32 / 64
第一試験はおもてなし
慕っていてもライバル
しおりを挟む「まぁ、ローズ様!
まさかわざわざライレイニ邸までお越しいただけるなんて、光栄ですわ!」
アポなしでリリー様のお宅に伺いましたら、
目を見開き、頬を赤らめ、涙を浮かべるという
おそらくこの世の喜びの最上級の表情を浮かべて私を歓迎してくださいました。
そんなに喜ばれるようなことではないと思うのですが…
というより、アポなしなんですから追い出される覚悟でしたのに。
「さぁ、何をぼさっとしておりますの!?レフレイムのご令嬢ローズ様ですわよ!
早く最上級のおもてなしの準備を!」
リリー様はそういうと手をパンパンとたたき、近くにいた使用人たちに指示を出す。
そして…さすがライレイニの使用人というべきだろうか…行動が早かった。
私の手を取ると速やかにテラスに案内され、席に着席すると即座にお茶の用意がされた。
そして全ての準備が終わった頃、リリー様がテラスへやってきた。
「素敵なテラスでしょう?本当は客間でおもてなしをするべきかとは思ったのですが、
今日は気候も心地よいですし、うちの自慢のお庭を見ながらお茶をするのも良いかと思いまして。」
「確かに、レフレイム邸には劣りますが、それでも素敵なお庭ですわね。」
「最上級のお褒めの言葉ありがとうございます」
試しに言ってみた嫌味も通じやしない。
いや、むしろ心底喜んでいるかのような満面の笑みだ。
彼女のことは本当に理解に苦しみますわ
私がティーカップの中のお茶を見つめていると、リリー様がお茶に砂糖を入れてくるくるとかき混ぜながら私に話を振ってきました。
「それで、ローズ様が私に一体なんのご用でしょうか?
まさか、本当に昨日の提案を受けてくださるおつもりになったのですか?」
「まさか、この試験で共闘してもなんの意味もございませんわ。
共闘などあり得ないお話だと、この前もお伝えしたかと思いますが」
私はピシャリと言い放つ。
実際に本当に意味がないのだ。
私たち3人でお妃様試験を受けて共闘に意味が出るのは、リーブ様を陥れる場合のみ。
でも、リーブ様はほとんど格好だけの参加。
既にバクランドに嫁ぐことが決まっていて、その事実により誰も…リーブ様本人までもが国母になることを望んでいない状況で、私たちが共闘する必要性が微塵もない。
3人という格好だけの私とリリー様の一騎打ちの戦いなのだ。
それに、仮にリーブ様が有力候補だとして、彼女と手を組むなんてまっさらごめんですわ。
私のその思いが伝わったのか、リリー様はニコニコと笑顔で私を見る
「そうでしたね、そういうお話をガーデンでしたばかりでしたね。
それではやはり、私になんの用事で会いにきてくださったのか、検討がつきませんね」
リリー様は紅茶の香りを楽しみながら一口それを啜った。
まさかの偵察だ…なんていうわけにはいかないし…なんと言い訳をしようか考えた結果
「大した用事じゃなければ来てはいけないの?」
低レベルのごまかしをすることにした。
「まさか、ローズ様でしたら大歓迎ですわ」
それをわかってかわからずか、やはり満面の笑みで返すリリー様。
とてもやりにくいですわ。
いえ、そんなことばかり言ってる場合でもありませんわね。
「実際大した用事ではありませんわ、リーブ様はおもてなし内容を決めたと伺いましたので、
リリー様も準備に忙しいのではないかと思いまして。」
「ご心配いただいてありがとうございます、痛み入りますわ。」
遠回りに、どんな準備をしているのか聞ければ
おおよそどんなものを準備するのか、もしくは用意するのか、
話の確信をつかなくてもなんとなくわかるかもしれないという探りでした。
これで結構簡単に現状を話してくださるのではないかという期待もありましたが…
「ローズ様の方こそいかがです?」
ティーカップを置きながら逆にリリー様に質問をされてしまった。
「何か準備はできまして?」
この質問になんて答えましょう。
ここでたじろいだら、私がまだ何をするか決めかねていることが悟られてしまいますわ。
そんなのプライドが許しません。
だから私はできるだけ優雅に、横柄にお答えいたしました。
「それこそ、あなたに教えるようなことはございませんわ」
そして私は、近くにあったクッキーをひとつつまみながら話をつなげました。
「強いていうなら万一おもてなし内容が被ってしまいましたら私が勝ってしまいそうなので、その心配はしておりますけれど」
私は摘んだクッキーを口に運び、カリッと前歯で噛みました。
少し嫌味っぽく見えていれば良いのですが…
「それだけはあり得ませんわ」
リリー様は余裕の様子。
もう何をするのかは決まっている様子。
しかも、私と被ることはないという慢心。
私は意味がわからなくついつい聞き返してしまう
「あり得ない?なぜそのようなことがわかるのです?」
「あら、ローズ様の頭で考えればすぐにわかることだとは思いますけど。」
私はそれに少し苛立ってしまう。
リリー様にできて私にできないことなど…一体ないと言い切れる根拠はなんなのか
小一時間問い詰めたい気分になりましたが
「そういう意味では、今回はそのシチュエーションにはなり得ないので残念ですね。
でも仕方ありませんわ、ローズ様が同じことをすれば被害がでかねませんもの」
その言葉がまあまあ本気っぽく見えてしまい引いてしまった。
「何をするつもりですの?まさか…危険なことを…」
「私がやる分には問題ないのでご安心を」
結局、リリー様からは有益な情報を引き出すことができず邸を後にすることとなりました。
こうなったら仕方ありませんわ。もう一度ガーデンを見学させていただいてアイディアを閃かせるしかないですわ。
私はダメもとで皇宮へと向かった。
1
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ
藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。
そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした!
どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!?
えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…?
死にたくない!けど乙女ゲームは見たい!
どうしよう!
◯閑話はちょいちょい挟みます
◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください!
◯11/20 名前の表記を少し変更
◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
【完結済】悪役になりきれなかったので、そろそろ引退したいと思います。
木嶋うめ香
恋愛
私、突然思い出しました。
前世は日本という国に住む高校生だったのです。
現在の私、乙女ゲームの世界に転生し、お先真っ暗な人生しかないなんて。
いっそ、悪役として散ってみましょうか?
悲劇のヒロイン気分な主人公を目指して書いております。
以前他サイトに掲載していたものに加筆しました。
サクッと読んでいただける内容です。
マリア→マリアーナに変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる