生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ

文字の大きさ
上 下
23 / 26

23話

しおりを挟む
「皆、準備は出来たか?」

「はい!」セドリックのピリついた雰囲気に呑み込まれそうになりながらも、兵士達は気合を入れる為返事をする。

「それじゃ、行くぞ…」兵士に背中を見せたセドリックは先頭に立ち馬を走らせる。まだ、陽が登らない薄暗い時間。馬に乗った俺は手綱を強く握り締めながら兵士の最後尾を走る。

ガラガラガラッ

城門が軽く地響きを起こしながら開いていく。先頭に立っているセドリックは見張りの兵に何かを頼んでいたが、最後尾にいる俺には、馬の足音でかき消された。


そして、話が終わるとセドリックは掛け声と共に再び馬を走らせた。






━━━━━━━「これは…」

休み無く馬を走らせ続け、夕刻には戦場へと辿り着いた。セドリック達は崖の上から隣国とグリード族との戦況を観察する。黒煙が立ちこめどこを見ても死体だらけだった。無惨に切り刻まれ、所々首が跳ねられている死体を見つける。

この光景に慣れていないのか、セドリックと俺を除く半数の兵士達は吐き気に襲われていた。

「酷いな…」ボソリとセドリックが呟く。

「……首の無い死体は隣国の兵士…ですか?」

「あぁ。恐らくそうだろうな。」顎に手を置き、何かを考え込むセドリック。

そして、一呼吸置いたあと、顔を青ざめている兵士の方へ顔を向け「下に降りて隣国の野営地へ行くぞ。」と指示を出す。

「はい。」兵士達は耐えられないといった表情で重い返事を返す。

「……」斜面を降り、下へ行けば行くほど血生臭い匂いや腐敗臭が立ち込める。俺も兵士と同様に鼻を袖で覆う。セドリックは眉間に皺を寄せながらも馬を早く走らせた。




数十分程馬を走らせると、松明と白いテントが徐々に見えてきた。

「はっ」セドリックは馬を止まらせると、近くに立っていた見張りの兵士に「セドリック軍団長ですね」と確認を行いテントの中へ入って行った。

俺も馬を止めてから辺りを見回す。テントはあちこちに張られており、時折中から兵士達の呻く声が聴こえてくる。

(……)

何となく不謹慎である事は頭の中では分かっているつもりだ。だが、どの様な負傷兵が居るのか気になった俺は、テントの中をチラリと覗き込んだ。

「っ……」

だが、直ぐに俺は覗き見るのをやめた。視界に映った兵士達はいずれも四肢が何処か欠損していた。酷い光景に俺はグリード族に対する戦い方に何ともいえない恐怖を覚えた。

「怖いか…?」背後から突然声を掛けられ、俺はバッと勢いよく振り返った。そこには、片目と右腕に包帯を巻いている兵士が立っていた。

「これが、グリード族のやり方なんだよ…」何処か遠い目をしながらテントの方へ顔を向けて話をする。

「……」

「昨日まで笑いあっていた仲間は、首のない死体として運ばれて処理される。残された家族になんて言葉をかけようか毎回考えるんだよ。皮肉なもんだろ?」乾いた笑いを浮かべながら兵士は俺に話を続ける。

「グリード族との戦争で帰還した兵士の半数は精神病棟で最後を迎えるんだ。アイツらの声が、顔が、幻聴幻覚として現れるんだよ…!何が現実で何が夢か何も分からない…」

突然、話していた男が発狂しながら俺の両肩を掴む。包帯を巻いている手などお構い無しに力を込める。

「いっ…」爪が皮膚にくい込み、痛みで顔が歪む。

「そうだ、そうだ!アイツらグリード族は人の痛む顔が大好物なんだよ!」

「っ…」本気で振り払おうとしても振り払えない力の強さに俺は我慢しようとした。


「やめろ!」突然、声が聞こえ肩の痛みが和らいだ。

「離せ、離せ!」暴れる男を取り押さえた兵士は、テントの中へと引きずり込んだ。


「大丈夫か…?」聞き慣れた声の方へ顔を向ける。

「あ、はい…。大丈夫です。セドリック軍団長」

「少し血が出ているな…。治療テントで怪我を見てもらえ」俺の肩に優しく手を置いたセドリックは血が出ているのを確認する。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

婚約破棄された王子は地の果てに眠る

白井由貴
BL
婚約破棄された黒髪黒目の忌み子王子が最期の時を迎えるお話。 そして彼を取り巻く人々の想いのお話。 ■□■ R5.12.17 文字数が5万字を超えそうだったので「短編」から「長編」に変更しました。 ■□■ ※タイトルの通り死にネタです。 ※BLとして書いてますが、CP表現はほぼありません。 ※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?

「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。 王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り 更新頻度=適当

主人公に「消えろ」と言われたので

えの
BL
10歳になったある日、前世の記憶というものを思い出した。そして俺が悪役令息である事もだ。この世界は前世でいう小説の中。断罪されるなんてゴメンだ。「消えろ」というなら望み通り消えてやる。そして出会った獣人は…。※地雷あります気をつけて!!タグには入れておりません!何でも大丈夫!!バッチコーイ!!の方のみ閲覧お願いします。 他のサイトで掲載していました。

追放されたボク、もう怒りました…

猫いちご
BL
頑張って働いた。 5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。 でもある日…突然追放された。 いつも通り祈っていたボクに、 「新しい聖女を我々は手に入れた!」 「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」 と言ってきた。もう嫌だ。 そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。 世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです! 主人公は最初不遇です。 更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ 誤字・脱字報告お願いします!

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

気にしないで。邪魔はしないから

村人F
BL
健気な可愛い男の子のお話 , , , , 王道学園であんなことやこんなことが!? 王道転校生がみんなから愛される物語〈ストーリー〉 まぁ僕には関係ないんだけどね。 嫌われて いじめられて 必要ない存在な僕 会長 すきです。 ごめんなさい 好きでいるだけだから 許してください お願いします。 アルファポリスで書くのめっちゃ緊張します!!!(え) うぉぉぉぉぉ!!(このようにテンションくそ高作者が送るシリアスストーリー💞)

処理中です...