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怪 No.045 「波人間」
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私は彼が大好きでした。
いつの間にか側にいて、私を楽しませてくれる彼が。
デートの日、決まって私の方が早く着きます。でも気づくともう彼は側にいて、私をまず褒めてくれるんです。
一緒にいるときはいつもくっ付く程の距離にいて、離れていることなんてあり得ない。そんなインコの番いのような二人でした。
しかしある時、私がいつものように彼を待っていると、目を少し凝らさなければ見えない程の距離に、こちらへ近づいてくる彼がいるのを見つけました。
実は私かなり視力が良いんです。彼の姿をはっきり捉えるのに、そう時間はかかりませんでした。
ただびっくりしちゃいましたよ。彼の姿が伸びているのですから。
そして伸びた彼の体躯が、私に近づいてくるほど、本来の彼のサイズになっていくのですから。
これってつまり、彼はドップラーしていたんですよ。
人の体をしておいて、ドップラー効果を見せているのです。
よって、彼は波です。
彼は波長、波長そのものなのです。
何故なら波長でなければドップラー効果などあり得ないからです。
この出来事は、逆説的に彼が波であることを証明しました。
私が愛していたのは、人を象った波だったのです。
ヒトの量子構造には、私達の未だ知らぬ類型が存在するのかもしれません。
いつの間にか側にいて、私を楽しませてくれる彼が。
デートの日、決まって私の方が早く着きます。でも気づくともう彼は側にいて、私をまず褒めてくれるんです。
一緒にいるときはいつもくっ付く程の距離にいて、離れていることなんてあり得ない。そんなインコの番いのような二人でした。
しかしある時、私がいつものように彼を待っていると、目を少し凝らさなければ見えない程の距離に、こちらへ近づいてくる彼がいるのを見つけました。
実は私かなり視力が良いんです。彼の姿をはっきり捉えるのに、そう時間はかかりませんでした。
ただびっくりしちゃいましたよ。彼の姿が伸びているのですから。
そして伸びた彼の体躯が、私に近づいてくるほど、本来の彼のサイズになっていくのですから。
これってつまり、彼はドップラーしていたんですよ。
人の体をしておいて、ドップラー効果を見せているのです。
よって、彼は波です。
彼は波長、波長そのものなのです。
何故なら波長でなければドップラー効果などあり得ないからです。
この出来事は、逆説的に彼が波であることを証明しました。
私が愛していたのは、人を象った波だったのです。
ヒトの量子構造には、私達の未だ知らぬ類型が存在するのかもしれません。
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