怪異観察奇録第4結社

怪 No.032 「蒸気器官」

ここに身体の異変を訴える一人の男がいる。
その男は病院にいる。
医師はその男のレントゲンを撮影する。
レントゲン写真はその男の上半身を真っ白に写し出す。
次に医師はその男をCTで撮影する。
しかしCT画像もまたその男の上半身を真っ白に写し出す。
他、医師は種々の検査を試みる。
そして分かったのは、どうやら男の体内は霧のようなものが立ち込めている、ということだ。
医師は先のCT画像をより詳細に解析する。
するとうっすらではあるが、男の心臓から煙突のようなものが突き出しているのを認める。

医師は確信する。

故に医師は言う「蒸気器官だねぇ」

「専門外だ。3階の『蒸気器官内科』へ行って下さい」

男は医師が言ったことを理解できない。が、言われるがまま3階『蒸気器官内科』へ向かう。
それは長い廊下の突き当たりにひっそりとあった。
男は恐る恐る『蒸気器官内科』なるものに入室する。

そこには、同じく体内に靄をたくわえた人々が、自分の番を待ち椅子に腰掛けている。
異様な光景に男が茫然としていると、看護師が駆け寄ってきた。

「蒸気器官者の方ですね。今何度ですか？」

「何度？」

「蒸気器官者の方は非常に高温になってしまいますので、体温の管理には十分気をつけて頂きたいんですよ」

「どういうことですか？」

「体温が80度を超えるということです」

「もし超えたら？」

「体内のタンパク質が変性します。そうなると凝固してそれから崩れてしまいますよ」