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第三は試験と謎解き

誰かがつけてる。

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私は、先生からいただいた手紙を怪盗が出たと騒いだという女性に見せてみました。


「あなたがこのカードを?」

「あら、それまだあったんだね。
そうさ、これが玄関ホールに落ちてて拾ったのさ。」


彼女は懐かしそうにシゲシゲとそれをみながら、そう話してくれたのでした。


「なるほど…わかりました、ありがとうございます。
ちなみに、事件はその後どうなったのですか?」

「さぁ…私たちにはさっぱり…」

「絵画が戻ってきたことだけはわかったんだけど、犯人が捕まったかどうか」

「まぁ、ジャックがいまだに頻繁に出ていることから、
捕まえるのには失敗したんだろうね。」


彼女たちはガハハと笑いながらそう言いました。
私はそんな彼女たちにお礼を言うとその控え室の扉を閉めた。





そして当てもなくフラフラと、頬に手を添えながら歩きました。


今回の課題は、回ってきているのは解決済みのもののはず。
なのに、彼女たちにその報告がないと言うことは…いえ、怪盗ジャックが捕まってないのですものおかしくはありませんわね。


「もう、怪盗ジャックという解答で試験官に伝えても良いような…」


でも、こんなにモヤモヤしたまま答えるわけには行きませんわ。
どうせ二人の方はまだ時間かかりますし…ならば心ゆくまで調べてみましょう。

さて、次はどうしましょう。


「ローズ様ぁ!」


次の行動を思案しながら廊下を歩いておりますと
リリー様からお声がけがございました。


「おはようございます」

「リリー様、珍しくお早いのですね。」

「ローズ様もお早いのですね」

「えぇ、課題のことがありましたので。」

「…」


リリー様はにっこりと笑ったまましばらく何も喋りませんでした。
一体なんなのかしら、私の答え方に何か問題があったのでしょうか…

あ、それとも昨日の件でしょうか…やっぱり自分の課題を手伝って欲しくて待ち伏せを?
昨日のアレで懲りたと思いましたのに。


「リリー様、私あなたの課題をお手伝いしている暇は…」

「絵を…みられていたのですか?」


しかし、もう一度断りの言葉を口にしている途中で、リリー様は別の言葉を吐き出しました。
その言葉に少しぞくっとする。

確かに、玄関ホールの絵を見ておりましたわ、でもそれは朝来た後、従業員の控室へ話を聞きに行く前のお話ですわ。
直後に聞かれたなら当たり前の会話ですけれど、そんな何十分も前の話題をなぜ今さら?
まさか、つけていたのでしょうか…それにそれだけではございません


「ローズ様の課題は、アカデミーに関係あることなのですね」

「!」


黙っていたはずの課題まで言い当てられてしまいました。
なぜそんなことがわかるというのでしょう、まさか…どこかで課題の書かれた紙を見られた?
まさか、私の課題は紙一枚…ずっと自分のポケットの中に入れておりますわ。


「なぜそう思われたのです?」

「このタイミングで朝早くから登校されて、絵画を見たり従業員とお話しされていたら誰でも気が付きますわ。」


やはり、彼女は私の後を付けていたのですね…全く気がつきませんでしたわ。


「見ていたなら声をかけてくださればよかったのに。」


だから私は本心で彼女にそう言いました。
するとリリー様は髪の毛を指でくるくるとしていじりながら不貞腐れて


「昨日、課題を教えてくれなかったローズ様が悪いのです。」


というふうに話します。


「私…どうしてもローズ様のお手伝いをしたかったもので…」

「え、でもあなただって」

「私の方は城下町まで行かないと情報収集ができません。
アカデミーにいるお昼の時間は暇なんです、だからローズ様のためにお手伝いしたいのです
だって…そうじゃないとこの課題の間中、お話ができないではありませんか…
前回の視察でも…全くお話しできませんでしたし」


困ったものですわ、これは遊びではございませんのに。
お話ししたいがために、お手伝いされては溜まったものではありませんわ。


「結構ですわ、みくびらないでくださいまし、私はまだやることがございますので失礼します。」


私はそうリリー様にお声がけをするとその場からさっていきました。




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