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22話
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「俺達は強く逞しい兵士だ!明日の戦争は絶対勝つぞ!」酒を片手に他の兵士たちに豪語する兵士を横目に、俺はコップの水を少しづつ喉に流し込む。
「強く逞しい…」兵士の言葉をボソリと復唱する。確かにどの兵士も筋肉がついており、力も強い。だがー、強いからといって確実に勝てる相手ではないことは重々頭の中で理解している。セドリックは戦地に幾度となく出征してきているので、敵の強さは分かっている筈だ。チラリと兵士たちが座っている辺りを見回すがセドリックの姿はなかった。
「………。」そして、再び水を飲み始める。
数時間後には、俺以外の殆どの兵士が酒の力によって潰れていた。「まだ飲める」と強がっている者や、「俺は本当にダメなやつだ…」と他の兵士に弱音を吐いている者がおり、思わずクスリと微笑んでしまった。
(明日の戦争で何人が生き残って帰れるだろうか…)
そんな考えが頭をよぎってしまう。こんな風に考え込んでしまうのは悪い癖だと思いながらも中々治せない。
ポンッ
水を飲みながら考え事をしていると、肩を叩かれ後ろを振り返った。
「カイン…」
「隣いいですか?」
「あ、あぁ。」
カインはコップを片手に隣の椅子に座ると、何か言いたげな表情をしながら黙り込む。
「どうしたんだ…?」
「え、?」
「何か言いたそうな顔をしてるぞ」
指摘すると、カインはバレました?という感じで目線を泳がせる。
「何で…王子は、ケイラ将軍を選んだんですかね?」
「明日の戦争の事か?」
「……はい。」
「……」
「普通だったら、まだ剣を持ち始めて数日の兵士に出征命令は出さない筈です。例え、腕力があって知能があっても、戦争には過酷な訓練を受けた者しか出しません。狼の巣窟に子鹿を放り込む様なものですよ。」
「…確かにな。地理的にいえば五分五分だが…訓練の差は余りにも大きすぎる。」
「……そうですよ。」
両手でコップを掴みながら下を俯いているカインに俺は、軽く微笑みながら「ありがとうな」と感謝を伝えた。
「なんで、感謝…するんですか?」
「俺は、身寄りがなかったからいつ何処で死のうが悲しんでくれる人はいなかったんだ。だから、過去の生前を含めて俺はグレンとカインに感謝してもしきれないくらいの愛情と友情を貰った。明日の戦争で死ぬ気はないが、必ず生きて帰って来れるという保証はできない。だから、そんなに悲しい顔をするな」と微笑みながらカインの頭を優しく撫でる。
「ぜ…絶対、生きて帰ってきてくださいよ。」コップの中の液体を一気に飲み干すと、カインは「待ってますからね」と言いながら俺に抱きついてきた。
生前の記憶の中で俺は、グリード族との戦争には出征しておらず、訓練場でカインと共に訓練を行っていた。今回の戦争には半数の兵士の中にカインは選ばれなかった。俺的には、カインが半数の中に選ばれず心底ホッとした。カインには戦争で死ぬのではなく、幸せになって死んで欲しい。
「強く逞しい…」兵士の言葉をボソリと復唱する。確かにどの兵士も筋肉がついており、力も強い。だがー、強いからといって確実に勝てる相手ではないことは重々頭の中で理解している。セドリックは戦地に幾度となく出征してきているので、敵の強さは分かっている筈だ。チラリと兵士たちが座っている辺りを見回すがセドリックの姿はなかった。
「………。」そして、再び水を飲み始める。
数時間後には、俺以外の殆どの兵士が酒の力によって潰れていた。「まだ飲める」と強がっている者や、「俺は本当にダメなやつだ…」と他の兵士に弱音を吐いている者がおり、思わずクスリと微笑んでしまった。
(明日の戦争で何人が生き残って帰れるだろうか…)
そんな考えが頭をよぎってしまう。こんな風に考え込んでしまうのは悪い癖だと思いながらも中々治せない。
ポンッ
水を飲みながら考え事をしていると、肩を叩かれ後ろを振り返った。
「カイン…」
「隣いいですか?」
「あ、あぁ。」
カインはコップを片手に隣の椅子に座ると、何か言いたげな表情をしながら黙り込む。
「どうしたんだ…?」
「え、?」
「何か言いたそうな顔をしてるぞ」
指摘すると、カインはバレました?という感じで目線を泳がせる。
「何で…王子は、ケイラ将軍を選んだんですかね?」
「明日の戦争の事か?」
「……はい。」
「……」
「普通だったら、まだ剣を持ち始めて数日の兵士に出征命令は出さない筈です。例え、腕力があって知能があっても、戦争には過酷な訓練を受けた者しか出しません。狼の巣窟に子鹿を放り込む様なものですよ。」
「…確かにな。地理的にいえば五分五分だが…訓練の差は余りにも大きすぎる。」
「……そうですよ。」
両手でコップを掴みながら下を俯いているカインに俺は、軽く微笑みながら「ありがとうな」と感謝を伝えた。
「なんで、感謝…するんですか?」
「俺は、身寄りがなかったからいつ何処で死のうが悲しんでくれる人はいなかったんだ。だから、過去の生前を含めて俺はグレンとカインに感謝してもしきれないくらいの愛情と友情を貰った。明日の戦争で死ぬ気はないが、必ず生きて帰って来れるという保証はできない。だから、そんなに悲しい顔をするな」と微笑みながらカインの頭を優しく撫でる。
「ぜ…絶対、生きて帰ってきてくださいよ。」コップの中の液体を一気に飲み干すと、カインは「待ってますからね」と言いながら俺に抱きついてきた。
生前の記憶の中で俺は、グリード族との戦争には出征しておらず、訓練場でカインと共に訓練を行っていた。今回の戦争には半数の兵士の中にカインは選ばれなかった。俺的には、カインが半数の中に選ばれず心底ホッとした。カインには戦争で死ぬのではなく、幸せになって死んで欲しい。
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