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3.ルーカスの苦難
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ルーカス・カルディナンは公爵家の次男に生まれ、武功で名の知れたカルディナン家の一員として、剣の腕もたち、容姿も騎士として男らしい体格で、顔立ちも良い部類に入っている。
そんなルーカスの所属する騎士団は、王太子付きの近衛騎士団のため、怪我をしてエレーヌにお世話になることは少なかったが、少数ながらも怪我でエレーヌのお世話になり、エレーヌのファンになる騎士たちがいた。
そのため、彼らが婚約者のルーカスに嫉妬して、地道な嫌がらせをルーカスにしていた。
それもあって、ルーカスは嫌がらせの原因でもあり、親の決めた婚約者のエレーヌ・アスター侯爵令嬢よりも、一目ぼれしたジュリアにさっさと乗り換えた。エレーヌとの婚約を破棄して、ルーカスはすっきりするはずだった。
それが、予想外にも、カルディナン公爵の指示としてエレーヌを通じて、持病のことをジュリアにばらされて、その後のジュリアの態度の変化に気づいてしまった。
あんなに俺に熱い視線を送っていたのに……
しかし、今はルーカスが何を言っても、すぐに修復することもかなわない状況である。
エレーヌにソーナ病のことを告げられた後の二人は、ややキグシャクとしながら、ジュリアを自宅に送り届け、その後も、ルーカスは、ジュリアの態度にやや落ち込みつつも、一生懸命、自分を励ましていた。
大丈夫だ!何だかんだと言って、最終的には微笑んで俺の手を取ってくれた!!
あのエレーヌがちょっと大げさに言ったから、ちょっと引いているだけだ!
それよりもエレーヌにあんなことを言わせる指示をだした父上に文句言わないと!!
ルーカスは普段は王宮内の騎士専用の寮で生活しているが、今日は婚約の件で、父親へ呼び出されているため、カルディナン公爵家に帰った。
自宅のカルディナン公爵家へ戻ると、すぐに父親の執務室に呼び出された。
「……エレーヌ嬢との婚約を解消の件だが、お前、考え直さないのか?」
「はい、もう本日、エレーヌには直接、婚約破棄を申し入れました。エレーヌも喜んで受け入れてくれました」
「な、何だと!!
きちんとよく考えた上で行動しろっと言ったのにもう婚約破棄を告げたのか!?馬鹿者!!
……まあ、お前は頑固だからな。近いうちにやると思ったよ。だから、エレーヌ嬢には忠告して、その場合のお願いもしておいたが……」
(くそっ!最後の、『ソーナ病の事実を伝えて、相手の女が逃げ出して元さや作戦』でも、相手の女はすぐに怯まなくてダメだったか……。普通の貴族令嬢ならみんな嫌がってすぐ逃げて、別れることになると思ったのに……)とカルディナン公爵は、実はがっかりしていた。
「ふー。エレーヌ嬢に本当に悪いことをしたな。
ルーカスばかりか私まで。
後日、カルディナン公爵家としてもお詫びにいかねば。
ところで、お前はエレーヌ嬢には心からお詫びした上で礼を尽くして婚約を断ったのだろうな?」
「え?いや、まあ。婚約破棄を告げたら、何だかエレーヌも婚約破棄を喜んでいるみたいでしたよ。きっと私以外に好きな相手でも……」
「なにぃ!?
お前、まさかそう思って、詫びの一言もいれなかったのか?」
「……でも、こちらもソーナ病のことをいきなりジュリアにばらされて、散々で……」
「お前はだからカルディナン家のボンクラと呼ばれるんだ!たわけ!!
明らかにお前が悪いのに、先走って直接、婚約破棄するわ、詫びひとついれられない情けない男であったとは!!」
そういって、怒ったカルディナン公爵は、執務室の机から立ち、ルーカスに近づくと……
ドゴッ
「ぐっ、ごほごほ……」
カルディナン公爵から強烈なボディーブローを受けたルーカス。
「エレーヌ嬢ほどの素晴らしい婚約者がいて、どうしてそんなことするのか私にはわからん。全く、あんな女狐にたぶらかされて、陛下の言う通りであったか。お前には、本当にがっかりしたぞ。反省しろっ!!」
そういってルーカスを執務室から追い出した。
ルーカス以上の筋肉を誇るカルディナン公爵のボディーブローは、服の上からでも飛んでもないダメージであった。それこそ、通常の人なら一発で肋骨にヒビが入るレベル。
鍛えられたルーカスでもしばらくせきこむくらい痛かった。
これ、絶対、青痣になっているぞ……。
廊下にでたルーカスはしばらく、壁に手をついて、痛みをやり過ごしていた。
そこへ、ルーカスの兄のエドモンドがやってきた。
「お、ルーカス。こっちに帰っていたのだな。どうした?大丈夫か?」
「あ、兄上……」
「ははは、父上のボディーブローでも受けたのか?」
「ええ、おっしゃるとおり」
「今度は何したんだ、お前?」
「エレーヌと婚約破棄しました」
「へー。エレーヌ嬢とね~」と言ってエドモンドは冷たい視線でルーカスを見つめた。
「……まさか、お前、エレーヌ嬢に謝罪もなしに、一方的に婚約破棄を言ったりしていないよな?」
「……えっと、それは……」
バキッ
兄からも思いっきり顔を1発殴られたルーカス。
「なっ!?兄上、いきなり何するんですか!?」と憤ったルーカスの口から血が流れ、頬はみるみる真っ赤に腫れてくる。
ルーカスの兄のエドモンドも騎士で、陛下付きの近衛騎士団の副団長をしているほどの腕前。その力で殴られれば当然のことである。
「……どうせ、お前のことだ。こちらの方が身分は上だからと思って、お前の浮気が悪いのに、エレーヌ嬢に一言も謝っていないのだろう?私があれだけお前に忠告したのに……」
「でも、兄上!エレーヌは喜んでいましたよ!!」
「当たり前だ!お前なんかと婚約して喜ぶのは、本当の貴族令嬢ではないお前の浮気相手くらいだ。
ああ、私が結婚していなかったら、私がエレーヌ嬢と結婚したのに!
私のソーナ病はもう完治しているから、エレーヌ嬢も嫌がらなかったかな。
とにかく、お前はエレーヌ嬢に心から謝罪しろっ!!
そうしないと、今度は一発では済まさないからな」と言い捨てて、エドモンドは去って行った。
ルーカスはとりあえず、手当てのために自室に戻ろうとしたところ、今度はルーカスの母親のカルディナン公爵夫人が至急、呼んでいると使用人に告げられた。
しかたなく、すぐにカルディナン公爵夫人の部屋に行くと、彼女は、頬を腫らしたルーカスに驚いて、手当てをしてくれた。
「あらあら、ルーカスったら、どうしたの?エドと喧嘩かしら?」
「はい。兄上にいきなり殴られました」
「まあ、エドに何かしたの?」
「いえ、兄上には何も。
エレーヌとの婚約破棄の件で、エレーヌに詫びをしなかったと……」
そう言って、事情を話そうとしたところ、
バッチーン
今度は母親にまで平手打ちされたルーカス。
しかも、手当てしたばかりのところにクリティカルヒット!
これは痛い。
「痛っ!痛いじゃないですか!母上まで何を!?」
「もう、本当にお馬鹿ちゃんねえ、ルーカスは。
でも、エレーヌちゃんを傷つけていいと思っているなら、ただじゃおかないわよ」
「は、母上!この前、相談した際、ジュリアとのこと、支援してくださるとおっしゃったではないですか!?」
「ええ、もちろん。
ジュリアさんには、カルディナン公爵家の嫁の一員として、ソーナ病対策も含めてしっかり教育するわ。
もちろん、ルーカスが捨てられないように彼女も大切にしてあげる。
でも、エレーヌちゃんの件とそれは別よ。
明らかにあなたが悪いのに、謝りもしなかったのね、あなたは……。
それはエドも旦那様も怒るわ!
エレーヌちゃんは我が家の恩人なのよ。
おまけに、エレーヌちゃんとは、婚約破棄しても、これからも末永くお付き合いしないといけない相手だってわかっていなかったの?
そもそも、現時点で、あなたのソーナ病の新薬開発の依頼をしているし、もしあなたに子供ができたら、エレーヌちゃんの領地の薬がきっと必要になるわ。
これから騎士として怪我をすることの多いカルディナン公爵家一族は、常にアスター侯爵家とは良好な関係でいないといけないの。
そんなこともわからないわけではないでしょう?
だから、しっかり罰をうけて、反省しなさい。
そしてエレーヌちゃんはもちろん、アスター侯爵家に謝罪もきちんとするのよ!」
ルーカスは母親からもこってりお説教を受けた。
そんなこともあり、ルーカスはカルディナン公爵家に今夜は泊まるつもりであったが、拗ねてすぐに騎士寮に帰ることにした。
ふんっ!父上も兄上もエレーヌ、エレーヌと!
おまけに母上まで!!
寮の自室でふて寝していたルーカス。
そこへ、同僚で友人のミカエルが心配して部屋に来てくれた。
「やあ!エレーヌ嬢と婚約破棄してどうしたかと思って……って、その顔こそ、どうした?誰にやられた?」
「……兄上と母上に。ちなみに父上からはボディーブローをやられた」
「おお、強烈だな、そりゃ……。
まあ、しょうがないよ。お前の家、みんなエレーヌ信望者ばかりだからな」
「だからって、いきなりだったぞ!
ちょっとエレーヌへの謝罪がたりなかったからって」
「え?
お前、エレーヌ嬢に詫びをいれなかったのか?
ありえねーぞ!」
「……こちらの方が身分は上だし」
「いや、でもカルディナン公爵家がゴリ押しした婚約だし、おまけにお前の浮気が原因なんだぞ?
エレーヌ嬢に何の非もなく、むしろ今までお前の持病に尽くしてくれていたのに、詫びて当たり前だぞ!」
「……俺は今まで、一度もエレーヌから治療を受けたことはない」
「え?
そうなのか?
でも、よくアスター侯爵領に行っていただろ?」
「ああ、一応、婚約者だから、交流するために定期的に行っていたが……」
「ふーん、じゃあ、エレーヌ嬢とよくアスター侯爵領でデートしていたのか?」
「いや、実はエレーヌと婚約者になってから、まともにデートなんかしたことないんだ……。
そういえば、アスター侯爵領に行くと、いつもひどい目にあっていたぞ。
俺がアスター侯爵領までわざわざ行って、エレーヌと交流しようとしても、行くとまずは薬湯に長時間漬けられるんだ。
おまけに、新薬と称して、あそこの薬師たちがこぞって俺の皮膚に色んな怪しげな薬を塗りたくってくるし、中には拷問かと思うくらいひりひりしてしみる薬があるしで、治療されてつらい思いしかしたことねーな。
そうこうしているうちに、エレーヌはマルス殿下に呼び出されたとかで婚約者の俺を放っていなくなるんだ。
おまけに、エレーヌのファンだか何だか知らないが、アスター侯爵領に療養に来ている貴族の男どもが、わざわざ俺のところにきて、嫌味をいってくるし、絡んできやがるし、散々だったよ。
騎士団内のエレーヌファンだけでもうんざりしていたのにな!」
「……おまえ、それは……」
「な?婚約破棄して正解だろ?」
「……そうかもな」
「まったく、俺にはエレーヌのどこがいいか、わからないままだよ」
「お前、その状況になったのは、明らかに周りのみんなに邪魔されているぞ。
おまけにアスター侯爵領での首謀者はきっとマルス殿下だな。
まあ、王族を敵に回してまで貫く愛がなければ、エレーヌ嬢との婚約はやめておいて正解だな。
もしかしたら、お前、このまま婚約していたら、もっとひどい目にあったかもな……」
「はあ?
何で首謀者がマルス殿下なんだ?
マルス殿下はまだ小さい子供だから関係ないだろう?」
「……え?お前知らないの?」
「何をだよ?」
「マルス殿下ってあの歳で、すでに国の仕事の一部が任せられているくらい天才と呼ばれていて、本当は俺らがついている王太子よりも優秀っていう噂があるんだ。
だから、見た目は子供でも、すでに王族として政治的な企みもお手のもんらしいぞ。
まあ、どう見ても、無邪気な病弱少年にしか見えないけどな」
「そうなのか?
そもそも、何でそのマルス殿下が俺とエレーヌの仲を邪魔するんだ?」
「そりゃあ、当然、エレーヌ嬢を狙っているからだろう」
「はあ?
いくつ年が離れていると思っているんだ?」
「確か今、エレーヌ嬢が17歳で、マルス殿下が11歳だから、6歳差だろ」
「いやでも、それって男女逆ならあり得る歳の差だが、普通はないだろ?」
「ああ、普通の貴族令嬢ではないな。
でも、前に聞いた話で、令嬢の方が6歳上で結婚した貴族がいたけど、あれは相手の令嬢が年相応の婚約者から婚約を破棄されて、それでやむなく6歳下の相手と……。
おい!これって、今のエレーヌ嬢と同じ状況じゃないか?」
「……それって、もしや俺との婚約破棄はマルス殿下の仕組んだことでも?」
「……いや、それはわからんが、あのマルス殿下なら可能性は否定できない」
「……俺とジュリアの出会いも仕組まれた可能性があるのか?」
「いや、それはどうだろうな。
とりあえず、エレーヌ嬢との仲を邪魔されたのは仕組まれたと思うが……」
「……お前も、エレーヌは王族ですら求めるほど、いい女だと思うか?」
「うーん、どうかな。
俺は子供の頃からの婚約者がいるから、そういう目で見たことがないのだが、エレーヌファンの奴らに言わせると、怪我の手当てをしてくれている時の姿が何とも言えず、魅力的で、癒しの天使に見えるだとか言っていたな。
人によって好みがあるから、どうだろうな」
「……そうか。
そういえば、俺は薬湯をすすめられたことがあるだけで、直接の手当てはいつも他の奴らで、エレーヌに手当てされたことは一度もないな。……今まで邪魔されていたんだな」
「……そうだな。お前とエレーヌ嬢の接触を防ごうとされていたのかもな」
「……そ、そうだったのか」
「まあ、もう今は婚約破棄したんだから、そっちの被害は減ってくると思うぞ。
でも、いいか?エレーヌ嬢のことを悪く言うのは絶対、やめておけ!!
お前が悪いのは間違いないのだから。エレーヌファンが結構、この騎士団に多いから気をつけろよ。これ以上、叩かれたくないだろう?」
「ああ、まあな」
「あと、できるだけ早く、エレーヌ嬢に謝りに行けよ!
そして、身の安全のために、それをみんなに大げさでもいいからアピールしろよ!!
何ならお前がエレーヌ嬢に捨てられたアピールにしてもいいくらいだ」
「な、なんだそれ!?」
「いいから!
お前自身の安全のためだから、下手なプライドは捨てろ!!」
「お前まで……。
わかったよ。
明日にでもすぐ謝罪に行ってくるよ」
「是非、そうしろ!
じゃあ、元気出せよ!お休み!!」
そう忠告して、ミカエルはルーカスの部屋をでた。
ミカエルが自室へ戻ろうと廊下を歩いていると、数人の騎士に囲まれた。
「よう、ミカエル。
奴はエレーヌ嬢と婚約破棄してきたみたいだが、エレーヌ嬢を傷つけるようなことを言ったって噂だが、本当だったか?」
「今から、みんなであいつのことボコボコにする予定だが、大丈夫そうな状況か?」
「いやいや、先輩方!やめてあげてください!!
あいつ、実家でもカルディナン公爵の強烈なボディーブローを受けて肋骨をやられているし!
しかも、あいつの兄貴の陛下直属近衛騎士団の副団長に顔を思いっきりぶん殴られて、挙句の果てに、公爵夫人にまでその患部へ力いっぱいのビンタをされているから!!
もうすでに痛々しいこと、この上ない状態ですから!!
これ以上やると、あいつもアスター侯爵領の療養地送りになるかも。
そこでエレーヌ嬢に再会して手当てしてもらって、今度こそ、エレーヌ嬢に惚れ込むなんてことになったら、先輩方もまずいでしょう?」
「……そうか。それなら、今日のところは勘弁してやるか」
「明日までにエレーヌ嬢に詫び入れるならな。
もし明日、行かなかったら、予定通りボコるから」
「は、はい!
もちろん、明日の朝一で、エレーヌ嬢のところへカルディナン公爵家一家、直々に謝りに行くそうです!!」と必死に友人を守ろうとするミカエル。
「そうなのか。
カルディナン公爵まででてくるなら、許してやらなくもないな」
「まあ、どうせ、明後日からの隣国合同訓練ではルーカスを死ぬほどしごく予定だしな」
そういって、エレーヌ嬢と婚約破棄したルーカスは、あやうく近衛騎士の仲間からもボコられるところを、ミカエルのおかげで、一時的に難を逃れた。
(よし、明日、絶対、ルーカスの奴を引きずってでもエレーヌ嬢に詫びに行かせるぞ!!)と決意する友人想いのミカエル。
そして、このことを予想したルーカスの家族が、ルーカスに愛の鞭(?)を与えたのは、エレーヌのためだけではなく、実はこのエレーヌファンたちの制裁からルーカスを守るためだったのでは?とも考える心優しいミカエルであった。
そんなルーカスの所属する騎士団は、王太子付きの近衛騎士団のため、怪我をしてエレーヌにお世話になることは少なかったが、少数ながらも怪我でエレーヌのお世話になり、エレーヌのファンになる騎士たちがいた。
そのため、彼らが婚約者のルーカスに嫉妬して、地道な嫌がらせをルーカスにしていた。
それもあって、ルーカスは嫌がらせの原因でもあり、親の決めた婚約者のエレーヌ・アスター侯爵令嬢よりも、一目ぼれしたジュリアにさっさと乗り換えた。エレーヌとの婚約を破棄して、ルーカスはすっきりするはずだった。
それが、予想外にも、カルディナン公爵の指示としてエレーヌを通じて、持病のことをジュリアにばらされて、その後のジュリアの態度の変化に気づいてしまった。
あんなに俺に熱い視線を送っていたのに……
しかし、今はルーカスが何を言っても、すぐに修復することもかなわない状況である。
エレーヌにソーナ病のことを告げられた後の二人は、ややキグシャクとしながら、ジュリアを自宅に送り届け、その後も、ルーカスは、ジュリアの態度にやや落ち込みつつも、一生懸命、自分を励ましていた。
大丈夫だ!何だかんだと言って、最終的には微笑んで俺の手を取ってくれた!!
あのエレーヌがちょっと大げさに言ったから、ちょっと引いているだけだ!
それよりもエレーヌにあんなことを言わせる指示をだした父上に文句言わないと!!
ルーカスは普段は王宮内の騎士専用の寮で生活しているが、今日は婚約の件で、父親へ呼び出されているため、カルディナン公爵家に帰った。
自宅のカルディナン公爵家へ戻ると、すぐに父親の執務室に呼び出された。
「……エレーヌ嬢との婚約を解消の件だが、お前、考え直さないのか?」
「はい、もう本日、エレーヌには直接、婚約破棄を申し入れました。エレーヌも喜んで受け入れてくれました」
「な、何だと!!
きちんとよく考えた上で行動しろっと言ったのにもう婚約破棄を告げたのか!?馬鹿者!!
……まあ、お前は頑固だからな。近いうちにやると思ったよ。だから、エレーヌ嬢には忠告して、その場合のお願いもしておいたが……」
(くそっ!最後の、『ソーナ病の事実を伝えて、相手の女が逃げ出して元さや作戦』でも、相手の女はすぐに怯まなくてダメだったか……。普通の貴族令嬢ならみんな嫌がってすぐ逃げて、別れることになると思ったのに……)とカルディナン公爵は、実はがっかりしていた。
「ふー。エレーヌ嬢に本当に悪いことをしたな。
ルーカスばかりか私まで。
後日、カルディナン公爵家としてもお詫びにいかねば。
ところで、お前はエレーヌ嬢には心からお詫びした上で礼を尽くして婚約を断ったのだろうな?」
「え?いや、まあ。婚約破棄を告げたら、何だかエレーヌも婚約破棄を喜んでいるみたいでしたよ。きっと私以外に好きな相手でも……」
「なにぃ!?
お前、まさかそう思って、詫びの一言もいれなかったのか?」
「……でも、こちらもソーナ病のことをいきなりジュリアにばらされて、散々で……」
「お前はだからカルディナン家のボンクラと呼ばれるんだ!たわけ!!
明らかにお前が悪いのに、先走って直接、婚約破棄するわ、詫びひとついれられない情けない男であったとは!!」
そういって、怒ったカルディナン公爵は、執務室の机から立ち、ルーカスに近づくと……
ドゴッ
「ぐっ、ごほごほ……」
カルディナン公爵から強烈なボディーブローを受けたルーカス。
「エレーヌ嬢ほどの素晴らしい婚約者がいて、どうしてそんなことするのか私にはわからん。全く、あんな女狐にたぶらかされて、陛下の言う通りであったか。お前には、本当にがっかりしたぞ。反省しろっ!!」
そういってルーカスを執務室から追い出した。
ルーカス以上の筋肉を誇るカルディナン公爵のボディーブローは、服の上からでも飛んでもないダメージであった。それこそ、通常の人なら一発で肋骨にヒビが入るレベル。
鍛えられたルーカスでもしばらくせきこむくらい痛かった。
これ、絶対、青痣になっているぞ……。
廊下にでたルーカスはしばらく、壁に手をついて、痛みをやり過ごしていた。
そこへ、ルーカスの兄のエドモンドがやってきた。
「お、ルーカス。こっちに帰っていたのだな。どうした?大丈夫か?」
「あ、兄上……」
「ははは、父上のボディーブローでも受けたのか?」
「ええ、おっしゃるとおり」
「今度は何したんだ、お前?」
「エレーヌと婚約破棄しました」
「へー。エレーヌ嬢とね~」と言ってエドモンドは冷たい視線でルーカスを見つめた。
「……まさか、お前、エレーヌ嬢に謝罪もなしに、一方的に婚約破棄を言ったりしていないよな?」
「……えっと、それは……」
バキッ
兄からも思いっきり顔を1発殴られたルーカス。
「なっ!?兄上、いきなり何するんですか!?」と憤ったルーカスの口から血が流れ、頬はみるみる真っ赤に腫れてくる。
ルーカスの兄のエドモンドも騎士で、陛下付きの近衛騎士団の副団長をしているほどの腕前。その力で殴られれば当然のことである。
「……どうせ、お前のことだ。こちらの方が身分は上だからと思って、お前の浮気が悪いのに、エレーヌ嬢に一言も謝っていないのだろう?私があれだけお前に忠告したのに……」
「でも、兄上!エレーヌは喜んでいましたよ!!」
「当たり前だ!お前なんかと婚約して喜ぶのは、本当の貴族令嬢ではないお前の浮気相手くらいだ。
ああ、私が結婚していなかったら、私がエレーヌ嬢と結婚したのに!
私のソーナ病はもう完治しているから、エレーヌ嬢も嫌がらなかったかな。
とにかく、お前はエレーヌ嬢に心から謝罪しろっ!!
そうしないと、今度は一発では済まさないからな」と言い捨てて、エドモンドは去って行った。
ルーカスはとりあえず、手当てのために自室に戻ろうとしたところ、今度はルーカスの母親のカルディナン公爵夫人が至急、呼んでいると使用人に告げられた。
しかたなく、すぐにカルディナン公爵夫人の部屋に行くと、彼女は、頬を腫らしたルーカスに驚いて、手当てをしてくれた。
「あらあら、ルーカスったら、どうしたの?エドと喧嘩かしら?」
「はい。兄上にいきなり殴られました」
「まあ、エドに何かしたの?」
「いえ、兄上には何も。
エレーヌとの婚約破棄の件で、エレーヌに詫びをしなかったと……」
そう言って、事情を話そうとしたところ、
バッチーン
今度は母親にまで平手打ちされたルーカス。
しかも、手当てしたばかりのところにクリティカルヒット!
これは痛い。
「痛っ!痛いじゃないですか!母上まで何を!?」
「もう、本当にお馬鹿ちゃんねえ、ルーカスは。
でも、エレーヌちゃんを傷つけていいと思っているなら、ただじゃおかないわよ」
「は、母上!この前、相談した際、ジュリアとのこと、支援してくださるとおっしゃったではないですか!?」
「ええ、もちろん。
ジュリアさんには、カルディナン公爵家の嫁の一員として、ソーナ病対策も含めてしっかり教育するわ。
もちろん、ルーカスが捨てられないように彼女も大切にしてあげる。
でも、エレーヌちゃんの件とそれは別よ。
明らかにあなたが悪いのに、謝りもしなかったのね、あなたは……。
それはエドも旦那様も怒るわ!
エレーヌちゃんは我が家の恩人なのよ。
おまけに、エレーヌちゃんとは、婚約破棄しても、これからも末永くお付き合いしないといけない相手だってわかっていなかったの?
そもそも、現時点で、あなたのソーナ病の新薬開発の依頼をしているし、もしあなたに子供ができたら、エレーヌちゃんの領地の薬がきっと必要になるわ。
これから騎士として怪我をすることの多いカルディナン公爵家一族は、常にアスター侯爵家とは良好な関係でいないといけないの。
そんなこともわからないわけではないでしょう?
だから、しっかり罰をうけて、反省しなさい。
そしてエレーヌちゃんはもちろん、アスター侯爵家に謝罪もきちんとするのよ!」
ルーカスは母親からもこってりお説教を受けた。
そんなこともあり、ルーカスはカルディナン公爵家に今夜は泊まるつもりであったが、拗ねてすぐに騎士寮に帰ることにした。
ふんっ!父上も兄上もエレーヌ、エレーヌと!
おまけに母上まで!!
寮の自室でふて寝していたルーカス。
そこへ、同僚で友人のミカエルが心配して部屋に来てくれた。
「やあ!エレーヌ嬢と婚約破棄してどうしたかと思って……って、その顔こそ、どうした?誰にやられた?」
「……兄上と母上に。ちなみに父上からはボディーブローをやられた」
「おお、強烈だな、そりゃ……。
まあ、しょうがないよ。お前の家、みんなエレーヌ信望者ばかりだからな」
「だからって、いきなりだったぞ!
ちょっとエレーヌへの謝罪がたりなかったからって」
「え?
お前、エレーヌ嬢に詫びをいれなかったのか?
ありえねーぞ!」
「……こちらの方が身分は上だし」
「いや、でもカルディナン公爵家がゴリ押しした婚約だし、おまけにお前の浮気が原因なんだぞ?
エレーヌ嬢に何の非もなく、むしろ今までお前の持病に尽くしてくれていたのに、詫びて当たり前だぞ!」
「……俺は今まで、一度もエレーヌから治療を受けたことはない」
「え?
そうなのか?
でも、よくアスター侯爵領に行っていただろ?」
「ああ、一応、婚約者だから、交流するために定期的に行っていたが……」
「ふーん、じゃあ、エレーヌ嬢とよくアスター侯爵領でデートしていたのか?」
「いや、実はエレーヌと婚約者になってから、まともにデートなんかしたことないんだ……。
そういえば、アスター侯爵領に行くと、いつもひどい目にあっていたぞ。
俺がアスター侯爵領までわざわざ行って、エレーヌと交流しようとしても、行くとまずは薬湯に長時間漬けられるんだ。
おまけに、新薬と称して、あそこの薬師たちがこぞって俺の皮膚に色んな怪しげな薬を塗りたくってくるし、中には拷問かと思うくらいひりひりしてしみる薬があるしで、治療されてつらい思いしかしたことねーな。
そうこうしているうちに、エレーヌはマルス殿下に呼び出されたとかで婚約者の俺を放っていなくなるんだ。
おまけに、エレーヌのファンだか何だか知らないが、アスター侯爵領に療養に来ている貴族の男どもが、わざわざ俺のところにきて、嫌味をいってくるし、絡んできやがるし、散々だったよ。
騎士団内のエレーヌファンだけでもうんざりしていたのにな!」
「……おまえ、それは……」
「な?婚約破棄して正解だろ?」
「……そうかもな」
「まったく、俺にはエレーヌのどこがいいか、わからないままだよ」
「お前、その状況になったのは、明らかに周りのみんなに邪魔されているぞ。
おまけにアスター侯爵領での首謀者はきっとマルス殿下だな。
まあ、王族を敵に回してまで貫く愛がなければ、エレーヌ嬢との婚約はやめておいて正解だな。
もしかしたら、お前、このまま婚約していたら、もっとひどい目にあったかもな……」
「はあ?
何で首謀者がマルス殿下なんだ?
マルス殿下はまだ小さい子供だから関係ないだろう?」
「……え?お前知らないの?」
「何をだよ?」
「マルス殿下ってあの歳で、すでに国の仕事の一部が任せられているくらい天才と呼ばれていて、本当は俺らがついている王太子よりも優秀っていう噂があるんだ。
だから、見た目は子供でも、すでに王族として政治的な企みもお手のもんらしいぞ。
まあ、どう見ても、無邪気な病弱少年にしか見えないけどな」
「そうなのか?
そもそも、何でそのマルス殿下が俺とエレーヌの仲を邪魔するんだ?」
「そりゃあ、当然、エレーヌ嬢を狙っているからだろう」
「はあ?
いくつ年が離れていると思っているんだ?」
「確か今、エレーヌ嬢が17歳で、マルス殿下が11歳だから、6歳差だろ」
「いやでも、それって男女逆ならあり得る歳の差だが、普通はないだろ?」
「ああ、普通の貴族令嬢ではないな。
でも、前に聞いた話で、令嬢の方が6歳上で結婚した貴族がいたけど、あれは相手の令嬢が年相応の婚約者から婚約を破棄されて、それでやむなく6歳下の相手と……。
おい!これって、今のエレーヌ嬢と同じ状況じゃないか?」
「……それって、もしや俺との婚約破棄はマルス殿下の仕組んだことでも?」
「……いや、それはわからんが、あのマルス殿下なら可能性は否定できない」
「……俺とジュリアの出会いも仕組まれた可能性があるのか?」
「いや、それはどうだろうな。
とりあえず、エレーヌ嬢との仲を邪魔されたのは仕組まれたと思うが……」
「……お前も、エレーヌは王族ですら求めるほど、いい女だと思うか?」
「うーん、どうかな。
俺は子供の頃からの婚約者がいるから、そういう目で見たことがないのだが、エレーヌファンの奴らに言わせると、怪我の手当てをしてくれている時の姿が何とも言えず、魅力的で、癒しの天使に見えるだとか言っていたな。
人によって好みがあるから、どうだろうな」
「……そうか。
そういえば、俺は薬湯をすすめられたことがあるだけで、直接の手当てはいつも他の奴らで、エレーヌに手当てされたことは一度もないな。……今まで邪魔されていたんだな」
「……そうだな。お前とエレーヌ嬢の接触を防ごうとされていたのかもな」
「……そ、そうだったのか」
「まあ、もう今は婚約破棄したんだから、そっちの被害は減ってくると思うぞ。
でも、いいか?エレーヌ嬢のことを悪く言うのは絶対、やめておけ!!
お前が悪いのは間違いないのだから。エレーヌファンが結構、この騎士団に多いから気をつけろよ。これ以上、叩かれたくないだろう?」
「ああ、まあな」
「あと、できるだけ早く、エレーヌ嬢に謝りに行けよ!
そして、身の安全のために、それをみんなに大げさでもいいからアピールしろよ!!
何ならお前がエレーヌ嬢に捨てられたアピールにしてもいいくらいだ」
「な、なんだそれ!?」
「いいから!
お前自身の安全のためだから、下手なプライドは捨てろ!!」
「お前まで……。
わかったよ。
明日にでもすぐ謝罪に行ってくるよ」
「是非、そうしろ!
じゃあ、元気出せよ!お休み!!」
そう忠告して、ミカエルはルーカスの部屋をでた。
ミカエルが自室へ戻ろうと廊下を歩いていると、数人の騎士に囲まれた。
「よう、ミカエル。
奴はエレーヌ嬢と婚約破棄してきたみたいだが、エレーヌ嬢を傷つけるようなことを言ったって噂だが、本当だったか?」
「今から、みんなであいつのことボコボコにする予定だが、大丈夫そうな状況か?」
「いやいや、先輩方!やめてあげてください!!
あいつ、実家でもカルディナン公爵の強烈なボディーブローを受けて肋骨をやられているし!
しかも、あいつの兄貴の陛下直属近衛騎士団の副団長に顔を思いっきりぶん殴られて、挙句の果てに、公爵夫人にまでその患部へ力いっぱいのビンタをされているから!!
もうすでに痛々しいこと、この上ない状態ですから!!
これ以上やると、あいつもアスター侯爵領の療養地送りになるかも。
そこでエレーヌ嬢に再会して手当てしてもらって、今度こそ、エレーヌ嬢に惚れ込むなんてことになったら、先輩方もまずいでしょう?」
「……そうか。それなら、今日のところは勘弁してやるか」
「明日までにエレーヌ嬢に詫び入れるならな。
もし明日、行かなかったら、予定通りボコるから」
「は、はい!
もちろん、明日の朝一で、エレーヌ嬢のところへカルディナン公爵家一家、直々に謝りに行くそうです!!」と必死に友人を守ろうとするミカエル。
「そうなのか。
カルディナン公爵まででてくるなら、許してやらなくもないな」
「まあ、どうせ、明後日からの隣国合同訓練ではルーカスを死ぬほどしごく予定だしな」
そういって、エレーヌ嬢と婚約破棄したルーカスは、あやうく近衛騎士の仲間からもボコられるところを、ミカエルのおかげで、一時的に難を逃れた。
(よし、明日、絶対、ルーカスの奴を引きずってでもエレーヌ嬢に詫びに行かせるぞ!!)と決意する友人想いのミカエル。
そして、このことを予想したルーカスの家族が、ルーカスに愛の鞭(?)を与えたのは、エレーヌのためだけではなく、実はこのエレーヌファンたちの制裁からルーカスを守るためだったのでは?とも考える心優しいミカエルであった。
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