生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ

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23話

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「皆、準備は出来たか?」

「はい!」セドリックのピリついた雰囲気に呑み込まれそうになりながらも、兵士達は気合を入れる為返事をする。

「それじゃ、行くぞ…」兵士に背中を見せたセドリックは先頭に立ち馬を走らせる。まだ、陽が登らない薄暗い時間。馬に乗った俺は手綱を強く握り締めながら兵士の最後尾を走る。

ガラガラガラッ

城門が軽く地響きを起こしながら開いていく。先頭に立っているセドリックは見張りの兵に何かを頼んでいたが、最後尾にいる俺には、馬の足音でかき消された。


そして、話が終わるとセドリックは掛け声と共に再び馬を走らせた。






━━━━━━━「これは…」

休み無く馬を走らせ続け、夕刻には戦場へと辿り着いた。セドリック達は崖の上から隣国とグリード族との戦況を観察する。黒煙が立ちこめどこを見ても死体だらけだった。無惨に切り刻まれ、所々首が跳ねられている死体を見つける。

この光景に慣れていないのか、セドリックと俺を除く半数の兵士達は吐き気に襲われていた。

「酷いな…」ボソリとセドリックが呟く。

「……首の無い死体は隣国の兵士…ですか?」

「あぁ。恐らくそうだろうな。」顎に手を置き、何かを考え込むセドリック。

そして、一呼吸置いたあと、顔を青ざめている兵士の方へ顔を向け「下に降りて隣国の野営地へ行くぞ。」と指示を出す。

「はい。」兵士達は耐えられないといった表情で重い返事を返す。

「……」斜面を降り、下へ行けば行くほど血生臭い匂いや腐敗臭が立ち込める。俺も兵士と同様に鼻を袖で覆う。セドリックは眉間に皺を寄せながらも馬を早く走らせた。




数十分程馬を走らせると、松明と白いテントが徐々に見えてきた。

「はっ」セドリックは馬を止まらせると、近くに立っていた見張りの兵士に「セドリック軍団長ですね」と確認を行いテントの中へ入って行った。

俺も馬を止めてから辺りを見回す。テントはあちこちに張られており、時折中から兵士達の呻く声が聴こえてくる。

(……)

何となく不謹慎である事は頭の中では分かっているつもりだ。だが、どの様な負傷兵が居るのか気になった俺は、テントの中をチラリと覗き込んだ。

「っ……」

だが、直ぐに俺は覗き見るのをやめた。視界に映った兵士達はいずれも四肢が何処か欠損していた。酷い光景に俺はグリード族に対する戦い方に何ともいえない恐怖を覚えた。

「怖いか…?」背後から突然声を掛けられ、俺はバッと勢いよく振り返った。そこには、片目と右腕に包帯を巻いている兵士が立っていた。

「これが、グリード族のやり方なんだよ…」何処か遠い目をしながらテントの方へ顔を向けて話をする。

「……」

「昨日まで笑いあっていた仲間は、首のない死体として運ばれて処理される。残された家族になんて言葉をかけようか毎回考えるんだよ。皮肉なもんだろ?」乾いた笑いを浮かべながら兵士は俺に話を続ける。

「グリード族との戦争で帰還した兵士の半数は精神病棟で最後を迎えるんだ。アイツらの声が、顔が、幻聴幻覚として現れるんだよ…!何が現実で何が夢か何も分からない…」

突然、話していた男が発狂しながら俺の両肩を掴む。包帯を巻いている手などお構い無しに力を込める。

「いっ…」爪が皮膚にくい込み、痛みで顔が歪む。

「そうだ、そうだ!アイツらグリード族は人の痛む顔が大好物なんだよ!」

「っ…」本気で振り払おうとしても振り払えない力の強さに俺は我慢しようとした。


「やめろ!」突然、声が聞こえ肩の痛みが和らいだ。

「離せ、離せ!」暴れる男を取り押さえた兵士は、テントの中へと引きずり込んだ。


「大丈夫か…?」聞き慣れた声の方へ顔を向ける。

「あ、はい…。大丈夫です。セドリック軍団長」

「少し血が出ているな…。治療テントで怪我を見てもらえ」俺の肩に優しく手を置いたセドリックは血が出ているのを確認する。


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