悪役令嬢でも死んじゃだめぇ~!

ルナルオ

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悪役令嬢でも死んじゃだめぇ~!4

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ある日、不幸な事件がおきた。

それは、私がいつものように、ラフィーナ様と遊ぼうと、アリード公爵家を訪ねていた時だった。

さわやかな気候だったので、アリード公爵家のお庭にある東屋で、お茶会をすることにした。
その東屋は、屋敷からやや離れたところにあり、真白な石柱で円形に囲われ、屋根も真白で、細かいが華美な細工が彫られた石でできている。
東屋の真ん中にあるテーブルも、細工が施された真っ白な石でできていて、素敵な空間を演出している。

アリード公爵家のお庭は、木々やお花が沢山植えてあり、晴れた日は、その木漏れ日の美しさにみとれながら、お散歩するのが楽しみなお庭である。
花壇も綺麗に大小を上手く組み合わせた庭石で囲まれて整備され、それらの庭石を見るたびに、投げやすそうな石だなと思っていた。

アリード公爵家は、最近、ラフィーナ様を狙う不振な輩が屋敷周辺をうろついているのを目撃され、屋敷周辺の警備を強化している。
アリード公爵家の屋敷外は警備を強化していたが、庭内の方は、油断して、まだ警備が薄かった。
そのせいか、賊が1人、その庭に侵入し、私とお茶している東屋にいるラフィーナ様を狙ってきた。

「ラフィーナ嬢だな?悪いが死んでもらう!」
「キャー!!」

とっさに、私は叫ぶラフィーナ様の前に飛び出して、かばった。
けれども、賊は、そんな私を邪魔だと言わんばかりに、首をつかみ持ち上げた。

「ぐっ、げほっ」
「邪魔するな!」
「キャー!いやー!
エミリぃーーー!」と叫ぶラフィーナ様。叫んでないで、今のうちに逃げて!

私は何とか賊の腕を振り払おうと、蹴ったり爪をたてたりと抵抗はしたが、ものともされず、人形のように放り投げられた。

ドゴンッ
ガサガサ

投げられた先に木があり、木の幹に頭を打ちつけた。
頭を強く打ち、痛みで、くらっとめまいがしたが、そんなことは気力で抑え込み、すぐに機敏に立ち上がった。
目の前にあった花壇周辺の小石と、やや大きめの庭石をそれぞれつかみ、体制を整えて賊へ突進した。
ラフィーナ様に手をかけようとする賊の背中を狙ってまず小石を投げた。
小石は賊の腰にクリティカルヒットして、賊がぐっと呻いて、鬼のような形相で振り返った。
そこを、私は、助走をつけて飛び上がって賊の顔面に、もう一つの大きめの庭石を叩き込んだ。
まあ、思いっきり叩き投げたというか……。
とにかく、賊を止めるために無我夢中だった。
そんな拙い攻撃でも、賊にダメージを上手く与えられたようであった。

「うぐっ」と顔面を押さえて呻く賊。

賊がまだ呻いている隙に、恐怖で硬直しているラフィーナ様の腕を掴み、全力疾走で屋敷内へ向かった。

「だれかーーー!賊だーーー!!」と声を限りに叫びながら。

運良く、賊に追いつかれる前に、私達の声を聞きつけたアリード公爵家の護衛騎士達が駆けつけてくれた。
その賊は、すぐに捕まった。
何とかラフィーナ様は無事に保護された。
それをみて、安心した私は、貧血を起こした。
吐き気とめまいにクラクラしながら、すぐに周りが紫色の光に包まれたように見えてきた。
どうやら、頭部をちょっと切ったらしく、結構な量の血が流れていたようで、とうとう意識を失った。
血塗れの私の姿は、さぞやラフィーナ様に恐怖を与えてしまっただろうと心配しながら……。

意識を失った私は、異世界の夢をみていた。
そこで、私は乙女ゲームと呼ばれる恋愛を題材としたシュミレーションゲームで遊びながら寝っ転がっていた。

「ああっ、何これ!?
どうしてさ~。
いくらやっても、いつも悪役令嬢ラフィーナが死亡バッドエンドになるな……」と嘆く私。
そして、何気なくゲームパッケージを眺めてみた。
「今時、ライバルの悪役令嬢との友情エンディングの一つは、用意してあるものじゃないの?
まあ、ヒロインのサラも気を抜くと死亡バッドエンドになるし、やけにみんな死亡しやすいな、このゲーム。
攻略対象達も、途中で死ぬことが多いような……。
ホラーゲームみた~い。
ん?あれ、これ………ああっ!」

私は、その時にやっと気がついた。
そのゲームは、いかにも乙女ゲームを装おったザバイバルゲームであった。
さすがに、ホラーゲームではなかったけど。
でも、パッケージとかさ、カラフルでめっちゃ絵師さんが好みの絵なんで、よく調べないで買ってしまったんだよ。

説明書は読まず、ゲームはとりあえずやってみる派ですが、何か?

いやいや、ちゃんと恋愛というか、王子様や宰相の息子とか、定番のイケメン達もでてきて、胸キュンなシーンもあったよ。
でも、説明書にちゃんとザバイバルゲームって、分類が書いてあるってことは、生き残りをかけたゲームだよね。ははーん。

だから、皆よく死ぬのか~。

そんな風に衝撃を受けて、おざなりにゲームを進めたせいか、悪役令嬢ラフィーナが、またもや無惨な死に方をしてエンディングになった。
私は、思わず叫んだ。

「ああっ、だめー!
悪役令嬢でも死んじゃだめぇ~!」


ここで目が覚めた。
目を開けると、見知らぬ天井が見えた。

今の夢は、もしや、私の前世かな……?

意外と夢の内容を覚えており、何だか切なくなった。
でも、夢を見る前なら理解できなかったことが、理解できたり、知識なのか、よくわからない記憶か蘇っているという自覚はある。
やや頭が混乱する中、とりあえず、今の状態から確認することにした。

どうやらあの後、私は、ラフィーナ様のお屋敷の客間で寝かされていたようである。
ふと、気がつくと、やわらかい手が、私の手を握っていた。
もちろん、ラフィーナ様が、私の手を握りながら、泣きつかれたのか、ベッドサイドで座りながらお休みになられている。

可愛い。
天使の寝顔!

私は、頭に包帯を巻かれており、手当てはされているようであったが、目が覚めた途端、頭がズキンズキンと痛みだした。

痛いよ~。
これは不手際極まりないな~。
反省せねば……。

おそらく、傷が直り次第、ルキラ子爵家で厳しく再訓練させられることは、決定事項だろう。
面倒で嫌だなとため息をつく。
でも、こんな私でも、ラフィーナ様を何とか守れたことが嬉しかった。
悪役令嬢なんてどんでもない!
ラフィーナ様は、天使のような子だ。
あの夢でのゲームみたいに、死なせなくて済んだ。

よかった、間に合った~。
何とか、これからも、防ぐぞ!!

そんな強い意志や希望が生まれた瞬間だった。
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