16 / 26
16話
しおりを挟む
「やっぱり…、分からない。」ボソリと呟く。
「何がですか?」木刀を振り回していたカインが動きを止め尋ねる。
訓練の合間に挟む休憩で俺は生前の記憶を辿っていた。ソラという人物とは接点もないし関わりを持ったことも無い。なのに、ソラは俺の存在を知っており復讐をすると言ってきた。
「ソラとは会った記憶が無い。1度見た顔は覚えている筈なんだが…」
「では、ソラの記憶違いですか?」
「いや、だとしたら俺の名前に強く反応しない筈だ。昨晩拘束されている時、ソラは俺の目を見て話していたが…心底憎んでいるような目をしていた。もし、生前に会っていたのだとしたら俺が…何か気に障るようなことをしたのかもしれない。」そうとしか考えられない。
「世の中に同姓同名の人は沢山いると酒場の店主に聞いた事があります。もし仮にソラの憎む相手が将軍だった場合、僕が先に八つ裂きにしますけどね。」
「そしたら、グレンが出てくるぞ?」今のソラとグレンは相思相愛。めでたい事だと思いたいが、認めてしまえばきっと気を病んでしまうかもしれない。
「うっ…、か…勝てますよ…」グレンの名を出すとカインが一気に弱腰になる。
「剣術大会で上位の成績を収めているんだぞ?」
「う…」カインが落ち込む犬のように見えて思わず笑ってしまう。冗談だと悟ったのかカインは拗ねてそっぽを向いてしまった。
「悪い、カイン」笑いを堪えたままカインの肩に手を伸ばそうとした時━━
「っ…」誰かに背中を蹴られて地面に倒れ込んだ。
「おっと、悪りぃ悪りぃ。居たの全然気付かなかった」一人の男の言葉で後ろの兵士数人が笑う。
「いえ…」目線を合わせないように痛む背中を抑えながら立ち上がると、進路を譲った。取り巻き兵士を連れている男は服の上からでも分かるほど筋肉質だった。
「おいっ……」カインが男に掴みかかろうとした為、慌てて口を防いだ。口を防がれても尚、んーんーと文句を言っているカイン。恐れ知らずだなと思ってしまった。
「奴隷の分際で文句でもあるのか?」男の鋭い目付きがカインではなく俺に向く。
「何でも…ないです。」大人しく引き下がろうと刺激せずに謝る。
「疫病をもたらす奴隷鼠の分際で…」きつい言葉を吐かれながら最後に唾を付けられた。そして取り巻きと共に何処かへと行った。
消えたのを確認するとカインの口を防いでいた手を離す。
「将軍、大丈夫ですか?!」男の唾がついた部分を自分の服で拭こうとするカインに俺は「大丈夫だよ」と笑顔で言葉を返した。本当はやり返したい程悔しいが、手を出してしまったら今以上に痛い目にあってしまう。今はまだ、食事が少し貰えるだけでもありがたい。あの男は盗賊にいた事があるので腕っ節には自信があるのだろう。
「下手に刺激したら痛い目を見るから大人しくするんだぞ。」カインに野犬には注意しろと釘を刺した。
「何がですか?」木刀を振り回していたカインが動きを止め尋ねる。
訓練の合間に挟む休憩で俺は生前の記憶を辿っていた。ソラという人物とは接点もないし関わりを持ったことも無い。なのに、ソラは俺の存在を知っており復讐をすると言ってきた。
「ソラとは会った記憶が無い。1度見た顔は覚えている筈なんだが…」
「では、ソラの記憶違いですか?」
「いや、だとしたら俺の名前に強く反応しない筈だ。昨晩拘束されている時、ソラは俺の目を見て話していたが…心底憎んでいるような目をしていた。もし、生前に会っていたのだとしたら俺が…何か気に障るようなことをしたのかもしれない。」そうとしか考えられない。
「世の中に同姓同名の人は沢山いると酒場の店主に聞いた事があります。もし仮にソラの憎む相手が将軍だった場合、僕が先に八つ裂きにしますけどね。」
「そしたら、グレンが出てくるぞ?」今のソラとグレンは相思相愛。めでたい事だと思いたいが、認めてしまえばきっと気を病んでしまうかもしれない。
「うっ…、か…勝てますよ…」グレンの名を出すとカインが一気に弱腰になる。
「剣術大会で上位の成績を収めているんだぞ?」
「う…」カインが落ち込む犬のように見えて思わず笑ってしまう。冗談だと悟ったのかカインは拗ねてそっぽを向いてしまった。
「悪い、カイン」笑いを堪えたままカインの肩に手を伸ばそうとした時━━
「っ…」誰かに背中を蹴られて地面に倒れ込んだ。
「おっと、悪りぃ悪りぃ。居たの全然気付かなかった」一人の男の言葉で後ろの兵士数人が笑う。
「いえ…」目線を合わせないように痛む背中を抑えながら立ち上がると、進路を譲った。取り巻き兵士を連れている男は服の上からでも分かるほど筋肉質だった。
「おいっ……」カインが男に掴みかかろうとした為、慌てて口を防いだ。口を防がれても尚、んーんーと文句を言っているカイン。恐れ知らずだなと思ってしまった。
「奴隷の分際で文句でもあるのか?」男の鋭い目付きがカインではなく俺に向く。
「何でも…ないです。」大人しく引き下がろうと刺激せずに謝る。
「疫病をもたらす奴隷鼠の分際で…」きつい言葉を吐かれながら最後に唾を付けられた。そして取り巻きと共に何処かへと行った。
消えたのを確認するとカインの口を防いでいた手を離す。
「将軍、大丈夫ですか?!」男の唾がついた部分を自分の服で拭こうとするカインに俺は「大丈夫だよ」と笑顔で言葉を返した。本当はやり返したい程悔しいが、手を出してしまったら今以上に痛い目にあってしまう。今はまだ、食事が少し貰えるだけでもありがたい。あの男は盗賊にいた事があるので腕っ節には自信があるのだろう。
「下手に刺激したら痛い目を見るから大人しくするんだぞ。」カインに野犬には注意しろと釘を刺した。
24
お気に入りに追加
550
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された王子は地の果てに眠る
白井由貴
BL
婚約破棄された黒髪黒目の忌み子王子が最期の時を迎えるお話。
そして彼を取り巻く人々の想いのお話。
■□■
R5.12.17 文字数が5万字を超えそうだったので「短編」から「長編」に変更しました。
■□■
※タイトルの通り死にネタです。
※BLとして書いてますが、CP表現はほぼありません。
※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい
オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。
今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時―――
「ちょっと待ったー!」
乱入者の声が響き渡った。
これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、
白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい
そんなお話
※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り)
※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります
※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください
※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています
※小説家になろうさんでも同時公開中
異世界に召喚され生活してるのだが、仕事のたびに元カレと会うのツラい
だいず
BL
平凡な生活を送っていた主人公、宇久田冬晴は、ある日異世界に召喚される。「転移者」となった冬晴の仕事は、魔女の予言を授かることだった。慣れない生活に戸惑う冬晴だったが、そんな冬晴を支える人物が現れる。グレンノルト・シルヴェスター、国の騎士団で団長を務める彼は、何も知らない冬晴に、世界のこと、国のこと、様々なことを教えてくれた。そんなグレンノルトに冬晴は次第に惹かれていき___
1度は愛し合った2人が過去のしがらみを断ち切り、再び結ばれるまでの話。
※設定上2人が仲良くなるまで時間がかかります…でもちゃんとハッピーエンドです!
主人公は俺狙い?!
suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。
容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。
だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。
朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。
15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。
学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。
彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。
そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、
面倒事、それもBL(多分)とか無理!!
そう考え近づかないようにしていた。
そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。
ハプニングだらけの学園生活!
BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息
※文章うるさいです
※背後注意
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる