生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ

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16話

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「やっぱり…、分からない。」ボソリと呟く。

「何がですか?」木刀を振り回していたカインが動きを止め尋ねる。

訓練の合間に挟む休憩で俺は生前の記憶を辿っていた。ソラという人物とは接点もないし関わりを持ったことも無い。なのに、ソラは俺の存在を知っており復讐をすると言ってきた。

「ソラとは会った記憶が無い。1度見た顔は覚えている筈なんだが…」

「では、ソラの記憶違いですか?」

「いや、だとしたら俺の名前に強く反応しない筈だ。昨晩拘束されている時、ソラは俺の目を見て話していたが…心底憎んでいるような目をしていた。もし、生前に会っていたのだとしたら俺が…何か気に障るようなことをしたのかもしれない。」そうとしか考えられない。

「世の中に同姓同名の人は沢山いると酒場の店主に聞いた事があります。もし仮にソラの憎む相手が将軍だった場合、僕が先に八つ裂きにしますけどね。」

「そしたら、グレンが出てくるぞ?」今のソラとグレンは相思相愛。めでたい事だと思いたいが、認めてしまえばきっと気を病んでしまうかもしれない。

「うっ…、か…勝てますよ…」グレンの名を出すとカインが一気に弱腰になる。

「剣術大会で上位の成績を収めているんだぞ?」

「う…」カインが落ち込む犬のように見えて思わず笑ってしまう。冗談だと悟ったのかカインは拗ねてそっぽを向いてしまった。

「悪い、カイン」笑いを堪えたままカインの肩に手を伸ばそうとした時━━


「っ…」誰かに背中を蹴られて地面に倒れ込んだ。

「おっと、悪りぃ悪りぃ。居たの全然気付かなかった」一人の男の言葉で後ろの兵士数人が笑う。

「いえ…」目線を合わせないように痛む背中を抑えながら立ち上がると、進路を譲った。取り巻き兵士を連れている男は服の上からでも分かるほど筋肉質だった。

「おいっ……」カインが男に掴みかかろうとした為、慌てて口を防いだ。口を防がれても尚、んーんーと文句を言っているカイン。恐れ知らずだなと思ってしまった。

「奴隷の分際で文句でもあるのか?」男の鋭い目付きがカインではなく俺に向く。

「何でも…ないです。」大人しく引き下がろうと刺激せずに謝る。

「疫病をもたらす奴隷鼠の分際で…」きつい言葉を吐かれながら最後に唾を付けられた。そして取り巻きと共に何処かへと行った。

消えたのを確認するとカインの口を防いでいた手を離す。

「将軍、大丈夫ですか?!」男の唾がついた部分を自分の服で拭こうとするカインに俺は「大丈夫だよ」と笑顔で言葉を返した。本当はやり返したい程悔しいが、手を出してしまったら今以上に痛い目にあってしまう。今はまだ、食事が少し貰えるだけでもありがたい。あの男は盗賊にいた事があるので腕っ節には自信があるのだろう。

「下手に刺激したら痛い目を見るから大人しくするんだぞ。」カインにには注意しろと釘を刺した。
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