歪なる怪物「害獣」の侵攻によって緩やかに滅びゆく世界にて、「アーマメントビースト」と呼ばれる兵器を操り、相棒のアンドロイド「カルマ」と共に戦いに明け暮れる主人公「真継雪兎」  ある日、彼はとある任務中に害獣に寄生され、身体を根本から造り替えられてしまう。 乗っ取られる危険を意識しつつも生きることを選んだ雪兎だったが、それが苦難の道のりの始まりだった。 次々と出現する凶悪な害獣達相手に、無双の機械龍「ドラグリヲ」が咆哮と共に牙を剥く。  延々と繰り返される殺戮と喪失の果てに、勇敢で臆病な青年を待ち受けるのは絶対的な破滅か、それともささやかな希望か。 ※小説になろう、カクヨム、ノベプラでも掲載中です。 ※挿絵は雨川真優(アメカワマユ)様@zgmf_x11dより頂きました。利用許可済です。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

処理中です...