62 / 78
第9章 激闘冬合宿!~新型猛獣女子、襲来~
62 最強の管制能力者
しおりを挟む セシルの眉が上がり、彼が私に怒っていると言う事に気が付いた。
「セシル?もしかして…私の事怒っているの?私、何か貴方を怒らせるような事をしてしまったのかしら?」
折角、今回のフィリップとの結婚でセシルとの距離も少しは近づけたと思っていたのに。それは私の独りよがりだったのだろうか?
彼は怒気を含んだ声で私に言った。
「ああ、あるね。エルザは今、非常に俺を苛立たせる発言をした。一体どういうつもりで今の発言をしたんだ?」
「どういうつもりって…あ、もしかして特にする事もなかったから…と言った事に対して苛立っているの?」
それしか心当たりが無い。
「そうだ。よく分っているじゃないか。特にする事も無かった?それはあり得ないだろう?あれだけ俺が反対してもエルザはこの家に嫁いで来たんだ。だとしたら男爵家の妻として、色々やらなければならない事があるはずだろう?」
「そ、それは…」
私だって考えていた事だ。男爵家に嫁いで来たのだから、領地の事だって色々教えて貰わなければ分らないことだらけだ。
「第一、何故離れに閉じこもったきりで、両親に挨拶に来ないんだ?そんなにエルザは俺達と交流するのが嫌なのか?」
何も事情を知らないセシルは苛立ちを隠す事も無く、問い詰めて来る。
「あ…そ、それは…」
彼の言う事は尤もだと言うのは良く分っている。
けれど私はフィリップから勝手に本館へ行く事を禁じられているし、会話だってまともに交わす事が出来ない状態だ。
それどころか、結婚したその日のうちに離婚届を手渡されたのだから。
けれど…自分の置かれた状況をセシルには説明する気にはなれなかった。そんな事を言えば、彼の事だ。
<ほら、だから俺は2人の結婚に反対だったんだ>
そう言うに決まっている。
「何だ?図星を差されて何も言い返せないのか?」
彼は腕組みをすると上から見下ろして来た。
「あ、あの…今朝フィリップが本宅へ行ったでしょう?」
恐る恐る尋ねてみた。
「本宅?何だよ?その言い方は…。まぁ、別にいいけどな」
セシルは呆れた顔を見せると、言葉を続けた。
「兄さんなら昨日も今朝も1人で両親と俺に挨拶をしにきた。両親はエルザがいなかったから兄さんに理由を尋ねたんだよ」
「そうなのね?フィリップは何と説明したの?」
「君は…気分が優れないから、暫くは誰とも関わりたくないので放っておいて欲しいと兄から伝えてもらうように頼んだそうじゃないか?」
「え?!」
そんな…フィリップは私に正式な妻ではないのだから、勝手に本館へは行かないようにと言ったのに?
「それなのに…何だ?特にする事もなかったから刺繍をしていたって…」
セシルは私が刺繍していたハンカチを忌々し気に見た。
「あ、あの…それは…」
どうしよう?本当の事を言うべきなのだろうか?けれど、言えば絶対にフィリップの耳に入ってしまう。それ以前にセシルは私の話を恐らく信じてはくれないだろう。
「どうした?言いたい事があれば言ってみろよ?」
彼に詰め寄られたその時―
「あ、ここにいたのかい?セシル」
不意に声が聞こえ、驚いて振り向くと扉近くにフィリップが立っていた。
「あ…兄さん」
「セシルが離れに来ていると使用人から聞いたから、もしやと思って来てみたけど…やっぱりここに来ていたんだね?」
フィリップは部屋に入って来るとセシルに声をかけた。
「ああ、そうだよ。エルザに何故挨拶に来ないか、直接話を聞く為にね」
セシルは私を睨みつけている。
フィリップ…お願い、貴方から本当の事を説明して頂戴。
私は祈るような気持ちでフィリップを見たのだが…。
「エルザには理由を尋ねておくよ。それより僕の部屋に来ないか?美味しい茶葉があるんだ」
フィリップは笑顔でセシルに言う。
「分ったよ…なら、エルザも一緒に…」
セシルは私の方をチラリと見た。
「ああ、エルザはいいんだよ。昨日から食欲もないから、きっとお茶を飲むのも無理だと思うから」
「え…?わ、分ったよ」
セシルは一瞬怪訝そうな顔を見せたけれどもすぐに頷いた。
「良かった、ならすぐに行こう」
そしてフィリップは一度も私に声を掛ける事も…視線を合わす事も無く、セシルを連れて部屋から出て行った。
バタン…
扉は閉ざされ、私はまた1人きりになってしまった。
「…セシルには笑顔を向けるのね…。それに…私はフィリップの部屋に行った事も無ければ、場所も知らないと言うのに…」
その時、再び胃がズキリと痛んだ。
「う…」
私は椅子に座ると、目を閉じ…痛みが引いて行くのをじっと待った―。
「セシル?もしかして…私の事怒っているの?私、何か貴方を怒らせるような事をしてしまったのかしら?」
折角、今回のフィリップとの結婚でセシルとの距離も少しは近づけたと思っていたのに。それは私の独りよがりだったのだろうか?
彼は怒気を含んだ声で私に言った。
「ああ、あるね。エルザは今、非常に俺を苛立たせる発言をした。一体どういうつもりで今の発言をしたんだ?」
「どういうつもりって…あ、もしかして特にする事もなかったから…と言った事に対して苛立っているの?」
それしか心当たりが無い。
「そうだ。よく分っているじゃないか。特にする事も無かった?それはあり得ないだろう?あれだけ俺が反対してもエルザはこの家に嫁いで来たんだ。だとしたら男爵家の妻として、色々やらなければならない事があるはずだろう?」
「そ、それは…」
私だって考えていた事だ。男爵家に嫁いで来たのだから、領地の事だって色々教えて貰わなければ分らないことだらけだ。
「第一、何故離れに閉じこもったきりで、両親に挨拶に来ないんだ?そんなにエルザは俺達と交流するのが嫌なのか?」
何も事情を知らないセシルは苛立ちを隠す事も無く、問い詰めて来る。
「あ…そ、それは…」
彼の言う事は尤もだと言うのは良く分っている。
けれど私はフィリップから勝手に本館へ行く事を禁じられているし、会話だってまともに交わす事が出来ない状態だ。
それどころか、結婚したその日のうちに離婚届を手渡されたのだから。
けれど…自分の置かれた状況をセシルには説明する気にはなれなかった。そんな事を言えば、彼の事だ。
<ほら、だから俺は2人の結婚に反対だったんだ>
そう言うに決まっている。
「何だ?図星を差されて何も言い返せないのか?」
彼は腕組みをすると上から見下ろして来た。
「あ、あの…今朝フィリップが本宅へ行ったでしょう?」
恐る恐る尋ねてみた。
「本宅?何だよ?その言い方は…。まぁ、別にいいけどな」
セシルは呆れた顔を見せると、言葉を続けた。
「兄さんなら昨日も今朝も1人で両親と俺に挨拶をしにきた。両親はエルザがいなかったから兄さんに理由を尋ねたんだよ」
「そうなのね?フィリップは何と説明したの?」
「君は…気分が優れないから、暫くは誰とも関わりたくないので放っておいて欲しいと兄から伝えてもらうように頼んだそうじゃないか?」
「え?!」
そんな…フィリップは私に正式な妻ではないのだから、勝手に本館へは行かないようにと言ったのに?
「それなのに…何だ?特にする事もなかったから刺繍をしていたって…」
セシルは私が刺繍していたハンカチを忌々し気に見た。
「あ、あの…それは…」
どうしよう?本当の事を言うべきなのだろうか?けれど、言えば絶対にフィリップの耳に入ってしまう。それ以前にセシルは私の話を恐らく信じてはくれないだろう。
「どうした?言いたい事があれば言ってみろよ?」
彼に詰め寄られたその時―
「あ、ここにいたのかい?セシル」
不意に声が聞こえ、驚いて振り向くと扉近くにフィリップが立っていた。
「あ…兄さん」
「セシルが離れに来ていると使用人から聞いたから、もしやと思って来てみたけど…やっぱりここに来ていたんだね?」
フィリップは部屋に入って来るとセシルに声をかけた。
「ああ、そうだよ。エルザに何故挨拶に来ないか、直接話を聞く為にね」
セシルは私を睨みつけている。
フィリップ…お願い、貴方から本当の事を説明して頂戴。
私は祈るような気持ちでフィリップを見たのだが…。
「エルザには理由を尋ねておくよ。それより僕の部屋に来ないか?美味しい茶葉があるんだ」
フィリップは笑顔でセシルに言う。
「分ったよ…なら、エルザも一緒に…」
セシルは私の方をチラリと見た。
「ああ、エルザはいいんだよ。昨日から食欲もないから、きっとお茶を飲むのも無理だと思うから」
「え…?わ、分ったよ」
セシルは一瞬怪訝そうな顔を見せたけれどもすぐに頷いた。
「良かった、ならすぐに行こう」
そしてフィリップは一度も私に声を掛ける事も…視線を合わす事も無く、セシルを連れて部屋から出て行った。
バタン…
扉は閉ざされ、私はまた1人きりになってしまった。
「…セシルには笑顔を向けるのね…。それに…私はフィリップの部屋に行った事も無ければ、場所も知らないと言うのに…」
その時、再び胃がズキリと痛んだ。
「う…」
私は椅子に座ると、目を閉じ…痛みが引いて行くのをじっと待った―。
23
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
鋼殻牙龍ドラグリヲ
南蛮蜥蜴
ファンタジー
歪なる怪物「害獣」の侵攻によって緩やかに滅びゆく世界にて、「アーマメントビースト」と呼ばれる兵器を操り、相棒のアンドロイド「カルマ」と共に戦いに明け暮れる主人公「真継雪兎」
ある日、彼はとある任務中に害獣に寄生され、身体を根本から造り替えられてしまう。 乗っ取られる危険を意識しつつも生きることを選んだ雪兎だったが、それが苦難の道のりの始まりだった。
次々と出現する凶悪な害獣達相手に、無双の機械龍「ドラグリヲ」が咆哮と共に牙を剥く。
延々と繰り返される殺戮と喪失の果てに、勇敢で臆病な青年を待ち受けるのは絶対的な破滅か、それともささやかな希望か。
※小説になろう、カクヨム、ノベプラでも掲載中です。
※挿絵は雨川真優(アメカワマユ)様@zgmf_x11dより頂きました。利用許可済です。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる