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一部 2話 存在気づかす神隠し
【2話ー7】 不思議な鳩はつきまとう
しおりを挟む校庭で一緒になったなるちゃんと、教室へ歩いていると
学校内の生徒たちが、少しざわついていた。
授業が始まっていないんだから当たり前なんだけど、
そういうワイワイしていると言うざわざわではなくて、深刻そうな感じのざわざわだった。
会話の内容は…
「また今日行方不明者でたんだって、それもうちの学校から」
「マジで?ついに身近になって来たな」
「あれって、連続誘拐事件なんだろ?犯人まだ捕まんねーの?」
「犯人がまだ特定できないって。被害者の共通点なさすぎて…身代金の要求もないし」
というもの。
どうやら、今朝のニュースで1人行方不明者が出たことが報道されて
それがうちの学校の2年生だったことがわかったらしい。
「行方不明者が、うちの学校からも出るなんてね」
周りの人間の会話に便乗し
隣を歩いていたなるちゃんに、私はそう話しかける。
「本当、物騒な事件起こす人もいたものよね、目的はなんなのかしら。
…おとといの、あの行方不明の張り紙の人も、やっぱ誘拐だったのかしらねぇ」
私はこの前見た張り紙を思い出した。
最近入学式前日、買い物の手伝いの時に見つけた、電柱に張り出されたばかりの行方不明者のチラシだ。
あれも4月入ってから行方不明になったと書かれていた。
あの日はすでに誘拐犯の存在が疑われていたけど、私は実はいまだにひっかかってることがある。
「でもあの人、結構マッチョじゃなかった? 仕事もスポーツジムのインストラクター」
そう、実はあの買い物日に私たちが荷物を放置してまでチラシに興味を持ったのはそういうことだったのだ。
行方不明者は老若男女問わず、被害者同士の関係性もなく、共通点もなかった。
最後の目撃場所もバラバラなのだ。
最悪愉快犯の可能性は十分考えられた…でも、そう考えると行方不明者にこの人がいるのはおかしいのだ。
「マッチョのインストラクターが、誘拐されないって…何を根拠もなく…」
「いや、あり得ないとは言わないけど、誘拐犯すごいなって。
マッチョの人を誘拐できるって...一体どうやったのかなって」
「そんなの、犯人もたくましいか、薬を使ったか…物理攻撃かますとか、方法はいろいろあるわよ。」
なるちゃんの言い分は一理ある、そう方法は確かにいくらでもある。
でも、薬を使おうにも、物理攻撃をするにも、事前に準備がいる。
ましてや見るからに強そうな男性を襲うのだ、入念な計画だって必要のはず。
ということは愉快犯ではないのだ。
なら、目的があるはず。
でも、それなら誘拐犯から要求がくるか、被害者に共通点が見つかるはず。
「…方法はあるけど…なんか、腑に落ちないんだよね…
って…なるちゃんもそれが気になったから、チラシ食い入るように見てたんじゃないの?」
「え?何が?私はあのチラシの人、筋肉質でかっこいいな~って見惚れてただけよ。」
そんな理由?…というより…なるちゃんああいうのが好みなんだ。
と、心の中だけで突っ込んだ。
「それか、人の仕業じゃなかったりして」
「…」
なるちゃんにそれを指摘されて少しドキッとした。 この世ならざるもの...そう言われて神様のことを思い出したからだ
「まさか…、なんで突然そんなことを?」
「やーね、冗談に決まってるじゃない、なんか深刻な感じになっちゃったから茶化そうかなって…
それに、人間にできそうじゃないって言ったから、人じゃないのかもって言っただけよ」
「あ…そう…だよね」
そうだ、普通ならこんなの冗談ってすぐわかる。
笑い飛ばすべき内容だ。
でも、昨日のことがあったから、もしかして何か関係があるんじゃないかって思ってしまった。
...なんか敵の方がなんかやってるとか...
本当だとしても、まだすぐにって話じゃなかったし。
そうして私はいつの間にかたどり着いた教室の扉を開いた。
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