精霊王の契約者

布良

文字の大きさ
上 下
57 / 113
4章

脅し

しおりを挟む
ドアを勢いよく開けて店内に入ってきた金髪の女性は、そのまま俺達・・・
というか俺の元へと向かってきた。
周りの客も何事かとこちらを見てくる。
マジで誰だ?こいつ。

「ルナ君、この間デートしてる時に会った自称王女様だよ」

「あぁ、そういえばそんなの居たな」

そういえばデートの邪魔をしてきて散々この国をバカにした挙句、俺のことを勧誘してきたやつだ。
あれで勧誘できると思ってたのかね。

「自称じゃないですわ!ちゃんとした王女ですわ!というか、今まで忘れていたんですの!!?」

「・・・で、何の用だ?見ての通り俺達は友人と食事中なんだが?」

俺が問いかけると、金髪は咳を一つして答える。

「この間の続きですわ、貴方を勧誘しに来ましたの」

「帰れ」

俺は即答し、食事に手を付け始めた。
それに続いて精霊王達プリムたち、そして皆も食事をし始めた。
金髪は俯き、肩をプルプル震わせていると思ったら一気に顔をあげる。
その顔はどこか自信に満ちているように感じる。

「あら?そんなことをおっしゃっていいのかしら?」

「ん?」

「この場で言ってしまってもいいのかしら?」

金髪は俺のほうへ近づき、耳元で囁いた。

「あなたのについて、ですわ」

「!?」

予想外の内容に驚いてしまった。
なんでコイツがその話を知ってるんだ!?
ルーシーやアイリーン、ザックなどは俺のことを言いふらしてる様子はないし、ばれることはないと思っていたんだが・・・。

「クスッ、いい反応ですわね。さあどうしますの!?言いふらされたくないなら私に仕えなさい!」

王女ともあろう者が人を脅すとは恐れ入った。
これほどクズだとは思ってもみなかった。
しかし、どうするか・・・。
コイツに仕えないと家のことを言いふらされるのか、そうなると非常に・・・、非常に?
いや、待てよ?言いふらされたって俺には関係なくないか?
困るのはルーシー達・・・ヘイルズ家の人間が困るだけで、俺には被害なくね?
そう考えると、次第に金髪への怒りがこみあげてくる。
アリスが勧誘してきたときはこんなやり方じゃなかったが、こいつに至ってはこの国をバカにしたようなことを言ったり、脅して来たりと・・・。
そっちがその気なら、こっちにだって考えがある。

「そうか、言いたければ勝手に言えばいい。何を言われようが俺はお前に、お前の国に仕える気はない。しかし・・・」

俺は魔力を込めた殺気を放ちながら、金髪の顔を見る。
エド達は俺の殺気に気が付いたのか、顔をこわばらせて様子をうかがっている。
ルーシーだけは驚いて腰を抜かしていたが。
金髪は殺気を感じることはできていなかったが、雰囲気が変わったことには気が付いたのか
一歩、二歩と後ろに下がっていく。

「こっちを脅してくるような奴だ、これから先、何をしでかすか分からないな。・・・今のうちに

俺が殺気を放ったまま金髪に向かって歩き出すと、それに合わせて金髪は後ろに下がる。
そのまま金髪は壁にぶつかり、へたり込んでしまう。
体を震わせ、こちらを見つめてくる金髪の顔は恐怖で歪んでいる。
この様子ならもう関わってくることはないだろう。
俺は殺気を止める。
周りを見回すと、全員がひきつった表情でこちらを見つめている。
しまった、周りには他の客がいるんだった・・・。

「あー、せっかくの食事に水を差してしまって申し訳ない。ここは俺が奢るから、存分に食べてくれ」

少し慌ててしまい、この間エドに教えてもらったことを実践してしまった。
酒場の冒険者はともかく、ここってそういう場所じゃないから!
と、後悔していたが意外にも反応はよく、金髪が入ってくる前の雰囲気に戻った。
なんか・・・たくましいな。
エド達は既に食事を再開していたので、俺も席に戻り食事を再開する。
ルーシーは最後まで追いついていない様子だったが、最終的に諦めたのか食事をし始めた。
そのまま食事を続けていると、またも見覚えがある顔が店の中に入ってきた。

「すみません、こちらにレベッカ様は・・・レベッカ様!?」

入ってきた女性は、黒服に身を包んだ女性だった。

☆☆☆

「このたびは本当に申し訳ございませんでした!」

黒服の女性が事情を聴いてきたので、起きたことをそのまま話すと顔を真っ青にしながら俺に謝罪してきた。
謝罪とか別にいいから帰ってくれないかな、ホント・・・。
いや、ちょうど全員食べ終えたので俺達が帰るわ。
俺達が席を立つと、女性が腰につけている袋を取り外し、金貨を取り出す。

「ここの支払いは私が持ちます!」

黒服の女性がそう言ってきたが、いいのだろうか。
ここにいる全員分を払うことになってるのだが・・・。
そのことを伝えると、顔が引きつりながらも「は、払います・・・」といい、袋ごと金を俺に渡してきた。
この黒服の女性には悪いことをしたな。と思いながらも、その金で支払いを終える。
さて・・・帰ろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...