2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ

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9話

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「おはようございます」

部署の扉を開けて挨拶をすると、まだ少数しか来ていなかった。みんなマイペースだな、とそんな事を思いながら自分のデスクへ行き椅子に座る。鞄の中から必要な資料やUSB等を出していると、突然後ろから「蓮見さん、おはようございます」と聞き慣れた声が聞こえてきた。

「部長…!おはようございます」振り返ってみると部長が立っていた。慌てて立ち上がり会釈をする。

「体調はもう大丈夫ですか?」

「あ…、はい。もう大丈夫です!昨日はコーヒーありがとうございました」頭を軽くさげながら、感謝の言葉を吐く。

「あれは、間違えて買っただけですので気にしないでください」

「そうなんですか…?部長はコーヒー…甘党派かと思ってしまいました。」昨日の貰った缶コーヒーを思い出して思わずまたクスリと笑ってしまう。

「……。」部長は真顔で俺の顔をじっと見ている。

「っ、すいません…調子乗りすぎました。」部長は笑顔ひとつ見せず「…いえ」と返事を返しながら自分のデスクへ戻っていく。口元に手を当て、笑いすぎたかな…と思いながら部長の後ろ姿に視線を向けると耳が赤くなっていた。

「蓮見さん、今週までの資料出来上がっていたら後で持ってきて下さい。」

「分かりました…!」再度、部長の方へ目線を向けるとパソコンを見ながら資料の確認を行っていた。



始業時間前になると、会社の出入口が騒がしくなってくる。すれ違う人に挨拶をする。返す人もいればイヤホンをしていて気づかない人もいる。

「おはよ!蓮見!」パソコンで資料作成をしていると、肩をポンを叩かれ声を掛けられた。声のトーンからして伊崎だな…と感じる。

「おはよう、伊崎。」キーボードを打つ手を止めて後ろを振り返ると伊崎が笑顔で話しかけてきた。

「今日も忙しそうだな」パソコンと資料を交互に見る。

「あー……早めに仕上げておきたいんだよね。」いつ体調が悪化するか分からないし同期の皆や先輩たちに迷惑をかけたくない、そんな気持ちが何処かにあった。治療をするかどうかもまだ悩んでいる。

「そっか…、あんまり抱え込むなよ?」

「うん、ありがとう」伊崎からすれば抱え込んでる様に見えるのかなと思いつつも、優しさに感謝した。そして又、資料作りに専念する。時間を忘れてしまう程に。



キーンコーンカーンコーン

お昼休憩のチャイムが鳴る。俺以外のほとんどの人が食堂や会社の近くにあるカフェで昼食を取りに行く。

「ご飯食べようかな…」朝作ってきた弁当箱を鞄から取りだし机の上に置く。走って出社したせいか中身は崩れている。箸を手に取り無言で食べ進める。携帯を開きメールを見てみるが秀次からは何も来ない。
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