ハイブリッド・ニート ~二度目の高校生活は吸血鬼ハーフで~

於田縫紀

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第6章 みんなで強化しよう!

39 美味しいご飯のその後に

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 部屋掃除、風呂等全て終わらせた後。
 パソコンで適当にWeb見ていると、誰かの気配がした。
 予想通り、綾瀬だ。

「夕食出来た。持って来ていい」

「いいけど。何なら俺が行こうか」

「ここにいてくれていい」

 綾瀬がそう言い終わると同時に、何も無かったこたつ台の上に料理の皿が並ぶ。
 大皿には刺身最低でも5種類以上が大量に並び、他に魚の身が入ったサラダ仕立てがもう1皿ある。

 更に揚げ物が1人あたり3品あり、お吸い物と御飯がついている。
 何だこの豪華なメニューは。

「あの島で魚を調達してもらった。5種類確保してあった」

 調達したのは委員長や松戸や守谷という事だろう。
 魚を調達してもらう代わり、野菜や夕食用のパンチーズ等を買ってきた。
 そういう事らしい。

 ふたりでちゃぶ台を囲んで一緒にいただきますを言って、食べ始める。

「何か久しぶりだな。こうやって綾瀬と食べるの」

 前は時々綾瀬が食事を作りに来てくれていた。
 でも最近は引っ越しとか色々あったから、こんな機会が無かった。

「同意」

 何か綾瀬も、ちょっとご機嫌な感じだ。

 そしてやっぱり、綾瀬の料理は美味しい。
 刺身類を別としても、サラダ仕立ての方もかかっているソースが絶妙だし、アジフライらしきフライもサクサク。
 お吸い物もしっかり魚の出汁が出ているのに濁っていない。

「やっぱり美味しいな」

 思わずそう口にしてしまう位に。

「なら嬉しい」

「だってこのサラダのドレッシング、自作だろ。それにこの刺身醤油も多分細工してあるし」

「刺身醤油は前に作り方を見たからやってみた」

「やっぱり」

 普通の醤油と比べて味がまろやかなのだ。
 それでいて魚に負けず、かつ魚の旨みを殺さない。

「料理は好きだから、色々やってみたくなる。ただ食べる人いないから今はあんまり機会ない」

「でもやっぱり時に食べたくなるな、これは」

 前にも似たようなことを言って危険な状態になったのに、ついまた言ってしまう。
 美味い料理の魔力という奴だ、きっと。

「佐貫に料理食べてもらうのは私も楽しい。美味しそうに食べてくれる」

「だって本当に美味しいだろ。今日は特別豪華だけど、そうでない料理だって」

 それこそただの煮物やカレーでさえも、綾瀬が作るととても美味しいのだ。
 それは寮が移転するまで、何回も作ってもらった俺が保証してもいい。

「もし綾瀬が良ければ、パン屋の旅の後一緒に御飯食べないか」

「了解。ちょうどいい具材の在庫もある」

 何やかんや色々言いながら、2人で豪華刺身定食を食べ尽くした。

「これから片付けてお風呂入ってくるから、ちょっと待っていて欲しい」

 やっぱりこの後もあるようだ。
 まあ今日は、綾瀬の番だしな。

 しかし舞台が自分の部屋だと、ちょっと別の意味で緊張する。
 でもまあ一応。

「わかった。待っている」

 そう返事はしておいた。
 綾瀬は微笑んで、次の瞬間食べ終わった皿等一式とともに姿を消す。

 急いで布団のシーツを予備と替えて、またたたみ直して押入れに仕舞う。
 ついでに窓を開け、埃っぽくなった部屋の空気を入れ替えてと。

 一通り落ち着いた頃、綾瀬が出現した。
 ピンクの首回りが大きく開いているTシャツと、グレーの柔らかそうな布地のショートパンツ姿だ。

「布団借りていい?」

 そう言われてしまったので、俺は押入れから布団を出す。
 いつものエアストリームのベッドよりは狭い。
 でも綾瀬は小柄だから2人でも何とかなるだろう。

「あと掛け布団も」

 というので押入れから出す。
 こっちもカバー換装済。やっておいてよかった。

 綾瀬がどこからともなく長い枕を出してセットする。

「この枕は?」

「これなら2人で使える。いつもは抱き枕」

 いつもは綾瀬が抱いている枕かよ。
 そう思って気づいた。

 今俺はクラスメイトの女の子を自分の部屋にあげて、自分の布団に一緒入ろうとしている。
 このシチュエーションってかなりエロくないか。

 そんな事を思っている俺に綾瀬は、
「一緒に入ろ」
 と布団をめくって中に入り、俺の方を開けて待っていたりする。

 おい、止まれ俺の妄想!

 何とか布団に入り、綾瀬の隣りに同じ枕で横になる。
 動きがきっとロボットダンスだっただろうけれど。

 ふと、綾瀬が布団に頭まで潜って見せた。

「佐貫の匂いがする。落ち着く」

 その台詞は完全にアウトだ。
 当然俺は落ち着くどころではない状態。

 綾瀬が今度は俺の方に向きを変える。
 横目で見る顔がすぐ横。

「お願い。能力をもらう前にひとつだけ」

「何」

「このままこっちを向いて」

 体を綾瀬の方に向ける。
 すぐ近くに綾瀬の顔。息すら感じるくらい。
 そして綾瀬は次の瞬間、腕と足を絡めて俺に抱きついた。

 くっついた身体の熱さと柔らかさ。
 お風呂上がりのシャンプーと石鹸の匂いと、自分とは違う動きの感触。

 危険通り越しそうだ、ぞそろそろ。
 既に俺のやばい部分が、布越しに綾瀬の身体に触れちゃっているし。

「これでいい。これで私を食べて。そして佐貫をちょうだい」

 本能が余分な事をしでかす前に、俺は綾瀬の首筋に口をつける。

 ◇◇◇
 
 目が覚めると違和感を感じた。
 暖かい感触。自分と違う誰かの匂い。

 綾瀬が俺を抱きしめた状態で眠っていた。
 幸せそうな笑顔で寝ている。

 顔先で寝息を感じる。
 こうやって一緒に寝ていて感じる、思った以上に小さい綾瀬の体。触れている部分の柔らかさと熱さ。
 何か幸せな感じがして、俺も軽く綾瀬の小さな体を抱きしめる。

 もっともその後で、本能が現実を認識してしまった。
 目覚ましが鳴り綾瀬が起きるまで。
 俺は悶々としつつ、本能と必死に戦う事になったのだった。
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