33 / 78
第6章 みんなで強化しよう!
33 特訓方式はスパルタで
しおりを挟む
「ん、今日中に研究会の名前を決めなければならない訳か」
「武闘大会への参加も決まってしまった訳ね」
委員長と松戸が、今の現状をまとめる。
その前に俺は疑問をひとつ、先輩方に質問。
「ところで、昨年の高浜先輩の件って何ですか?」
柿岡先輩が頷いた。
「まあ大体想像できると思うけれどさ。具体的には昨年夏、敵のひとつである『父と子と聖霊教会』東アジア支部が全滅するという事件があったんだ。関与していたのは当時2年の高浜と当時1年だった田中。で、新学期にこの2人が研究会を作ると学校側に申し出た。その時の条件が今と同じさ。武闘大会でそれなりの力を見せつけろ、と。結果2人で参戦して見事準優勝まで成し遂げ、お散歩クラブは成立した」
「今では2人とも、お散歩クラブを離れてしまったけれどね。高浜先輩は引退したし、田中君は独立して別の研究会を作ったし」
つまりは、まさか……
「ん、つまり武闘大会で準優勝以上しろという事だね」
委員長がさらりと怖い事を言う。
「概ねそんな処だね。試合内容如何によっては、そこまでしなくてもいいだろうと思うけれど」
「どうせ狙うなら優勝なのですよ!」
みらい、そんなにハードルをあげないでくれ。
「そうよね。どうせ狙うなら」
あ、松戸さんあなたもですか。
綾瀬そこで頷くな!
「ん、確かに3年生は引退しているけれどね。でも今の2年生も充分に強いよ」
委員長が比較的常識的な意見を言ってくれる。
「例えば内原先輩、堕天使系の指揮能力持ちの万能型よ。あと紫先輩の圧倒的な格闘戦能力と田中先輩の召喚魔法も脅威かな。他にも色々強い先輩は多いよ。結構皆、能力を隠しているし」
「秀美、一番怖いのを忘れているよ」
柿岡先輩がそんな怖い事を言う。
「ん、誰だろう。岩間先輩も強いけれど紫先輩程じゃないし、空間移動可能な先輩だと、やはり内原先輩が一番強いし……」
神立先輩がくすりと笑う。
「柿岡君の言っているのは三郷さんよ、違う?」
三郷先輩?
どこかで聞いたというか会ったような……あれ?
「あの指揮担当の三郷先輩なのですか?」
みらいが口を開く。
「いつも演習や実戦で一緒にやっているですけれど、三郷先輩は戦闘能力無いですよ。腕力も常人の半分以下だし、補助具つけないと歩けない位なのです」
そうなのか。座っている処しか見た事が無いのだけれど。
柿岡先輩は頷いた。
「その三郷さんだ。あの人単独では戦闘力は0だろう。でも誰か1人でもそれなりの力がある生徒と組めば、多分そこが優勝の最有力候補だ。ただ彼女の所属している小吉クラブは戦闘が得意な部員はいない。元々力が弱い小妖怪の互助会的な研究会だしね」
「でも三郷さんの力は強い人ほど認めているわ。だからあの子を勧誘できたら、もしくは彼女の助っ人に誰かが入ったら、間違いなくそこが優勝候補ね。まあ見ればわかるわよ。三郷さんの本当の実力を」
「もし運悪く戦う事になったら、メンバーに必ず、みらいさんを入れる事だ。勝負はみらいさんが三郷さんに、何処まで迫れるかにかかっている」
うん、みらいは戦闘能力は現状ほぼ0。
という事は、指揮能力がそれだけ戦闘結果に関わってくるという事か。
しかし俺には全く想像が出来ないのだけれど。
◇◇◇
次の授業前、つまりその日の夜一番に、俺と委員長は書類を牛久先生に提出した。
なお研究会の名称は『混合術式研究会』となった。
名称策定作業は難航した。
何せ各自の能力の種類が違いすぎる。
まずは狸と精霊と吸血鬼。
松戸は古来の魔術とか方術とか仙術とか、使用範囲がもう出鱈目。
更にみらいの指揮能力等は由来すら不明だ。
研究会としての統一性がまるで無い。
かと言ってイメージ十四滴に横文字系にすると、みらいが妙な行動を始めそうだ。
結果、みらい以外の4人合意し、無難で目立たず実態不明な名前にした。
妥協の産物だがやむを得ない。
何せ考慮の時間が、あの放課後しか無かったのだ。
さて。本日も夜が過ぎ早朝、放課後の時間になった。
本日は大先輩2人は不在。
そろそろ受験勉強が本番なので、真面目に勉強をしているとの事。
こんなに遅く勉強を始めて大丈夫かと思うのだが、何せ片方は慧眼通持ち。
神立先輩の方も、志望校は模試では余裕のA判定。
心配はあまりいらないらしい。
「さて、本日の議題は特訓についてよ」
今日は松戸が口火を切る。
「武闘大会に優勝する為には、まだまだ力が足りない。正直通用するのは秀美くらいね。佐貫もまだまだだし、私も複数相手だと今のままでは無理だわ。そしてみらい、今のままでは自分の身を守るだけでも不安だわ。武闘大会までもう1月も無いのよ。だから全員、猛特訓してでも、力を上げる必要がある」
「ん、それで何か方法はあるの?」
「一応ね」
松戸は頷いた。
「ただ期間が無いからスパルタになるけれど」
「やむを得ないと認める」
あっさり綾瀬が認めてしまう。
おい、いいのか。例えば委員長のスパルタは、本気で死にかけるぞいやマジで。
経験者だけによく知っているし、だからこそ頷けない。
「という訳でちょっと用意があるので、いったん解散。1時間後、午前4時半に運動できる格好で、着替えとタオル持参でここに再集合、いい?」
「ん、わかった」
「了解」
「はいです」
松戸の言葉に3人はあっさり同意する。
おい、本当にいいのか。俺は凄く不安だ。
「佐貫もわかったよね」
返事を渋っていると松戸に念を押された。
しかも委員長の右手がモーションに入りかけている。
「わかったわかった。1時間後な」
仕方なく俺も了解。
したくは無かったけれど、まあ仕方ない。
◇◇◇
という訳で、小鳥もチュンチュン鳴き始める朝の4時半。
どうも俺が最後だったらしい。他はもう全員揃っている。
「それでは強化合宿1日目を開始します!」
松戸が高らかに宣言する。
ちなみに混合術式研究会の会長は俺で、副会長は委員長だ。
でもそんな事は、部内では一切関係ない。
そしてこの特訓の音頭取りは松戸らしい。
「それでは特訓会場へ移動!」
えっ?
エアストリームの車窓から景色が消える。
いきなり瞬間移動かよ!
「武闘大会への参加も決まってしまった訳ね」
委員長と松戸が、今の現状をまとめる。
その前に俺は疑問をひとつ、先輩方に質問。
「ところで、昨年の高浜先輩の件って何ですか?」
柿岡先輩が頷いた。
「まあ大体想像できると思うけれどさ。具体的には昨年夏、敵のひとつである『父と子と聖霊教会』東アジア支部が全滅するという事件があったんだ。関与していたのは当時2年の高浜と当時1年だった田中。で、新学期にこの2人が研究会を作ると学校側に申し出た。その時の条件が今と同じさ。武闘大会でそれなりの力を見せつけろ、と。結果2人で参戦して見事準優勝まで成し遂げ、お散歩クラブは成立した」
「今では2人とも、お散歩クラブを離れてしまったけれどね。高浜先輩は引退したし、田中君は独立して別の研究会を作ったし」
つまりは、まさか……
「ん、つまり武闘大会で準優勝以上しろという事だね」
委員長がさらりと怖い事を言う。
「概ねそんな処だね。試合内容如何によっては、そこまでしなくてもいいだろうと思うけれど」
「どうせ狙うなら優勝なのですよ!」
みらい、そんなにハードルをあげないでくれ。
「そうよね。どうせ狙うなら」
あ、松戸さんあなたもですか。
綾瀬そこで頷くな!
「ん、確かに3年生は引退しているけれどね。でも今の2年生も充分に強いよ」
委員長が比較的常識的な意見を言ってくれる。
「例えば内原先輩、堕天使系の指揮能力持ちの万能型よ。あと紫先輩の圧倒的な格闘戦能力と田中先輩の召喚魔法も脅威かな。他にも色々強い先輩は多いよ。結構皆、能力を隠しているし」
「秀美、一番怖いのを忘れているよ」
柿岡先輩がそんな怖い事を言う。
「ん、誰だろう。岩間先輩も強いけれど紫先輩程じゃないし、空間移動可能な先輩だと、やはり内原先輩が一番強いし……」
神立先輩がくすりと笑う。
「柿岡君の言っているのは三郷さんよ、違う?」
三郷先輩?
どこかで聞いたというか会ったような……あれ?
「あの指揮担当の三郷先輩なのですか?」
みらいが口を開く。
「いつも演習や実戦で一緒にやっているですけれど、三郷先輩は戦闘能力無いですよ。腕力も常人の半分以下だし、補助具つけないと歩けない位なのです」
そうなのか。座っている処しか見た事が無いのだけれど。
柿岡先輩は頷いた。
「その三郷さんだ。あの人単独では戦闘力は0だろう。でも誰か1人でもそれなりの力がある生徒と組めば、多分そこが優勝の最有力候補だ。ただ彼女の所属している小吉クラブは戦闘が得意な部員はいない。元々力が弱い小妖怪の互助会的な研究会だしね」
「でも三郷さんの力は強い人ほど認めているわ。だからあの子を勧誘できたら、もしくは彼女の助っ人に誰かが入ったら、間違いなくそこが優勝候補ね。まあ見ればわかるわよ。三郷さんの本当の実力を」
「もし運悪く戦う事になったら、メンバーに必ず、みらいさんを入れる事だ。勝負はみらいさんが三郷さんに、何処まで迫れるかにかかっている」
うん、みらいは戦闘能力は現状ほぼ0。
という事は、指揮能力がそれだけ戦闘結果に関わってくるという事か。
しかし俺には全く想像が出来ないのだけれど。
◇◇◇
次の授業前、つまりその日の夜一番に、俺と委員長は書類を牛久先生に提出した。
なお研究会の名称は『混合術式研究会』となった。
名称策定作業は難航した。
何せ各自の能力の種類が違いすぎる。
まずは狸と精霊と吸血鬼。
松戸は古来の魔術とか方術とか仙術とか、使用範囲がもう出鱈目。
更にみらいの指揮能力等は由来すら不明だ。
研究会としての統一性がまるで無い。
かと言ってイメージ十四滴に横文字系にすると、みらいが妙な行動を始めそうだ。
結果、みらい以外の4人合意し、無難で目立たず実態不明な名前にした。
妥協の産物だがやむを得ない。
何せ考慮の時間が、あの放課後しか無かったのだ。
さて。本日も夜が過ぎ早朝、放課後の時間になった。
本日は大先輩2人は不在。
そろそろ受験勉強が本番なので、真面目に勉強をしているとの事。
こんなに遅く勉強を始めて大丈夫かと思うのだが、何せ片方は慧眼通持ち。
神立先輩の方も、志望校は模試では余裕のA判定。
心配はあまりいらないらしい。
「さて、本日の議題は特訓についてよ」
今日は松戸が口火を切る。
「武闘大会に優勝する為には、まだまだ力が足りない。正直通用するのは秀美くらいね。佐貫もまだまだだし、私も複数相手だと今のままでは無理だわ。そしてみらい、今のままでは自分の身を守るだけでも不安だわ。武闘大会までもう1月も無いのよ。だから全員、猛特訓してでも、力を上げる必要がある」
「ん、それで何か方法はあるの?」
「一応ね」
松戸は頷いた。
「ただ期間が無いからスパルタになるけれど」
「やむを得ないと認める」
あっさり綾瀬が認めてしまう。
おい、いいのか。例えば委員長のスパルタは、本気で死にかけるぞいやマジで。
経験者だけによく知っているし、だからこそ頷けない。
「という訳でちょっと用意があるので、いったん解散。1時間後、午前4時半に運動できる格好で、着替えとタオル持参でここに再集合、いい?」
「ん、わかった」
「了解」
「はいです」
松戸の言葉に3人はあっさり同意する。
おい、本当にいいのか。俺は凄く不安だ。
「佐貫もわかったよね」
返事を渋っていると松戸に念を押された。
しかも委員長の右手がモーションに入りかけている。
「わかったわかった。1時間後な」
仕方なく俺も了解。
したくは無かったけれど、まあ仕方ない。
◇◇◇
という訳で、小鳥もチュンチュン鳴き始める朝の4時半。
どうも俺が最後だったらしい。他はもう全員揃っている。
「それでは強化合宿1日目を開始します!」
松戸が高らかに宣言する。
ちなみに混合術式研究会の会長は俺で、副会長は委員長だ。
でもそんな事は、部内では一切関係ない。
そしてこの特訓の音頭取りは松戸らしい。
「それでは特訓会場へ移動!」
えっ?
エアストリームの車窓から景色が消える。
いきなり瞬間移動かよ!
28
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる