20 / 29
20話
しおりを挟む
「将軍、あまり無理をすると傷口が開きますよ!」
カインの忠告に耳を傾けず黙々と木製の人形に木剣を振るう。今のままではマズいと危機感を覚えた俺は、朝食を取ったあと真っ先に訓練場へ行った。
(傷口が開こうが構わない…。)
そう自分の心に言い聞かせ激しい訓練を行う。途中、木剣が折れてしまい何本か予備で倉庫から持ってきては振るうを繰り返す。精鋭部隊に入れなければグレンとの距離は絶たれてしまう。生前の頃は精鋭部隊にいたおかげでグレンの恋人になれたようなものだった。グレンと会えない、そんな不安が少しずつ弱りきっている心を侵食し始める。脇腹の傷はグレンと会えないという不安に比べると、足を踏まれた程度に感じられる。
バキッ
何度目かの木剣が折れる。俺は折れた木剣を見つめながら突っ立っていた。
「ケイラ将軍…」
カインがか細く名前を呼ぶ。いつもとは違う、誰にも見せたことの無い余裕のない俺をカインはどう思っているだろうか。
「~~!」
「~…」
突然、遠くから誰かの話し声が聞こえ、周囲にいた兵士が騒ぎ始める。だが振り向く気にも慣れない俺は折れた木剣を未だ握りしめて下を俯いている。
「…あっ!慧羅だ!」
訓練場には相応しくない透き通る様なそれでいて明るい声。聞き馴染みのある声に俺は不安を抱きながら振り向く。
「……え」
こちらに手を振っているソラと、ソラを愛おしそうに見つめているグレンがいた。グレンの姿が見れただけでも嬉しい筈なのに喜べない。まだソラを襲った刺客として疑われているからだろうか。いつになったら疑いは晴れるのだろうか。
ソラとグレンが俺の方へ近付いてくる。
(何を言われるんだろうか…)
そんな事を思いながらも視線はずっとグレンを追っている。
「大丈夫ですよ、将軍。僕も隣にいるので安心して下さい。腹が立ったら凶暴になるので、その時は止めてください。」
俺の服の袖をキュッと掴むと、小声で心強いことを言い、最後に冗談を言うカイン。
その言葉に強い安心感を覚えた後、俺は軽く笑った。緊張していたせいか身体が硬直していたようだった。
「ありがとう、カイン。心強い味方がいて嬉しいよ」
「将軍を理解しているのは僕だけです」
自慢げに言うカインに俺は心から感謝した。
━━━━━━「この折れた木剣は全てお前がやったのか?」
ソラが口を開きかけた時、真っ先に言葉に発したのはグレンだった。壊れた使い物にならない木剣を見ながら俺に話しかけてきた。俺は驚きつつも返事をした。
「…はい。こんなに使ってしまい申し訳ありません。」
「いや、それは構わない。」
何か考え事をしながら木剣を見るグレン。
(片付けろって事かな…)
そう判断した俺はー、
「今すぐ片付けます」
そう返事をして半分に折れた木剣を拾い集めながら森へと運んでいく。グレンは木剣を運ぶケイラをただ静かに眺めていた。
カインの忠告に耳を傾けず黙々と木製の人形に木剣を振るう。今のままではマズいと危機感を覚えた俺は、朝食を取ったあと真っ先に訓練場へ行った。
(傷口が開こうが構わない…。)
そう自分の心に言い聞かせ激しい訓練を行う。途中、木剣が折れてしまい何本か予備で倉庫から持ってきては振るうを繰り返す。精鋭部隊に入れなければグレンとの距離は絶たれてしまう。生前の頃は精鋭部隊にいたおかげでグレンの恋人になれたようなものだった。グレンと会えない、そんな不安が少しずつ弱りきっている心を侵食し始める。脇腹の傷はグレンと会えないという不安に比べると、足を踏まれた程度に感じられる。
バキッ
何度目かの木剣が折れる。俺は折れた木剣を見つめながら突っ立っていた。
「ケイラ将軍…」
カインがか細く名前を呼ぶ。いつもとは違う、誰にも見せたことの無い余裕のない俺をカインはどう思っているだろうか。
「~~!」
「~…」
突然、遠くから誰かの話し声が聞こえ、周囲にいた兵士が騒ぎ始める。だが振り向く気にも慣れない俺は折れた木剣を未だ握りしめて下を俯いている。
「…あっ!慧羅だ!」
訓練場には相応しくない透き通る様なそれでいて明るい声。聞き馴染みのある声に俺は不安を抱きながら振り向く。
「……え」
こちらに手を振っているソラと、ソラを愛おしそうに見つめているグレンがいた。グレンの姿が見れただけでも嬉しい筈なのに喜べない。まだソラを襲った刺客として疑われているからだろうか。いつになったら疑いは晴れるのだろうか。
ソラとグレンが俺の方へ近付いてくる。
(何を言われるんだろうか…)
そんな事を思いながらも視線はずっとグレンを追っている。
「大丈夫ですよ、将軍。僕も隣にいるので安心して下さい。腹が立ったら凶暴になるので、その時は止めてください。」
俺の服の袖をキュッと掴むと、小声で心強いことを言い、最後に冗談を言うカイン。
その言葉に強い安心感を覚えた後、俺は軽く笑った。緊張していたせいか身体が硬直していたようだった。
「ありがとう、カイン。心強い味方がいて嬉しいよ」
「将軍を理解しているのは僕だけです」
自慢げに言うカインに俺は心から感謝した。
━━━━━━「この折れた木剣は全てお前がやったのか?」
ソラが口を開きかけた時、真っ先に言葉に発したのはグレンだった。壊れた使い物にならない木剣を見ながら俺に話しかけてきた。俺は驚きつつも返事をした。
「…はい。こんなに使ってしまい申し訳ありません。」
「いや、それは構わない。」
何か考え事をしながら木剣を見るグレン。
(片付けろって事かな…)
そう判断した俺はー、
「今すぐ片付けます」
そう返事をして半分に折れた木剣を拾い集めながら森へと運んでいく。グレンは木剣を運ぶケイラをただ静かに眺めていた。
208
あなたにおすすめの小説
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年。
かつて自分を救った玲に再会した静は玲に対して同じ苦しみを味合わせようとする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる