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第1章 高校生活は暗闇で
3 20年ぶりの教室で
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そういう訳で、現在俺は教室の窓側、前から2番目の席にいる訳だ。
窓の外は暗い。
何せ今の時間は午後8時15分過ぎ。
この学校は夜8時10分に始まり、深夜3時に授業が終わる。
定時制ではなく、夜間全日制だそうだ。
何故こうなっているか。
パンフレットには『対象生徒の特性に配慮して』とのみ、記載されている。
理由はともあれこの日課時限、ハイブリッド吸血鬼化した俺には都合がいい。
日光で灰になる事は無いのだが、太陽の下だと何故か疲れるのだ。
これは念の為実験した結果だから、間違いない。
ニート時代も半ば昼夜逆転の生活を送っていた。
だから体質ではなく、習慣という可能性もあるけれど。
さて、と担任教師の方を見る。
確か名字は取手と言って、専門の教科は現国、古文、漢文だそうだ。
年齢は見かけでは20代半ばから後半、身長は高めで美人ではあるがちょっときつい感じ。
この手のタイプは苦手なのであまり近寄らないようにしよう。
前の席の綾瀬は、ここまで一緒に行動したので、ある程度把握済み。
顔立ちは整っていて美少女と言っていいのだが、小柄で体型も細くて貧相だ。
だから最初は中学の方への転入生かと思った。
待ち時間にも特に雑談もしなかったし、彼女はどうやら物静かなタイプのようだ。
まあ俺からも、何も話さなかったのだけれども。
元ヒキニートに、高校生女子相手に話す話題など無いから。
さて、取手先生は、何か一通り話し終わった後、何か小冊子を配りだした。
前から順に送られて来たので、俺も綾瀬から人数分受け取り、自分のを取って後ろに回す。
小冊子の表紙には『課外活動の紹介』と書いてあった。
「中等部からの持ち上がり組にはお馴染みだが、この高校には課外活動がある。入る入らないは自由だ」
ああそうですか、そう俺は思う。
別にやりたい課外活動などないし、面倒だ。
ここは帰宅部でいいだろう。
先生の説明は続いている。
「課外活動には、授業で教えきれない部分のフォローと言う意味がある。だから私は、入った方がいいとお勧めしておく。個人によって違う能力までは、授業では扱えないからな」
それってどういう事だろう。
例えば俺の、ハイブリッド吸血鬼としての能力とかか。
ならば他の生徒も、そういった特殊な生徒なのだろうか。
確かに学校の説明でも、校長が『扱う生徒の特殊性に鑑み……』とか言っていたな。
そこまで考えて、そして思い返す。
でも冷静に考えればそんな訳はないよなと。
ここは夜間全日制でほぼ全寮制だが、あくまで高校だ。
そんな特殊な場所ではない筈。
「では9時まで休憩」
取手先生はそう言い残して、教室を出て行った。
とたんにざわめき出す教室。
おそらくは、どんな部活がいいかとか、相談をしているのだろう。
実際そんな言葉が聞こえてきている。
さて冊子でも見てみるか、そう思った時だ。
「ねえ、佐貫くんと綾瀬さんは、どの系統が得意なの」
真横から声がした。
振り向くと、丸眼鏡をかけたお下げ髪。
眼鏡の奥の大きい真丸目が可愛い。
現状における、可愛い対美人比は9対1くらい。
でも眼鏡を外すと、美人度がアップしそうな感じだ。
そしてこの学校は服装が自由なのに、いかにもって感じのセーラー服を着ている。
しかし面識も無いのに、いきなり話しかけてきたこいつは何者だろう。
前の席の綾瀬も、そんな感じで彼女を見ている。
「ん、私は柏秀美。一応このクラスの委員長」
丸眼鏡は軽く自己紹介を始めた。
どうやら俺や綾瀬の『こいつは何者だ?』という視線に気づいたらしい。
今の自己紹介で、彼女が俺と綾瀬に声をかけたのか、理由が判明した。
委員長として、学校に慣れない転校生に対する仕事の一環、という事だろう。
まあ彼女も美少女に入る範疇ではある。
そして美少女のJKから話しかけられるなんてのは、おっさんである俺にとって、嬉しい出来事となのは確かだ。
少なくともヒキニートな中年時代から比べれば大分天国に近い。
だからまあ、こちらも応答してやるとしよう。
「どの系統って言ったが、系統って何だ?」
まずはこの自称委員長の言葉で、意味不明な部分を聞いてみる。
「ん、能力の系統だよ。部活に入るにも相性とかあるでしょ。例えば筋力強化に特化しているのに魔法専門の部活や研究会に入ったりしたら悲惨だしね」
筋力強化? 魔法専門?
何だそりゃと思いつつ、俺は配られた小冊子を開いた。
1ページ目にはずらりと部活や研究会の名称が並んでいる。
そしてその名前を見ると……
「何だこりゃ」
攻撃魔法とか肉体言語だとか召喚術だとか、ファンタジー系に侵されたような単語が並んでいた。
部活と言うからには、てっきりサッカーとか野球とかをイメージしたのだが。
勿論俺はそんなスポーツな事、わざわざするつもりはないけれど。
しかし此処の部活とか研究会に書いてあるのは……
「あれ、ひょっとして何も知らないの?」
委員長だけでなく、綾瀬までもが不思議そうな顔をして俺を見た。
どういう事だ、一体!?
もしこれがゲームなら、ここは聞いてみる一択のだろう。
「知らないって何が」
「この学校のこと。ひょっとして普通の人間……じゃないよね。それ位は私でも見ればわかるけれど」
「普通の人間、って一体?」
何か良くわからない。
言葉が、話が、かみ合っていない気がする。
窓の外は暗い。
何せ今の時間は午後8時15分過ぎ。
この学校は夜8時10分に始まり、深夜3時に授業が終わる。
定時制ではなく、夜間全日制だそうだ。
何故こうなっているか。
パンフレットには『対象生徒の特性に配慮して』とのみ、記載されている。
理由はともあれこの日課時限、ハイブリッド吸血鬼化した俺には都合がいい。
日光で灰になる事は無いのだが、太陽の下だと何故か疲れるのだ。
これは念の為実験した結果だから、間違いない。
ニート時代も半ば昼夜逆転の生活を送っていた。
だから体質ではなく、習慣という可能性もあるけれど。
さて、と担任教師の方を見る。
確か名字は取手と言って、専門の教科は現国、古文、漢文だそうだ。
年齢は見かけでは20代半ばから後半、身長は高めで美人ではあるがちょっときつい感じ。
この手のタイプは苦手なのであまり近寄らないようにしよう。
前の席の綾瀬は、ここまで一緒に行動したので、ある程度把握済み。
顔立ちは整っていて美少女と言っていいのだが、小柄で体型も細くて貧相だ。
だから最初は中学の方への転入生かと思った。
待ち時間にも特に雑談もしなかったし、彼女はどうやら物静かなタイプのようだ。
まあ俺からも、何も話さなかったのだけれども。
元ヒキニートに、高校生女子相手に話す話題など無いから。
さて、取手先生は、何か一通り話し終わった後、何か小冊子を配りだした。
前から順に送られて来たので、俺も綾瀬から人数分受け取り、自分のを取って後ろに回す。
小冊子の表紙には『課外活動の紹介』と書いてあった。
「中等部からの持ち上がり組にはお馴染みだが、この高校には課外活動がある。入る入らないは自由だ」
ああそうですか、そう俺は思う。
別にやりたい課外活動などないし、面倒だ。
ここは帰宅部でいいだろう。
先生の説明は続いている。
「課外活動には、授業で教えきれない部分のフォローと言う意味がある。だから私は、入った方がいいとお勧めしておく。個人によって違う能力までは、授業では扱えないからな」
それってどういう事だろう。
例えば俺の、ハイブリッド吸血鬼としての能力とかか。
ならば他の生徒も、そういった特殊な生徒なのだろうか。
確かに学校の説明でも、校長が『扱う生徒の特殊性に鑑み……』とか言っていたな。
そこまで考えて、そして思い返す。
でも冷静に考えればそんな訳はないよなと。
ここは夜間全日制でほぼ全寮制だが、あくまで高校だ。
そんな特殊な場所ではない筈。
「では9時まで休憩」
取手先生はそう言い残して、教室を出て行った。
とたんにざわめき出す教室。
おそらくは、どんな部活がいいかとか、相談をしているのだろう。
実際そんな言葉が聞こえてきている。
さて冊子でも見てみるか、そう思った時だ。
「ねえ、佐貫くんと綾瀬さんは、どの系統が得意なの」
真横から声がした。
振り向くと、丸眼鏡をかけたお下げ髪。
眼鏡の奥の大きい真丸目が可愛い。
現状における、可愛い対美人比は9対1くらい。
でも眼鏡を外すと、美人度がアップしそうな感じだ。
そしてこの学校は服装が自由なのに、いかにもって感じのセーラー服を着ている。
しかし面識も無いのに、いきなり話しかけてきたこいつは何者だろう。
前の席の綾瀬も、そんな感じで彼女を見ている。
「ん、私は柏秀美。一応このクラスの委員長」
丸眼鏡は軽く自己紹介を始めた。
どうやら俺や綾瀬の『こいつは何者だ?』という視線に気づいたらしい。
今の自己紹介で、彼女が俺と綾瀬に声をかけたのか、理由が判明した。
委員長として、学校に慣れない転校生に対する仕事の一環、という事だろう。
まあ彼女も美少女に入る範疇ではある。
そして美少女のJKから話しかけられるなんてのは、おっさんである俺にとって、嬉しい出来事となのは確かだ。
少なくともヒキニートな中年時代から比べれば大分天国に近い。
だからまあ、こちらも応答してやるとしよう。
「どの系統って言ったが、系統って何だ?」
まずはこの自称委員長の言葉で、意味不明な部分を聞いてみる。
「ん、能力の系統だよ。部活に入るにも相性とかあるでしょ。例えば筋力強化に特化しているのに魔法専門の部活や研究会に入ったりしたら悲惨だしね」
筋力強化? 魔法専門?
何だそりゃと思いつつ、俺は配られた小冊子を開いた。
1ページ目にはずらりと部活や研究会の名称が並んでいる。
そしてその名前を見ると……
「何だこりゃ」
攻撃魔法とか肉体言語だとか召喚術だとか、ファンタジー系に侵されたような単語が並んでいた。
部活と言うからには、てっきりサッカーとか野球とかをイメージしたのだが。
勿論俺はそんなスポーツな事、わざわざするつもりはないけれど。
しかし此処の部活とか研究会に書いてあるのは……
「あれ、ひょっとして何も知らないの?」
委員長だけでなく、綾瀬までもが不思議そうな顔をして俺を見た。
どういう事だ、一体!?
もしこれがゲームなら、ここは聞いてみる一択のだろう。
「知らないって何が」
「この学校のこと。ひょっとして普通の人間……じゃないよね。それ位は私でも見ればわかるけれど」
「普通の人間、って一体?」
何か良くわからない。
言葉が、話が、かみ合っていない気がする。
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