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神様と子供③
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晴人くんが気分転換として久しぶりに甥っ子と遊びたくなったこと、俺は鳥居家にお世話になっていることに対する礼儀としての挨拶をそれぞれの口実として、次の休日にお姉さんと会う約束をしていた。知らないおじさんが付いてくるにも拘らず、お姉さんはその約束を快諾してくれた
次の休日、俺は鳥居家が位置している街から2つほど離れた街に晴人くんと来ていた。最寄りの駅までは電車で行き、そこかからはお姉さんが車で迎えに来てくれた。
「晴人久しぶり! お母さんから聞いたよぉ。美鈴ちゃんの前でかっこいい所見せられたんだってねぇ?」
話し方も煽り方も凪沙ちゃんにそっくりだ。さすが姉妹。
「そ、そんなんじゃねぇよ!救命士を目指してる身として当然のことをしただけだよ」
「ふーん。そんなに照れなくていいのに、相変わらず可愛いわね晴人。あ、えーと、あなたはたしか……」
「あ、突然お邪魔してすみません。先日から鳥居家にお世話になっている神山です。お姉さんにもお世話になっているお礼を言いたくて、今回お邪魔させていただきました」
「まぁ、まぁご丁寧に。ほら、唯斗。挨拶は?」
「なんだこのおっさん!」
晴人くんといい、鳥居家の若い男共はみんなこんな感じなのか?
「こら! 失礼でしょう! すみません、私の躾がなっていなくて……」
「いえいえ、突然知らない人が来たら困惑するのは当然ですので。こちらこそすみません」
「全く困った子ねぇ……。とりあえず、どこかご飯でも食べながらお話しましょうか」
俺たちは近くのファミレスに入った。丁度昼食の時間帯ということもあり、多くの家族連れが目立つ。そんな中、鳥居家の中に知らないおじさんが一人という奇妙な構図の一行が、ファミレスのテーブルに腰掛ける。俺は端から見ればこの家族のお父さんか。
俺の横では、晴人くんがテーブルを挟んで甥っ子と最新のゲームの話をしている。俺は必然的にお姉さんと話をすることになった。
「一週間後に、久しぶりに実家に帰って来られるんですね。お母さんから聞きました」
「そうなんです。忙しくてなかなか帰省できていなかったんですが、もうすぐ両親が結婚30周年を迎えるので、少し顔を出しとこうかと思いまして」
一週間後、帰ったら家族旅行の話し合いがあることはいいとして、そこには凪沙ちゃんもいることを知ったらどうなるんだろう……。少し名前出してみるか……?
「そうなんですね。それはご両親も喜ばれると思います。鳥居家はみんな親切で助かっています。凪沙ちゃんも……」
さっきまでニコニコしていたお姉さんの顔が般若みたいに変化していくのを見逃さなかった。これはまずい。
「は、晴人くんもこのように元気いっぱいですよ!」
晴人くんは気付いているかいないか分からなかったが、気にすることなく甥っ子の唯斗くんと遊んでいる。
「唯斗も久しぶりに晴人と会えるのを楽しみにしてたんです! ご存知の通り晴人はシャイなんですが、昔から年下の子に対する面倒見が良いんです。だから唯斗もすぐ晴人に懐いたんですよ!」
その分、年上に対しては凄く横暴だけどね。
それにしても、凪沙ちゃんに関して一切何も触れない所からしても、結構溝は深そうだな。どんな喧嘩をしたらこうなるのか凄く気になるな。しかし、さっきの反応から凪沙ちゃんの話をするのはとてもではないが出来ない。急に殴りかかってきても不思議ではないからだ。
結局、その後も凪沙ちゃんの話は一切でないまま、ファミレスを後にすることになった。
「今日はこれから用事があるから、また来週ね。晴人、美鈴ちゃんを泣かせたらダメだよぉ?」
「な、なんだよ! そんなことするかよ!」
「神山さんもわざわざありがとうございました。ほら、唯斗もお礼は?」
「おじさんはあっちいけー!」
この坊主め!
ふと横を見ると、晴人くんがニヤッと笑っていた。貴様の仕業か。
次の休日、俺は鳥居家が位置している街から2つほど離れた街に晴人くんと来ていた。最寄りの駅までは電車で行き、そこかからはお姉さんが車で迎えに来てくれた。
「晴人久しぶり! お母さんから聞いたよぉ。美鈴ちゃんの前でかっこいい所見せられたんだってねぇ?」
話し方も煽り方も凪沙ちゃんにそっくりだ。さすが姉妹。
「そ、そんなんじゃねぇよ!救命士を目指してる身として当然のことをしただけだよ」
「ふーん。そんなに照れなくていいのに、相変わらず可愛いわね晴人。あ、えーと、あなたはたしか……」
「あ、突然お邪魔してすみません。先日から鳥居家にお世話になっている神山です。お姉さんにもお世話になっているお礼を言いたくて、今回お邪魔させていただきました」
「まぁ、まぁご丁寧に。ほら、唯斗。挨拶は?」
「なんだこのおっさん!」
晴人くんといい、鳥居家の若い男共はみんなこんな感じなのか?
「こら! 失礼でしょう! すみません、私の躾がなっていなくて……」
「いえいえ、突然知らない人が来たら困惑するのは当然ですので。こちらこそすみません」
「全く困った子ねぇ……。とりあえず、どこかご飯でも食べながらお話しましょうか」
俺たちは近くのファミレスに入った。丁度昼食の時間帯ということもあり、多くの家族連れが目立つ。そんな中、鳥居家の中に知らないおじさんが一人という奇妙な構図の一行が、ファミレスのテーブルに腰掛ける。俺は端から見ればこの家族のお父さんか。
俺の横では、晴人くんがテーブルを挟んで甥っ子と最新のゲームの話をしている。俺は必然的にお姉さんと話をすることになった。
「一週間後に、久しぶりに実家に帰って来られるんですね。お母さんから聞きました」
「そうなんです。忙しくてなかなか帰省できていなかったんですが、もうすぐ両親が結婚30周年を迎えるので、少し顔を出しとこうかと思いまして」
一週間後、帰ったら家族旅行の話し合いがあることはいいとして、そこには凪沙ちゃんもいることを知ったらどうなるんだろう……。少し名前出してみるか……?
「そうなんですね。それはご両親も喜ばれると思います。鳥居家はみんな親切で助かっています。凪沙ちゃんも……」
さっきまでニコニコしていたお姉さんの顔が般若みたいに変化していくのを見逃さなかった。これはまずい。
「は、晴人くんもこのように元気いっぱいですよ!」
晴人くんは気付いているかいないか分からなかったが、気にすることなく甥っ子の唯斗くんと遊んでいる。
「唯斗も久しぶりに晴人と会えるのを楽しみにしてたんです! ご存知の通り晴人はシャイなんですが、昔から年下の子に対する面倒見が良いんです。だから唯斗もすぐ晴人に懐いたんですよ!」
その分、年上に対しては凄く横暴だけどね。
それにしても、凪沙ちゃんに関して一切何も触れない所からしても、結構溝は深そうだな。どんな喧嘩をしたらこうなるのか凄く気になるな。しかし、さっきの反応から凪沙ちゃんの話をするのはとてもではないが出来ない。急に殴りかかってきても不思議ではないからだ。
結局、その後も凪沙ちゃんの話は一切でないまま、ファミレスを後にすることになった。
「今日はこれから用事があるから、また来週ね。晴人、美鈴ちゃんを泣かせたらダメだよぉ?」
「な、なんだよ! そんなことするかよ!」
「神山さんもわざわざありがとうございました。ほら、唯斗もお礼は?」
「おじさんはあっちいけー!」
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