30 / 78
第5章 嵐の前に
30 君と食べよう食べられよう⑵
しおりを挟む
綾瀬は髪形を確認すると、今度はこっちに近寄ってくるようだ。
見なくても気配でわかる。
ここは集中だ! 意識をネットに集中させろ!
現在やっている生放送の一覧は……
「佐貫、一つ質問」
「何?」
不意に綾瀬が後ろから抱き着いてきた。
濡れた髪と風呂上がりの熱い体。しっとり重い感触。
「色々工夫したが上手くいかない。やっぱり私は魅力ないのか」
彼女は俺の耳元で、囁くように続ける。
「合宿の時、私の水着でどきどきすると聞いて、ちょっと脈あるかと思った。まずは料理で気を引いてみた。ちょっとうまくいきかけたからこんな姿で誘ってみた。でも龍洋は目を逸らすだけでこっちを見てくれない。やっぱりこんな発育不良な体は魅力がないか」
「そんなことは無い!」
後ろで綾瀬がびくっと身体を震わせた感触。
しまった、ちょっと声が大きすぎた。
「魅力がないなんてそんなことは無い。むしろその逆。これでも男としての本能を必死に抑えている状態だ。だから無理させないでくれ」
「抑えないでいいって言ったら」
「自分で責任とれない事はしたくないし、好きな子は大事にしたい」
本当はただのヘタレなのだが、それは言わない約束で。
「なら少しは期待していいのか」
「とりあえず充分魅力的だ。だから俺の忍耐力を試さないでくれ」
俺の本音だ。
ふっと体が離れる感触。
助かった、と思ったらまさか。
こたつを押しのけて、座った俺の前膝の間に強引に入り込んだ。
俺と真向かいに密着するような体勢。
ちなみに綾瀬はパン一で、上は何もつけていない。
小さくふくらんだ胸が丸見えだ。
「おい綾瀬、これは」
「期待していいなら証明。前に秀美にしたのと同じ事して欲しい」
綾瀬は潤んだ目で俺を見つめる。
「私を食べてほしい。私をいっぱいいっぱい食べて、その分佐貫を分けて欲しい」
綾瀬はそう言って俺に抱き着く。
すぐ目の前に綾瀬の首筋。
あ、まずい。
血を吸う前に押し倒してしまいそう。
誘惑を必死にこらえ、綾瀬の首筋に口を近づける。
甘い自分のじゃない体臭とともにかぷっと血を吸う態勢に。
美味しいというより気持ちいい感覚。
性的な快感と、おそらくは同じ種類の生理的な快感。
綾瀬の口からも小さく声が漏れる。
彼女はどんな感じなのだろう。
俺の方は、自分ではない気持ちいいものが、体内に広がっていく快感。
委員長の時とちょっと違うけれど、同じくらいに気持ちいい。
腕の中に小さな愛しい生き物がいる。
ずっとこうやって抱きしめたままいたい。
強力な誘惑に引っ張られそうだ。
しかしそれでは今の綾瀬を失ってしまう。
そうはさせたくない。
綾瀬は対等な友人であってほしい。
例え恋人とかではなくても。
だから俺は口を離す。
ちょっと不満げにこっちを見る綾瀬の、後頭部に手をまわす。
そのまま腕をちょっと曲げて、斜めから口を近づける。
今度は俺から綾瀬に与える番。
既に結構万能な綾瀬に与えられるものは少ないかもしれないけれど。
綾瀬は俺の口づけを素直に受け入れる。
だから全力で綾瀬に俺を流し込む。
色々な感謝と想いを載せて。
綾瀬の体が小さく震える。
愛しくて思わず抱きしめる。
やばいくらいに気持ちいい。
俺から見える周囲の色彩が色を失っていく。
どうやら俺の体力が、限界近いようだ。
俺は口をゆっくり離す。
綾瀬がうるんだ眼で顔を赤くして、こっちを見た。
やばいほど色っぽい。
単に襲わないのは、俺の体力が限界近いから。
綾瀬はぎゅっと俺を抱きしめる。Tシャツ一枚を通して裸の胸の感触が暖かい。
その気持ち良さを感じつつ、他の感覚や意識が遠のいていく……
◇◇◇
気が付くと、夜が近いだるい陽光がカーテン越しに見えていた。
ただわずかに残る香りだけが、ここにいた誰かを感じさせる。
そして俺は新しい自分の感覚に気づく。
それは時間も空間も超えてどこまでも広がる視界。
ほんの少し意識するだけで、色々なものが見えるし感じられる。
○ 部屋のベッドで熟睡中の綾瀬も
○ 同じく睡眠中の委員長も
○ パソコンと妙な本を交互に見ながら、意味不明な数式を書いている松戸も
○ 三時のおやつの特大プリンを食べている守谷も
全部が、直に見ているようにわかる。
更に意識を飛ばせば、以前に松戸と出会った世界の果てすら知覚可能。
手を伸ばせばきっと手が届くし、一歩踏み出せばそこへ行くことも出来そうだ。
これがきっと綾瀬が見ている世界で、綾瀬の能力の一部分。
何処でも意識するだけで知覚可能で、移動する事すら出来る能力。
逆に俺は綾瀬に、何か与えることが出来ただろうか。
そう思って気を失う前の綾瀬を思い出して……
思わず体の一部分だけ元気になった。
いかん、静まれ、俺の一部分!
◇◇◇
なお、次の日の朝四時。
俺は綾瀬にたたき起こされた。
そのままアメリカはロサンゼルスまでお買い物。
ラルフスとかホールフーズとかお気に入りのパン屋とか。
でっかい店を体力の限界近くまで引きずり回された。
綾瀬は俺から見た限りは平常通り。
でも俺は始終どきどきしっぱなしだったのは、言うまでもない。
見なくても気配でわかる。
ここは集中だ! 意識をネットに集中させろ!
現在やっている生放送の一覧は……
「佐貫、一つ質問」
「何?」
不意に綾瀬が後ろから抱き着いてきた。
濡れた髪と風呂上がりの熱い体。しっとり重い感触。
「色々工夫したが上手くいかない。やっぱり私は魅力ないのか」
彼女は俺の耳元で、囁くように続ける。
「合宿の時、私の水着でどきどきすると聞いて、ちょっと脈あるかと思った。まずは料理で気を引いてみた。ちょっとうまくいきかけたからこんな姿で誘ってみた。でも龍洋は目を逸らすだけでこっちを見てくれない。やっぱりこんな発育不良な体は魅力がないか」
「そんなことは無い!」
後ろで綾瀬がびくっと身体を震わせた感触。
しまった、ちょっと声が大きすぎた。
「魅力がないなんてそんなことは無い。むしろその逆。これでも男としての本能を必死に抑えている状態だ。だから無理させないでくれ」
「抑えないでいいって言ったら」
「自分で責任とれない事はしたくないし、好きな子は大事にしたい」
本当はただのヘタレなのだが、それは言わない約束で。
「なら少しは期待していいのか」
「とりあえず充分魅力的だ。だから俺の忍耐力を試さないでくれ」
俺の本音だ。
ふっと体が離れる感触。
助かった、と思ったらまさか。
こたつを押しのけて、座った俺の前膝の間に強引に入り込んだ。
俺と真向かいに密着するような体勢。
ちなみに綾瀬はパン一で、上は何もつけていない。
小さくふくらんだ胸が丸見えだ。
「おい綾瀬、これは」
「期待していいなら証明。前に秀美にしたのと同じ事して欲しい」
綾瀬は潤んだ目で俺を見つめる。
「私を食べてほしい。私をいっぱいいっぱい食べて、その分佐貫を分けて欲しい」
綾瀬はそう言って俺に抱き着く。
すぐ目の前に綾瀬の首筋。
あ、まずい。
血を吸う前に押し倒してしまいそう。
誘惑を必死にこらえ、綾瀬の首筋に口を近づける。
甘い自分のじゃない体臭とともにかぷっと血を吸う態勢に。
美味しいというより気持ちいい感覚。
性的な快感と、おそらくは同じ種類の生理的な快感。
綾瀬の口からも小さく声が漏れる。
彼女はどんな感じなのだろう。
俺の方は、自分ではない気持ちいいものが、体内に広がっていく快感。
委員長の時とちょっと違うけれど、同じくらいに気持ちいい。
腕の中に小さな愛しい生き物がいる。
ずっとこうやって抱きしめたままいたい。
強力な誘惑に引っ張られそうだ。
しかしそれでは今の綾瀬を失ってしまう。
そうはさせたくない。
綾瀬は対等な友人であってほしい。
例え恋人とかではなくても。
だから俺は口を離す。
ちょっと不満げにこっちを見る綾瀬の、後頭部に手をまわす。
そのまま腕をちょっと曲げて、斜めから口を近づける。
今度は俺から綾瀬に与える番。
既に結構万能な綾瀬に与えられるものは少ないかもしれないけれど。
綾瀬は俺の口づけを素直に受け入れる。
だから全力で綾瀬に俺を流し込む。
色々な感謝と想いを載せて。
綾瀬の体が小さく震える。
愛しくて思わず抱きしめる。
やばいくらいに気持ちいい。
俺から見える周囲の色彩が色を失っていく。
どうやら俺の体力が、限界近いようだ。
俺は口をゆっくり離す。
綾瀬がうるんだ眼で顔を赤くして、こっちを見た。
やばいほど色っぽい。
単に襲わないのは、俺の体力が限界近いから。
綾瀬はぎゅっと俺を抱きしめる。Tシャツ一枚を通して裸の胸の感触が暖かい。
その気持ち良さを感じつつ、他の感覚や意識が遠のいていく……
◇◇◇
気が付くと、夜が近いだるい陽光がカーテン越しに見えていた。
ただわずかに残る香りだけが、ここにいた誰かを感じさせる。
そして俺は新しい自分の感覚に気づく。
それは時間も空間も超えてどこまでも広がる視界。
ほんの少し意識するだけで、色々なものが見えるし感じられる。
○ 部屋のベッドで熟睡中の綾瀬も
○ 同じく睡眠中の委員長も
○ パソコンと妙な本を交互に見ながら、意味不明な数式を書いている松戸も
○ 三時のおやつの特大プリンを食べている守谷も
全部が、直に見ているようにわかる。
更に意識を飛ばせば、以前に松戸と出会った世界の果てすら知覚可能。
手を伸ばせばきっと手が届くし、一歩踏み出せばそこへ行くことも出来そうだ。
これがきっと綾瀬が見ている世界で、綾瀬の能力の一部分。
何処でも意識するだけで知覚可能で、移動する事すら出来る能力。
逆に俺は綾瀬に、何か与えることが出来ただろうか。
そう思って気を失う前の綾瀬を思い出して……
思わず体の一部分だけ元気になった。
いかん、静まれ、俺の一部分!
◇◇◇
なお、次の日の朝四時。
俺は綾瀬にたたき起こされた。
そのままアメリカはロサンゼルスまでお買い物。
ラルフスとかホールフーズとかお気に入りのパン屋とか。
でっかい店を体力の限界近くまで引きずり回された。
綾瀬は俺から見た限りは平常通り。
でも俺は始終どきどきしっぱなしだったのは、言うまでもない。
28
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
鋼殻牙龍ドラグリヲ
南蛮蜥蜴
ファンタジー
歪なる怪物「害獣」の侵攻によって緩やかに滅びゆく世界にて、「アーマメントビースト」と呼ばれる兵器を操り、相棒のアンドロイド「カルマ」と共に戦いに明け暮れる主人公「真継雪兎」
ある日、彼はとある任務中に害獣に寄生され、身体を根本から造り替えられてしまう。 乗っ取られる危険を意識しつつも生きることを選んだ雪兎だったが、それが苦難の道のりの始まりだった。
次々と出現する凶悪な害獣達相手に、無双の機械龍「ドラグリヲ」が咆哮と共に牙を剥く。
延々と繰り返される殺戮と喪失の果てに、勇敢で臆病な青年を待ち受けるのは絶対的な破滅か、それともささやかな希望か。
※小説になろう、カクヨム、ノベプラでも掲載中です。
※挿絵は雨川真優(アメカワマユ)様@zgmf_x11dより頂きました。利用許可済です。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる