2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ

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「……。」

診断書の紙を机に置き、リビングのソファでボーッとする。医者から言われた言葉が脳内でビデオテープの様にグルグルと再生される。

「化学治療を行えば長期生存が見込めますが、未治療となれば半年以内……」

「症状として鼻血や吐血…貧血によるだるさ、発熱などが……」

━━━━━「ハァ」

こめかみの部分に手を置きため息をする。自分自身のことに対して相談できる相手が誰もいない。秀次は俺の電話には一切出ない。友達も居なければ家族もいない。虚しさだけが心に残る。

「(秀次)今日から忙しいって言ってたから言わない方がいいか…。」

言ったら面倒臭いて思う……よね?

机に置いていた診断書と処方薬を手に取ると、また本棚の中の施錠付きの箱へ仕舞う。何事も無かったかのようにまた今日から振舞おう。隠し事は嫌いだって前に教えてくれたけどこればかりは仕方ないよ……。

「気持ち切り替えて俺も仕事しよ……」
昨日今日と有給を使って会社を休んだ為、明日からまた通勤地獄との戦いだ。明日分の提出資料を自室のパソコンを開いてから打ち込み始める。一旦仕事モードに入ると俺は時間をいくらでも費やすと以前に同僚から言われた事がある。今でもそうかな?と思う時があるが気にせず集中する。

※※

「よし、終わった…」
作り終えた資料をUSBに保存し、会社用の鞄に仕舞うとパソコンを閉じ時計を見た。針は7時半を刺しており、俺は慌てて夜ご飯を作ろうと部屋から出た。部屋の明かりは付いておらず、秀次がまだ帰ってきていない事が窺えた。携帯の方に連絡は何か来てないかと思い通知を見ると、一通だけメールが届いていた。

『今日、帰らない』

短い文面で報告がきていた。俺は仕事忙しいのかなと思い「うん、分かった。仕事頑張ってね」と返信をする。既読にもならない。

「……。」
突然鼻から何かが垂れる感覚がして俺は、鼻血だと一瞬で悟った。手で鼻を押さえながらティッシュを取りにリビングへと行く。ティッシュを数枚ほど取り鼻に押し当てて止血をする。気分が悪くなり少しだけ吐き気がしてきた。これも症状の1つなのかな、そんなことを思いながら寝室に置いている薬を取りに行く。


鼻にティッシュを詰め込みながら薬を水と一緒に飲む。量こそは多くないがなかなか止まらない鼻血。押さえても直ぐに真っ赤に染まるティッシュに俺は苦戦した。数分後に鼻血は止まったが血に染まった大量のティッシュがゴミ箱に入っていた。

「秀次に見つからない様に捨てなくちゃ……」
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