上 下
17 / 19

17話

しおりを挟む
「この人殺し…!」

「兄さんを返してよ!」

「お前が死ねばよかったんだ……!」

数人の大人が声を荒げて暴力を振るう。暴力に耐えているのは小さな男の子。心を壊さない程度に我慢し、嫌われない様、大人の顔色を伺い涙を流している。

「早く……━━━。」

━━━━━━━━━━━━━━━ハッ

勢いよくベッドから体を起こす。見たくもない夢を見て、頭を抱える。額から汗が流れる。時計を見ると、まだ5時頃だった。

「ハァ……」

髪の毛をくしゃくしゃと無造作に弄りながら、起き上がる。そして、部屋を出て洗面台に向かう。

鏡を見ると、目の下にクマができていた。酷い顔を洗い流すよう水で洗う。


「…………。」

喋る気力も無く、黙々とスーツに着替える。ベルトを付けてネクタイを締める。

そして、出社時間までソファでゆっくりと寛ぐ。



から数日が経った。秀次はここ数日帰って来ない為、食事は軽いもので済ませる。


「……。」

最近では、悪い夢を見るようになり不眠症に陥っていた。会社の人達には、バレない様に元気に振舞っているが、ふと集中力が途切れるとフラついてしまう事があった。

「会社…もう少しで繁忙期に入るから続けるのは無理かもなぁ……」

頭を抱えて自嘲気味に笑う。働かない頭でボーッとする。鼻血が出る回数も日に日に増えて来ている。身体が何もしたくないと訴えている。

ふと時計に目を移す。そろそろ会社に行く時間だ…。

「……行こう。」重い足を引きずりながら靴を履いて外へ出る。




━━━━━━「おはようございます。」

既に出社している部署の人達に挨拶をしながら、自分のデスクへと行く。


「……?」

デスクの上には、提出をした資料がいくつか出されていた。中身を確認しようと、資料に触れる。


「あ、蓮見さん。」

「…はい…?」

「その資料、数字の入力ミスと一部抜けている部分があるので訂正をお願いします。明後日、上の方に提出をするので今日中に終わらせて頂けると有難いです」

「あっ、分かりました…!すいません……、」頭を下げて謝る。そして、ミスがある所に付箋を貼られていたので確認をしてから、直ぐにパソコンの電源をつける。



 午後の休憩の時間を削り、俺は資料の訂正に集中した。

そして、終わる頃には、社員の殆どが帰宅準備をしていた所だった。俺は慌てて女性社員のところへ資料を持っていき事なきを得た。

自分のデスクへ戻り、少し休憩をしようとゆっくりしていると後ろから肩を叩かれた。振り返ると、伊崎がニコニコとした笑顔で立っていた。

「蓮見、お疲れ!ミスするなんて珍しいな?」

「ん、おつかれ…。考え事してたからさ。」何でもないように振る舞う。

「そっか。それより、今日この後空いてるか?」

「特に用事は無いけど…」

「じゃぁ、飲みに行こうぜ!久々に…!」

「…………うん。いいね」一人でいる時間が多いよりも誰かと一緒に過ごしたかった俺は、伊崎の提案に乗る。

「よっし、そうと決まれば行くか!」俺の鞄を持つと、先々と歩みを進める伊崎の後を俺はついて行った。










しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

噂の補佐君

さっすん
BL
超王道男子校[私立坂坂学園]に通う「佐野晴」は高校二年生ながらも生徒会の補佐。 [私立坂坂学園]は言わずと知れた同性愛者の溢れる中高一貫校。 個性強過ぎな先輩後輩同級生に囲まれ、なんだかんだ楽しい日々。 そんな折、転校生が来て平和が崩れる___!? 無自覚美少年な補佐が総受け * この作品はBのLな作品ですので、閲覧にはご注意ください。 とりあえず、まだそれらしい過激表現はありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。 その場合はもちろん年齢制限をかけますが、もし、これは過激表現では?と思った方はぜひ、教えてください。

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。

彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。 だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。 どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

蔑まれ王子と愛され王子

あぎ
BL
蔑まれ王子と愛され王子 蔑まれ王子 顔が醜いからと城の別邸に幽閉されている。 基本的なことは1人でできる。 父と母にここ何年もあっていない 愛され王子 顔が美しく、次の国大使。 全属性を使える。光魔法も抜かりなく使える 兄として弟のために頑張らないと!と頑張っていたが弟がいなくなっていて病んだ 父と母はこの世界でいちばん大嫌い ※pixiv掲載小説※ 自身の掲載小説のため、オリジナルです

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

嫌われ者の僕が学園を去る話

おこげ茶
BL
嫌われ者の男の子が学園を去って生活していく話です。 一旦ものすごく不幸にしたかったのですがあんまなってないかもです…。 最終的にはハピエンの予定です。 Rは書けるかわからなくて入れるか迷っているので今のところなしにしておきます。 ↓↓↓ 微妙なやつのタイトルに※つけておくので苦手な方は自衛お願いします。 設定ガバガバです。なんでも許せる方向け。 不定期更新です。(目標週1) 勝手もわかっていない超初心者が書いた拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。 誤字などがありましたらふわふわ言葉で教えて欲しいです。爆速で修正します。

さむいよ、さみしいよ、

moka
BL
僕は誰にも愛されない、、、 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 人を信じることをやめた奏が学園で色々な人と出会い信じること、愛を知る物語です。

地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。 オマケに丸い伊達メガネ。 高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。 そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。 あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。 俺のポディションは片隅に限るな。

処理中です...