生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ

文字の大きさ
上 下
12 / 26

12話

しおりを挟む
日が沈み出した頃、俺はカインと分かれソラが待っている場所に行こうと足を進める。ソラとはあれから今日の出来事やグレンの様子を聞いたり話したりしている。特に変わった所はないが俺はあの時のソラの引き攣った顔が頭から離れない。どんな心情だったのか気になる。

いつもの場所まで来たがソラは来ていなかった。
(少し早かったか…)
そう思いながら木の根付近に座り目を瞑る。風の心地良さと虫の鳴く声は俺の心を落ち着かせる。これは眠たくなるな、そんな事を思いながら眠気に抗えずにいた頃、突然「おい」と頭上から声を掛けられた俺は目を開け、声のした方に顔を向ける。

「グレン…王子…!」
驚きのあまり硬直してしまう。目の前に好きな人が現れたら喜びたくなるが、俺は今グレンに会えるほどの身分ではない。だが、どうしてこうも口は緩んでしまうのだろう。

(あぁ、そうか。口が緩むのは長らく顔を見ていなかったせいだ。絶対そうだ。)

「最近、」
グレンが口を開く。俺はその言葉の続きを静かに聞く。

と此処で会っているんだろう?」

「あ…、え、はい。」
グレンの口から出るのはソラの事。少し胸が痛む。考えてみればそうだな。グレンはソラに惚れてる。ソラもグレンに惚れてる。完全な両思いだ。

「先程、ソラが何者かに襲われた。」
グレンの悲しげな瞳が揺れている。

「えっ?!ソラは……無事なんですか?」
俺は驚きのあまり立ち上がりグレンの傍に駆け寄る。ソラが心配で鼓動が早くなる。

「ソラは腕に傷を負ったが無事だ。犯人は捕えて今、尋問をしている。」

「そう……ですか。」ソラの無事が分かり俺は安心してグレンの傍を離れた。

「嘘はやめろ」

「……え……?」

「ソラから全て聞いたぞ。今までソラ宛に届いていた殺害予告や密会はお前がソラを呼び出し脅していた。ソラは今の今まで誰にも相談せず苦しみ俺に本当のことを告げた。今日、ソラに刺客を送ったのもお前だろう?」

「……え。」
グレンから突然訳の分からない事を言われ俺は混乱した。ソラはグレンに何を言ったんだ?

殺害予告?

密会?

何ひとつとして俺の今までの行動にあてはまらない言葉の数々に俺は頭が痛くなった。

「グレン王子が一体何を仰っているのか……」

「惚けるな!」
グレンの目が今にでも人を殺しそうな程鋭くなる。こんなグレンは今までに見た事がなくビクッと肩が跳ねる。絶対的な雰囲気を身にまとうグレンは兵士に「連れて行け」と指示を出し、麻袋を顔に被せられた俺は兵士に両肩を捕まれ何処かへと連れて行かれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された王子は地の果てに眠る

白井由貴
BL
婚約破棄された黒髪黒目の忌み子王子が最期の時を迎えるお話。 そして彼を取り巻く人々の想いのお話。 ■□■ R5.12.17 文字数が5万字を超えそうだったので「短編」から「長編」に変更しました。 ■□■ ※タイトルの通り死にネタです。 ※BLとして書いてますが、CP表現はほぼありません。 ※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?

「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。 王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り 更新頻度=適当

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

勇者の料理番

うりぼう
BL
いつもと変わらないある日、朝日と太陽の二人は異世界へと召喚される。 勇者として呼ばれた太陽と巻き込まれた幼馴染の朝日。 勇者として奮闘する太陽を支えるには朝日の料理しかない! そんな二人の異世界奮闘記です。 メインは朝日。 ※異世界で日本の料理を楽しむ ※魔法ならなんでもあり ※がばがば設定 ※ほぼファンタジー ※一応BLですが要素は薄いです

【BL】水属性しか持たない俺を手放した王国のその後。

梅花
BL
水属性しか持たない俺が砂漠の異世界にトリップしたら、王子に溺愛されたけれどそれは水属性だからですか?のスピンオフ。 読む際はそちらから先にどうぞ! 水の都でテトが居なくなった後の話。 使い勝手の良かった王子という認識しかなかった第4王子のザマァ。 本編が執筆中のため、進み具合を合わせてのゆっくり発行になります。

気にしないで。邪魔はしないから

村人F
BL
健気な可愛い男の子のお話 , , , , 王道学園であんなことやこんなことが!? 王道転校生がみんなから愛される物語〈ストーリー〉 まぁ僕には関係ないんだけどね。 嫌われて いじめられて 必要ない存在な僕 会長 すきです。 ごめんなさい 好きでいるだけだから 許してください お願いします。 アルファポリスで書くのめっちゃ緊張します!!!(え) うぉぉぉぉぉ!!(このようにテンションくそ高作者が送るシリアスストーリー💞)

なぜか第三王子と結婚することになりました

鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!? こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。 金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です ハッピーエンドにするつもり 長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です

主人公は俺狙い?!

suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。 容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。 だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。 朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。 15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。 学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。 彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。 そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、 面倒事、それもBL(多分)とか無理!! そう考え近づかないようにしていた。 そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。 ハプニングだらけの学園生活! BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息 ※文章うるさいです ※背後注意

処理中です...