上 下
60 / 78
第8章 強すぎる敵

60 食べ物の恨み

しおりを挟む
 エアストリームに戻る。
 既に3人が戻っていた。

「やっぱり抜け駆けした」

「ん、予想はしていたけれどね」

「ずるいです」

 人に状況を説明。

「うー、ミシェルさんが味方で良かったのです」

「ん、確かに。あの存在は変数だったから」

 委員長が妙な事を言う。

「変数って何だ」

「味方か敵か確定していない存在だった、って事ね」

 何故か松戸がそう答えた。

 この2人は俺の神眼よりちょっと進んだ現状把握能力を持っている。
 綾瀬も似たような能力はあるらしいし。
 そしてみらいは3人の誰かから随時色々聞いているようだ。

 つまり俺が一番情報に疎い。
 仕方ないのだけれど、何か悔しい。

「ところで表彰式はどうなったの」

「ん、明日の5限で3位決定戦をやって表彰式だって」

「明日の学校は0時からなのです。給食食べて3限4限やって大会の残りなのです」

 そうか、確かに3位決定戦をやっている暇はなかったな。
 それに今回の襲撃の件で、職員会議等もあるんだろう。
 先生方も大変だ。

 あ、そう言えば。

「今回のミシェルの件、馬橋先生辺りには言っておいた方がいいよな」

「念話で大体は伝えたわ。あとは先生方が自分で調査するなり、向こうの類似組織に連絡を取るなりして調べるでしょ。ただ……」

 あ、珍しい。
 松戸が何か言い淀んでいる。

「ユーノどうしたの」

「馬橋先生経由で取手先生と牛久先生からの伝言が来たの。明日の表彰式、当事者の佐貫と私は必ず出席しろって」

 うーん。それはなかなか面倒な気がする。

「あ、表彰式は是非私も出るので……」

 あ、みらいが途中で台詞を止めた。

「あ、いいのですいいのです。ユーノと佐貫に表彰式は任せるのです」

 委員長か綾瀬が何か念話でみらいに言ったようだ。
 何となくいやな予感がした。

 ◇◇◇

 翌日5限。
 3位決定戦の方はあっさりとTRICKSTERSが勝利した。

 相手がお散歩クラブならいい勝負だったのだろう。
 しかし神仙協会だとやはり力の差がかなりあるようだ。
 友部先輩1人でも勝てそうだったし。

 そんな訳で表彰式。仕方ないので俺と松戸は優勝チーム代表として壇上に上がる。
 優勝旗と賞状、副賞を松戸と一緒に受け取って。

 何とか無事に表彰と閉会式を終え、さて帰ろうかと思った時だ。
 不意に俺の前に立ちふさがる人影が数名。

「学校新聞の青井です。優勝のコメントとインタビューを行いたいので……」

「あと襲撃者の撃退の件についてもお伺いしたいのですが」

 放送部の実況中継で聞き覚えのある声だ。
 ふと横を見る。さっきまでそこにいた松戸はとっくに逃亡済。

 とっさに俺は異空間移動をかける。
 場所は取り合えず寮の俺の自室。

 部屋には直接追ってはこない。
 なかなか紳士的だなと思いつつ、優勝旗や賞状、副賞を部屋に置く。
 直後、部屋のドアがノックされた。

「どうも、学校新聞の青井です」

 紳士的と感じたのは気のせいのようだ。
 しつこいぞ先輩。
 俺は財布と着替えを持って異空間移動。

 その後旧学校跡地、ロスの公園、万博記念公園、サンシャイン60屋上と様々に場所をかえて異空間追いかけっこは続く。
 流石にお散歩クラブ副部長を兼任していただけある。
 無茶苦茶にしぶどい。

 それならばと、俺は空間状態が危険なところを狙って逃走する。
 世界の果ての部屋、きさらぎ駅、犬鳴峠、バーンガル砦、グラストンベリー、ポヴェーリア島。
 更に大阪新世界、崑崙大陸、螺湮城、無名都市と逃げて。

 ようやく青井先輩を振り切った時は、日本時刻既に午前7時。
 空間の危険な場所ばかり跳んでいたのでいい加減くたびれた。

 でも俺は行かなければならない場所がある。
 移動中、念話で連絡が入ったのだ。

「いつもの場所で優勝記念パーティをやるですよ。豪華料理買いだし中ですよ」

 そんな、みらいの脳天気な伝言が。

 やっとの思いで南の島のエアストリームに辿り着く。
 しかし、だ。

 綾瀬と守谷が用意した、優勝記念豪華晩餐会の豪華な食事。
 それらのほとんどは、飢えた女どもにあらかた食い尽くされていた。

 一応綾瀬が小皿にある程度は取り分けてくれていたようだ。
 でもそれすら、守谷のつまみ食いによって半減している状態。

「みらい。お前なあ」

「遅い方が悪いのですよ。ユーノはちゃんと時間通り帰ってきたです」

 まあ確かにそうなのだろう。ここのルールというか常識では。
 うーん。
 コノウラミハラサデオクベキカ……
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀
ファンタジー
 東京の南はるか先、聟島に作られた魔法特区。魔法技術高等専門学校2年になった俺は、1年年下の幼馴染の訪問を受ける。それが、学生会幹部3人を交えた騒がしい日々が始まるきっかけだった。  これは幼馴染の姉妹や個性的な友達達とともに過ごす、面倒だが楽しくないわけでもない日々の物語。  5月中は毎日投稿、以降も1週間に2話以上更新する予定です。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

最弱賢者の転生者 ~四度目の人生で最強になりました~

木嶋隆太
ファンタジー
生まれ持った職業によって優劣が決まる世界で、ロワールは僧侶という下級職として生まれた。下級職だったため、あっさりと死んでしまったロワールだったが、彼は転生した。――最強と呼ばれる『賢者』として。転生した世界はロワールの時代よりも遥かに魔法のレベルが落ちた世界であり、『賢者』は最弱の職業として知られていた。見下され、バカにされるロワールだったが、彼は世界の常識を破壊するように大活躍し、成り上がっていく。※こちらの作品は、「カクヨム」、「小説家になろう」にも投稿しています。

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...