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02 むずむず
しおりを挟むゴートは優しいからぼくの疑問になんでも答えてくれる。
ぼくが生まれてからずっとそうだ。
太陽はお空の真ん中にのぼり、そろそろお昼だと告げてくる。
森の上空から見る景色に不穏な気配は見られない。
西の山麓は太陽の光を浴びて、雪の積もった峰がキラキラ輝いてる。
(お仕事がなかったらゴートを連れて、近くで景色を楽しめるのに)
しかしゴートもぼくも王国に所属するものだ。
西の山麓は王国の領地じゃないから近づくと『不法侵入』に当たるらしい。
(人間のしきたりはめんどくさいなぁ……)
空中でしっぽをぺちぺち振って不満を訴える。
「おなかがすいたのか?」
的外れな質問を返してくるゴートの腰にしっぽを絡ませた。
いつものじゃれあいだ。
王都からここまで数時間かけて飛んできた。
黒い鎧を着込んだゴートの体は少し冷たくなっている。
しっぽに熱をあつめて、暖をとらせてあげた。
「ふふ。ありがとう。ファーブは優しいな」
巻き付いたしっぽを手のひらでなでられると、また妙な気持ちがあふれてくる。
体がムズムズする。
炎のブレスを吐く時とは違う、ゆるやかな微熱になんだか落ち着かない。
しゅるん、と巻き付いていたしっぽをほどいた。
『ねえ、ゴート……っ。あそこの茂み、ぼくが着陸するのにちょうど良くない?』
広大な森と森の間に草原ができていた。
あれだけの広さがあれば、ドラゴンと人間ひとり降り立つのに問題なさそうだ。
「そうだな。あそこで昼にしよう」
ゴートは手綱をつよく握ったりしない。ぜんぶ、ぼくに任せてくれる。
合図を出すときはいつも首のうろこを叩いてしてくれるから、ぼくは気分よく空を飛べる。
『じゃあ、しっかりつかまっててね』
体をくねらせ、ひろげた羽で空気をつかむ。
ゴートが手綱を握ったまま、ぼくの背中にしっかりとしがみついてくる。
その温かさに気分よくなりながら、ぼくは宙を蹴った。
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