ハイブリッド・ニート ~二度目の高校生活は吸血鬼ハーフで~

於田縫紀

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第8章 強すぎる敵

60 食べ物の恨み

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 エアストリームに戻る。
 既に3人が戻っていた。

「やっぱり抜け駆けした」

「ん、予想はしていたけれどね」

「ずるいです」

 人に状況を説明。

「うー、ミシェルさんが味方で良かったのです」

「ん、確かに。あの存在は変数だったから」

 委員長が妙な事を言う。

「変数って何だ」

「味方か敵か確定していない存在だった、って事ね」

 何故か松戸がそう答えた。

 この2人は俺の神眼よりちょっと進んだ現状把握能力を持っている。
 綾瀬も似たような能力はあるらしいし。
 そしてみらいは3人の誰かから随時色々聞いているようだ。

 つまり俺が一番情報に疎い。
 仕方ないのだけれど、何か悔しい。

「ところで表彰式はどうなったの」

「ん、明日の5限で3位決定戦をやって表彰式だって」

「明日の学校は0時からなのです。給食食べて3限4限やって大会の残りなのです」

 そうか、確かに3位決定戦をやっている暇はなかったな。
 それに今回の襲撃の件で、職員会議等もあるんだろう。
 先生方も大変だ。

 あ、そう言えば。

「今回のミシェルの件、馬橋先生辺りには言っておいた方がいいよな」

「念話で大体は伝えたわ。あとは先生方が自分で調査するなり、向こうの類似組織に連絡を取るなりして調べるでしょ。ただ……」

 あ、珍しい。
 松戸が何か言い淀んでいる。

「ユーノどうしたの」

「馬橋先生経由で取手先生と牛久先生からの伝言が来たの。明日の表彰式、当事者の佐貫と私は必ず出席しろって」

 うーん。それはなかなか面倒な気がする。

「あ、表彰式は是非私も出るので……」

 あ、みらいが途中で台詞を止めた。

「あ、いいのですいいのです。ユーノと佐貫に表彰式は任せるのです」

 委員長か綾瀬が何か念話でみらいに言ったようだ。
 何となくいやな予感がした。

 ◇◇◇

 翌日5限。
 3位決定戦の方はあっさりとTRICKSTERSが勝利した。

 相手がお散歩クラブならいい勝負だったのだろう。
 しかし神仙協会だとやはり力の差がかなりあるようだ。
 友部先輩1人でも勝てそうだったし。

 そんな訳で表彰式。仕方ないので俺と松戸は優勝チーム代表として壇上に上がる。
 優勝旗と賞状、副賞を松戸と一緒に受け取って。

 何とか無事に表彰と閉会式を終え、さて帰ろうかと思った時だ。
 不意に俺の前に立ちふさがる人影が数名。

「学校新聞の青井です。優勝のコメントとインタビューを行いたいので……」

「あと襲撃者の撃退の件についてもお伺いしたいのですが」

 放送部の実況中継で聞き覚えのある声だ。
 ふと横を見る。さっきまでそこにいた松戸はとっくに逃亡済。

 とっさに俺は異空間移動をかける。
 場所は取り合えず寮の俺の自室。

 部屋には直接追ってはこない。
 なかなか紳士的だなと思いつつ、優勝旗や賞状、副賞を部屋に置く。
 直後、部屋のドアがノックされた。

「どうも、学校新聞の青井です」

 紳士的と感じたのは気のせいのようだ。
 しつこいぞ先輩。
 俺は財布と着替えを持って異空間移動。

 その後旧学校跡地、ロスの公園、万博記念公園、サンシャイン60屋上と様々に場所をかえて異空間追いかけっこは続く。
 流石にお散歩クラブ副部長を兼任していただけある。
 無茶苦茶にしぶどい。

 それならばと、俺は空間状態が危険なところを狙って逃走する。
 世界の果ての部屋、きさらぎ駅、犬鳴峠、バーンガル砦、グラストンベリー、ポヴェーリア島。
 更に大阪新世界、崑崙大陸、螺湮城、無名都市と逃げて。

 ようやく青井先輩を振り切った時は、日本時刻既に午前7時。
 空間の危険な場所ばかり跳んでいたのでいい加減くたびれた。

 でも俺は行かなければならない場所がある。
 移動中、念話で連絡が入ったのだ。

「いつもの場所で優勝記念パーティをやるですよ。豪華料理買いだし中ですよ」

 そんな、みらいの脳天気な伝言が。

 やっとの思いで南の島のエアストリームに辿り着く。
 しかし、だ。

 綾瀬と守谷が用意した、優勝記念豪華晩餐会の豪華な食事。
 それらのほとんどは、飢えた女どもにあらかた食い尽くされていた。

 一応綾瀬が小皿にある程度は取り分けてくれていたようだ。
 でもそれすら、守谷のつまみ食いによって半減している状態。

「みらい。お前なあ」

「遅い方が悪いのですよ。ユーノはちゃんと時間通り帰ってきたです」

 まあ確かにそうなのだろう。ここのルールというか常識では。
 うーん。
 コノウラミハラサデオクベキカ……
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