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第4章 夏だ! 水着だ! 南国だ!

27 最後の明るい海辺の夜

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 夕食が終わって片付けも終わって就寝時間。
 昨日と同じく無制限念話テロが始まったので、テロ張本人以外の4人は海岸にいる。
 たっぷり遊ぶつもりらしく皆水着だ。
 でも、とりあえずは砂浜に腰掛けてダベリング。

「ん、彼氏できる前にみらいのあれ、直したほうがいいかも」

「どうでしょ。彼氏なら無作為念話あれも可愛いとか愛しいとか思うんじゃないかな」

「彼氏なら寝る前に思い切り疲れさせて、寝言すら言わせないのも方法論」

 ……綾瀬さん。その意見。
 内容を考えると、とっても過激な気がするのは、俺の気のせいだろうか。

「それにしても、綾瀬も松戸も料理上手いんだな。終わってから普通の食生活に戻れるか、不安になる」

「私のは知識だけよ。上手なのは美久」

「でもユーノ、色々料理方法知っているし、材料の知識も豊富だし、店もよく知ってる。一緒に料理すると勉強になる」

 謙遜し合っている。
 でも多分きっと、両方とも上手なんだろう。

「どっちにしろすごく美味しかった。このレベルで美味しい料理連続で食べたの、多分初めてだ」

「ん、私も同感。真似したいけど、ちょっとやそっとじゃ無理だなあ」

 全くだと俺も思う。

 昨日と今日の刺身の一枚の身の厚さの違いとか、昼のサンドイッチのハムの一見無造作に見える切り方とボリュームとか、おそらく全てきっと最適値。
 知識と経験と計算と腕とで支えられた絶妙なバランスの産物だ。

「半分以上はユーノの知識」

「でも私は知識だけだからね。本質的には美久の腕だよ」

 多分両方ともとんでもないレベルなんだろう、きっと。

「どっちにしろすごく美味しかった。ありがとう」

「……何ならたまには作ってやってもいい」

「あ、凄くうれしい。ありがとう」

 思わずこう言ってしまったことを後日、後悔することになるのだが、それは別の話。

「それにしても、夜が明るいね、ここ。昨日もそう思ったけれど」

 松戸がそう呟くように言う。

「ん、確かに明るくてちょっと幻想的。何か現実感ない感じ」

「同意。いい感じ」

 確かにそうだ。
 青白く光る月もいつも以上に輝いて見える星空も。
 白くくっきり見える星砂の砂浜も、穏やかで星空に光る海も。
 見慣れた3人でさえ、ちょっと幻想的で綺麗に見える。

 と、不意に松戸がにやりと笑ったような気がした。
 何か悪いことを思いついた、そんな感じに。

 不意に勢いよくエアストリームの扉が開かる。
 中から守谷が飛び出してきた。

『大変ですイベントの予感です危険なのです』

 念話でそんな台詞を垂れ流している。

「どうしたみらい」

「敵でも来たの」

 守谷は勢いよく首を横に振る。

『敵ではないのです。楽しい楽しいイベント発生の予感なのです! 逃すと悲しいので危険なのです』

 何だそれ。
 とりあえず敵ではないらしいので、身構えた姿勢から力を抜く。

「うーん、みらいちゃんには感づかれたか。流石歩く人間指揮所ね」

「イベントの予感は見逃さないのです」

 守谷の会話もちゃんと念話から声になった。
 しかし何をやる気だろう。イベントとは一体。
 微妙に悪い予感がする。

「月が綺麗だし何か幻想的だし今日で最後だから。この機会を逃せば二度と出来ないことを皆でやりませんか」

 白い砂浜とあふれんばかりの星空と海。
 そんな最高の背景の前で、スタイル最高の黒ビキニ美少女が微笑む。
 ただその松戸の笑顔が微妙に黒く感じるのは、俺だけだろうか。

「何を」

「水着開放」

 おい松戸。その件はもう無しじゃなかったのか。

「完全プライベートビーチ貸切だし、佐貫ともこれだけ一緒にいたから気にならないでしょ」

「そうね、私もやってみたいです、これを逃せば二度とこんな機会無いです」

 こら守谷、お前まで何を言うんだ。

「同意」

 綾瀬、お前もか。

「ん、賛成多数ね。まあいっか、佐貫さえ気にしなければいいんだもんね」

 委員長、お前まで。

 俺はトレーラーに逃げようとする。
 だが瞬間移動した松戸に、びしっと背後から両腕を確保された。

「裏切者一名確保よ。折角だから、先に剥いておきましょう」

 背中にあたる柔らかい感触が気になるが、そんな問題じゃない。

「おい松戸、気を確かに。頼むから正気に返ってくれ」

 ちなみに松戸は既に、自分の水着の上を外して左手に持っている。
 ってことは背後の感触は生乳!
 これが、この何か柔い暖かいのが!

 いや、そんなの感じている場合じゃない。
 問題は俺自身の危機だ。

「ん、そうね。先に剥いておけば障害も無くなるかも」

 委員長、お前までそんな事を言うな。
 綾瀬変なところに手をかけるな。
 守谷妙に笑顔でズボンの紐ほどくな。

 頼む正気に戻ってくれ。
 助けて……!

 ◇◇◇

 結局全員で全開放して、海水浴したりビーチボールで遊んだり。
 皆、すごいあっけらかんとごく自然に皆で遊んでいた
 しかしきっと、俺だけ笑顔が硬かっただろうと思う。

 夜が明け始めた頃遊び疲れて服を着て。
 そして皆さん就寝。
 でも俺だけはギンギンに眠れなかった。

 次の朝ご飯を食べて荷物撤収して学校に戻って。
 解散して逃げるように部屋に帰って。
 やっと色々処理しまくって真っ白に燃え尽くして。
 燃えかすの俺が倒れるように眠ったのは言うまでもない。
 ちーん……
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