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悪役令嬢でも死んじゃだめぇ~!8 レオンとロラン視点
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一方、エミリーの知らないところでのこと。
ロランは、自室に向かう途中で、ばったり、レオンに出会った。
レオンにニコッと笑いかけて軽く会釈したロランは、そのままレオンの横を通り過ぎようとした。
けれども、レオンがロランの腕をぐっと掴んで引き止めた。
「おい、ロラン……」
「ん?レオンお兄様?
何かご用ですか?」
「お前、今、エミリーのいる部屋から来たな?」
「ええ、そうですよ。
エミリーのお見舞いに行ってきましたが、何か?」
「なぁ、ロラン。
お前、何故、そんな幼児のふりしてエミリーを構うんだ?
無駄なことは、嫌いな癖に……」
「おやおや、野暮ですね、レオンお兄様。
もちろん、エミリーが気に入ったからですよ」
「はっ、お前より、彼女は7歳も上だぞ。
お前と釣り合わないだろう。
ああ、頭の中身は逆に、彼女は普通の子だから、幼すぎて合わないだろう?」
そう、ロランは、間違いなく6歳。
けれども、ただの6歳ではなく、弁もたち、中身はほぼ大人に近い天才児である。
「え~、笑顔のひとつも引き出せないレオンお兄様よりは釣り合いますよ。
だって、僕にはエミリー、終始、笑顔ですもん。
しかも、僕なら、レオンお兄様みたいな縛りはない身ですから、妻の身分が子爵令嬢でも問題ないしね。
たとえ7歳年上なことを差し引いても、僕の方が釣り合いますよ?」
「……俺にそんな態度とは、いい度胸だな。
ケンカなら、買うぞ」
「やめてくださいよ、野蛮だな。
レオンお兄様こそ、エミリーではなく、未来の宰相夫人に相応しい理想の女性とやらを他で探してください。
何でしたっけ?
政治に詳しい、ラフィーナお姉様みたいな方がいいんでしたっけ?」
「確かにそうだが、エミリーがちょっと気になるんだ。
あの氷の彫刻と呼ばれたイザークを、メロメロにする程の笑顔とやらが、どんなものか見てみたいんだ」
「ふーん、冷やかしなら、他をあたってください」
「あいつの笑顔を見たらな」
「……一度、笑顔を見たら、もうエミリーにつきまといませんか?」
「たぶんな。
……いや、まだわからん」
「ちっ!」と忌々しげに舌打ちをするロラン。
おわかりのように、ロランは、エミリーを狙っていた。
初めは、エミリーのことを、姉ラフィーナの盾代わり位にしか見ていなかった。
それが、エミリーの無邪気な笑顔を見て、あ、この子は自分の伴侶にしようと考えを変えた。
エミリーなら、きっと、嫁になかなかいけなさそうだから(大失礼!)、多少、年齢が上でもいけると思っていた。
ところが、予想外にライバルがいることがわかり、ロランは苛立っていた。
「……とにかく、レオンお兄様は、むやみにエミリーに近づかないでくださいな。
変な噂がでたら、エミリーが可哀想だ。
まあ、僕が嫁にもらえば問題ないけどね」
「お前こそ、エミリーに近づくなよ。
隣国にいるからって、エミリーを溺愛するイザークにばれたら、ただじゃすまないぞ?」
「ふっ、調べたところ、あのハロル公爵令息は、随分とヘタレな方のようですけどね?
エミリーは、その方の気持ちに気づいていないと思いますよ」
「え?そんな馬鹿な……。
あいつもそこまで、ヘタレなタイプじゃないと思うぞ」
「そうなんですか?
まあ、どっちでもいいです。
僕のやることに変わりはないですからね。
そんな奴は目じゃないが、レオンお兄様は関わらないでくださいな。
エミリーの傷に対する責任は、僕がとりますんで!
もう父上や母上にも話は通していますから」
「何でそんなに牽制するんだ?
しかも、エミリーを騙しているし……。
もしお前に嫁入りすることになったら、何だかエミリーが可哀想な気がするぞ」
「いいから!
く・れ・ぐ・れ・も僕の邪魔しないでください。
ね、レオンお兄様?」
そう言って、脅すように黒く微笑むロランは暗黒の天使のようだった。
そして、(こいつ、本気だ………)と戦慄をおぼえるレオンであった。
ロランは、自室に向かう途中で、ばったり、レオンに出会った。
レオンにニコッと笑いかけて軽く会釈したロランは、そのままレオンの横を通り過ぎようとした。
けれども、レオンがロランの腕をぐっと掴んで引き止めた。
「おい、ロラン……」
「ん?レオンお兄様?
何かご用ですか?」
「お前、今、エミリーのいる部屋から来たな?」
「ええ、そうですよ。
エミリーのお見舞いに行ってきましたが、何か?」
「なぁ、ロラン。
お前、何故、そんな幼児のふりしてエミリーを構うんだ?
無駄なことは、嫌いな癖に……」
「おやおや、野暮ですね、レオンお兄様。
もちろん、エミリーが気に入ったからですよ」
「はっ、お前より、彼女は7歳も上だぞ。
お前と釣り合わないだろう。
ああ、頭の中身は逆に、彼女は普通の子だから、幼すぎて合わないだろう?」
そう、ロランは、間違いなく6歳。
けれども、ただの6歳ではなく、弁もたち、中身はほぼ大人に近い天才児である。
「え~、笑顔のひとつも引き出せないレオンお兄様よりは釣り合いますよ。
だって、僕にはエミリー、終始、笑顔ですもん。
しかも、僕なら、レオンお兄様みたいな縛りはない身ですから、妻の身分が子爵令嬢でも問題ないしね。
たとえ7歳年上なことを差し引いても、僕の方が釣り合いますよ?」
「……俺にそんな態度とは、いい度胸だな。
ケンカなら、買うぞ」
「やめてくださいよ、野蛮だな。
レオンお兄様こそ、エミリーではなく、未来の宰相夫人に相応しい理想の女性とやらを他で探してください。
何でしたっけ?
政治に詳しい、ラフィーナお姉様みたいな方がいいんでしたっけ?」
「確かにそうだが、エミリーがちょっと気になるんだ。
あの氷の彫刻と呼ばれたイザークを、メロメロにする程の笑顔とやらが、どんなものか見てみたいんだ」
「ふーん、冷やかしなら、他をあたってください」
「あいつの笑顔を見たらな」
「……一度、笑顔を見たら、もうエミリーにつきまといませんか?」
「たぶんな。
……いや、まだわからん」
「ちっ!」と忌々しげに舌打ちをするロラン。
おわかりのように、ロランは、エミリーを狙っていた。
初めは、エミリーのことを、姉ラフィーナの盾代わり位にしか見ていなかった。
それが、エミリーの無邪気な笑顔を見て、あ、この子は自分の伴侶にしようと考えを変えた。
エミリーなら、きっと、嫁になかなかいけなさそうだから(大失礼!)、多少、年齢が上でもいけると思っていた。
ところが、予想外にライバルがいることがわかり、ロランは苛立っていた。
「……とにかく、レオンお兄様は、むやみにエミリーに近づかないでくださいな。
変な噂がでたら、エミリーが可哀想だ。
まあ、僕が嫁にもらえば問題ないけどね」
「お前こそ、エミリーに近づくなよ。
隣国にいるからって、エミリーを溺愛するイザークにばれたら、ただじゃすまないぞ?」
「ふっ、調べたところ、あのハロル公爵令息は、随分とヘタレな方のようですけどね?
エミリーは、その方の気持ちに気づいていないと思いますよ」
「え?そんな馬鹿な……。
あいつもそこまで、ヘタレなタイプじゃないと思うぞ」
「そうなんですか?
まあ、どっちでもいいです。
僕のやることに変わりはないですからね。
そんな奴は目じゃないが、レオンお兄様は関わらないでくださいな。
エミリーの傷に対する責任は、僕がとりますんで!
もう父上や母上にも話は通していますから」
「何でそんなに牽制するんだ?
しかも、エミリーを騙しているし……。
もしお前に嫁入りすることになったら、何だかエミリーが可哀想な気がするぞ」
「いいから!
く・れ・ぐ・れ・も僕の邪魔しないでください。
ね、レオンお兄様?」
そう言って、脅すように黒く微笑むロランは暗黒の天使のようだった。
そして、(こいつ、本気だ………)と戦慄をおぼえるレオンであった。
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