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17話
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「この人殺し…!」
「兄さんを返してよ!」
「お前が死ねばよかったんだ……!」
数人の大人が声を荒げて暴力を振るう。暴力に耐えているのは小さな男の子。心を壊さない程度に我慢し、嫌われない様、大人の顔色を伺い涙を流している。
「早く……━━━。」
━━━━━━━━━━━━━━━ハッ
勢いよくベッドから体を起こす。見たくもない夢を見て、頭を抱える。額から汗が流れる。時計を見ると、まだ5時頃だった。
「ハァ……」
髪の毛をくしゃくしゃと無造作に弄りながら、起き上がる。そして、部屋を出て洗面台に向かう。
鏡を見ると、目の下にクマができていた。酷い顔を洗い流すよう水で洗う。
「…………。」
喋る気力も無く、黙々とスーツに着替える。ベルトを付けてネクタイを締める。
そして、出社時間までソファでゆっくりと寛ぐ。
記念日から数日が経った。秀次はここ数日帰って来ない為、食事は軽いもので済ませる。
「……。」
最近では、悪い夢を見るようになり不眠症に陥っていた。会社の人達には、バレない様に元気に振舞っているが、ふと集中力が途切れるとフラついてしまう事があった。
「会社…もう少しで繁忙期に入るから続けるのは無理かもなぁ……」
頭を抱えて自嘲気味に笑う。働かない頭でボーッとする。鼻血が出る回数も日に日に増えて来ている。身体が何もしたくないと訴えている。
ふと時計に目を移す。そろそろ会社に行く時間だ…。
「……行こう。」重い足を引きずりながら靴を履いて外へ出る。
━━━━━━「おはようございます。」
既に出社している部署の人達に挨拶をしながら、自分のデスクへと行く。
「……?」
デスクの上には、提出をした資料がいくつか出されていた。中身を確認しようと、資料に触れる。
「あ、蓮見さん。」
「…はい…?」
「その資料、数字の入力ミスと一部抜けている部分があるので訂正をお願いします。明後日、上の方に提出をするので今日中に終わらせて頂けると有難いです」
「あっ、分かりました…!すいません……、」頭を下げて謝る。そして、ミスがある所に付箋を貼られていたので確認をしてから、直ぐにパソコンの電源をつける。
午後の休憩の時間を削り、俺は資料の訂正に集中した。
そして、終わる頃には、社員の殆どが帰宅準備をしていた所だった。俺は慌てて女性社員のところへ資料を持っていき事なきを得た。
自分のデスクへ戻り、少し休憩をしようとゆっくりしていると後ろから肩を叩かれた。振り返ると、伊崎がニコニコとした笑顔で立っていた。
「蓮見、お疲れ!ミスするなんて珍しいな?」
「ん、おつかれ…。考え事してたからさ。」何でもないように振る舞う。
「そっか。それより、今日この後空いてるか?」
「特に用事は無いけど…」
「じゃぁ、飲みに行こうぜ!久々に…!」
「…………うん。いいね」一人でいる時間が多いよりも誰かと一緒に過ごしたかった俺は、伊崎の提案に乗る。
「よっし、そうと決まれば行くか!」俺の鞄を持つと、先々と歩みを進める伊崎の後を俺はついて行った。
「兄さんを返してよ!」
「お前が死ねばよかったんだ……!」
数人の大人が声を荒げて暴力を振るう。暴力に耐えているのは小さな男の子。心を壊さない程度に我慢し、嫌われない様、大人の顔色を伺い涙を流している。
「早く……━━━。」
━━━━━━━━━━━━━━━ハッ
勢いよくベッドから体を起こす。見たくもない夢を見て、頭を抱える。額から汗が流れる。時計を見ると、まだ5時頃だった。
「ハァ……」
髪の毛をくしゃくしゃと無造作に弄りながら、起き上がる。そして、部屋を出て洗面台に向かう。
鏡を見ると、目の下にクマができていた。酷い顔を洗い流すよう水で洗う。
「…………。」
喋る気力も無く、黙々とスーツに着替える。ベルトを付けてネクタイを締める。
そして、出社時間までソファでゆっくりと寛ぐ。
記念日から数日が経った。秀次はここ数日帰って来ない為、食事は軽いもので済ませる。
「……。」
最近では、悪い夢を見るようになり不眠症に陥っていた。会社の人達には、バレない様に元気に振舞っているが、ふと集中力が途切れるとフラついてしまう事があった。
「会社…もう少しで繁忙期に入るから続けるのは無理かもなぁ……」
頭を抱えて自嘲気味に笑う。働かない頭でボーッとする。鼻血が出る回数も日に日に増えて来ている。身体が何もしたくないと訴えている。
ふと時計に目を移す。そろそろ会社に行く時間だ…。
「……行こう。」重い足を引きずりながら靴を履いて外へ出る。
━━━━━━「おはようございます。」
既に出社している部署の人達に挨拶をしながら、自分のデスクへと行く。
「……?」
デスクの上には、提出をした資料がいくつか出されていた。中身を確認しようと、資料に触れる。
「あ、蓮見さん。」
「…はい…?」
「その資料、数字の入力ミスと一部抜けている部分があるので訂正をお願いします。明後日、上の方に提出をするので今日中に終わらせて頂けると有難いです」
「あっ、分かりました…!すいません……、」頭を下げて謝る。そして、ミスがある所に付箋を貼られていたので確認をしてから、直ぐにパソコンの電源をつける。
午後の休憩の時間を削り、俺は資料の訂正に集中した。
そして、終わる頃には、社員の殆どが帰宅準備をしていた所だった。俺は慌てて女性社員のところへ資料を持っていき事なきを得た。
自分のデスクへ戻り、少し休憩をしようとゆっくりしていると後ろから肩を叩かれた。振り返ると、伊崎がニコニコとした笑顔で立っていた。
「蓮見、お疲れ!ミスするなんて珍しいな?」
「ん、おつかれ…。考え事してたからさ。」何でもないように振る舞う。
「そっか。それより、今日この後空いてるか?」
「特に用事は無いけど…」
「じゃぁ、飲みに行こうぜ!久々に…!」
「…………うん。いいね」一人でいる時間が多いよりも誰かと一緒に過ごしたかった俺は、伊崎の提案に乗る。
「よっし、そうと決まれば行くか!」俺の鞄を持つと、先々と歩みを進める伊崎の後を俺はついて行った。
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