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7話

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全ての企画を終わらせたのは時計の短針が11時を指した時だった。

「もうこんな時間…!」

時計を見た俺は慌ててパソコンの資料をUSBに保存し、鞄の中に半ば乱暴に入れると勢いよく立ち上がる。

「あっ…」

突然目眩がしグラッと体が後ろに傾くと、俺は手に持っていた鞄と共に倒れた。勢いよく倒れてしまった為、チャックし忘れた鞄の中身が散乱する。

(何やってるんだ俺…)

床に散らばった資料やUSB、写真等大切な物を拾い集めながら鞄の中に仕舞う。そして、全て拾い集めた頃には帰る時間が大幅に遅くなった。

会社を出て、運良く前の道路を走っていたタクシーを捕まえると乗り込んで家の住所を伝えた。

「お客さん、今帰り?」
話が大好きそうな愛想の良いおじさんがニコニコと話しかけてきた。

「はい、そうなんです。」額から流れた汗を拭うと苦笑いを浮かべて返事をした。運動不足なのか分からないが、最近少し走っただけで息切れを起こすようになってきた。

家の前に着くまで俺は、タクシーのおじさんと世間話をしながら会話を楽しんだ。家に着くと、おじさんに料金を払いタクシーを出た。運動不足を解消する為に、エレベーターを使わず階段を上ることにした。だが、数段目を上ったところでハァハァと息が切れてくる。

「エレベーターにすれば良かった…」先程までの選択を悔やみながら黙々と自分が住んでいる階まで上がる。


家の扉の前まで来る頃には流石に全力疾走後の息切れ状態だった。再度深呼吸をしながらゆっくりと扉を開ける。
「ただいま…」家の電気は真っ暗で誰もいない事が伺える。
扉の鍵を閉め、廊下の電気を付けると靴箱の上に置き手紙のようなものが置いてあった。

ー会社に呼び出されていつ頃戻るか分からない。ー

白紙にはそう書かれていた。
「………」
俺はその内容が直ぐに嘘であることが分かった。秀次は別の人と会う時必ず、会社関係の事を出しにする。無意識なのかな。

「鍵…開けとかないと…」
いつ秀次が帰ってくるか分からない。俺がいないと秀次が中に入れない。

(何でだろう。情緒が抑えられない…)
いつも抑え込められるはずの感情が今日に限って止まらない。涙が睫毛まつげを濡らし、頬へ零れ落ちていく。頭もボーッとする。

靴を力無く脱ぎ、そのままリビングの扉を開けてソファへと倒れる。
「………。」
体が重だるく気を抜けば意識が飛びそうな程辛い。ネクタイを緩めると少しは楽になったが苦しさは続く。視界がぼやけ始める。涙はマシにはなったが、まだ流れ続けている。

「明日の仕事の準備しないと…」
まだ、作成途中の新しい資料もあるのにこんな所で休んではいられない。ふらつく体に鞭を打ち、俺は仕事の準備を行った。


そして、眠る前に額に冷却シートを貼りそのまま深い眠りについた。時計の針は深夜1時半を回っていた。
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