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2章
10話
しおりを挟む9/5 9話を修正しました。
修正版を見てない人はそちらから見ないと話の展開がおかしくなってると思います。
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あれから2週間ほど過ぎた。
すっかり回復した僕は今日も今日とて患者の治療をしてた。
ひどい怪我をした人はほとんどおらず、風邪を引いたものや、関節が痛いという老人の対応などだ。
一気に平和な日常になったのは嬉しいことだ。
そして、そんな嬉しいことが他に二つほどあるのだ。
まず一つは、いなくなった冒険者たちがこの街に戻ってきたのだ。
しかも以前より多い人数でだ。
なぜかというと、討伐隊を組んで出た時、僕が治療した冒険者達が僕のことを他の冒険者たちに話し、それが噂になったからだ。
僕としては非常に恥ずかしい限りだが、冒険者たちが増えるのいいことだ、魔物の脅威から遠ざかるのだからね。
逆に町の治安が少し悪くなったが、そこは街の警備兵にお願いしよう。
そしてもう一つ、冒険者たちが戻ってきたので、ポーションの値段が通常価格に戻ったのだ。
おかげさまで、初めはこの診療所も冒険者たちで非常に込み合っていたが、一気に数を減らした。
給料は確かに下がったが、もともと領主様から頂いてるだけで問題はない。
「・・・と、まあ僕としては今現在こんなところです」
「ふむ・・・ルーフレッドからの報告書でも読んだが、これでとりあえず元通りになったわけだね。いやー、よかったよかった。この間は倒れたって聞いたから心配していたんだけど、この調子なら問題ないね」
今、僕は領主様の館で今の現状を報告している。
この間倒れたことを領主様は心配していたらしい。
一応領主様にお願いされて討伐隊に参加したからね。
「むっ、もうこんな時間か。どうだい、これから一緒に食事でも・・・」
領主様の話を遮るように、部屋の窓に何かが当たる音がする。
僕と領主様が窓に視界を向けると、そこにはものすごい数のコウモリがドアをたたいているのが見えた。
「こ、コウモリ・・・?」
「あれ?このコウモリ・・・」
このコウモリ、なんとなくだが見覚えがある気がする。
『鑑定』でコウモリたちを見るとその疑問は解決した。
「領主様、窓を開けてコウモリたちを中に入れてもらえませんか?あれ、僕の知り合いなんですよ。安全なので、いいですか?」
「えっ・・・えーっと・・・いいよ?」
何言ってるんだこいつと言わんばかりの視線を僕に向けてくるが、そんなことお構いなしに窓を開ける。
するとコウモリたちが一斉に部屋の中に入ってくる。
想像以上の数だったのか、領主様は一歩後ずさりした。
部屋に入ったコウモリたちはどんどん一か所に集まり、人の形に変化していく。
「なっ、ま、まさか、ヴァンパイア族か!?」
ヴァンパイアとは魔族の中の種族で、いわゆる吸血鬼だ。
だが、ヴァンパイアというのはただの種族というわけではない。
現魔王、そして前魔王はヴァンパイア族の男性なのだ。
「な、あ、あ・・・あなたは・・・!!」
「やはり貴方でしたか・・・ヴァンプさん」
「うむ・・・久しいな、ケイよ」
現れたのはヴァンパイア族が誇る最強の存在、前魔王、ロード・オブ・ヴァンパイア1世であった。
突然の出来事に驚く領主様。
そりゃそうだ、僕だって驚いているし、なんならこの男、ロード・オブ・ヴァンパイア1世の知名度は圧倒的なのだ。
なにせこの男、まだヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族が争っている時代。この男一人のために魔族除いたほかの種族が組み合う事態になったくらいだ。
そこからなんだかんだあって、とある一国を除いたほかの国、種族が友好条約を結んだのだ。
ちなみにヴァンプというのは僕がつけたあだ名だ。
「なななな、なんでこんなところにロード・オブ・ヴァンパイア1世が!?」
領主様は驚き竦み上っている。
恐怖もあるだろうが、それだけではない。
「ヴァンプさん、そのオーラどうにかしてください。領主様が・・・」
ヴァンプさんをはじめとする真祖であるヴァンパイア族の男は、体から発する特殊なオーラがある。
ヴァンパイア族にも大きく2種類がいて、一つは真祖、もう一つは眷属がいる。
まあ簡単に言うと王族と平民みたいなものだ。
ただ、眷属というのは元をたどるとただの人間で、真祖の者が人間から血を吸うという契約を交わすことで、眷属としてヴァンパイア族になるのだ。
なので戦時はヴァンパイア族の真祖をはじめとしたものがどんどん吸血していったことで魔族が敵を減らし、減らした分をそのまま味方にするという方法をとったことで魔族が圧倒的な強さを発揮していたのだ。
ちなみに真祖は眷属を操れるが、逆は無理だし、眷属が人間の血を吸っても眷属は作れないのだ。
ただし、眷属の者が普通に子を成したらその子は眷属なのだ。
「むっ、ならここはここの領主殿の屋敷だったか。これは失礼をした」
ヴァンプさんからにじみ出るオーラがフッっと消える。
部屋を支配していた圧が消え、領主様は地面にへたり込んだ。
「で、今日はどうしたんですか?」
「いや、な。たまたま近くを通っていたのだが、見知った気配を感じたので来てみたわけだ。しかしケイよ、あまり街には寄らない貴様がこんなところにいるとは。いったいどんな風の吹き回しだ?」
確かに今までこんな街にいることはなかったけどさ。
と、いうことでざっくりと事情を話した。
「なんと!ならこれからはこの街にいるのだな?それはいいことを聞いた貴様を探すのは存外手間取るのだ。」
「一応手紙でも送ったんですけどね。入れ違いになっちゃいましたね」
「なに、早く知れたのだから何でもよいわ。ちょうどいい、最近アレをしていなかったな。そろそろしてもらいたいのだが?」
「ええ、いいですよ。じゃあ僕の診療所に行きましょうか」
二人で部屋を出ようとするが、なんとか正気に戻った領主様が止めてきた。
「ま、待ってくれ・・・ふ、二人はどんな関係なんだ・・・?それに、アレとはいったい・・・?」
「あぁ、彼は僕の友達であり患者でもあるんですよ。で、これからやるのは・・・簡単に言うと、肉体を若返らせるんですよ」
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