怪異観察奇録第4結社

怪 No.069 「孤衆島」

日本より遥か西の絶海に、島が存在する。
そこに、ある男が漂着した。

どうやら無人島らしい。男はこの孤島で、一人で生きる選択を迫られた。

男はとにかく生きた。そして助けが来るのを待った。
男は島を、その大きさほど広くは感じていなかった。
しかしそのことに、特に違和感を覚えることもなかった。


何故か。


実はこの島、無人島ではない。

現在この島には、千人いる。

しかし、互いに干渉することはない。

この島に生息する特有の木がそれを許さないからだ。

この木が発する花粉を吸引した者は、他の人間に気づく事ができなくなるのである。

そして他の人間がいる領域を、まるでそこに植え付けられたかのように、絶対に侵さなくなる。

木が何のためにこの「人の作付け」を行っているのかは分からない。

ただこの島は、漂流者にとってのみ無人島となる、条件付き無人島であった。





世界に点在する無人島。
だがそこは本当に、無人と言えるのだろうか。