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番外編 髪型

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ポニーテールがピョコピョコしてかわいいな。

彼女の第一印象は、そんな風に思った。

中学校からやっていたバスケは、高校生になってからも続けていた。バスケの試合の際、観客席でキャーキャー騒ぐ女たちは騒音だとしか思わず、女に全然、興味を持ってなかった。
しかし、ある日の試合で、観客席の一部がライトアップされたように見えた。
 不思議に思って、そちらをよく見ると、ポニーテールをした高校生位の女の子がいた。しかも、本当にスポットライトが当たっているわけではなく、彼女だけが光っているように見えた。
彼女はバスケの試合の様子に興奮しているようで、ポニーテールをピョコピョコさせて、隣にいる彼女の友人と話をしていた。
 他の人にもそう見えるのかと思い、自分の友人の1人に彼女が光っていることを訴えてみたが、彼には他の観客と彼女が見分けがつかないようだった。

あんなに輝いているのに……。

でも、その話を友人達にしたところ、「おぉ、あんなにモテるのに、女に興味がなかった我が校のバスケの王子にも、ついに春がきたか!?」「凄いぞ!王子からの一目惚れか!?」と友人達が騒いでいた。
ちなみに、友人達にはからかわれているのか、「王子」というあだ名をつけられ、よく呼ばれている。
 人脈の広い友人の1人が、あの時に輝いていた彼女がどこの誰かを調べてくれた。
おまけに彼女の友人を伝に、会う段取りまでつけようとしてくれた。
ところが、彼女と出会う前に、彼女の訃報を聞くことになった。

交通事故だと聞いた。

まるで自分自身の半身を切り裂かれたような、ひどい絶望に襲われた。

ああ、間に合わなかった……。
守るどころか、知り合うことすらできなかったのだ。



アレックスは、そんな絶望しかないひどい夢を見たせいか、涙を流しながら、マリーエルと二人の寝室で、目を覚ました。
もちろん、目が覚めたら、夢の内容はあまりよく覚えていないアレックスであったが、手に入れたい大切な人が喪われたという喪失感は残っていた。

ふと、横を見ると、いつものようにマリーエルは隣に寝ていた。
 思わず、寝ているマリーエルが起きるのもかまわず、ぎゅうぎゅうに抱きしめてしまった。

「んん?アレックス様?
どうされました?怖い夢でもみましたか?
あら?本当に泣いてますよ……」と言って、いつものようにアレックスを撫でて慰めてくれるマリーエル。

ああ、大切な人が今、生きて腕の中にいる!
その喜びと何という安堵感!!
これはもう手離せない……。

アレックスはその晩はマリーエルを抱きしめたまま離れられなかった。

一方、マリーエルといえば……。

うーん、いいけどねー。
ちょ~っと寝苦しいけどね。
…いや、結構、苦しかった!
ちょっと!抱き枕じゃないからね!!
そんなぎゅうぎゅうしないでー!

でも……。
うん、この必死さは、拒否厳禁な感じだわ。
この腕を外せばヤンデレるパターンだわ。
が・ま・ん~。

そんなアレックスがちょっと迷惑なマリーエルであった。


また別の日、マリーエルはアレックスから前世でよくしていた髪型にするように要求された。
 三つあみや、二つ分け、ツインテールにしても、アレックスに「何か違う!」と首をふられ、困るマリーエル。
あまりしたことはなかったが、最後にポニーテールにしたら、やっと「それっ!!それがいい!!」と言われた。
しかも、ピョコピョコ飛び跳ねるように要求された。

や、ヤンデレだから?
アレックス様の考えることは本当にわからない……。

マリーエルはアレックスの要求が理解できる日は来ないなと思ってあきらめた。ただ、これについては、実はアレックス自身も夢で朧気なため、「何となくいい!」と思っただけだった。

なんか先日は泣いていたし、ストレスかな?
それならしょうがないか……。

そう思い、マリーエルはそういうアレックスの突発的要求はできるだけ聞き入れてあげた。
時々、ポニーテールを要求するアレックスのおかげで、それをしていたマリーエルがピョコピョコしていて可愛いかったのもあり、ポニーテールの髪型が、ジーンフォレスト王国の王宮内にいる女性達の間でも流行りだしたのであった。
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